【連載】岡安学の「eスポーツってなんだろう?」

eスポーツで強くなるには「課金」が必要!? 【岡安学の「eスポーツってなんだろう?」 第5回】

2021.12.15 岡安学
eスポーツはスポーツを名乗る以上、プレイヤーやアスリートの腕前や技術力によって勝敗を決することが是とされます。多少の“運”要素も入る場合もありますが、これはフィジカルスポーツにおいてもあることなので、許容範囲と言えます。

野球で例えるなら、突風が吹きホームラン性の当たりが風に押し戻されて外野フライになったり、大差で勝っているのに雨脚が強くなって5回裏まで試合ができずコールドゲームで勝敗がつかなかったり、環境によって運で勝ち星を拾うことは多々あります。

eスポーツの場合、デジタルゲームなので何かしらの課金が必要な場合もあります。買い切りタイトルの場合は「ソフト代」、基本無料の場合は「キャラクター使用権」「アイテム課金」などです。

実際のスポーツで道具やユニフォームの購入にコストがかかると考えると妥当なのですが、お金をかけたことによって勝敗に大きく影響すると考える人たちは“良し”としないのではないでしょうか。

今回は、eスポーツタイトルにおける「課金」について、さまざまなタイトルを例に考えてみたいと思います。


課金要素ゼロな『モンストスタジアム』『Fortnite』


eスポーツタイトルでまったく課金要素がないものの代表格が『モンスターストライク』です。基本無料で、アイテム課金ありの『モンスターストライク』のeスポーツに、課金要素がないというのはかなり意外だと思います。

eスポーツ大会では『モンストスタジアム』が使用されている


というのも、「モンストグランプリ」や「全国都道府県eスポーツ選手権」などのeスポーツ大会で使用されているアプリは『モンストスタジアム』で、『モンスターストライク』の競技用別タイトルなためです。

『モンスターストライク』で登場するコラボモンスターを除外した★4以上のモンスターが最初から使えるようになっており、課金する要素がありません。

もちろん『モンスターストライク』の方は課金要素がありますが、こちらでいくらつぎ込んだとしても『モンストスタジアム』にはなんら影響せず、勝ち抜くためには技術力と練習量、攻略知識が必要となってきます。

「Google Playストア」にある『モンスターストライク』と『モンスターストライク スタジアム』。別アプリとして提供されています


小中高生を中心に人気が高いシューティングゲームの『フォートナイト』も基本無料です。課金要素はスキン(衣装)だけなので、プレイにはまったく影響がないと言えます。

このように、eスポーツタイトルには、基本的には初期投資以外に課金しなくてもプレイできるゲームが多く、課金しなくてもプレイや強さに影響しません。強さを決めるのは、あくまでプレイヤーのセンスと努力です。



「キャラ課金」タイプは初期キャラは安定した強さ、追加キャラはナーフされる可能性あり


格闘ゲームの『ストリートファイターV』の場合は、買い切りタイトルなので、最初にソフト代が必要となります。

ただ、これだと初期状態の16キャラクターしか使用できません。毎年シーズンが更新され、シーズンごとに追加されたキャラクターは「シーズンパス」もしくはキャラクター単体を購入する必要があります。

ストリートファイターV チャンピオンエディション』シーズン5の追加キャラクター「オロ」と「あきら」

一応、ゲームをプレイすることで稼げる「ファイトマネー」でも購入できますが、1キャラクターを獲得するには、かなりのプレイ時間を要します。それでも、最初からいるキャラクターだけでプレイするのであれば、追加課金をせずともプレイし続けることは可能です。

また、追加キャラクターだからといって必ずしも強いわけではなく、初期キャラクターにも強いキャラクターはたくさんいます。プロ選手が使用しているキャラクターだと、どぐら選手が使う「ベガ」、ガチくん選手が使う「ラシード」、マゴ選手が使う「キャミィ」や「かりん」などです。

MOBAの代表格である『リーグ・オブ・レジェンド』は基本無料のうえ、追加チャンピオンもゲームで稼げる通貨で購入できます。

こちらも『ストリートファイターV』と同様にチャンピオンを獲得するまでに要するプレイ時間は長めなので、100体以上のチャンピオン全部をそろえるのは難しいですが、人気チャンピオン数体であれば無課金でも現実的な範囲。

また、毎週フリーで使えるチャンピオンが入れ替わるので、始めたばかりの人もいろいろなチャンピオンを試せます。もちろん、早期に手に入れたい人は課金によって購入することができます。

そもそも、新キャラクターが初期状態でかなり強かったとしても、全体的なバランスを考えて調整が入り、ナーフ(弱体化)されることはあります。したがって、課金で「強いキャラクター」を手に入れることができても、その効果は永続的ではないわけです。


