【連載】野安ゆきおが語る「女子ゲーマー飛躍の歴史」
【女子ゲーマー飛躍の歴史・最終話】1990年代のムーブメントは、現在にも繋がっている
こんにちは、野安ゆきおと申します。野安ゆきおが語る「女子ゲーマー飛躍の歴史」もいよいよ今回が最終回。8回にわたる連載にお付き合いいただき、ありがとうございます。
1990年代。女子たちがどのようにゲームに親しむようになったのか? ゲームに親しむようになったことで、日本のゲーム文化はどのように変わっていったのか? それは世界にどのように影響を与えたのか? そんな歴史の一端を楽しんでいただけたなら、うれしいかぎりです。
連載の冒頭でも書きましたが、このムーブメントを支えた女子たちこそ、いま10代〜20代の方々のおかあさんたちの世代です。彼女たちがデジタルな遊びを当たり前に楽しむようになったからこそ、日本のゲームは独特の発展を遂げ、これほどに隆盛になったのですね。
なので、ぜひともおかあさんたちの世代に感謝してください。
わざわざ言葉にして伝えると、きっと気持ち悪がられるでしょうから、心の中で感謝するだけでいいですけど(笑)。
「いやいや、そんな昔のこといまは関係ないじゃん!」と思う方もいるでしょうが、1990年代の女子たちが、テレビゲームに親しむようになったことは、いまなお大きな影響を与えているんですよ。あなたたちのおかあさん世代がゲームに親しむようになったことが、いま日本ではeスポーツが人気になっている要因のひとつだといっても、決して過言ではありません。
では、eスポーツ総合サイトでの連載の最終話にふさわしく、最後はそんな話をすることで連載を締めくくることにしましょう。
毎年9月に東京ゲームショウが開催されます。ちなみに私は、1996年に開催された第一回から取材に訪れ、今年まで皆勤しています。
私はゲームがうまくないので、ここ10年くらいは実際にゲームをプレイして取材記事を書くのではなく、女性タレントさんの取材記などを担当しています。ゲームショウに行ったことのある方は、タレントさんとカメラマン、ライターなどがセットで取材している姿を見かけたことも多いでしょう。あそこにいるのが私です。
10年くらい前までは、けっこう大変な仕事でした。
女性タレントさんって、あまりゲームに詳しくないことも多いんですよ。ゲームが嫌いではない(体験プレイの仕事を受けているのだから、むしろ好きな人が多い)けれど、基本的なゲーム知識が弱いんです。なので彼女たちがゲームをプレイするとき、「ここはこういうふうにプレイするといいですよ」、「このゲームの魅力はこういうところですよ」と、頻繁にアドバイスする必要があったんです。
でも、3〜4年前から、仕事が一気に楽になりました。
そのころから、担当する20代のタレントさんが、みんなゲームに詳しくなったんですね。この世代で「ゲームが好きです」とプロフィールに書くような女の子たちは、みんな基本的なゲーム知識を持っていて、私は脇で解説する必要はなくなりました。こちらが何もアドバイスしなくても、ちゃんと「前作に比べて、ここが新しいですね」といった的確な感想を述べてくれるようになったんです。
どうして、いきなり変化したんだろう?
