【特集】eスポーツ入門

eスポーツ選手&プロゲーマーになるための方法 5選

2020.10.8 宮下英之
世界中でもてはやされているeスポーツ。ゲームメーカーはeスポーツタイトルとして自社のタイトルが人気を集めることを目指し、プレイヤーは数多の参加者の中から頂点を目指し、ファンは目当ての選手の活躍を祈りつつ共に喜び、そんな世界に向けて自社製品などをPRしたい協賛企業が集まっている。

その主役はもちろん、各eスポーツタイトルをプレイし、活躍する選手たちだ。

世界では「eスポーツアスリート」などとも呼ばれるが、日本では一般的に「ゲーマー」と呼ぶ方が馴染みやすい。賞金を稼いだり、YouTubeなどのストリーム配信による収入を得たり、スポンサーからの契約金や支援金をいただきながら、各種イベントやeスポーツ大会などで活躍し続けることが彼らの仕事と言える。

1日中ゲームをプレイすることができる、好きなゲームのことだけ考えていられる──そう聞くと、ゲーム好きにとっては夢のある職業に思えるだろう。

ただし、好きなことで生きていくのは、ジャンルや業界を問わず非常に厳しく、かつ苦しい道でもある。「ゲーム」が楽しいと思えなくなることもあるかもしれない。

今回はそんなeSports World読者にとっての憧れの職業であろう、「プロゲーマー」とはどんな職業なのか、そして、プロゲーマーになるためにどんな方法があるのかをご紹介しよう。

そもそも「プロゲーマー」の定義とは?


「プロゲーマー」という職業について、明確な定義を見つけることはできなかった。「プロ」を「収入を得る」と言い換えるならば、「主にゲームをプレイして収入を得ている人」すべてを指すと考えていいだろう。

ただしもちろん、厚生労働省による職業分類にもそのものズバリの言葉は存在しないし、ひとことでゲーマーといっても、FPS/TPSと格闘ゲームパズルゲームスポーツゲームでは、プレイするタイトルによって活動内容はまったく異なる。

参考:職業分類表 厚生労働省 平成24年3月改訂(https://jsite.mhlw.go.jp/kanagawa-roudoukyoku/var/rev0/0112/9664/06bunruihyou.pdf

産業構造が似ている職業として、競技人口がそれほど多くないマイナースポーツ競技を想像するとわかりやすい。マラソン選手、フィギュアスケート選手、モータースポーツ選手などなど、選手の立場、業界の収益構造などは重なる部分が多い。


具体的にこういったスポーツ競技とeスポーツを比較してみると、
  • プロアマ問わず参加できる大会があり、両者に優勝のチャンスがある
  • 収入のあるなしに関わらず日々練習を積み重ねている
  • 競技自体に利潤を追求できる収益構造がない=あまり儲からない
  • 場合によっては、別の仕事との兼業をしている
  • その競技単体だけでは食べていくことが難しい

もちろん、競技によっては必ずしも当てはまらない項目もあるかもしれないが、総じて共通点は多い。そして、どちらもそれほど“儲かる”業界ではない。五輪競技などに選ばれることで名誉は得られても、その競技自体で収益を上げられる競技は多くはない。アマチュアレスリングやソフトボール、空手やテコンドーなども似たようなイメージだろう。

しかし、eスポーツに限って言えば、これからはしっかり生活もできる、社会的にも立派な職業と見られるようになっていくだろう。最大の違いは、eスポーツが大企業がスポンサードする投資の対象になりつつあることだ。そして、マイナースポーツ競技と比べて、プレイヤーたちの発信能力が非常に高く、アマチュアも含めたプレイヤー数がかなり多いことも、理由として挙げられる。

では、実際にプロゲーマーたちは、どのようなかたちでスポンサードを受けているのだろうか。

レベル1 物品供給などのサポート

ハードウェア、ソフトウェア、もしくはゲームに直接関係のない商品などをもらい、ウェアなどにロゴを掲示するケース。商品をいただくということは、現金をもらっていることと広義では同様。れっきとしたプロゲーマーと呼べる。

ただし、生活に関わる現金部分がないため、プロと呼ぶにはややスポンサー側にとって都合がいい面もある。プロゲーマーとしてじっくり活動したいのなら、ゲーマーとして自分が提供できる価値(製品のPRやロゴの掲示など)以上のものを求められていないか、選手側も賢く吟味することが必要だろう。

