【特集】深遠なるゲーミングデバイスの世界

【特集】深遠なるゲーミングデバイスの世界:アケコン編第2弾「Hit Box Arcade製 hitBOX」を紐解く!【レビュー】 (2/2)



楽器を奏でる感覚で必殺技が出せるhitBOX


前置きはこのくらいにして実際のプレイ感を紹介していこう。検証に使ったタイトルは、現在格闘ゲームの中でメジャーとなっている『ストリートファイターV アーケードエディション』や、筆者が長年プレイしているため、操作感の違いがより顕著に体感できる『ストリートファイター 30th アニバーサリーコレクション インターナショナル』の中の『スーパーストリートファイターII X』を使用。コマンドの入力カテゴリに分けて解説していく。

なお、コマンド表記については特に理由がない限り1P側(画面左側)にキャラがいるものとする。また、指の指定については、特に記載がない限り左手で行うものとする。


コマンド系キャラ

いわゆる昇龍拳コマンド、波動拳コマンドなど、レバーをある一定のルールで入力することで必殺技が出せるキャラを試してみる。今回はスタンダードなリュウを例に解説していこう。



昇龍拳の正しいコマンドは右→下→右下+パンチなので、流れとしては下記のように入力する。

1.人さし指で右ボタンを押す
2.人さし指を離して、中指で下ボタンを押す
3.人さし指で右ボタンを押しながらパンチボタンを押す


ポイントは2.で右ボタンをいったん離すことと、入力した下ボタンは押しっぱなしにするということ。このすぐ離す、押しっぱなしにするという複合が慣れないと頭がこんがらがってしまうが、やっていることは非常に単純だ。

失敗の主な原因は、2.で右ボタンをいったん離す前に下ボタンを入力してしまい、右→右下というコマンド入力になってしまっているところなので、そこを意識してコマンドを入力してみよう。

実は簡単!簡易コマンドでラクラク昇龍拳!

『ストリートファイターV アーケードエディション』では簡易コマンドというものがあり、昇竜拳ならば右下→下→右下というコマンドでも出せる。これはしゃがんだ状態でも昇龍拳が出せるメリットがあり、重宝する簡易コマンドだ。

hitBOXならば中指で下ボタンを押しながら、人さし指を連打してパンチボタンを入力するだけで出せてしまう。なんなら、下ボタンを押しながら、右手で大パンチと右ボタンを同時に2回連続でタタンと素早く入力すれば、しゃがみアッパーキャンセル昇龍拳がいとも簡単に出せてしまうのだ。


さらに右→右下→右でもコマンドが成立するため、人さし指で右ボタンを押して前進し、途中で中指で下ボタンを2回連打しつつパンチボタンで歩きながら昇竜拳を簡単に出せてしまう。

このへんの簡易コマンドはタイトルによってはできないものもあるが、より高速で正確にコマンドが入力できるのはhitBOXの魅力とも言える。

一方、波動拳は下→右下→右+パンチなので、流れとしては下記のように入力する。

1.中指で下ボタンを押す
2.人さし指で右ボタンを押す
3.中指を離してパンチボタンを押す


コマンド系で難しいのは斜めの入力。下と左右いずれかのボタンを両方押している時間が存在しなければならないので、素早く入力しようとすると下→右という風に右下のコマンドが抜けてしまいがち。この辺はトレーニングモードのキーディスプレイを見ながらタイミングをつかんでほしい。

真空波動拳コマンドは斜めいらず

リュウのCA(クリティカルアーツ)は真空波動拳で、コマンド入力は波動拳コマンド×2。


しかし真空波動拳コマンドにも簡易入力があり、斜め要素がなくてもコマンドが成立する。つまり、下→右→下→右+パンチでも出せてしまうのだ。なので、中指と人さし指で下ボタンと右ボタンを交互に連打しつつパンチボタンを押すだけで簡単に真空波動拳が出せてしまう。斜め入力を意識する必要がないのは非常に大きい。

先ほどの昇竜拳との簡易コマンドを複合すれば、しゃがみアッパー→昇竜拳→真空波動拳も非常に簡単に出せてしまう。

溜め系キャラ

一定方向にボタンを入力後、反対方向のボタンと同時に攻撃ボタンを押すというタイプのキャラ。ガイルやバイソンがそれに該当する。今回はガイルを例に解説していこう。ガイルの主軸となっている必殺技は、飛び道具のソニックブームと対空のサマーソルトキック。どちらもレバーを一定時間入力したのち、反対側の方向キー+攻撃ボタンで繰り出せる必殺技だ。


