【インタビュー】シャドバプロリーグ1年半ぶり復活! ふぇぐ「前作の全盛期より盛り上がっている」——プロ4人に聞いた空白期間の過ごし方とは

- プロが注目の新ルール・新システム——ミル選手「インフルエンサーバトルはプロ選手の新たな一面が見られる」
- ターン中の持ち時間の減少はプロシーンにどう影響するか——Era53選手「進化モーション中のタイマー停止で思考時間を確保する」
- プロリーグ休止中の1年間をどう過ごしたか——休止中の金銭面についても言及
- シャドバビヨンドの異常なバズりについて——ふぇぐ選手「前作の全盛期よりも盛り上がっている」
ついに1年半ぶりの復活を遂げた「RAGE Shadowverse Pro League」(以下、シャドバプロリーグ)。開幕戦の当日、なんと各チームリーダー4名によるコラボインタビューが実現した。
今回のプロリーグには、いくつか変更点がある。まず採用タイトルが『Shadowverse: Worlds Beyond(以下、シャドウバース ワールズビヨンド)』になったことで、ゲームシステムに変更(「超進化」「エクストラPP」)があり、プロたちはそれらに適応していくことになる。
また、プロリーグ自体の仕組みにも変更があり、従来の「BO3」「BO5」形式から「BO1で対戦するチームBO5」という、短期決戦ながらも、読み合いと緊張感が増した形式に変更されている。

さらには、プロが試合中にアドバイスをして「インフルエンサーを勝たせる」という「インフルエンサーバトル」なるエンタメ要素(とはいえ勝敗はリーグ戦の成績に反映されるのでガチな戦いではある)も追加された。
これらの変更点について、プロたちはどう考えているのか。
また、何よりも筆者が質問したいのが「1年半のリーグ休止」についてだ。プロゲーマーにとって、1年半のリーグの休止というのは致命的であるように思う。
「この1年間どう過ごしたか」といった空白の期間についても聞いてみた。

──1年半ぶりに復活したシャドバプロリーグで、皆さんが最も注目している変更点やシステムを教えてください。

ミル:「インフルエンサーバトル」に注目しています。プロ同士の戦いも魅力ですが、インフルエンサーさん特有の華やかな戦いは、僕自身としても楽しみであり、プロとインフルエンサーさんとの関係性が垣間見えるのは、視聴者さんにとっても面白いポイントでしょう。
僕たちとインフルエンサーさんとの交流が見られるのでプロリーグがより多くの視聴者に楽しんでいただけるような、間口が広がったコンテンツに進化したんじゃないかなと。
特に、プロが「試合途中にアドバイスできる」というルールが面白いです。僕たちプロは通常の試合だと、無言で考えている姿が映っているだけなので「インフルエンサーバトル」は、プロの考えや僕たちの違った一面を見ていただける機会にもなると思います。

Era53:勝敗の決め方が、昔のプロリーグと近いのがすごくいいです。
休止直前の「プロツアー」(休止直前はプロリーグではなく、名称を「プロツアー」として、対戦形式にも変更があった)のルールよりも、チーム戦の要素が強く、見ていて分かりやすいでしょう。
「プロツアー」のころは個人戦が中心で、チームを代表して選ばれた選手が各グループに分かれて「BO3」や「BO5」で対戦していました。しかし、今回は「BO1で対戦するチームBO5」形式になり、チームvsチームでひとりずつが戦い、合計3勝したほうのチームが勝ちというのはすごく分かりやすいです。
『シャドウバース ワールズビヨンド』を始めたての人でも見やすく、楽しめるのではないかと思います。