(具体例)
  • ゲームをプレイするうえで必要なハードウェアなどを無償でいただいた

レベル2 eスポーツに関わる経費や活動費のみのサポート


大会への遠征費や、ゲストとしての出演料など、eスポーツに関わる対価部分をもらえるケース。自分自身の生活費までは支給されないというレベルだ。活動費を気にせずにゲームをプレイできることは嬉しいが、それ以外の副収入としてアルバイトなども必要になる。

いわば「副業」としてのプロゲーマーとも言えるが、契約内容によっては十分にプロとして活動していける。ここからプロゲーマーと呼べるレベルと考えてもいいかもしれない。

(具体例)
  • 大会参戦のための渡航費用や参加費などの実費を出してもらった
  • イベント出演の際に謝礼をいただいた

レベル3 eスポーツ活動および生活全般をサポート

ひとりの選手の生活すべてをまかなうタイプがこれだ。ゲーミングハウスで生活するようなケースもここに含まれるだろう。また、大手のスポンサーの場合、サッカーや野球のように年俸制で働くかたちもある。

ここまでくると、ゲームだけに集中できる環境と言える反面、結果(勝敗だけでなく広告塔としての価値など)も求められるようになり、長期的にサポートを受け続けるには相応の努力が必要になる。

ゲームで生きていく、という覚悟と、それが自分に向いている人でなければ、長期間続けていくことは難しいかもしれない。

これらを複合的に受けるケースや、複数のスポンサーから支援を受けるケースもあり、一概に「これがプロゲーマーのサポートの基準」というものは決めにくい。大事なのは、ゲームに打ち込める環境がどれくらい確保されているか。成績を上げるためではなく、プロゲーマーという身分を維持するためにゲーム以外のことをどれくらいしなければならないか、を見極めることだ。

(具体例)
  • 日々ゲームをプレイしながら、給与というかたちで固定金額をもらっている
  • ゲーミングハウスに入居し、給与をもらいながらゲーム活動を行う
  • シーズン中はゲームに打ち込み、その期間の給与などをもらっている

「プロゲーマー」になるための方法とは?


では、そんな夢のプロゲーマーになるためには、どのような努力をすればいいのか。その方法はひとつだけではなく、競技によってさまざまな道が考えられる。いくつか挙げてみよう。

とにかく強くなって大会などで活躍する

競技という見方をすれば、最もシンプルで最も強力なプロへの道は「強くなる」ことだ。無名な選手が大会などで実力を発揮して突出して注目を集めることで、スカウトされたケースは非常に多い。

ウメハラ選手はマッドキャッツ、レッドブル、Cygamesといったさまざまな企業からのスポンサードを実力で勝ち取ってきた


たとえば、格闘ゲームプレイヤーのウメハラ選手、ふ〜ど選手などはその代表例。いずれも若い頃からゲームをやりこみ、実力でのしあがってきた選手たちだ。また、竹内ジョン選手、りゅうせい選手といった若手も、大会での実績を重ねることでチームに所属できた例だろう。

プロゲーマーへの道が示された大会で活躍する


上と似ているが、こちらは大会で優勝することでプロゲーマーへの道が用意されるというもの。『ぷよぷよ eスポーツ』や『パズル&ドラゴンズ』、『鉄拳7』『ストリートファイターV アーケードエディション』などの大会で行われている。

JeSUがプロライセンスを発行しているタイトルでは、大会で好成績を収めるとライセンス取得の権利が与えられるものもある


好成績を収めることで、プロゲーマーとして賞金などを獲得するための前提条件とされている、JeSUのプロライセンスへの道が開ける。年齢制限などもあるものの、プロになれる可能性が明文化されているため、これもプロへの道としては比較的近道だ。

世界最大のeスポーツタイトルとして知られる『リーグ・オブ・レジェンド』では、以前は2部リーグ制で入れ替えなども行われ、若手のチャンスが与えられていたが、現在は若手有望株を集めてプロチームがスカウトする形式の「スカウティンググラウンド」などが行われている。

プロゲーマー養成過程のある学校に通う

最近では、「eスポーツ専攻」を設ける専門学校なども出てきている。そこで学べるのは、eスポーツの仕組みや業界の構造などのほか、プレイヤーとしての心得やイベント主催者側、チーム運営側など、非常に多岐にわたる。