デジタルカードゲームは課金すればすぐに強くなれる


課金することで優位に立てるタイトルもあります。それは『シャドウバース』や『TEPPEN』などのカードゲームです。

RAGE Shadowverse 2021 Autumn」。きるか選手 VS 彼方選手のデッキ

基本的なカードセットはゲームを始める時に獲得できますが、さまざまデッキに対応できるだけの数と種類を持ち合わせてはいません。

ゲームをプレイし続けるとポイントが得られ、そのポイントでカードを購入することもできますが、当然それは気が遠くなるような作業です。

必死にポイントを溜めてカードを獲得しても、それ以上のペースで新カードが登場し、レアカードの出現確率を踏まえてもなかなかそろえられないのが現実です。そこで、課金してカードの厚みを増していく必要があるわけです。

よく、攻略サイトなどでオススメデッキなどが紹介されていますが、その通りのデッキを組もうとしてもカードが足りなくて結局デッキを組めない……なんて状態は多々ありますよね。持ち合わせたカードでプレイするだけでも十分に楽しむことはできますが、競技として勝ち抜くには圧倒的に不利になってしまいます。

前述の格闘ゲームなどが、永続的に使えるキャラクターに課金して習熟度を上げる必要があるのに対して、「このカードがなければ勝てない」という、単に所持していなければどうしようもない状況が生まれてしまうところ、そして確実に欲しいカードが手に入るわけではなく、ガチャ要素(ルートボックスとも言われる)があるのが、デジタルカードゲームへの課金が批判されがちなポイントです。


アップデートで課金要素がさらに高まった『クラッシュ・ロワイヤル』


ストラテジーゲームの『クラッシュ・ロワイヤル』も同様です。

ゲームをプレイするたびに獲得できるコインでカードを購入したり、対戦で勝利すると獲得できる宝箱からカードを得たりすることができます。

しかしカードにはレベルがあり、同じカードをレベル毎に設定された枚数を集めなくてはなりません。これまでは最大レベルが13で、ここまでカードを育てるにはかなりのプレイ時間を必要としました。

大会だけを考えれば、レベル9を超えたカードでもすべてレベル9に固定されるので、それほど大変なものではありません。ただ、レベル8以下はそのままのレベルで対戦するので、やはりカードのレベルが9にそろっていないプレイヤーには不利となります。

♬ひまわり@パンケーキ♬選手 VS JACK選手が戦ったときのデッキ

2021年10月にアップデートがあり、レベル14が開放。大会ではレベル11に固定される予定です。レベルの開放により新たな目標ができ、プレイするモチベーションアップにつながると言う側面がありますが、これから始めるプレイヤーにとっては、カード集めが厳しくなっただけとも言えます。

『クラッシュ・ロワイヤル』や『シャドウバース』などのカードバトル系がもともと好きでプレイし始めて、その後大会やeスポーツなどが盛り上がり参加するようになったのならば、自然とカードやデッキがそろっている状態だと思います。

ですが現状のeスポーツ大会を見て「楽しそう! やってみたい!!」と思った人には、カードをそろえなくてはならないことは大きな障壁となっています。


課金で強くなるゲームは生き残ることができるのか


カードゲーム『TEPPEN』は最初からeスポーツタイトルとして開発され、ローンチタイトルと同時に大会が開かれていましたが、当然、課金してカードをそろえていることが大会上位に入る最低条件のようになっていました。

そもそもeスポーツ選手を目指す場合、経験豊かなトップランカーに立ち向かわなくてはいけないのに、カードやデッキでも負けていたら勝負になりません。そのため、カードをそろえる=課金することは、戦うための大前提となります。

課金そのものが悪であるとは言いませんし、ゲームの運営を続けていく以上必要なものであることは間違いありません。ただ、eスポーツタイトルに限っては、勝敗に課金の有無が関わってしまうことで、新規プレイヤーが参戦しにくくなってしまっている事実もあります。

実際、新規で登場したeスポーツ向けのタイトルの多くが、課金による問題をクリアしきれず、プレイヤー人口を伸ばせずにいます。完全無料からスタートし、課金要素(特にガチャ要素)が少ないeスポーツタイトルの方が普及しているようです。

勝敗に影響せず、課金する手段として現時点でオススメなのはスキンの販売でしょう。ただ、その場合はタイトル自体に魅力があり、プレイヤー人口の多さが重要となってきます。そうなると新規タイトルでは導入しにくく、周知と効果が発揮されるまで時間がかかります。

画像は『Dota 2』。『Dota 2』や『LoL』は、世界大会の賞金にスキンやアイテムの収益を上乗せすることで、驚異的な賞金額を実現している

eスポーツが根付いていくには、ひとつのタイトルが継続的にプレイされることが必要です。そのために新規プレイヤーを増やしつつ、運営費をどう捻出するかが大きな課題となってきます。

動画配信のようにゲームタイトル自体に投げ銭をするシステムであったり、ゲーム内で表示される広告のスポンサーを付けることであったり、もしくはこれまでにない画期的なマネタイズを構築する必要があるのかもしれません。

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