【特集】深遠なるゲーミングデバイスの世界

「ゲーマーの眼の過酷な環境を何とかしたい!」から生まれたゲーミンググラスeSAS【トータルビューティー株式会社 インタビュー】

eスポーツ元年と呼ばれた2018年を皮切りに、eスポーツ競技タイトルも増加。中には1秒、1フレームを争うシビアなタイトルもある中、マウスやキーボード、ゲームパッドなど、さまざまなデバイスも選手以上に重要な役割を担うようになった。

そんなゲーミングデバイスに、プレイに直接関わる「眼」を守るゲーミンググラスがあることをご存じだろうか。数あるゲーミングデバイスの中でも、なかなか購入の優先順位が低いのが現状だ。

今回はゲーミンググラス「eSAS(いーさす)」を開発したトータルビューティー株式会社の首藤一芳さん、細野智子さんにインタビュー。eスポーツプレイヤーと眼に関するお話をうかがってきた。

カメラのレンズから着想を得てeスポーツ用のレンズを開発


——まずはトータルビューティー株式会社がどのような会社なのかをおうかがいしたいと思います。

首藤:トータルビューティー株式会社は令和元年9月に美容と健康をメインに設立した会社で、眼鏡事業部としてゲーミンググラスの販売を行っております。

元々は関連会社で予約制のメガネ店(スタジオAR)として眼鏡販売をしておりました。 レンズメーカー様とのご縁でPCやスマートフォンなどモニター専用のレンズ開発に成功したため、ゲームに特化したメガネ販売の構想がうまれました。

ゲーミンググラス販売は今までのお客様とターゲットがまったく異なるため、ゲーミンググラス販売店としてトータルビューティー株式会社の眼鏡事業部を立ち上げることとなり、現在にいたります。

——首藤さんはどういった経緯で携わるようになったのですか?

首藤:実は私の実家は老舗眼鏡店で、眼鏡に携わる歴=年齢になります。 地元の高校卒業後、名古屋にあるキクチ眼鏡専門学校で4年間メガネについて学び、卒業後はキクチメガネ株式会社様で3年間修業させていただきました。

その後、実家のメガネ店で15年以上販売業務を行っていたのですが、一度きりの人生なのでいろいろとやってみたいとの思いから、実家のメガネ店を退職し、知人の伝手で東京のスタジオAR(有限会社アームライト)にお世話になっております。

実際に目の検査をし、販売するようになってから20年以上になりますでしょうか。

▲首藤一芳さん

——おおっ。眼鏡なくしては語れない人生という感じですね。

首藤:そうですね。メガネの販売は 「半医半商(はんいはんしょう)」 半分医者、半分商売として行う必要があると教えられ、いつも心に置いております。 お客様の見ることをお世話するビジョンケアを推進し、快適な視生活が送れるよう日々活動しています。

——なるほど。もともとメガネ事業部だったとのことですが、ゲーミンググラス開発のきっかけはなんだったのでしょうか。

首藤:もともと弊社の会長とレンズメーカーが共同開発をしたES(エスペランス)レンズというものがありました。ESレンズというのは、被写界深度延長設計とも呼ばれていて、簡単に説明するとピントが合う部分が広がるレンズですね。

▲被写界深度とはカメラのレンズ用語でもあり、ピントが合う範囲を示している。被写界深度が浅いと被写体の前後がぼやけ、深いと被写体の前後もクッキリと表示される

ESレンズは、広い範囲に常に注視するような長距離ドライバーような方のために設計されていたのですが、これはeスポーツにも親和性があるのではないかと思ったのがきっかけですね。

——確かにeスポーツの競技になっているタイトルは、シューティングにせよ格闘ゲームにせよ、マップや体力ゲージなど、画面の隅々の情報を瞬時に読み取ることが重要視されていますもんね。

首藤:そうなんです。画面の中心が100%クッキリ見えるよりも、全体がピントが合う距離を広げることで、80〜90%のピントで見られる領域を広げたのが、こちらのゲーミンググラス「eSAS(eSports Athlete Specs)」になります。


——通常のESレンズと、ゲーミンググラスのeSASは具体的にどのような違いがあるのでしょうか?

