【特集】 eスポーツ 2024-2025 言いたい放題
【eSports World新春トーク】 eスポーツの「格」は何で決まる? eスポーツ2024-2025 言いたい放題〈第2話〉
2024年のeスポーツ業界をひたすら追いかけ続けてきたeSports World編集部員ふたりが、2024年を振り返りつつ、2025年以降の展望についても語ってみた。
第2話は、eスポーツ大会の賞金額と格式について。公式大会よりも高額賞金の大会が現れ、「世界一の大会」「世界一を決める大会」はどうなっていくのか? 同時に、ストリーマー&VTuber大会の人気と一抹の不安も。
第1話 eスポーツにこそ「選手会」が必要!
宮下:自分が2024年を振り返ってみて結構インパクトがあったのは、「eスポーツの世界大会」。一番衝撃が大きかったのは「Esports World Cup」でした。
今回、すべての試合をバラバラにして大会情報を作ったから分かったんですが、賞金総額6000万ドル(約90億円。1ドル=150円換算)が話題になったけど、実は個別タイトルごとに見ても、この大会1個だけで公式大会よりも高額な大会もあるんですよ。
今『VALORANT』のチームがどんどん解散していたり、ライアットゲームズも社員を減らしたりしていますが、eスポーツの公式大会の多くはメーカー自身が実施している大会です。カプコンの「Capcom Cup」、バンダイナムコの「TEKKEN World Tour」にしてもそうですよね。
でも、「Esports World Cup」みたいに、完全に別の資金で実施されてあの高額賞金となると、正直メーカーが高額賞金を出すことをせず、だんだん大会も外任せになってしまうんじゃないかって、個人的には思うんです。
井ノ川:スポンサーなり賞金を出してくれる出資者を集められる仕組みがないと、大会を継続するのって厳しいでしょうからね。
宮下:そうなってくると、「世界一を決めるのってどの大会で、誰が決めて、どこに価値があるんだろう?」ということが分からなくなってきそうだなって。
たとえば、『スト6』の「EVO」「EVO Japan」の優勝者というと箔も名誉もあります。ただ、心のどこかで「でもあれって世界一じゃないよなぁ。世界一はやっぱカプコンカップだろう」みたいなことを思ったりする。なんだかよくわかんなくなってきてしまって……。
井ノ川:賞金がなくたって価値がある大会はあるけど、一般の人にとっては高額賞金=eスポーツすげぇ!と思ってしまう人もいるでしょうね。去年行われた『PARAVOX』の優勝賞金1億円とかもそういった狙いはあったのだと思います。
宮下:公式大会の他に「Esports World Cup」みたいな高額賞金大会ができて、わかんなくなってきたんですよね。もちろん、「Esports World Cup」が悪いというわけではないんですが、あの大会自体がサウジアラビアという国の人権問題を覆い隠す目的がある、とか言われたりもしていますし。
井ノ川:メーカー公式大会の賞金の方が低くなっちゃって、「Esports World Cup」が今後のeスポーツを代表する大会になっちゃうというのも、長い目で見ると問題かもしれないですね。
ちょっと話が違いますが、ゴルフの最高峰にあたる「マスターズ」の賞金って、国内のツアーで優勝しまくった日本の賞金王よりもはるかに上なんですよ。海外ツアーを中心に戦っている松山選手とかは、国内で活躍している人たちの賞金を1回の大会で稼いじゃうレベル。ヘタをすると「Esports World Cup」がまさにそんなふうになっちゃうかもしれない。
宮下:今回でいえば、カワノ選手、ガチくん選手、立川選手が2〜4位とかなり活躍していたし、賞金額もかなりでかかった。優勝しなくても2位が14万ドル(約2100万円)、3〜4位が7万5000ドル(約1050万円)ですから。
井ノ川:税金も引かれるとは言え、別の大会で優勝してもそんなもらえない……とお金の感覚がインフレしちゃえば、そりゃ大会によっては捨てるものが出てくるのも無理はないかもしれません。
