【連載】野安ゆきおが語る「東京ゲームショウの歴史」

東京ゲームショウのいまとこれから【東京ゲームショウの歴史 第八話】

2019.11.15 野安ゆきお

息の長いゲームが増え続ける東京ゲームショウへ


今回が最終回です。最後に、あらためて現在の東京ゲームショウの話をしておきましょう。

もともとは流通関係者のためだったゲームショウは、新しいゲームをいち早く体験したいファンのための展示会としてスタートしました。しかしゲームユーザーの幅が広がるにつれて、一本のゲームを熱心にプレイするタイプのゲームユーザーに対するサービスを行うように変化していったという歴史が、なんとなく理解していただけたでしょうか。

だからこそ2019年の東京ゲームショウでは、「リメイク作品」とか「人気ゲームの追加パッケージ」のような商品が、各社の目玉タイトルとして大々的にアピールされるようになっていたのかもしれませんね。完全な新作ソフトではなく、すでにファンを抱えているブランドを前面に出すようになってきてるんですね。

eスポーツが大々的に行われるようになったのは、こんな歴史の流れの結果ともいえるでしょう。

eスポーツというのは、まだ見ぬ最新のソフトをプレイしたがるタイプのゲームファンではなく、1本のソフトをとことんやり尽くすタイプのゲームファンがたくさん存在することによって成り立つエンタメです。東京ゲームショウは、そういうエンタメを前面に出すような時代になってきたということです。

こうして、東京ゲームショウは、どんどん「ひとつのソフトを大事にする人」を楽しませるための展示会へと変化してきて、現在に至っているのです。

ファミリーゲームコーナーに見られた変化


そんな中、新しいムーブメントも起きていたので、そちらを紹介しておきましょう。

それは中学生以下の子どもたちと、その保護者だけが入れるファミリーゲームコーナーで見ることができました。家族連れでないと入ることができないエリアなので知らない方も多いでしょうが、近年のファミリーゲームコーナーは、いろいろと大きな変化が見られるようになっています。


たとえば、ここではキッズ向けのeスポーツ体験会が開催され、大人気になっています。ちゃんと予選会を行い、勝ち抜いた人が最後はステージに上がり、インタビューを受け、そして最終対決をした優勝者を決めるというイベントです。小さな子どもたちが、みんな楽しそうに大会に参加しているんですね。

小さい子どもたちが集まる場所で、そのようなイベントが行われるのは画期的なことです。それは「小さな子どもの親たちが、まるで抵抗なくeスポーツに参加させている」ということですからね。いまなおeスポーツに対して眉をしかめるような面倒くさい人たちもいるわけですが、キッズ層とその親たちにとっては、eもはやスポーツはごく当たり前に存在するものであり、抵抗なく参加するものになっていることがわかります。

それだけではありません。ファミリ—ゲームコーナーでは、そういったゲーム大会の様子を実況するための体験イベントも行われ、こちらはさらに大人気になっていたのです。それは東京ゲームショウのメイン会場では見ることのできない、かなり衝撃的な光景だったのです。

キッズたちはゲームを「遊ぶ」よりも「実況」を楽しんだ


それはステージにゲームの対戦台が用意され、参加したキッズたちがゲームで対戦するというイベントだったのですが、ふつうのゲーム大会とは違い、そこに人気ユーチューバーが参加しています。そしてキッズたちのプレイの様子をこの場で生実況するというサービスが行われるのですね。

さらには、来場者の中から希望者を募り、人気ユーチューバーの隣に座って「実況に参加する」ことも可能になっていました。つまり、これはゲーム実況を体験するためのイベントでもあるのです。

すると、ゲーム大会に参加したがるキッズよりも、実況を希望するキッズの方が人数が圧倒的に多いんですよ。人気ユーチューバーの隣で実況体験をできる、というスペシャル感こそありますが、それでもプレイするよりも実況を好む子どもの方が圧倒的に多かったことは、かなり衝撃的な光景でした。

東京ゲームショウの歴史は、「ひとつのソフトを大事にする人」を楽しませるための展示会へと変貌していった歴史であると、これまで8回にわたって解説してきたわけですが、ファミリーゲームコーナーでは、それをさらに上回る事態が起きていたということです。

なぜなら、そこにあったのは「まだそのゲームをプレイしていない人が、他人のプレイを実況することを心から楽しむ」という光景ですからね。わたしは第一回からゲームショウを取材してきましたが、こんな光景、これまで見たことがありません。

この子どもたちが大人になった頃、東京ゲームショウは、どんな姿へと変化していくんだろう? とワクワクさせられる光景でもありました。これから10年くらいかけて、東京ゲームショウはまだまだ進化を続けていくことでしょう。その様子をずっと取材し続けたいなぁと思った次第です。

というわけで8回にわたる連載は、これで終了としましょうか。ご愛読ありがとうございました。また別のテーマで連載する機会がありましたら、その時はよろしくおねがいします。

【野安ゆきおプロフィール】


ゲーム雑誌編集部、編集プロダクション取締役を経てフリーライターに。プレイしたゲーム総数は1000本を越え、手がけたゲーム攻略本は100冊を越える。現在はゲームビジネスを中心にした執筆活動を続ける。1968年2月26日生まれ。

Twitter:https://twitter.com/noyasuyukio

この記事を読んだ人はこんな記事も読んでいます