ソニックブームは左溜め→右+パンチなので、流れとしては下記のように入力する。

1.薬指で左ボタンを押す
2.(一定時間入力し続けたのち)薬指のボタンを離す
3.人さし指で右ボタン、右手でパンチボタンを同時に押す


ポイントは左ボタンと右ボタンを同時に入力しないようにすること。左ボタンと右ボタンを同時に入力している間はニュートラル判定になるため、どちらの方向にもキーが入っていないことになる点に注意しよう。

また、ガイルは立ち回りの性質から左下に溜めることが多い。その場合は、薬指と中指で左ボタン、下ボタンを押し、それらのボタンを離したあとに右ボタン+パンチボタンを押すようにしよう。

サマーソルトキックは下溜め→上+キックなので、流れとしては下記のように入力する。

1.中指で下ボタンを押す
2.(一定時間入力し続けたのち)右手で上ボタンとキックボタンを同時に押す


サマーソルトキックは非常に入力が簡単になっていて、下ボタンを押しっぱなしで出せるのが魅力だ。これは先に紹介したhitBOXの優先順位が影響していて、ニュートラルを介さずにサマーソルトキックが出せてしまう。

この仕様により、左下ボタンで溜めつつ即座にサマーソルトキックが出せるだけでなく、さらに最速で次の溜めが完了できてしまうのだ。

▲hitBOXでのサマーソルトキック。しゃがみ状態から即座に技が出ているのが確認できる。

これをレバーでやるのは非常に困難で、どうしても途中で立ちモーションが見えてしまう。これはレバー操作ではニュートラルを経由することが原因だ。

▲アーケードスティックでのサマーソルトキック。コマンドの入力が遅いとレバーニュートラル時の立ちモーションを経由して技が出てしまう。

このようにhitBOXでは方向キーの操作を右手で代用することもできるのが大きなメリットでもあり、自分が操作しやすい方法をパズルのように見つけていく楽しさもあるのが魅力だ。なんとなく音ゲーをやっている気分になれる。

ボタンの優先順位はゲーム内で決められていることもある

必殺技の入力がまったく同じで、キャラも同じな『ストリートファイター 30th アニバーサリーコレクション インターナショナル』ではまた違った挙動をする。上記のように、下ボタンを入力したまま、上ボタン+キックボタンでサマーソルトキックを出そうとすると、なぜか左or右ボタン+キックボタンで出せるニーバズーカやソバットに技が化けてしまう。

▲左下のキーディスプレイを見てほしい。左ボタンや右ボタンに一切ふれてないのにニーバズーカがでてしまうことが……。サマーソルトキックを出す場合は、しっかりと下ボタンを離してから上ボタン+キックボタンを入力することで回避できる。

このようにゲームのタイトルによっても挙動が変わってしまうのはhitBOXのデメリットともいえる。自分のプレイしているゲームタイトルでどのような優先順位で動作するのかは、あらかじめ調べておきたいところだ。

回転系キャラ

代表的なのがザンギエフのスクリューパイルドライバーで、レバーを1回転+パンチボタンで繰り出される必殺技。レバーの場合コマンド入力が長く、また上方向を経由するため、失敗するとジャンプが暴発してしまう危険もある必殺技だ。


実はこのコマンド、斜めの入力はなくても成立するため、右→下→左→上+パンチでもOKなのだ。hitBOXでは下記のように入力すると簡単だ。

1.人さし指で右ボタンを押して離す
2.中指で下ボタンを押して離す
3.薬指で左ボタンを押して離す(押しっぱなしでもOK)
4.右手で上ボタンとパンチボタンを同時に押す


ポイントは左手の入力をできるだけ軽快に行うと言うこと。流れるように入力してしまうと、どこかでボタンが同時押しになってしまい、下方向がカウントされなくなってしまうからだ。ピアノの演奏で言うスタッカートな感じで入力するといいだろう。なお、最後の上入力は左上でもコマンドは成立するので薬指は押したままでもOK。