あぐのむ:今回のプロリーグのルールが面白いと感じました。
変則的なBO5でして、まず事前に「1戦目~3戦目」に使用するデッキを3つ申告して、3戦目までで決着がつかなかった場合、追加で「4戦目~5戦目」に使うデッキをふたつ申告します。
ただし追加申告の際「1戦目~3戦目」で勝ったデッキは選べません。3戦目終了時で「どのデッキが残ったか」によって、読み合いが発生します。
分かりやすい例では「守護ビショップ」は「リノセウスエルフ」に対して有利です。ただ「リノセウスエルフ」自体は強力なデッキなので、出し惜しみをせずに第1試合~第3試合のどこかで(「守護ビショップ」を恐れずに)出すのがセオリーです。
ただ「リノセウスエルフ」が3戦目までに勝ち抜けていない場合「4戦目~5戦目」でも使用できるので、相手チームは「リノセウスエルフ」を警戒して「守護ビショップ」を申告に加えることを検討しなければなりません。
このように、どのデッキをどのタイミングで出していくかが鍵となるルール設計は、見どころのひとつになっています。

ふぇぐ:みんなに全部言われちゃった(笑)。
僕はゲーム自体のシステムの変更について話そうかなと。「進化」の仕様と「エクストラPP」について。
『シャドウバース』では、進化時の攻撃力/体力の上昇値がフォロワーによってさまざまでしたが、『シャドウバース ワールズビヨンド』では上昇値が統一(進化時は+2/2、超進化時は+3/3)されました。これがプロとしても注目のポイントであり、観戦している初心者にとっても分かりやすいのかなと。
また『シャドウバース』は「先攻が強いゲーム」だと言われがちでしたが、今回の後攻はエクストラPPと先にもらえる進化権のおかげで「進化時の効果が強いフォロワーの多いデッキ」は後攻も強い。デッキによって、先攻でも後攻でも戦えるというのが、より分かりやすくなったと思います。
──1ターンの時間が短くなった(前作では1ターンの持ち時間は90秒だったが、今作から進化可能ターン以前は60秒、以降は75秒になっている)のも、皆さんのプレーには影響していますか。
ふぇぐ:そうですね。ただ、進化モーション中に制限時間が減らなくなった変更が大きいです。
ミル:あれはマジでデカい(笑)。
Era53:プロは時間ギリギリまで最善手を思考するので、前回の仕様だと90秒のうち80秒まで使ってしまうと、進化したあとに「攻撃が間に合わない」になることがあった。一方『シャドウバース ワールズビヨンド』では、残り5秒くらいで進化を切っても最後まで間に合います。
ふぇぐ:(進化中に)何もできずに「時間だけ経つ」ではなくなったのがいい変更だよね。今までは進化モーション中に「こっちは急いでるのに!」という場面があった。時間切れはプロとして一番やってはいけないこと。今は進化を切ってしまえばいったん時間が止まるので、メンタル的にもありがたいです。
ミル:落ち着ける時間が生まれるのもいいよね。

Era53:(ギリギリまで考えて)「100点のプレー」をしようとして、時間切れで「0点のプレー」になってしまうことがなくなりました。
また、いったん超進化を使っておいて「思考時間を確保する」ケースもあります。例えばリノセウスエルフの場合、《ベビーカーバンクル》のような、絶対に超進化を使うカードに対して進化権を使っておいて、進化モーション中の時間経過が止まっている間に打点を計算をする場面もあります。
時間変更の件でもうひとつあって、ゲーム開始時の手札交換の時間が60秒から30秒になったのは、大きな変更です。僕は手札交換に60秒くらい時間を使っていたので。
時間が短くなったことで、事前準備の重要性が増しましたね。事前に手札交換のパターンを考えておかないと間に合わないです。
あぐのむ:初期手札が4枚になったので、組み合わせのパターンが増えて、難しいシーンもあります。制限時間が短くなったことも相まって、手札交換の面白さにさらに厚みが出たので、いい変更だと思います。
──約1年半のプロリーグ休止期間中は、どのように過ごされてきましたか。
ふぇぐ:たしかにプロリーグの活動は1年半ほどありませんでしたが、この間も『シャドウバース』での地方大会や「最強チーム決定戦 powered by RAGE」は月に1回あったんです。全チームのプロたちは、その地方大会に参加していました。
よって『シャドウバース』自体はずっとプレーしていました。
「(シャドウバース ワールズビヨンド)早くリリースされてくれ!」と思うことはもちろんありましたが、プロとしてゲームの活動はしていたので、1年半の休止期間があったという印象はないですね。