首藤:まず、何人かのeスポーツプレイヤーを検眼したところ、眼の状態が悪いプレイヤーが非常に多かったんです。自分では自覚がなくても、視力が落ちていたり、いわゆる隠れ斜視と呼ばれる斜位の症状があったり……。

斜視/斜位とは

斜視とは、片眼は目標の方に正しく向いているが、もう片方の眼が内側や外側にそれてしまうことを示す症状。一方、斜位とは隠れ斜視ともいわれる症状で、両眼を開いた状態では外的症状は現れないものの、片眼だけになると斜視のように目標物から眼が離れてしまう症状を示している。
▲上が正常な眼で、下が斜視の眼

どちらも、ターゲットを正しく見ることができず、映像がダブって見えてしまったり、眼が疲れやすいなどの症状が併発する。

とにかくeスポーツプレイヤーの眼は酷使されているので、検査を重点的に行うというのがまず大きな違いのひとつです。さらにブルーライトをカットした遮光性や、度入りなど、さまざまな機能を組み合わせてeスポーツに特化したレンズに仕上げました。

▲普段使いの用途はもちろん、ゲームタイトルに合わせてレンズカラーを変更できるのもeSASのメリット

——度入りも作れるのはポイント高いですね!

首藤:そうですね。また、お手持ちのフレームにeSASレンズを入れることもできるので、お好みのフレームを選べるというのも魅力だと思います。

▲TPOに併せてフレームを選びたいなんて人のために、レンズだけ入れ替えるということも可能になっている

▲ゲームをプレイするときはeSASのオリジナルフレームを、移動中や打ち合わせの時はカジュアルなフレームを使っているGENKIモリタ選手

日本のeスポーツプレイヤーの目を守るのが私たちの役目


——先ほど、eスポーツプレイヤーは眼の状態が悪い人が多かったとお話されていましたが、なぜそこまで眼の症状が悪くなってしまうんでしょうか?

首藤:eスポーツの先進でもある韓国のプレイヤーの眼の検査をしたところ、円錐角膜になっていたんです。

その名の通り角膜が尖っているものですから、コンタクトレンズもつけられないですし、メガネをかけても視力が0.5までしか矯正できないという非常に危険な症状です。

▲正常の角膜がなだらかなカーブを描いているのに対し、円錐角膜は先が尖っている

円錐角膜になる原因はまだはっきりと判明していないのですが、2名のプレイヤーを検眼して、ふたりとも同じ症状だったので、超時間のゲームプレイにより眼を酷使したり、眼をこすりすぎてしまったのが原因なのではないかと考えています。

韓国のeスポーツプレイヤーといえば、英才教育でゲームに注力していることが多いので、今後日本のeスポーツプレイヤーにもそういった症状が増えてくるのではないかと危惧しています。

——それは恐ろしいですね。そうなると、eスポーツプレイヤーの眼のケアが重要になってくるんですね。

細野:はい。例えば暗い室内でゲームをするのは、なんとなくeスポーツのイメージであるかと思いますが、実際は眼の負担が大きいです。部屋をなるべく明るくしたり、ゲーミンググラスでモニターの光を遮光したり、眼の負担を軽減させることが大切だと感じています。

——確かに、FPSやTPSといったシューティングゲームは部屋を暗くした方が画面が見やすくて、ついつい部屋を暗くしてしまいがちですよね。

細野:暗いところだと眼の瞳孔が開くため、より光の刺激を受けやすくなっています。そういった暗い環境でゲームをするならば、より遮光性の高いカラーのレンズをおすすめしたいですね。


実際、最近のお子さんは暗い部屋でゲームをやる傾向が少なくなってきているので、環境が変わりつつあるのはうれしい変化ですね。

——なるほど。そういえば、首藤さんや細野さんは移動検眼車で直接eスポーツ施設に出向いてeスポーツプレイヤーの検眼もなさっていましたよね。

細野:はい。多くのeスポーツプレイヤーの方は、眼の疲れを自分から発信することをマイナスイメージととらえられている方が多いので、そういった思いをこちら側から拾いに行くという形をとっています。


やっぱり時代は変われど「ゲームばっかりやって」と思われがちなのがeスポーツです。そういうネガティブなことを言われ続けていると、「物がダブって見えるようになった」とか「眼が疲れやすくなった」というのを発信しづらくなってしまうんです。

ただ、私たちからそういった症状について発信することで、「ゲーミンググラスの人がなんか言ってたなあ」と興味を持ち始める。こちら側からアプローチすることで、少しでも眼に対する興味を持ってもらいたいという気持ちが強くあります。

——イベント会場で検眼できるってうれしいですね! 「興味はあるけど、ふれる機会が……」なんて人も気軽に検眼できると思いますし。

首藤:はい。長年、メガネ屋としてやっている中で、「ゲーマーの目の過酷な環境を何とかしたい!」という思いがあるので、なるべく多くのプレイヤーにeSASを体験してもらいたいと思っています。

——例えば、eSASに興味があるという方が購入を考えている場合、どのようにコンタクトをとればいいのでしょうか?