宮下:ただ、「Esports World Cup」の出場権自体、事前の大きな大会などで活躍しないと得られません。当然、簡単に出られるものではない。とはいえ、メーカー主催の公式大会が世界一を決める大会だろうというeスポーツの当たり前が、これから変わってしまうかもしれません。今年は『VALORANT』も加わるって言われていますしね。
井ノ川:どちらかというと、ゴルフとかみたいに「AKRacing杯 VALORANT大会」といった大会をもっと開催してくれればいいですよね。日本でもエディオンがスポンサードしたVALORANT大会とかもありましたし。
宮下:確かにね。「SFL」は太陽ホールディングスさんがトップパートナーになってくれて、他のスポーツに近づいている感じはありますね。
一方で、『VALORANT』は日本チームがかなり活躍している印象はある。でも、2025年の国際大会に出るためには、かなり活躍している印象の日本チームでも、予選からアマチュアと一緒に頑張るしかないというのが現実じゃないですか。しかもこの予選大会には大きな賞金は出ないから、チームの体力がないと続かない。戦っても報われないのはつらいと思うし、チームも選手も短命にならざるを得ません。
こういうビジネス部分が整ってくると、日本のeスポーツももっと安定的に発展していけるのかなと思ったりしました。
井ノ川:そのためにはもっとeスポーツに出資してくれる人たちが必要ですね。スポンサーの皆様、お待ちしています(笑)。
井ノ川:eSports Worldはどちらかというと、eスポーツの競技面を中心に、ストイックに追いかけているメディアかなとは思っているんですが、その視点から見ると、いまeスポーツが盛り上がっているのはストリーマーのおかげなんじゃないか、という不安も感じています。
海外のeスポーツチームのウェブサイトを見てみると、競技の部門が記載されている中に、「ストリーマー」という部門があるチームはほとんど見つからない。公式ページで「ストリーマー部門がある」と明言している海外チームは少ないのではないかと思います。
宮下:なかなか攻めた話題ですね(笑)。たしかに日本は海外とちょっと違うかも。「クリエイター部門」とかはいくつかありますけどね。
井ノ川:いま日本のeスポーツ業界を支えているのは多分ストリーマーなんです。理由としてはやはり収益になるし、チームの知名度を高められるから。ただ、それってeスポーツをエンタメ化してしまっていないかとも思うんです。
競技で活躍して強さを証明するのが「eスポーツ」の見せ場だと思うんですけど、そこにカジュアルな要素が入ってきた。逆に今では、そのカジュアルな要素の方が、競技よりも収益が手っ取り早く上がってしまっている。
宮下:競技は競技、ストリーマーの配信はエンタメとして、切り分けて考えればいいのでは? 大会をじっくり観戦したい人と、面白おかしくゲーム配信を見たい人はそもそもニーズが違うし、後者の方が視聴数が多いのも仕方ない気がするけど。
井ノ川:それは分かるんですが、行き着く先はeスポーツはあまり本格的でなくてもいいという風潮になり、結果的に世界とのレベルが離れていくのではないかということを懸念しているんです。ストイックさが失われてしまうんじゃないかと。
宮下:日本にはまだ世界に通用するチームが少ないのは確かですからね。その中で、稼ぎどころを模索した結果、ストリーマーの存在が大きくなっているという背景もあるのかも。
井ノ川:ゴルフでカップに寄せたらポイントが入るような、競技とはかけ離れたカジュアルな大会の方が人気になっているんですが、そちらの方が魅力的になってしまうと、プロとしてやっていける土台が崩れてしまうのではないかと心配しています。
宮下:子どもたちの将来の夢は、まだ1位が「スポーツ選手」みたいだから、そこは大丈夫だと思いますけどね。まあ、「eスポーツ選手になりたい」ということと「ストリーマーやVTuberになりたい」というのは近いようで遠いんですが、セカンドキャリアとしてストリーマーを選ぶ人が多いのも、収益化しやすいという理由はありそうですね。
(続く)
第2話は、eスポーツ大会の賞金額と格式について。公式大会よりも高額賞金の大会が現れ、「世界一の大会」「世界一を決める大会」はどうなっていくのか? 同時に、ストリーマー&VTuber大会の人気と一抹の不安も。
第1話 eスポーツにこそ「選手会」が必要!