あぐのむ:僕も地方大会にも出ていましたが『シャドウバース』以外のゲームもやるようにしていました。
『シャドウバース ワールズビヨンド』にリニューアルするにあたって、ある程度はシステムも変更されるのが分かっていました。どのようなルールや環境でも適応できるように、さまざまなゲームをプレーしておくことが、プロリーグ再開時の役に立つと考えたからです。
実際、これまでの『シャドウバース』の大会では、BO3やBO5のルールが一般的だったので(2デッキ使用の)今回の「BO1」制へのルール変更に混乱した人もいるかもしれません。ただ、僕は他ゲームでの経験があったので「他のゲームではBO1が一般的だから」と、すんなり適応できました。
Era53:僕は(プロリーグが休止した後の)「最強チーム決定戦」のタイミングで、Atom選手が新加入したので、お互いがどんなプレーヤーか把握するためにも、大会に向けて本気で調整をしました。お互いのことを知りつつ、チーム戦でしっかり勝つというスキル面を磨けたと思います。
自分自身とAtom選手のプレースタイルや得意なデッキを把握できたので、今後のプロリーグにおいて役割分担がしやすくなったんじゃないかと。お互いのタイプを正確に把握できたのは、この1年間での学びです。
また、『シャドウバース』自体にも、過去のカードと環境で戦う「タイムスリップローテーション」が実施されていたので(僕たちもユーザーも)この期間も『シャドウバース』を楽しめていたと思います。

ミル:僕は休止期間に『シャドウバース』以外のプロシーンも見るようにしていました。「いま盛り上がっているゲームのプロはどんな活動をしているのか」といった観点で見ていました。
また、活動を休止する期間が与えられたことによって、自分のことを客観的に見る機会にもなりました。(配信活動へのスタンスなど)自分たちの取り組みについて、考えられたのは、自分たち『シャドウバース』のプロにとって成長の機会になったと思います。
例えば、最近、盛り上がっている『ストリートファイター6』のプロの方は活動的な方が多くて、配信を頑張っていらっしゃるから、真似できるところは真似していきたいと感じました。
──答えづらい質問かと思いますが、プロリーグ休止の間、収入面での不安などはなかったのでしょうか。

ふぇぐ:僕は貯金があるので(笑)。
一同:(笑)。
ふぇぐ:周りのみんなは頑張っていたけど、僕はガチで休んでた(笑)。
いまは『シャドウバース ワールズビヨンド』のリリースでシーンが盛り上がっていくのをビンビンに感じているので、待っていた甲斐があったなと。
あぐのむ:うちのチームは、チーム自体の個性でもありますが、全員がフルタイムで働きながら活動していました。
ミル:僕はチームのサポートも受けながら過ごしていました。
Era53:僕もチームがサポートしてくれたので、その分『シャドウバース』に専念できました。チームのサポートを受けた分『シャドウバース ワールズビヨンド』が始まった時にしっかり勝てるように、集まって練習をしていました。
──最後に『シャドウバース ワールズビヨンド』について、現状の盛り上がりは想像されていましたか。
あぐのむ:リリース直後は盛り上がるとは思っていましたが、想像以上です。ストリーマーさんたちの『シャドウバース ワールズビヨンド』の配信の同接が伸びているだけでなく、僕たちシャドバプロの配信の同接もありえないぐらい増えています。プロにも注目してもらえているというのがすごく伝わってきてありがたいです。
ふぇぐ:『シャドウバース』の全盛期よりも盛り上がっている。配信の同接が1万人を超えたのは、世界大会ぶりなんじゃないかな。個人大会やオンラインでの地方大会もあるので『シャドウバース ワールズビヨンド』からハマり始めた方も、気軽に参加してもらえるとうれしいです。
Era53:「今の盛り上がりが続いてほしい」というのが、切なる願いですね。言い方は悪いですが、以前の『シャドウバース』の勢いが停滞してきた中での、今回の『シャドウバース ワールズビヨンド』の盛り上がりは本当にすごいです。この盛り上がりを維持できるよう、僕たちも頑張らないといけないと感じています。
ミル:『シャドウバース ワールズビヨンド』めっちゃ面白いんで、まだやってない方はぜひ!
——ありがとうござました!