当初は不思議に思っていたのですが、あるとき、はたと気付きました。
なるほど彼女たちは、物心ついたときには自宅にゲーム機があった世代なのか。両親がゲームに親しんできた世代であり、「初めて遊んだのは『ポケモン』です。パパの膝の上で一緒にプレイしました」といった経歴を持っていて、だからみんなゲームに詳しいんですね。
1990年代に女子がゲームにふれるようになり、いつしかその世代が母親になった。そして自分の子どもたちに、小さいころからゲームを遊ばせるようになったのです。こうして、ゲームを遊ぶことを親から非難されることなく、小さいときから屈託なくゲームにふれてきた世代が誕生し、最近ようやく20代になったということだったんですね。
そのおかげで、私の取材は格段に楽になったわけです。ありがたいかぎりです。
これはいまの日本のeスポーツの隆盛に繋がる話でもあります。
最近、中学や高校でeスポーツが部活動として認められるようになりました。高校生たちによる全国規模のeスポーツ大会も行われるようになりました。これは10年前なら考えられない話です。おそらく「学校でゲームをさせるなんて、なにごとだ!」という親たちの手によって、そんな部活動は潰されてしまったことでしょう。
でも、いまは違うんですよ。
なぜなら、親たちがゲームに親しんできた世代になったからです。
親たちが、「自分たちも若いころはゲームを遊んできたし、だから自分の子どもがゲームに夢中になるのは禁止できないよなぁ」と考えるようになったんですね。特に、子どもの教育について大きな影響力を持つ母親たちが、ゲームに対する理解を持つようになったことが大きいでしょう。
だから全国でeスポーツが部活動として認められるようになり、こんなにも隆盛になっているわけですね。
日本では、親子がチームになって参加するゲーム大会も頻繁に行われていますが、これも同じ理由からですね。しかも、パパと娘、ママと息子、といった形で参加する親子も多い。こんな大会が全国規模で大々的に行われている国は、世界広しと言えども日本だけでしょう。1990年代に世界に先駆けて女子たちがゲームに親しむようになり、日本には家族でゲームを楽しむ世代が多いからこそ、こういったイベントは成立するんですね。
こうして実例を挙げると、1990年代に女子たちがゲームに親しむようになったことが、現在のeスポーツのムーブメントに大きく影響を与えていることがわかるかと思いますが、いかがでしょうか?
さて1990年代以降も、日本では女子たちはゲーム文化に大きく影響を与えていくことになるのですが、当初から予定していた8回の連載は今回で終了となります。もしかしたら、その後の話は別の機会に書くことがあるかもしれません。その時まで、しばしのお別れです。ここまで読んでいただき、ありがとうございました。
1990年代。女子たちがどのようにゲームに親しむようになったのか? ゲームに親しむようになったことで、日本のゲーム文化はどのように変わっていったのか? それは世界にどのように影響を与えたのか? そんな歴史の一端を楽しんでいただけたなら、うれしいかぎりです。
連載の冒頭でも書きましたが、このムーブメントを支えた女子たちこそ、いま10代〜20代の方々のおかあさんたちの世代です。彼女たちがデジタルな遊びを当たり前に楽しむようになったからこそ、日本のゲームは独特の発展を遂げ、これほどに隆盛になったのですね。
なので、ぜひともおかあさんたちの世代に感謝してください。
わざわざ言葉にして伝えると、きっと気持ち悪がられるでしょうから、心の中で感謝するだけでいいですけど(笑)。
「いやいや、そんな昔のこといまは関係ないじゃん!」と思う方もいるでしょうが、1990年代の女子たちが、テレビゲームに親しむようになったことは、いまなお大きな影響を与えているんですよ。あなたたちのおかあさん世代がゲームに親しむようになったことが、いま日本ではeスポーツが人気になっている要因のひとつだといっても、決して過言ではありません。
では、eスポーツ総合サイトでの連載の最終話にふさわしく、最後はそんな話をすることで連載を締めくくることにしましょう。
東京ゲームショウでの体験
毎年9月に東京ゲームショウが開催されます。ちなみに私は、1996年に開催された第一回から取材に訪れ、今年まで皆勤しています。
私はゲームがうまくないので、ここ10年くらいは実際にゲームをプレイして取材記事を書くのではなく、女性タレントさんの取材記などを担当しています。ゲームショウに行ったことのある方は、タレントさんとカメラマン、ライターなどがセットで取材している姿を見かけたことも多いでしょう。あそこにいるのが私です。
10年くらい前までは、けっこう大変な仕事でした。
女性タレントさんって、あまりゲームに詳しくないことも多いんですよ。ゲームが嫌いではない(体験プレイの仕事を受けているのだから、むしろ好きな人が多い)けれど、基本的なゲーム知識が弱いんです。なので彼女たちがゲームをプレイするとき、「ここはこういうふうにプレイするといいですよ」、「このゲームの魅力はこういうところですよ」と、頻繁にアドバイスする必要があったんです。
でも、3〜4年前から、仕事が一気に楽になりました。
そのころから、担当する20代のタレントさんが、みんなゲームに詳しくなったんですね。この世代で「ゲームが好きです」とプロフィールに書くような女の子たちは、みんな基本的なゲーム知識を持っていて、私は脇で解説する必要はなくなりました。こちらが何もアドバイスしなくても、ちゃんと「前作に比べて、ここが新しいですね」といった的確な感想を述べてくれるようになったんです。
どうして、いきなり変化したんだろう?
