【連載】野安ゆきおが語る「東京ゲームショウの歴史」

女性ユーザーの増大と海外メディアの躍進<TGS2012>【東京ゲームショウの歴史 第五話】

2019.11.4 野安ゆきお

現在のeスポーツのプラットフォームが総登場する


2012年。東京ゲームショウに、目に見えて大きな変化が訪れます。

もともと家庭用ゲーム機のための展示会としてスタートした東京ゲームショウで、この年、スマホ・タブレットを使用したゲームの展示タイトル数が家庭用ゲーム機用ソフトを上回るのです。

また、グリーが家庭用ゲーム機業界最大手のSCEIを上回る巨大ブースを出展したことも話題になりました。それまでは「家庭用ゲーム機の展示会に、ちょっと間借りさせてもらいますねー」といった佇まいだったスマホ・アプリ業界が、堂々たる主役へと躍り出てきたわけですね。PCのゲームが目立つようになるのは、この時期からです。

とはいえ、一方の家庭用ゲーム機産業も負けてはいません。翌2013年にはプレイステーション4が初出展され、大きな話題をさらいます。その結果、4年前には18万5030人だった入場者数は、この年には27万197人を記録。なんと4年で50%アップですよ。一気に過去最高の数字を叩き出すのですね。


こうしてPS4、タブレット、そしてPCという、現在のeスポーツのプラットフォームが、東京ゲームショウに勢ぞろいすることになるのですね。そして、以降の東京ゲームショウの人気は安定したものとなり、つねに25万人〜27万人の入場者数を記録するほどの人気を維持するようになるのです。

海外メディアが一気に増え始めた


この時期から、明らかに海外からの取材陣も目立つようになりました。

世界各国からメディア関係者が集まる展示会になり、会場には大きなカメラを抱えた取材チームがたくさん出現するようになったのです。東京ゲームショウは、英語・フランス語・スペイン語・中国語・韓国語などなど、あらゆる言語が飛び交う国際的な展示会になっていきました。

とはいえ、実際に現場で取材している者としては、海外メディアはけっこう迷惑でもあるんですけどね(笑)。なにしろ彼らは外国人であることを利用して、「撮影禁止」という看板があっても日本語が読めないふりをしてカメラを回すからです。その都度、スタッフから注意を受けて引き下がる(そして、それまでに撮影してしまったものを「スクープ」みたいな見出しとともに記事にする)という行為をするわけです。ジャーナリスト魂があるともいえますが、ちゃんとルールを守っている側としては邪魔だなぁと思うことも、しばしばあったものです。

女性の来場者が目立つようになったのも、この時期からでしょう。

その象徴が、2012年から新設された「乙女ゲームコーナー」です。いわゆる女性向け恋愛ゲームだけを集めたコーナーです。2013年以降は「ロマンスゲームコーナー」と名前を変え、これは2018年まで続くことになります。

こういった女性向けゲーム専用コーナーは、世界的に見ても画期的なものでした。海外でも「女性も楽しめるゲーム」はありましたが、大人の女性をターゲットにした、恋愛をテーマにしたゲームは珍しかったんです。海外からの取材スタッフが、「これぞ日本独特のゲーム文化」とばかりに、こぞって取材していたものです。

なお、これらの女性向けゲームが大流行したことを、「だから日本は変だ、って言われるんだよ」みたいに揶揄する人もいますが、それは大間違い。アメリカでも、日本のムーブメントを後追いするように数年前からGAMEBOOK社の「My Love: Make Your Choice!」シリーズなどの女性向け恋愛ゲームが多く作られるようになり、2019年には学生時代を舞台にした、恋愛を追体験する『My High School Days Memories』が爆発的な人気を獲得しています。女性向けゲームというジャンルでは、日本が世界の最先端にいるので、いま、世界が日本の後追いをしているんですね。

おそらく世界初! 男性コンパニオンが登場する


また、この時期には、東京ゲームショウにもうひとつの変化が訪れます。

ゲームショウといえば、やや露出の多い女性コンパニオンがたくさんいるわけですが、この時期を機に、男性コンパニオンが登場することになります。先ほど紹介した「乙女ゲームコーナー」だけでなく、大手メーカーのブースなどでは、女性来場者が試遊台のところに行くと、すっ、とイケメンで清潔感ある男性スタッフが寄ってくるようになりました。

じつはこれ、北米のE3、欧州のゲームズコムなどでは見られない光景です。昨今の欧米のゲーム展示会では「女性蔑視だ」といった趣旨により、女性コンパニオンの姿はなくなってしまいました。しかし日本では、女性ユーザーの増加に伴い、男性コンパニオンを用意するという対応をしたわけです。その結果、女性コンパニオンもいれば男性コンパニオンもいるという、世界でも類を見ない独特の体制になったのです。

ゲームユーザーの多様性という面において、日本はダントツで世界をリードしています。ほんと、老若男女の誰もがゲームに親しむ国ですからね。だから東京ゲームショウにも、幅広い来場者が訪れるようになり、その結果として男性コンパニオンが登場してきたんですね。こうして東京ゲームショウは、世界でも独特のゲーム文化を発信する展示会になっていくのです。

【野安ゆきおプロフィール】


ゲーム雑誌編集部、編集プロダクション取締役を経てフリーライターに。プレイしたゲーム総数は1000本を越え、手がけたゲーム攻略本は100冊を越える。現在はゲームビジネスを中心にした執筆活動を続ける。1968年2月26日生まれ。

Twitter:https://twitter.com/noyasuyukio

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