ふぇぐ選手は2年前のインタビュー以来で、相変わらずの自由奔放っぷりに和んだ。開幕戦終了後のお疲れのところで、インタビューに応じてくださった4名に改めて感謝。「プロリーグ休止中の話」や「収入面の話」など、答えづらい質問にも真摯に答えてくださったのは、もう一生、頭が上がらない。
空前絶後のバズりを見せているシャドバの現状に、プロとしての強い使命感が芽生えているのを、4人から感じた。この「1年半」という期間は、確実にシャドバのプロたちを、ゲーマーとしても人間としても成長させた。今回のプロリーグは盛り上がりそうだ。
まさに「2年後に!!! シャボンディ諸島で!!!」
■関連リンク
Shadowverse: Worlds Beyond 公式:
https://shadowverse-wb.com/ja/
Shadowverse: Worlds Beyond 公式X:
https://x.com/shadowverse_jp
撮影:小川翔太
編集:いのかわゆう
今回のプロリーグには、いくつか変更点がある。まず採用タイトルが『Shadowverse: Worlds Beyond(以下、シャドウバース ワールズビヨンド)』になったことで、ゲームシステムに変更(「超進化」「エクストラPP」)があり、プロたちはそれらに適応していくことになる。
また、プロリーグ自体の仕組みにも変更があり、従来の「BO3」「BO5」形式から「BO1で対戦するチームBO5」という、短期決戦ながらも、読み合いと緊張感が増した形式に変更されている。
超進化とは
『シャドウバース ワールズビヨンド』で追加された、通常の「進化」よりも強力な進化システム。後攻6ターン目、先攻7ターン目から使用可能になり、SEP(超進化ポイント)を消費してフォロワーを「超進化」させる。超進化は、攻撃力と体力が3上昇し、自分のターン中はダメージを受けず、能力によって破壊されない効果を得る。
『シャドウバース ワールズビヨンド』で追加された、通常の「進化」よりも強力な進化システム。後攻6ターン目、先攻7ターン目から使用可能になり、SEP(超進化ポイント)を消費してフォロワーを「超進化」させる。超進化は、攻撃力と体力が3上昇し、自分のターン中はダメージを受けず、能力によって破壊されない効果を得る。
エクストラPPとは
『シャドウバース ワールズビヨンド』で追加された、後攻プレーヤーが使用できる特別なPP。バトル中に2回まで使用でき、5ターン目までにひとつ、6ターン目以降にひとつ与えられる。先攻と後攻のバランスを調整するためのシステムであり、強力なカードをより早いターンにプレー、相手よりも先にフィニッシャーを出すなどが可能。
『シャドウバース ワールズビヨンド』で追加された、後攻プレーヤーが使用できる特別なPP。バトル中に2回まで使用でき、5ターン目までにひとつ、6ターン目以降にひとつ与えられる。先攻と後攻のバランスを調整するためのシステムであり、強力なカードをより早いターンにプレー、相手よりも先にフィニッシャーを出すなどが可能。

▲開幕戦のインフルエンサーバトルでは、RaMu氏、ゆゆうた氏、たいじ氏、みゃこ氏が参戦
さらには、プロが試合中にアドバイスをして「インフルエンサーを勝たせる」という「インフルエンサーバトル」なるエンタメ要素(とはいえ勝敗はリーグ戦の成績に反映されるのでガチな戦いではある)も追加された。
これらの変更点について、プロたちはどう考えているのか。
また、何よりも筆者が質問したいのが「1年半のリーグ休止」についてだ。プロゲーマーにとって、1年半のリーグの休止というのは致命的であるように思う。
「この1年間どう過ごしたか」といった空白の期間についても聞いてみた。

▲写真左から:DetonatioN FocusMe ミル選手 、横浜F・マリノス あぐのむ選手、よしもとゲーミング ふぇぐ選手、レバンガ北海道 Era53(えらふぃふてぃーすりー)選手
プロが注目の新ルール・新システム——ミル選手「インフルエンサーバトルはプロ選手の新たな一面が見られる」
──1年半ぶりに復活したシャドバプロリーグで、皆さんが最も注目している変更点やシステムを教えてください。

