【連載】岡安学の「eスポーツってなんだろう?」

日本のeスポーツと「高額賞金問題」の法的課題 〜eスポーツと法律【岡安学の「eスポーツってなんだろう?」第6回 前編】

2022.4.4 岡安学
eスポーツ元年」と呼ばれた2018年にeスポーツが大きく飛躍した理由のひとつに、それまで曖昧だった法律が多少整備されたことが挙げられます。

特に賞金問題によって、日本で高額賞金のeスポーツ大会が開催できないのではないか、それにより日本ではeスポーツが根付かないのではないかと懸念されていました。eスポーツに関わる法律としては、「景品表示法」、「風俗営業適正化法」、「刑法賭博罪」が中心で、「著作権法」なども絡んできます。

他にもeスポーツ施設の運営問題や動画配信における著作権問題など、さまざまな法律に関わる問題が山積し、その多くはJeSU(一般社団法人日本eスポーツ連合)や各省庁、弁護士、メーカーなどの働きかけにより、クリアにされてきました。

しかし、賞金問題こそ多くの人に理解されつつあるものの、それ以外の法整備に関してはeスポーツ関係者でもまだ知らない人が多いのが現状です。いまだに「日本ってeスポーツの高額賞金が出せないんでしょ?」と言われることもあるので、賞金問題ですらまだ浸透しきっていないのかもしれません。

そこで今回は、eスポーツにまつわる法律関係の経緯を振り返り、「何ができて、何ができないのか」を前・中・後編にわたって再確認していこうと思います。法律の解釈については、eスポーツの法律問題に詳しい西村あさひ法律事務所の松本祐揮弁護士に監修をお願いしております。

松本祐輝 弁護士


西村あさひ法律事務所に所属し、eスポーツの法規制に関する取り組みをはじめとして、eスポーツに精通し、案件を多く扱っている。


eスポーツを展開する際に障壁となった「高額賞金問題」のいま


日本でeスポーツを展開するうえで、最初の段階で障壁となったのが、高額賞金問題と「景品表示法」でした。

eスポーツはテレビゲームを使用する以上、ゲームを購入した人が有利となるため、景品表示法による景品等の最高額、総額を規制する「景品規制」に当たるのではないかと思われてきました。

そのため、ゲーム代の20倍(10万円以下)、もしくは10万円の賞金額が上限とされると解釈されていました。これはとあるメーカーが主催する大会規約に、日本人チームが海外大会で優勝したとしても、本来もらえるはずの高額な賞金ではなく10万円を上限とする主旨が書かれていたことが発端となっています。

「当時はまだeスポーツが浸透しておらず仕方ない判断だったかと思われますが、いろいろ突き詰めていくとその解釈が正解というわけではないとわかります。基本無料のタイトルであったり、賞金が第三者から出ていた場合であったり、海外での大会の賞金に対して規制を設けたり、やはり景品表示法に適用させることは難しいと考えました」(松本弁護士)

そもそもこの問題が発覚する以前の2016年に、XFLAGが開催した「モンストグランプリ」では優勝賞金2000万円を出しており、2017年にはサードウェーブデジノスが賞金総額500万円のeスポーツ大会「GALLERIA GAMEMASTER CUP」を開催しています。

どちらも消費者庁からの指導は入らず、景品表示法に抵触するとはみられていませんでした。いわば限りなくホワイトに近いグレーゾーンだった賞金問題に関して、安全策をとったことが大きく知れ渡り、あたかも基準であるかのように思われた事例でした。

賞金総額500万円で開催された「GALLERIA GAMEMASTER CUP 2017」

JeSUのプロライセンスは賞金受領の条件ではない


こうした流れの後に、JeSUが「大会に参加する選手をプロ化(JeSUがプロライセンスを発行)することで、賞金を仕事の報酬とする」ことを消費者庁と協議し、さらに消費者庁が「興行性のある大会であれば、プロアマ問わず仕事の報酬とする」という見解を示しました。

しかし、JeSUのプロライセンスは高額賞金の必須条件というわけではありません。

例えば、2018年末に開催された「Shadowverse World Grand Prix 2018」では、優勝賞金100万ドル(約1億1000万円)の大会が開かれましたが、『Shadowverse』はJeSUのプロライセンス認定タイトルではなく、優勝したふぇぐ選手もJeSU認定のプロライセンス保持者ではありませんでした。

当時は、基本無料タイトルであっても、メーカーが賞金を拠出するタイトルであっても、スポンサーが拠出する賞金であっても一緒くたに、景品表示法に違反するとみられていました。そんな状況下において、買い切り型のタイトルでeスポーツを行う場合は、より一層高額賞金を出しにくくなっていました。

以前、筆者が消費者庁に確認をとった際「興行性のある大会(有観客であったり、不特定多数に配信をしていたりする)であれば、賞金を受け取るレベルの腕前を見せることは仕事の一環として認められる」といった回答を得ています。このことは、後にJeSUが「東京ゲームショウ2020」にて、消費者庁に送ったノーアクションレターにおいても同様の回答を得ており、プロアマ問わず賞金を得ることに問題がないことを発表しています。

優勝賞金100万ドルを獲得した“ふぇぐ”選手

こうした一連の流れにより、高額賞金に関する景品表示法の問題はクリアされたわけです。したがって、2022年現在は、日本でも高額賞金をeスポーツに出すことは違法ではなく、賞金付きの大会もたくさん開催されるようになってきています。

中編、後編に続く。

【連載】岡安学の「eスポーツってなんだろう?」

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