【連載】野安ゆきおが語る「東京ゲームショウの歴史」

eスポーツの躍進とアーケードゲームの解禁<TGS2017>【東京ゲームショウの歴史 第七話】

2019.11.11 野安ゆきお

eスポーツが東京ゲームショウの花形イベントに


2017年になると、ついにeスポーツが花形イベントとして東京ゲームショウに君臨するようになります。

以降、会場内には、eスポーツ専用の巨大ステージが作られるようになります。そこでは日本一を決める大会、そして海外のプロゲーマーを招いてのエキシビジョンマッチなどが行われ、大盛況になっていくのです。


これはeスポーツが「ビジネスになる」ことに、世の中の人たちが気付いたことが大きいでしょう。東京ゲームショウでは、ビジネスセッションと呼ばれる講演がいくつも行われておりまして、たとえば2019年には5G通信テクノロジーについての講演がたくさん行われました。ゲームに詳しくないけど、最新のビジネストレンドを知りたい人たちが集い、それらの講演を聞くわけですね。


2018年はすべてのビジネスセッションがeスポーツ関連だった、と言っていいほどの状態だったんですね。それほどゲーム業界全体が、eスポーツに注目していたんです。とはいえ、ごく一部にはバーチャルユーチューバー・ビジネスについての講演などもありましたけど……。

こうして日本中が「eスポーツは巨大な産業になるぞ」と気づいた結果、東京ゲームショウでは一気にeスポーツがアピールされるようになったのですね。このあたりの空気の変化は、eスポーツに興味をお持ちの方は、みなさん気付いていることかもしれません。

アーケードゲームが東京ゲームショウに進出した


では、ちょっとだけeスポーツから離れて、2017年に東京ゲームショウに訪れた大きな変革について紹介しましょう。

何度も解説してきましたが、東京ゲームショウはゲーム展示会です。家庭用ゲームのソフトウェア団体であるCESAが主催者となって開催されるイベントです。もともと家庭用ゲーム機用ソフトのための展示会であり、そこにケータイやスマホのソフトも出展されるようになり、PCゲームも出展されるようになったわけですが、唯一の例外として、アーケードゲーム(ゲームセンターのゲーム)は出展されることはありませんでした。

法律的なことを言いますと、これはゲームセンターが風営法の管理下にあるためです。ゲームセンターの営業許可を出すのは警察の役目。その一方、東京ゲームショウというのは経済産業省が支援するイベントでありまして、なのでアーケードゲームの展示会は、東京ゲームショウとは別の場所・別の時期に開催されているんです。お役所の縦割り行政ってヤツですね。

その結果、お互いの展示会を邪魔をしないよう、「東京ゲームショウにはアーケードゲームの出展はしない」という不文律があったのですよ。より厳密に言いますと、「アーケードゲームを出展するときは、ブース全体に展示するゲームの中で〇〇%以内にすべし」といった基準が定められていたんですね。

しかし2017年、このルールが消滅します。

おおっぴらに語られていないので、ゲーム業界関係者でも知らない人もいるほどですが、2017年からは、東京ゲームショウにアーケードゲームが出展されるようになっていたんですね。

VRのアーケードゲームが出展されている


VRのアーケードゲームが出展されていることは、eスポーツのムーブメントが大きく影響しているんです。

いまの日本には、eスポーツを楽しませるための施設が、いろいろと作られています。それらの施設の中には、VRを利用したゲームを楽しめ施設もあるわけです。身体を動かすタイプの、リアルスポーツに近いeスポーツですね。

これらのゲームは、法律的には家庭用ゲーム機ではありません。店舗に置くためのゲーム機器です。

でも東京ゲームショウは、いろいろなゲームの楽しさを展示するためのイベントでもありますから、最先端のVRゲームも紹介したいわけですよ。すると「アーケードゲームは展示できない」というルールが、ついに邪魔になってきたんです。このルールに従うと、最先端の面白いVRゲームを紹介できなくなっちゃうからです。

なので2017年、ひっそりとルールが改定され、VRやARのゲームに関しては、アーケードゲームであっても東京ゲームショウに出展できるようになったんですね。


ここ2〜3年、お茶の間に置くにはあまりに巨大な、VRを使ったゲームが東京ゲームショウに出展されるようになったのは、そのためです。あまり大々的にアピールしていないので、ゲーム業界関係者でもアーケードゲームが出展されていることを知らない人も多いのですが、2017年以降、アーケードゲームが一部解禁されているんですね。

【野安ゆきおプロフィール】


ゲーム雑誌編集部、編集プロダクション取締役を経てフリーライターに。プレイしたゲーム総数は1000本を越え、手がけたゲーム攻略本は100冊を越える。現在はゲームビジネスを中心にした執筆活動を続ける。1968年2月26日生まれ。

Twitter:https://twitter.com/noyasuyukio
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