ミル:「インフルエンサーバトル」に注目しています。プロ同士の戦いも魅力ですが、インフルエンサーさん特有の華やかな戦いは、僕自身としても楽しみであり、プロとインフルエンサーさんとの関係性が垣間見えるのは、視聴者さんにとっても面白いポイントでしょう。
僕たちとインフルエンサーさんとの交流が見られるのでプロリーグがより多くの視聴者に楽しんでいただけるような、間口が広がったコンテンツに進化したんじゃないかなと。
特に、プロが「試合途中にアドバイスできる」というルールが面白いです。僕たちプロは通常の試合だと、無言で考えている姿が映っているだけなので「インフルエンサーバトル」は、プロの考えや僕たちの違った一面を見ていただける機会にもなると思います。

Era53:勝敗の決め方が、昔のプロリーグと近いのがすごくいいです。
休止直前の「プロツアー」(休止直前はプロリーグではなく、名称を「プロツアー」として、対戦形式にも変更があった)のルールよりも、チーム戦の要素が強く、見ていて分かりやすいでしょう。
「プロツアー」のころは個人戦が中心で、チームを代表して選ばれた選手が各グループに分かれて「BO3」や「BO5」で対戦していました。しかし、今回は「BO1で対戦するチームBO5」形式になり、チームvsチームでひとりずつが戦い、合計3勝したほうのチームが勝ちというのはすごく分かりやすいです。
『シャドウバース ワールズビヨンド』を始めたての人でも見やすく、楽しめるのではないかと思います。

あぐのむ:今回のプロリーグのルールが面白いと感じました。
変則的なBO5でして、まず事前に「1戦目~3戦目」に使用するデッキを3つ申告して、3戦目までで決着がつかなかった場合、追加で「4戦目~5戦目」に使うデッキをふたつ申告します。
ただし追加申告の際「1戦目~3戦目」で勝ったデッキは選べません。3戦目終了時で「どのデッキが残ったか」によって、読み合いが発生します。
分かりやすい例では「守護ビショップ」は「リノセウスエルフ」に対して有利です。ただ「リノセウスエルフ」自体は強力なデッキなので、出し惜しみをせずに第1試合~第3試合のどこかで(「守護ビショップ」を恐れずに)出すのがセオリーです。
ただ「リノセウスエルフ」が3戦目までに勝ち抜けていない場合「4戦目~5戦目」でも使用できるので、相手チームは「リノセウスエルフ」を警戒して「守護ビショップ」を申告に加えることを検討しなければなりません。
このように、どのデッキをどのタイミングで出していくかが鍵となるルール設計は、見どころのひとつになっています。

ふぇぐ:みんなに全部言われちゃった(笑)。
僕はゲーム自体のシステムの変更について話そうかなと。「進化」の仕様と「エクストラPP」について。
『シャドウバース』では、進化時の攻撃力/体力の上昇値がフォロワーによってさまざまでしたが、『シャドウバース ワールズビヨンド』では上昇値が統一(進化時は+2/2、超進化時は+3/3)されました。これがプロとしても注目のポイントであり、観戦している初心者にとっても分かりやすいのかなと。
また『シャドウバース』は「先攻が強いゲーム」だと言われがちでしたが、今回の後攻はエクストラPPと先にもらえる進化権のおかげで「進化時の効果が強いフォロワーの多いデッキ」は後攻も強い。デッキによって、先攻でも後攻でも戦えるというのが、より分かりやすくなったと思います。
ターン中の持ち時間の減少はプロシーンにどう影響するか——Era53選手「進化モーション中のタイマー停止で思考時間を確保する」
──1ターンの時間が短くなった(前作では1ターンの持ち時間は90秒だったが、今作から進化可能ターン以前は60秒、以降は75秒になっている)のも、皆さんのプレーには影響していますか。
ふぇぐ:そうですね。ただ、進化モーション中に制限時間が減らなくなった変更が大きいです。
ミル:あれはマジでデカい(笑)。
Era53:プロは時間ギリギリまで最善手を思考するので、前回の仕様だと90秒のうち80秒まで使ってしまうと、進化したあとに「攻撃が間に合わない」になることがあった。一方『シャドウバース ワールズビヨンド』では、残り5秒くらいで進化を切っても最後まで間に合います。
ふぇぐ:(進化中に)何もできずに「時間だけ経つ」ではなくなったのがいい変更だよね。今までは進化モーション中に「こっちは急いでるのに!」という場面があった。時間切れはプロとして一番やってはいけないこと。今は進化を切ってしまえばいったん時間が止まるので、メンタル的にもありがたいです。
ミル:落ち着ける時間が生まれるのもいいよね。