2020年はV3 Esportsに所属し、世界大会への切符を勝ち取ったRaina選手も専門学校の出身(https://www.anime.ac.jp/team-e-sports/support.html

単にゲームがうまくなる方法を学ぶだけではないのは、たとえプロゲーマーになれたとしても、世界的に見ると長く務められる仕事ではないからだ。お隣の韓国で言えば、20代半ばともなればベテランと呼ばれ、現役引退する選手も少なくない。そうなった際に、次の仕事としてどのような道が考えられるかもカリキュラムなどに含まれている。いわゆる「セカンドキャリア」と呼ばれるものだ。

純粋にゲーマーを目指す人のなかには、ゲームだけをしていたい、ゲームをとりまくさまざまな業務は行いたくないと考える人もいるだろう。しかし、いま私たちが目にしている「プロゲーマー」と呼ばれる人たちは、eスポーツという業界が構築される前から、自らの手でプロゲーマーという立場を勝ち取ってきた先駆者だ。彼らと同じやり方で、今後同じ場所に立てるかどうかは誰にもわからない。

その点で、eスポーツの専門学校ならば、自分一人の努力だけは経験できないことを数年かけて学ぶことができる。ニーズも増えてきており、今後も拡大していきそうだ。

【関連記事】いま人気の「eスポーツ専門学校」とは? 高卒からプロゲーマーは目指せる?

ゲーミングチームのメンバー募集に応募する


プロチームの公式サイトやTwitterなどで、選手募集の告知が出る場合もある(https://www.scarz.net/codm/9590


特にFPS/TPSやMOBAのような団体戦のeスポーツタイトルでは、リーグ戦が始まる前に公式サイトなどで「メンバー募集」が行われることがある。プロゲーマーは常に勝利を目指すことが基本中の基本。ドロップアウトしたり、強いチームに移籍するといったことも日常茶飯事だ。

そして、欠員が出ればメンバーの補充が必要になる。その際に、すでに活躍している選手だけでなく、無名の選手も含めて大々的に募集がかかることがある。

とはいえ、このケースもやはり実力が第一。比較されるのはもしかしたら現役のプロゲーマーかもしれない。ただし、ゲームが強いことだけが評価の基準になるかは、チームの運営方針などによっても異なる。どんなチームが自分に合っているのか、自分の強みを活かせるのか、どんな環境かをしっかり見極めて挑戦するべきだろう。

自分で自分を売り込む

スポンサーやチームに対して自分自身を売り込み認めてもらう、というのもプロゲーマーになるための方法のひとつだ。そのためには、自分の魅力や価値をしっかり把握し、相手に伝えなければならない。

「社会人プロゲーマー」として努力を積み重ねてきたTeam Liquidのネモ選手(https://artist.amuse.co.jp/artist/nemo/


しかし、この方法がいわゆる「プロになる」ためには最も古典的で誰もが実現可能な方法とも言える。前述したアマチュアスポーツの選手などは、まさにこういった活動の積み重ねで、活動を継続してきた人が多い。

そして、eスポーツ=ゲームの世界でもこのような方法で活動継続を勝ち取ってきた選手はたくさんいる。有名なのは、社会人プロゲーマーとしてALIENWAREのスポンサードを受けて第一線で活躍しているネモ選手だろう。現在も北米のTeam Liquidに所属しつつ、サラリーマンとしての業務も行っている。

まとめ


eスポーツ熱の高まりとともに、プロゲーマーの存在感は確実に大きくなってきている。その一方で、「eスポーツ」という熱狂に浮かされて、予算や展望がないままにプロゲーマーとして活動したり、チームを設立している例もあると聞く。

しかし、新聞などの論調や、イベントの取材を通して感じるのは、以前のように「ゲーム」という言葉に負のイメージや抵抗を抱いている人は減っているということだ。

これからeスポーツに夢を持ち、一生懸命練習していく若いeスポーツ選手候補の読者にとっては間違いなく追い風となっている。単に収入が得られたりモノがもらえるということだけに一喜一憂せず、自らの努力と才能を認めてもらいながら、最大限相手に貢献できるような姿勢を持って、長く続けられるeスポーツ選手を目指してほしい。


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