【連載】野安ゆきおが語る「女子ゲーマー飛躍の歴史」
【女子ゲーマー飛躍の歴史・第七話】ナチュラルボーン・ゲーム女子の誕生
こんにちは、野安ゆきおと申します。前回に引き続き、野安ゆきおが語る「女子ゲーマー飛躍の歴史」第七話がはじまりました!
第七話は、爆発的ヒットを記録した『ポケットモンスター』と女子ゲーマーの関係性についてお話ししていきましょう。
どうぞお楽しみに!
1990年代。プレイステーションによって女子がゲームを楽しむ時代の到来が告げられる中、ひとつのモンスターソフトが誕生します。
それが『ポケットモンスター』(1996年)です。
プレイステーションは、若い女子たちをゲームファンにしていく契機となった商品でした。つまり「これまでゲームにふれてこなかった世代の女子に、ゲームの楽しさを伝えるための伝道師」のような存在です。
一方の『ポケットモンスター』は、物心ついたときから女子をゲームに親しませてしまうゲームでした。小さな女の子が、男の子と同じようにゲームを楽しむという光景は、『ポケットモンスター』によって初めて誕生したと言っていい。どこかのタイミングで「じつはゲームが好きで〜」とカミングアウトすることなく、生まれたときからゲームに親しむ女子が、ついに誕生するのです。
「テレビゲームは男の子の遊びだ!」
そんな言葉は、ついに『ポケットモンスター』によって時代遅れなものになったのです。だからこそ、いまでは幼稚園にはポケモンのキャラクターが貼られて男女を問わず愛されていて、毎年行われるポケモンスタンプラリーには、男女を問わず小さな子どもたちがスタンプを集めて笑顔になっている光景が生まれているのです。誰もが子どものころからゲームに親しむ時代がやってきているのですね。
公平を期すために書いておきますと、もともと『ポケットモンスター』は女子を意識して開発されたソフトではありません。
これは完全に男の子向けのソフトです。だから宣伝は男子向けのプロモーションが中心であり、男児向け雑誌である「コロコロコミック」とタイアップしたんですね。女子のことはさほど考慮してなかったんです。
しかしいざ発売されると、これは大ヒットを記録します。
特にTVアニメ『ポケットモンスター』、劇場映画「劇場版ポケットモンスター ミュウツーの逆襲」、そして「ポケモンカード」などのメディアミックス戦略が大成功した影響は大きく、一気に性別を問わずに愛されるソフトになっていくのですね。
するとシリーズ第2弾となる『ポケットモンスター金・銀』から、主人公として女の子を選択できるようになりました。
RPGの主人公として「小さな女の子」を選択できるゲームは、当時としてはきわめて稀なことだったのですが、この決断は大成功します。小さな女の子が「まるで自分が冒険している」、「男の子とまったく同じように冒険している」ような気分になれるようになり、『ポケットモンスター』は、性別を問わず、全世界のキッズたちを席巻する巨大ブランドへと駆け上がっていくことになるのです。
なお1990年代は、女の子が男の子と同じように活躍する物語が次々に花開いた時代でもあります。その代表作が1992年から1997年にかけてテレビで放映された「美少女戦士セーラームーン」でしょうか。ホラーゲーム「バイオハザード」でも、ちゃんと女性キャラが選択できるようになっていましたね。1990年代というのは、作品内で活躍する女性主人公が、たくさん登場するようになった時期でもあるのですね。
『ポケットモンスター』の登場により、全世界の小さな女の子たちがゲームに夢中になる時代が到来しました。
これは全世界のコンテンツ産業に大きな衝撃を与えます。とりわけショックを受けたのはハリウッド映画です。それまでもアメコミの実写映画など、男の子を夢中にさせるキッズ向け映画こそ作ってきましたが、女の子を主人公にした格好いい映画は、ほとんど作ってきませんでした。そもそもそんな原作を持っていないので、作りようがなかったんです。
しかし全世界の女子たちが、冒険を楽しむゲームに夢中になりました。
そこに巨大なビジネスチャンスがあることが、誰の目にも明らかになったわけです。それならばと、このあたりを機に、ゲームを原作とする映画が次々と作られるようになるのですね。それが映画「バイオハザード」や映画「トゥームレイダー」などです。ゲームには女性主人公が活躍する作品がたくさんあるので、それらを映画化することで、女性が活躍するアクション映画をラインアップに加えていったのですね。
そう考えると、1990年代にゲームに親しんだ女子たちの影響力って、ほんとすごいと思いませんか?