Era53:(ギリギリまで考えて)「100点のプレー」をしようとして、時間切れで「0点のプレー」になってしまうことがなくなりました。
また、いったん超進化を使っておいて「思考時間を確保する」ケースもあります。例えばリノセウスエルフの場合、《ベビーカーバンクル》のような、絶対に超進化を使うカードに対して進化権を使っておいて、進化モーション中の時間経過が止まっている間に打点を計算をする場面もあります。
時間変更の件でもうひとつあって、ゲーム開始時の手札交換の時間が60秒から30秒になったのは、大きな変更です。僕は手札交換に60秒くらい時間を使っていたので。
時間が短くなったことで、事前準備の重要性が増しましたね。事前に手札交換のパターンを考えておかないと間に合わないです。
あぐのむ:初期手札が4枚になったので、組み合わせのパターンが増えて、難しいシーンもあります。制限時間が短くなったことも相まって、手札交換の面白さにさらに厚みが出たので、いい変更だと思います。
プロリーグ休止中の1年間をどう過ごしたか——休止中の金銭面についても言及
──約1年半のプロリーグ休止期間中は、どのように過ごされてきましたか。
ふぇぐ:たしかにプロリーグの活動は1年半ほどありませんでしたが、この間も『シャドウバース』での地方大会や「最強チーム決定戦 powered by RAGE」は月に1回あったんです。全チームのプロたちは、その地方大会に参加していました。
よって『シャドウバース』自体はずっとプレーしていました。
「(シャドウバース ワールズビヨンド)早くリリースされてくれ!」と思うことはもちろんありましたが、プロとしてゲームの活動はしていたので、1年半の休止期間があったという印象はないですね。

あぐのむ:僕も地方大会にも出ていましたが『シャドウバース』以外のゲームもやるようにしていました。
『シャドウバース ワールズビヨンド』にリニューアルするにあたって、ある程度はシステムも変更されるのが分かっていました。どのようなルールや環境でも適応できるように、さまざまなゲームをプレーしておくことが、プロリーグ再開時の役に立つと考えたからです。
実際、これまでの『シャドウバース』の大会では、BO3やBO5のルールが一般的だったので(2デッキ使用の)今回の「BO1」制へのルール変更に混乱した人もいるかもしれません。ただ、僕は他ゲームでの経験があったので「他のゲームではBO1が一般的だから」と、すんなり適応できました。
Era53:僕は(プロリーグが休止した後の)「最強チーム決定戦」のタイミングで、Atom選手が新加入したので、お互いがどんなプレーヤーか把握するためにも、大会に向けて本気で調整をしました。お互いのことを知りつつ、チーム戦でしっかり勝つというスキル面を磨けたと思います。
自分自身とAtom選手のプレースタイルや得意なデッキを把握できたので、今後のプロリーグにおいて役割分担がしやすくなったんじゃないかと。お互いのタイプを正確に把握できたのは、この1年間での学びです。
また、『シャドウバース』自体にも、過去のカードと環境で戦う「タイムスリップローテーション」が実施されていたので(僕たちもユーザーも)この期間も『シャドウバース』を楽しめていたと思います。

