【連載】岡安学の「eスポーツってなんだろう?」

日本のeスポーツと「著作権・IP」の法的課題 〜eスポーツと法律【岡安学の「eスポーツってなんだろう?」第6回 後編】

2022.4.6 岡安学
eスポーツにまつわる法律関係の経緯を振り返り、「何ができて、何ができないのか」を前・中・後編にわたって再確認していくコラム。最後の後編では、大会や配信でゲームタイトルを扱う際の許諾などに関わる「著作権法」についてのお話です。

引き続き、法律の解釈については、eスポーツの法律問題に詳しい西村あさひ法律事務所の松本祐揮弁護士に監修をお願いしております。

松本祐輝 弁護士


西村あさひ法律事務所に所属し、eスポーツの法規制に関する取り組みをはじめとして、eスポーツに精通し、案件を多く扱っている。


「著作権法」は企業とどう契約していくかが鍵


最後は「著作権法」です。これは今までに言及してきた景品表示法や風俗営業適正化法、刑法賭博罪とは違い、大会運営そのものやeスポーツ施設の運営に関わるものです。

現状ではゲーム大会を開催する場合、IPホルダー(主にゲームメーカー)の許諾が必要とされています。IPホルダーが提示している規約に則っていれば許諾の必要がないものもありますが、基本的には許諾が必要だと考える方が安全です。

ゲームの配信にしても基本的には許諾が必要です。任天堂は「ネットワークサービスにおける任天堂の著作物の利用に関するガイドライン」を策定し、個人配信で営利目的でないものに関しては投稿・配信を認めていますが、各メーカーも独自のガイドラインを制定し、許可をしています。


eスポーツ施設では、基本的にPCにゲームをインストールしておく状態にはできません。使用するたびダウンロードし、個人のアカウントを入れてプレイするのが基本となっています。しかしこれは手間と時間がかかるので、施設とメーカーによるガイドラインなどの対応を待ちたいところです。

事実、現在eスポーツカフェやネットカフェでは、基本無料タイトルを中心に、いくつかのタイトルがインストールされた状態で営業しています。今後、メーカーと包括的な契約をすることができるようになれば、さまざまなタイトルが対応できる可能性はあります。

最近は地方自治体などがゲーム大会を開催することも増えていますが、大会開催時のメーカー許諾について理解していないような大会も散見されています。本来なら、メーカーへの許諾や包括的に大会運営を認められている大会運営会社などに相談することが必要なわけです。

ちなみに、著作権は親告罪なので、著作物の所有者が認めれば、その著作物の利用は可能となります。これらは法的な解釈や改訂ではなく、著作物の所有者=ゲームメーカー側の対応次第とも言えそうです。


eスポーツのさらなる発展のためには法的な線引きが不可欠


日本でのeスポーツが盛り上がっていくことにより、ある種、規制やガイドラインによる決まりごとが増えてしまい、窮屈な印象になるかもしれません。しかし、実際にはJeSUのガイドラインのようなものが定められることで、「やれること」「やれないこと」がハッキリ線引きされ、誰にとっても活動しやすくなると言えます。

「グレーゾーン」のままでは、たまたま黙認され、たまたま指導が入らなかっただけで、いつ訴えられてもおかしくありません。なにより今後、安心してeスポーツ業務の展開ができなくなってしまいます。

そういう意味では、グレーだった高額賞金の提供についても明らかになりましたし、風俗営業適正化法の新たな定義はeスポーツ施設を運営する者、これから運営をしようと考えている者にとって、かなりの追い風となりました。

eスポーツ施設を運営したり、さまざまな賞金システムのeスポーツ大会を開催したりするために、法律の整備や解釈の是正は、今もなお行われています。これらのことをしっかりと把握し、できないことはやらずに健全な活動をすることが、よりeスポーツ大会や施設を運営しやすくするための法改正の後押しとなります。

eスポーツ関係者として最低限知っておくべき法律や守るべき内容については、しっかりと把握しておきましょう。

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