当初は不思議に思っていたのですが、あるとき、はたと気付きました。
なるほど彼女たちは、物心ついたときには自宅にゲーム機があった世代なのか。両親がゲームに親しんできた世代であり、「初めて遊んだのは『ポケモン』です。パパの膝の上で一緒にプレイしました」といった経歴を持っていて、だからみんなゲームに詳しいんですね。
1990年代に女子がゲームにふれるようになり、いつしかその世代が母親になった。そして自分の子どもたちに、小さいころからゲームを遊ばせるようになったのです。こうして、ゲームを遊ぶことを親から非難されることなく、小さいときから屈託なくゲームにふれてきた世代が誕生し、最近ようやく20代になったということだったんですね。
そのおかげで、私の取材は格段に楽になったわけです。ありがたいかぎりです。
いまの親の世代は、eスポーツに対する理解が高い
これはいまの日本のeスポーツの隆盛に繋がる話でもあります。
最近、中学や高校でeスポーツが部活動として認められるようになりました。高校生たちによる全国規模のeスポーツ大会も行われるようになりました。これは10年前なら考えられない話です。おそらく「学校でゲームをさせるなんて、なにごとだ!」という親たちの手によって、そんな部活動は潰されてしまったことでしょう。
でも、いまは違うんですよ。
なぜなら、親たちがゲームに親しんできた世代になったからです。
親たちが、「自分たちも若いころはゲームを遊んできたし、だから自分の子どもがゲームに夢中になるのは禁止できないよなぁ」と考えるようになったんですね。特に、子どもの教育について大きな影響力を持つ母親たちが、ゲームに対する理解を持つようになったことが大きいでしょう。
だから全国でeスポーツが部活動として認められるようになり、こんなにも隆盛になっているわけですね。
日本では、親子がチームになって参加するゲーム大会も頻繁に行われていますが、これも同じ理由からですね。しかも、パパと娘、ママと息子、といった形で参加する親子も多い。こんな大会が全国規模で大々的に行われている国は、世界広しと言えども日本だけでしょう。1990年代に世界に先駆けて女子たちがゲームに親しむようになり、日本には家族でゲームを楽しむ世代が多いからこそ、こういったイベントは成立するんですね。
こうして実例を挙げると、1990年代に女子たちがゲームに親しむようになったことが、現在のeスポーツのムーブメントに大きく影響を与えていることがわかるかと思いますが、いかがでしょうか?
さて1990年代以降も、日本では女子たちはゲーム文化に大きく影響を与えていくことになるのですが、当初から予定していた8回の連載は今回で終了となります。もしかしたら、その後の話は別の機会に書くことがあるかもしれません。その時まで、しばしのお別れです。ここまで読んでいただき、ありがとうございました。
【野安ゆきおプロフィール】
ゲーム雑誌編集部、編集プロダクション取締役を経てフリーライターに。プレイしたゲーム総数は1000本を越え、手がけたゲーム攻略本は100冊を越える。現在はゲームビジネスを中心にした執筆活動を続ける。1968年2月26日生まれ。
Twitter:https://twitter.com/noyasuyukio
ゲーム雑誌編集部、編集プロダクション取締役を経てフリーライターに。プレイしたゲーム総数は1000本を越え、手がけたゲーム攻略本は100冊を越える。現在はゲームビジネスを中心にした執筆活動を続ける。1968年2月26日生まれ。
Twitter:https://twitter.com/noyasuyukio
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