ミル:僕は休止期間に『シャドウバース』以外のプロシーンも見るようにしていました。「いま盛り上がっているゲームのプロはどんな活動をしているのか」といった観点で見ていました。
また、活動を休止する期間が与えられたことによって、自分のことを客観的に見る機会にもなりました。(配信活動へのスタンスなど)自分たちの取り組みについて、考えられたのは、自分たち『シャドウバース』のプロにとって成長の機会になったと思います。
例えば、最近、盛り上がっている『ストリートファイター6』のプロの方は活動的な方が多くて、配信を頑張っていらっしゃるから、真似できるところは真似していきたいと感じました。
──答えづらい質問かと思いますが、プロリーグ休止の間、収入面での不安などはなかったのでしょうか。

ふぇぐ:僕は貯金があるので(笑)。
一同:(笑)。
ふぇぐ:周りのみんなは頑張っていたけど、僕はガチで休んでた(笑)。
いまは『シャドウバース ワールズビヨンド』のリリースでシーンが盛り上がっていくのをビンビンに感じているので、待っていた甲斐があったなと。
あぐのむ:うちのチームは、チーム自体の個性でもありますが、全員がフルタイムで働きながら活動していました。
ミル:僕はチームのサポートも受けながら過ごしていました。
Era53:僕もチームがサポートしてくれたので、その分『シャドウバース』に専念できました。チームのサポートを受けた分『シャドウバース ワールズビヨンド』が始まった時にしっかり勝てるように、集まって練習をしていました。
シャドバビヨンドの異常なバズりについて——ふぇぐ選手「前作の全盛期よりも盛り上がっている」
──最後に『シャドウバース ワールズビヨンド』について、現状の盛り上がりは想像されていましたか。
あぐのむ:リリース直後は盛り上がるとは思っていましたが、想像以上です。ストリーマーさんたちの『シャドウバース ワールズビヨンド』の配信の同接が伸びているだけでなく、僕たちシャドバプロの配信の同接もありえないぐらい増えています。プロにも注目してもらえているというのがすごく伝わってきてありがたいです。
ふぇぐ:『シャドウバース』の全盛期よりも盛り上がっている。配信の同接が1万人を超えたのは、世界大会ぶりなんじゃないかな。個人大会やオンラインでの地方大会もあるので『シャドウバース ワールズビヨンド』からハマり始めた方も、気軽に参加してもらえるとうれしいです。
Era53:「今の盛り上がりが続いてほしい」というのが、切なる願いですね。言い方は悪いですが、以前の『シャドウバース』の勢いが停滞してきた中での、今回の『シャドウバース ワールズビヨンド』の盛り上がりは本当にすごいです。この盛り上がりを維持できるよう、僕たちも頑張らないといけないと感じています。
ミル:『シャドウバース ワールズビヨンド』めっちゃ面白いんで、まだやってない方はぜひ!
——ありがとうござました!

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ふぇぐ選手は2年前のインタビュー以来で、相変わらずの自由奔放っぷりに和んだ。開幕戦終了後のお疲れのところで、インタビューに応じてくださった4名に改めて感謝。「プロリーグ休止中の話」や「収入面の話」など、答えづらい質問にも真摯に答えてくださったのは、もう一生、頭が上がらない。
空前絶後のバズりを見せているシャドバの現状に、プロとしての強い使命感が芽生えているのを、4人から感じた。この「1年半」という期間は、確実にシャドバのプロたちを、ゲーマーとしても人間としても成長させた。今回のプロリーグは盛り上がりそうだ。
まさに「2年後に!!! シャボンディ諸島で!!!」
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https://x.com/shadowverse_jp
撮影:小川翔太
編集:いのかわゆう
【OGAプロフィール】

OGA(小川翔太)。SEとキャリアコンサルタントを経て、eスポーツジャーナリストに。競技プレイヤーとして「MTG(マジック:ザ・ギャザリング)」の世界大会(プロツアーホノルル2016)出場経験あり。プレイヤー視点、メディア視点、両方の側面から情報発信します。
X:https://x.com/oga_5648

OGA(小川翔太)。SEとキャリアコンサルタントを経て、eスポーツジャーナリストに。競技プレイヤーとして「MTG(マジック:ザ・ギャザリング)」の世界大会(プロツアーホノルル2016)出場経験あり。プレイヤー視点、メディア視点、両方の側面から情報発信します。
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