逆回転でコマンドを入力する場合は1.〜3.の入力を逆から行う。

ダッシュ

hitBOXを使う上で大きなメリットになっているのがダッシュだ。ダッシュ機能がある多くの格闘ゲームでは、レバーを左右いずれかの方向にすばやく2回連続で入力することで、ダッシュやバックステップといった行動がとれる。

こちらの操作も、レバーだとレバーを倒したあとに戻る動作があるので、素早くダッシュをするのは難しい。しかし、hitBOXなら左右のボタンをピアノ打ちでタタンと入力するだけでダッシュが完成してしまう。hitBOXのボタンはやや小さめなのでピアノ打ちをするにはコツが必要だが、ピアノ打ちでなくともボタンを素早く2回押すだけでダッシュができるので、ほぼノーモーションで出せる。

このように格闘ゲームにおけるさまざまなコマンドを、ボタンを押すという動作だけで完結してしまうhitBOX。今注目を浴びている理由が1カ月試用してみてわかった気がする。

もちろん、レバー操作に慣れている人は今までにない操作感なのでいきなり使いこなすのは難しいだろう。しかし、使いこなせるようになれば、パッドよりレバー、レバーよりもhitBOXという存在になりうる可能性は十分にあるだろう。

hitBOXが抱えている問題


ここ最近プロゲーマーの間で話題となっているhitBOXだが、その性能の高さから「大会では使用禁止になるのでは?」と懸念を抱く人も少なくない。

2019年5月24日から行われたCPTカプコンプロツアー)の大会「コンボブレイカー」では、ウメハラ選手が所持していたレバーレスアーケードコントローラーの使用が禁止された。これに関してCPT運営は「CPTの精神に沿わないコントローラーの使用を認めない」という方針を発表したというニュースは記憶に新しい。

出典:公式Twitterアカウント@CapcomFightersより


しかし、この方針からもわかるようにhitBOXと言及しているわけではないので、今回紹介したhitBOXが必ずしも禁止になるとは限らない。現に、先の「コンボブレーカー」でウメハラ選手が所持してたのはガフロコンと呼ばれるレバーレスアーケードコントローラーであり、hitBOXではなかった。

また、2019年6月8日~9日で台湾・台北で行われたCPTのプレミア大会「Taipei Major 2019」でウメハラ選手は、hitBOXで出場しているため、hitBOXが大会での使用を禁止される可能性は低いと言える。

▲Taipei Major 2019より

以上のことからも、今回紹介したhitBOXが今後大会で使用禁止になる可能性は低いと考えていいだろう。

まとめ


hitBOXを1カ月試用してみたが、正直な感想は「タイトルを選ぶデバイス」ということ。『ストリートファイターV アーケードエディション』では簡易コマンドも手伝って非常に快適にプレイできたが、簡易入力がなく、ジャンプを多用するような『ストリートファイター 30th アニバーサリーコレクション インターナショナル』ではまだレバー操作に軍配があがる。

また基本的にキャラの操作をつかさどる方向ボタンを左手でおこなうため、右利きのプレイヤーがhitBOXを使いこなすには左利きよりも時間がかかるかもしれない。特に力が入りにくい薬指を酷使する左移動や左ダッシュを自由に使えるようになるのはかなりの練習が必要だ。

しかし格闘ゲームが未経験の人にもボタンを叩くリズムさえ教えれば、レバーよりも早く上達できることから、格闘ゲーム未経験の人が今から格闘ゲームを始めるならhitBOXを使っていくのもアリだ。

【eSports World編集部の評価】

操作性:★★★☆☆
機能性:★★★★☆
デザイン性:★★★★★
価格:★★★★☆
携帯性:★★★★★

総合評価:4.2

デザインは優れているものの、パッドボタンやR3、L3ボタンなどメニューまわりで使えるボタンが少ないのはやや機能性が落ちる。また、操作性は慣れるまでの時間を考えると★3つといったところか。使いこなせれば操作性が★5つになると言っても過言ではないポテンシャルは持っている。

また、ケーブルが取り外せることや、レバーという突起物がない点からも携帯性はバッチリ。総合的な評価は4.2と高めの評価となりました。

■関連リンク
hitBOX公式:https://www.hitboxarcade.com/
hitBOX購入サイト(Amazon):https://www.amazon.co.jp/dp/B078GBDZX6/
hitBOX購入サイト(ヨドバシ.com):https://www.yodobashi.com/product/100000001004267268/
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