細野:eSASは弊社オンラインショップで取り扱っていますので、度なしであれば全国どこからでも購入が可能となっています。また、実際に検眼をしてから購入したいという方は、完全プライベート空間の検眼スペースにて、心ゆくまでメガネをお選びいただけます。

▲落ち着いた雰囲気の赤坂店舗内の検眼スペース。eスポーツ専門検眼士による特別な目の検査をじっくりとしてもらえる

シーンに合わせたラインアップを紹介


——eSASのラインアップをおうかがいしてもよろしいでしょうか。

首藤:eSASは現在、フレームとレンズのセットと、レンズのみの販売をしております。フレームカラー、レンズ共に4種類ございますので、お好みのフレームと用途に合わせたレンズカラーの組み合わせでお作りします。


さらにレンズは通常のeSASレンズのほかに、プロ仕様のeSAS-PROレンズの2種類がございます。

——eSASレンズとeSAS-PROレンズにはどのような違いがあるのでしょうか?

首藤:eSAS-PROレンズは低反射コートを採用することで、eSASレンズより多くのチラつきを抑えることができます。チラつきを抑えることで、よりしっかりとゲーム画面を視認することができるようになっています。

——確かに『VALORANT』や『フォートナイト』といったFPSタイトルは画面が派手だったり、めまぐるしい画面展開が起こりますからね。そういった際に生じるチラつきが抑えられるのはゲーマーにとって助かりますね。

首藤:そうですね。例えばeSASレンズとeSAS-PROレンズを同じ蛍光灯に当ててみると、eSASレンズが蛍光灯を青く反射するのに対し、eSAS-PROレンズは紫に反射します。いかにeSAS-PROレンズが強い光を抑えているかがわかると思います。

▲こちらが通常のeSASレンズ。蛍光灯をレンズに当ててみると青く反射しているのがわかる。蛍光灯の明かりは白いので、青く反射するということはそれだけ光を抑えられているということだ

▲こちらはeSAS-PROレンズに蛍光灯の明かりを当てた時の反応。暗い紫色に反射されていて、eSASレンズよりも多くの光を遮断できているのがわかる

——おおおっ。全然違いますね!

首藤:eSAS-PROレンズは、多くのゲーマーの検査を元に、グレーとイエローの2色展開にしました。

▲グレーはFPSタイトルやパズルゲーム向き、イエローは激しく画面が切り替わるタイトル向きと、用途に合わせたレンズカラーが選べる

——よりストイックにプレイされるゲーマーさんならeSAS-PROレンズの方がよさそうですね。

首藤:そうですね。もちろん通常のeSASレンズでも十分効果はあります。eSAS-PROレンズは、その名の通りプロ仕様となっているので、プロを目指す選手やプロとして活動している選手の方々におすすめしたいです。

▲フレーム込みの価格。eSAS-PROの方がお値段は高くなってしまうが、より効果を得たいならばアリ。さらに視力が悪い人でも度入りのレンズが作れるのが強みだ。

▲手持ちのメガネのレンズをeSASレンズに換装する際の価格。ベーシックなものであれば3万円以下で換装できるのはお買い得

——これならば、ゲームだけでなく普段の生活でも活躍しそうですね。例えば夜の街頭とか、車のヘッドライトとかは最近LED化されて、ものすごくまぶしく感じることがありますもんね。

首藤:もちろん普段使いでも効果は感じられます。LEDって目に見えないような点滅を繰り返しています。視認はできないけど目自体はそれを忍識しているので、ずっと見続けていると疲れやすくなってしまうんです。

eSASレンズならば、そういったチラつきを抑えることができるので、夜の運転や照明が当たり続ける場所でお仕事されている方におすすめです。

——最後に今後の展望をお聞かせください。

首藤:「ゲームをするから眼が悪くなる」と思われがちですが、そんなことはありません。正しい姿勢、正しい見え方、正しい距離——。この3つがそろえば眼が悪くなることはないと考えています。

私たちeスポーツ専門検眼士が多くの皆さまに「眼」「視力」についての正しい情報をお伝えするための講演活動も積極的に行っていきたいと思っています。

また、今後はVTuber向けのeSASや、学習用、仕事用に特化したeSASも開発予定ですのでお楽しみに!

——ありがとうございました!

———

ゲーミングデバイスというと、やはり優先順位はモニターやマウス、キーボードというような直接ゲームに関わるものを優先してしまいがち。しかし、あらゆるタイトルで酷使される「眼」という人間そのもののデバイスに関してこだわることが、重要なんだと改め痛感した。

眼は必ず老化し、衰えてていく。末永く健康的な眼を保つためにも、ゲーミンググラスというデバイスに着目していきたい。

次回は、そんなゲーミンググラス「eSAS」のレビューをご紹介しよう。


eSAS SHOP:
https://esas.official.ec/

eSAS Twitter:
https://twitter.com/eSAS2020
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