【現地レポート】高校生eスポーツ日本一を決める祭典が「大阪・関西万博」で開催! プロ顔負けの熱い試合に会場は大盛況——「STAGE:0 eSPORTS High-School Championship 2025」

2025.8.16 まいる
全国の高校生によるeスポーツ日本一を決める祭典「STAGE:0 eSPORTS High-School Championship 2025」が、8月15日(金)~17日(日)にて開催された。特に1番目の競技タイトルは『VALORANT』、全国ベスト4のチームが一堂に会し、熱いバトルを繰り広げる。

▲3日間にわたり、計7種目の競技が実施される。15日(Day1)は、ライアットゲームズの『VALORANT』と『リーグ・オブ・レジェンド』の2タイトル

そして本イベントが開催されたのは、なんと「大阪・関西万博2025」の会場内。夢洲駅を抜け、会場内に入ると、出迎えるのは超巨大な大屋根リング。そしてイベントが行われるのは、大屋根リングの外周を少しまわった先にあるホールだ。現地の来場者は自由に会場へ入ることができ、観客席には飛び入り参加の方も非常に多かった。

▲大屋根リングは生で見ると圧巻の大きさ! この暑い日差しの中、休憩スペースとしても大活躍だ

▲限定デザインのタオルが先着で無料配布。汗を拭いつつ、応援もできるという一石二鳥のグッズ

▲コカ・コーラのテイスティングも実施。キンキンに冷えたコーラは、火照った体を冷ますのに最適だ

▲大会アンバサダーのアンガールズ・田中卓志(左)。スペシャルサポーターのアルコ&ピース・平子祐希と酒井健太(中・右)が登場。芸人がいることでトークもいっそうと盛り上がる

▲観客の多くは、たまたまこの日万博に来ていた来場者がほとんど。ゲームの詳しいルールまでは知らなくとも、場を盛り上げる実況解説と、高校生たちのが見せる熱い試合展開に、会場からは非常に温かい歓声が上がっていた

▲フィストバンプ(グータッチ)を交わし、自身の席へと向かう選手たち。お互いの健闘を称え合う、いわば試合前の挨拶だ

若さが光るアグレッシブな試合展開


昼過ぎから行われた決勝戦では、ルネサンス「Across」 vs ルネサンス豊田「大阪に行くために」の、日本一を決める最後の戦いとなった。

▲「大阪に行くために」(画面右)は、驚きの3センチネル構成だ。サッカーに例えるとフォワードがいない状態だという

「Across」が選択したマップはロータス。古代遺跡をモチーフにした、3つのサイトを持つ比較的広めのマップだ。そんな中で、「大阪に行くために」は近年稀に見る3センチネル構成を選択した。

▲守備を得意とするキャラクターばかりで、本来ならば攻撃側は苦手なはずだが、攻撃側スタートの「大阪に行くために」は最序盤からラウンドを連取

4点差をつけられた「Across」だったが、特に攻守が交代すると徐々に反転攻勢をかけはじめる。

▲試合中盤、8-8という同点の展開にまで持ち込んだ「Across」

だがここで「大阪に行くために」が先に9:12でマッチポイントを決める。13点を獲得すれば勝利のところ、このままあと1点を取りきれば勝利だ。

しかし、対する「Across」もこの崖っぷちの状況の中で見事な逆転劇を見せる。22ラウンド目、23ラウンド目と「Across」はギリギリのところで持ちこたえ、じわじわと追いついていく。波乱の展開となり、会場内は声援が飛び交っている。

▲早々にマッチポイントを決めた「大阪に行くために」だったが、それに必至に喰らいつく「Across」。1対4という人数不利をひっくり返す見事なクラッチで、会場を大いに沸かせた(https://www.youtube.com/live/q09sCT_Pf1M?si=eQ6QJoJULlHGC8b4&t=18227

▲「大阪に行くために」のメンバーにとっては、非常に苦しい展開。背後から追いつかれ、プレーにも焦りが滲み出る

しかし迎えた24ラウンド目、堅い守りで徐々に人数を削り、相手を翻弄する「大阪に行くために」。逃げるようにして遠くのサイトへ移動する「Across」だったが、最後は「大阪に行くために」へ軍配が上がった。

