【連載】野安ゆきおが語る「東京ゲームショウの歴史」

ゲーム展示会はネット中継時代に突入する<TGS2014〜2016>【東京ゲームショウの歴史 第六話】

2019.11.8 野安ゆきお

ニコニコ動画などの配信企業が登場する


今回は2014年〜2016年あたりの話をしましょうか。

この時期から、東京ゲームショウでeスポーツが話題になっていきます。まだ「eスポーツ」という言葉が一般的に使われないこともありましたが、東京ゲームショウの会場内で、来場者たちが対戦ゲームを楽しむような場が増えていくのです。

これを後押ししたのが、動画配信サイトの躍進です。

東京ゲームショウはゲーム展示会です。だから当初はゲームメーカーがこぞって参加し、新作ゲームを大々的に展示しました。いずれケータイキャリア各社が参加するようになり、PCゲームやスマホゲームを専門にする企業も参加するようになりました。こうして幅広い企業がブースを構えるようになったわけですが、それらはすべて「ゲームを販売する会社」だったわけです。

しかし、2010年代半ばから、ニコニコ動画やTwitchといった動画配信企業が東京ゲームショウにブースを構えるようになりました。そして、各社がこぞって会場の様子を生中継し始めるのです。こうして世界中の人々が東京ゲームショウをリアルタイムで楽しめる時代が到来するのですね。

個人的なことを言うと、私も東京ゲームショウ現地のニコニコ動画のステージに上がり、生中継に出演したことがあります。おそらく人手不足だったので、長年ゲームショウを取材しているフリーランスの私に白羽の矢が立ったのだと思いますが、東京ゲームショウの盛況ぶりを数字データをもとに解説する、みたいな役回りでの出演でした。

私が動画配信のゲストに招かれたことからもわかるように、ただゲームを紹介するだけでは、これらの動画配信サイトは配信のネタが足りないんですね。だからこそ、コンテンツを充実させるためにもゲーム大会的なものが開かれるようになり、それらが全世界にネット配信されるようになっていった、と考えることもできるかもしれません。

海外からの参加が一気に拡大する時代へ


こうして東京ゲームショウは、ユーザー参加型のイベントが爆発的に増えていきます。

専用ステージでゲーム大会が開かれることも増えましたし、各社のブース内での参加者たちが対戦する形でゲームを試遊することも増えていくのです。そしてゲームがうまい人たちによるゲームプレイの様子が流れるようになり、それを実況解説するといった、いまのeスポーツ大会と同じようなスタイルのイベントが、東京ゲームショウで爆発的に増えていきます。


そして全世界に東京ゲームショウの様子が配信されるようになると、海外ゲームメーカーも多く進出するようになりました。中国や韓国のメーカーなどは、かなり昔から東京ゲームショウに参加していましたが、それ以外の国々、たとえば東南アジアや南米などのゲーム開発企業なども、どんどん東京ゲームショウにブースを置くようになっていくのです。大使館などがブースを出展する国も珍しくなくなっていくのですね。

またまた個人的な感想ではありますが、こういったブースが増えた結果、現場の取材はちょっとだけ大変になりました。これらの海外ブースは、受付の人はともかく、開発者の方には日本語が通じないからです。私は帰国子女と言うこともあり、少し英語ができるので、そういったブースの取材が割り当てられたこともありましたが、やっぱり大変でしたね。

またこの頃から、インディーズのゲームが立ち並ぶコーナーにも海外からの参加者がめきめきと増え始めます。「日本でもヒットさせるぜ」とばかりに、世界中の若者が東京ゲームショウに集まるような時代が、ついに到来するのです。

過去最大の出展数を記録する


2010年代半ばは、東京ゲームショウへの出展企業が過去最大になった時期でもあります。

毎年のように東京ゲームショウに通っている一般のゲームファンの方々は、「えっ、そんなに増えてたっけ?」と怪訝に思うかもしれませんね。その印象は正しいです。なぜなら一般公開日の出展ブース数は、さほど変化していないからですね。

爆発的に増えたのは、4日間のうち最初の2日間のビジネスデーにだけ出展する企業なんですよ。「ゲームを作るのをサポートするためのソフトウェア企業」とか「サーバ管理をサポートする企業」とか「ゲーム広告を専門とする企業」などです。

これらの企業は、売り込みたい相手がゲーム業界関係者と言うこともあり、一般公開日に出展しても意味がないと考え、ビジネスデイの2日間だけブースを出して、一般公開日の前日にはブースごと解体してしまって影も形もなくなってしまうんです。

東京ゲームショウに行ったことのある方は、会場内にだだっ広い空間にベンチが並べられている休憩コーナーみたいなものが存在することに気付いているかもしれません。あの場所こそがビジネスデイだけに存在していた企業ブースの名残なのです。

【野安ゆきおプロフィール】


ゲーム雑誌編集部、編集プロダクション取締役を経てフリーライターに。プレイしたゲーム総数は1000本を越え、手がけたゲーム攻略本は100冊を越える。現在はゲームビジネスを中心にした執筆活動を続ける。1968年2月26日生まれ。

Twitter:https://twitter.com/noyasuyukio
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