世界に先駆けて、日本の女子たちはデジタルなものを手にして遊ぶようになった。だからその市場が無視できないほど大きくなり、ゲーム産業は女子に愛されるコンテンツを作るようになった。ついには小さな女の子が冒険を楽しむゲームまで作られるようになった。そしたら、それが全世界で大ヒットをして、世界中のコンテンツ産業が女子向けコンテンツに全力を入れるようになったんですね。
1990年代。日本のゲーム女子たちは、ものすごーく大きな影響を全世界に与える契機となったんですよ。このことは、いまの若い人たちにも、ぜひ知っておいてほしいところです。きみたちのおかあさんの世代って、じつは凄いんたぜ。
第七話は、爆発的ヒットを記録した『ポケットモンスター』と女子ゲーマーの関係性についてお話ししていきましょう。
どうぞお楽しみに!
男女がともに楽しめるソフトが登場する
1990年代。プレイステーションによって女子がゲームを楽しむ時代の到来が告げられる中、ひとつのモンスターソフトが誕生します。
それが『ポケットモンスター』(1996年)です。
プレイステーションは、若い女子たちをゲームファンにしていく契機となった商品でした。つまり「これまでゲームにふれてこなかった世代の女子に、ゲームの楽しさを伝えるための伝道師」のような存在です。
一方の『ポケットモンスター』は、物心ついたときから女子をゲームに親しませてしまうゲームでした。小さな女の子が、男の子と同じようにゲームを楽しむという光景は、『ポケットモンスター』によって初めて誕生したと言っていい。どこかのタイミングで「じつはゲームが好きで〜」とカミングアウトすることなく、生まれたときからゲームに親しむ女子が、ついに誕生するのです。
「テレビゲームは男の子の遊びだ!」
そんな言葉は、ついに『ポケットモンスター』によって時代遅れなものになったのです。だからこそ、いまでは幼稚園にはポケモンのキャラクターが貼られて男女を問わず愛されていて、毎年行われるポケモンスタンプラリーには、男女を問わず小さな子どもたちがスタンプを集めて笑顔になっている光景が生まれているのです。誰もが子どものころからゲームに親しむ時代がやってきているのですね。
主人公として女の子が選べるようになった
公平を期すために書いておきますと、もともと『ポケットモンスター』は女子を意識して開発されたソフトではありません。
これは完全に男の子向けのソフトです。だから宣伝は男子向けのプロモーションが中心であり、男児向け雑誌である「コロコロコミック」とタイアップしたんですね。女子のことはさほど考慮してなかったんです。
しかしいざ発売されると、これは大ヒットを記録します。
特にTVアニメ『ポケットモンスター』、劇場映画「劇場版ポケットモンスター ミュウツーの逆襲」、そして「ポケモンカード」などのメディアミックス戦略が大成功した影響は大きく、一気に性別を問わずに愛されるソフトになっていくのですね。
するとシリーズ第2弾となる『ポケットモンスター金・銀』から、主人公として女の子を選択できるようになりました。
RPGの主人公として「小さな女の子」を選択できるゲームは、当時としてはきわめて稀なことだったのですが、この決断は大成功します。小さな女の子が「まるで自分が冒険している」、「男の子とまったく同じように冒険している」ような気分になれるようになり、『ポケットモンスター』は、性別を問わず、全世界のキッズたちを席巻する巨大ブランドへと駆け上がっていくことになるのです。