▲Aサイト、Bサイトとことごとく止められ、消去法で選んだCサイトだったが、人数差にあらがうことはできなかった(https://www.youtube.com/live/q09sCT_Pf1M?si=rGi9RHP0rw25GtCF&t=18370

▲優勝の瞬間、思わず抱き合う選手たち。会場からは温かい拍手が湧き上がった

優勝チーム囲みインタビュー


▲優勝チームのルネサンス豊田(大阪に行くために)のメンバー。左からイクラはいくら、reia7sh(れいあ)、JackReacher(じゃっくりーちゃー)、インスモークサンジ、sunday(さんでー)、ursus(あーさす)

——皆さん、ご優勝おめでとうございます。

全員:ありがとうございます!

——優勝して、率直な感想をお聞かせください。

イクラはいくら:優勝できて、めちゃめちゃうれしいです! 緊張ですごくテンパったりしていたんですが、今回の大会で次に向けての課題を見つけられてよかったです。

reia7sh:ちょっと危ないところもあったけど、後半になるにつれて、落ち着いていつも通りにプレーができ、優勝することができました。

JackReacher:STAGE:0に懸ける思いは段違いだったので、すごく緊張しましたが、この大舞台で優勝できて良かったです。

インスモークサンジ:優勝できてめちゃくちゃうれしいです。練習が報われました。

sunday:今年はリザーバーとして試合に出場することはなかったんですが、みんなが2連覇を勝ち取ってくれてうれしいです。

ursus:もう率直に、超うれしいです。


——この万博内で実際にプレーしてみて、なにか感じたことはありますでしょうか?

イクラはいくら:会場がすごくデカくて、より勝とうという思いがありました。

JackReacher:この先、生きているうちにこの大阪という地で万博が開催されるかどうかは分からないので、そこに足を踏み入れることができてとてもうれしいです。

——今大会では、大阪府からのeスポーツに対する支援があったかと思います。環境面など、この支援について感想をお聞かせください。

イクラはいくら:当日の車での送迎だったり、できるだけ体力を使わないようにしてくださったので、体感でいつも通りのパフォーマンスが出せるようになったかなと思います。

JackReacher:日本ではまだeスポーツが浸透しているとは言えない中で、大阪府がこのような支援をしてくれてとてもうれしかったです。

インスモークサンジ:全体的な支援は物すごく厚かったので、選手目線ですごく助かりました。


——このSTAGE:0という晴れ舞台、そして今回の勝利が、皆さんにとってどういったものだったか教えてください。

reia7sh:STAGE:0は、同い年とか、自分と歳の近い人が出場できる数少ない大会だと思います。ここまでチームで勝てて良かったと思います。

JackReacher:高校生活の中で3回しかなく、1年1年が貴重なので、やっぱり練習をすればするほどうまくなって勝つ確率も上がることが実感できました。

sunday:このSTAGE:0は、高校生にとっても一種の青春でもあるし、新しい選手の芽を見つけることができる場所でもあるので、もっとこういった大きな舞台がたくさん開催されてほしいですね。勝利については——正直、1年生から3年生の間で3連覇したかったけど、今回は去年のメンバーとともに2連覇を達成することができてうれしいです。

ursus:STAGE:0のために、このメンバーで集まって毎日練習してきて、めっちゃ頑張ってきたので、今日はちゃんと勝ちきれてすごくうれしいです。

▲優勝トロフィーを掲げる「大阪に行くために」のメンバーたち

——普段の練習というのは、どういうことをされているのでしょうか?

reia7sh:スクリム(練習試合)の相手を外部で募集できるサイトがあるんですけど、そこでよくプロチームなどとスクリムをしています。

——決勝戦では3センチネルという尖った構成を使用していましたが、これはどういった意図だったのでしょうか?

インスモークサンジ:ほとんどのチームがやらない構成なので対策されづらいし、その上セットアップも多くて刺さりやすいという感じだったので、強かったですね。

——後半、少し相手に追いつかれる展開もありました。その中で最後勝ちきれた要因とは何でしょうか?

ursus:タイムアウト中にコーチが「絶対勝てるよ」と声を掛けてくれて、だいぶ緊張がやわらぎました。

▲焦る選手たちを落ち着けるかの如く、コーチによりタイムアウトが発動。選手たちは明確に、このタイムアウトが勝利の要因だと答えた

——チームメイトやコーチ、ご家族などに感謝を伝えたいと思う方がいれば、少し教えていただきたいと思います。

JackReacher:お母さんに感謝したいと思います。お母さん……eスポーツは嫌いなんですけど

(一同笑い)

JackReacher:ゲームそのものが嫌いなんですけど、それでも自分がプロゲーマーになりたいと言うと、それを信じていろいろな支援をしてくれて、ここまで来れたということがすごくうれしいです。

サプライズゲスト登場!
ステージに現れたのは、まさかの吉村大阪府知事


この日の夕方、『League of Legends』部門の決勝戦が行われる直前のこと、突如としてステージに登壇したのは、この大阪・関西万博開催の立役者である吉村洋文大阪府知事であった。

▲報道陣も直前に知らされた知事の登壇。ステージから降りた後、このあと実施される『LoL』部門の決勝戦を観戦していた

アンガールズ田中:大阪府は結構eスポーツにも力を入れていると聞いたんですけども。

吉村知事:「eスポーツといえば、大阪」と……呼ばれてませんが! そうなれるくらい力を入れたいと思って、今進めています。

アンガールズ田中:(STAGE:0は)ずっと東京で開催していたんですけども、万博でやるということで、こちらでやらせていただいて。凄い盛り上がってるんですよ、朝から。

吉村知事:ほんまですか?

アンガールズ田中:いやいやいや、めちゃめちゃ朝から何回も鳥肌が! 大阪で言うと「さぶいぼ出てもうて~」

吉村知事:さぶいぼね(笑)

▲「このSTAGE:0が、できればまた大阪でやってもらえたら……」と、知事自ら誘致活動。試合に出場する高校生たちにエールを送りつつ、大阪府全体でeスポーツを盛り上げていくことを宣言した(https://www.youtube.com/live/q09sCT_Pf1M?si=g56ISY_Wew0tIkCQ&t=31209

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今回のイベントで興味深かったのは、明らかに観客層が通常のeスポーツイベントとは異なっていた点だ。もちろん観客の中には、ゲームのルールを理解している人も多少いたが、その他大勢はeスポーツの試合を見ることすら初めてだという人も多かった。老若男女、本当に幅広い人々が観戦をしていた。

だからこそ、競技シーンならば当たり前の「どちらかのチームを応援する」という現象が、今回はあまりなかった。むしろ「どちらも頑張れ」という、温かい声援と拍手が印象的だった。一昔前の価値観からすると考えられないというか、先人たちの努力もあってここまで社会に受け入れられてきたのだと、特に肌で感じた大会であった。今後、日本の競技シーンやその芽となる学生たちにとって、よりいっそう活躍の舞台が広がっていくことを期待したいと思う。

なお関西に住む筆者としては、多くのゲーム系イベントが東京で開催される中、このようなイベントを大阪で開催してくれるのは非常に喜ばしい。「eスポーツといえば大阪」と言われるようになるまで、ぜひこの万博をてこにして頑張っていただきたい。


■関連リンク
STAGE:0(ステージゼロ)|全国高校対抗eスポーツ大会 公式サイト:
https://stage0.jp

STAGE:0(ステージゼロ) 公式X:
https://x.com/stage0_jp

配信アーカイブ:
https://www.youtube.com/live/q09sCT_Pf1M?si=T9SHUhK4YB-e8lHq


撮影:まいる
編集:いのかわゆう


【まいるプロフィール】
関西を拠点にする男性コスプレーヤー。イベントや大会によくコスプレ姿で出没する。2021年頃から『VALORANT』にハマり、競技シーンを追い続ける。現在の推しチームは「CREST GAMING」。

X:@mlunias(Photo by Subaru.F.)
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