なお1990年代は、女の子が男の子と同じように活躍する物語が次々に花開いた時代でもあります。その代表作が1992年から1997年にかけてテレビで放映された「美少女戦士セーラームーン」でしょうか。ホラーゲーム「バイオハザード」でも、ちゃんと女性キャラが選択できるようになっていましたね。1990年代というのは、作品内で活躍する女性主人公が、たくさん登場するようになった時期でもあるのですね。
それは世界の女子市場に影響を与えた
『ポケットモンスター』の登場により、全世界の小さな女の子たちがゲームに夢中になる時代が到来しました。
これは全世界のコンテンツ産業に大きな衝撃を与えます。とりわけショックを受けたのはハリウッド映画です。それまでもアメコミの実写映画など、男の子を夢中にさせるキッズ向け映画こそ作ってきましたが、女の子を主人公にした格好いい映画は、ほとんど作ってきませんでした。そもそもそんな原作を持っていないので、作りようがなかったんです。
しかし全世界の女子たちが、冒険を楽しむゲームに夢中になりました。
そこに巨大なビジネスチャンスがあることが、誰の目にも明らかになったわけです。それならばと、このあたりを機に、ゲームを原作とする映画が次々と作られるようになるのですね。それが映画「バイオハザード」や映画「トゥームレイダー」などです。ゲームには女性主人公が活躍する作品がたくさんあるので、それらを映画化することで、女性が活躍するアクション映画をラインアップに加えていったのですね。
そう考えると、1990年代にゲームに親しんだ女子たちの影響力って、ほんとすごいと思いませんか?
世界に先駆けて、日本の女子たちはデジタルなものを手にして遊ぶようになった。だからその市場が無視できないほど大きくなり、ゲーム産業は女子に愛されるコンテンツを作るようになった。ついには小さな女の子が冒険を楽しむゲームまで作られるようになった。そしたら、それが全世界で大ヒットをして、世界中のコンテンツ産業が女子向けコンテンツに全力を入れるようになったんですね。
1990年代。日本のゲーム女子たちは、ものすごーく大きな影響を全世界に与える契機となったんですよ。このことは、いまの若い人たちにも、ぜひ知っておいてほしいところです。きみたちのおかあさんの世代って、じつは凄いんたぜ。
【野安ゆきおプロフィール】
ゲーム雑誌編集部、編集プロダクション取締役を経てフリーライターに。プレイしたゲーム総数は1000本を越え、手がけたゲーム攻略本は100冊を越える。現在はゲームビジネスを中心にした執筆活動を続ける。1968年2月26日生まれ。
Twitter:https://twitter.com/noyasuyukio
ゲーム雑誌編集部、編集プロダクション取締役を経てフリーライターに。プレイしたゲーム総数は1000本を越え、手がけたゲーム攻略本は100冊を越える。現在はゲームビジネスを中心にした執筆活動を続ける。1968年2月26日生まれ。
Twitter:https://twitter.com/noyasuyukio
【連載】野安ゆきおが語る「女子ゲーマー飛躍の歴史」
- 【短期集中連載・女子ゲーマー飛躍の歴史 第一話】みなさんのおかあさんが、日本の初代ゲーム女子!?
- 【女子ゲーマー飛躍の歴史・第二話】「ポケベル」を手にしたジャンヌ・ダルク
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- 【女子ゲーマー飛躍の歴史・第四話】ゲーム大会という巨大なお祭りの誕生
- 【女子ゲーマー飛躍の歴史・第五話】幼児向けゲーム機の誕生
- 【女子ゲーマー飛躍の歴史・第六話】プレイステーションは女子ゲーマーにとっての福音だった
- 【女子ゲーマー飛躍の歴史・第七話】ナチュラルボーン・ゲーム女子の誕生
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