宮下英之
eSports Worldの企画・立ち上げから関わっている中堅編集者。主に『LoL』のソロQに生息するも、これだけ攻略記事を企画しているのに一向にランクが上がらない万年ブロシル勢(もはやただの下手くそ)。みなさん、今年こそ一緒にランクアップしましょう。
eSports Worldの企画・立ち上げから関わっている中堅編集者。主に『LoL』のソロQに生息するも、これだけ攻略記事を企画しているのに一向にランクが上がらない万年ブロシル勢(もはやただの下手くそ)。みなさん、今年こそ一緒にランクアップしましょう。
井ノ川結希(いのかわゆう)
eSports Worldの企画・立ち上げから関わっている編集者兼ライター。『スト2』全盛期から格闘ゲームにどハマりするも、ふとしたきっかけで『Counter-Strike: Global Offensive』をプレーしFPSに足を突っ込む。そんなこんなで今では『VALORANT』がメインの担当に。ゴルフにはまりすぎてeスポーツ界隈の人とラウンドするきっかけをうかがってしまうゴルフ女子。
eSports Worldの企画・立ち上げから関わっている編集者兼ライター。『スト2』全盛期から格闘ゲームにどハマりするも、ふとしたきっかけで『Counter-Strike: Global Offensive』をプレーしFPSに足を突っ込む。そんなこんなで今では『VALORANT』がメインの担当に。ゴルフにはまりすぎてeスポーツ界隈の人とラウンドするきっかけをうかがってしまうゴルフ女子。
eスポーツ大会の「格」を示すのは公式か、高額賞金か
宮下:自分が2024年を振り返ってみて結構インパクトがあったのは、「eスポーツの世界大会」。一番衝撃が大きかったのは「Esports World Cup」でした。
今回、すべての試合をバラバラにして大会情報を作ったから分かったんですが、賞金総額6000万ドル(約90億円。1ドル=150円換算)が話題になったけど、実は個別タイトルごとに見ても、この大会1個だけで公式大会よりも高額な大会もあるんですよ。
今『VALORANT』のチームがどんどん解散していたり、ライアットゲームズも社員を減らしたりしていますが、eスポーツの公式大会の多くはメーカー自身が実施している大会です。カプコンの「Capcom Cup」、バンダイナムコの「TEKKEN World Tour」にしてもそうですよね。
でも、「Esports World Cup」みたいに、完全に別の資金で実施されてあの高額賞金となると、正直メーカーが高額賞金を出すことをせず、だんだん大会も外任せになってしまうんじゃないかって、個人的には思うんです。
井ノ川:スポンサーなり賞金を出してくれる出資者を集められる仕組みがないと、大会を継続するのって厳しいでしょうからね。
宮下:そうなってくると、「世界一を決めるのってどの大会で、誰が決めて、どこに価値があるんだろう?」ということが分からなくなってきそうだなって。
たとえば、『スト6』の「EVO」「EVO Japan」の優勝者というと箔も名誉もあります。ただ、心のどこかで「でもあれって世界一じゃないよなぁ。世界一はやっぱカプコンカップだろう」みたいなことを思ったりする。なんだかよくわかんなくなってきてしまって……。
井ノ川:賞金がなくたって価値がある大会はあるけど、一般の人にとっては高額賞金=eスポーツすげぇ!と思ってしまう人もいるでしょうね。去年行われた『PARAVOX』の優勝賞金1億円とかもそういった狙いはあったのだと思います。
宮下:公式大会の他に「Esports World Cup」みたいな高額賞金大会ができて、わかんなくなってきたんですよね。もちろん、「Esports World Cup」が悪いというわけではないんですが、あの大会自体がサウジアラビアという国の人権問題を覆い隠す目的がある、とか言われたりもしていますし。
井ノ川:メーカー公式大会の賞金の方が低くなっちゃって、「Esports World Cup」が今後のeスポーツを代表する大会になっちゃうというのも、長い目で見ると問題かもしれないですね。
ちょっと話が違いますが、ゴルフの最高峰にあたる「マスターズ」の賞金って、国内のツアーで優勝しまくった日本の賞金王よりもはるかに上なんですよ。海外ツアーを中心に戦っている松山選手とかは、国内で活躍している人たちの賞金を1回の大会で稼いじゃうレベル。ヘタをすると「Esports World Cup」がまさにそんなふうになっちゃうかもしれない。
宮下:今回でいえば、カワノ選手、ガチくん選手、立川選手が2〜4位とかなり活躍していたし、賞金額もかなりでかかった。優勝しなくても2位が14万ドル(約2100万円)、3〜4位が7万5000ドル(約1050万円)ですから。
井ノ川:税金も引かれるとは言え、別の大会で優勝してもそんなもらえない……とお金の感覚がインフレしちゃえば、そりゃ大会によっては捨てるものが出てくるのも無理はないかもしれません。
宮下:ただ、「Esports World Cup」の出場権自体、事前の大きな大会などで活躍しないと得られません。当然、簡単に出られるものではない。とはいえ、メーカー主催の公式大会が世界一を決める大会だろうというeスポーツの当たり前が、これから変わってしまうかもしれません。今年は『VALORANT』も加わるって言われていますしね。
井ノ川:どちらかというと、ゴルフとかみたいに「AKRacing杯 VALORANT大会」といった大会をもっと開催してくれればいいですよね。日本でもエディオンがスポンサードしたVALORANT大会とかもありましたし。
宮下:確かにね。「SFL」は太陽ホールディングスさんがトップパートナーになってくれて、他のスポーツに近づいている感じはありますね。
一方で、『VALORANT』は日本チームがかなり活躍している印象はある。でも、2025年の国際大会に出るためには、かなり活躍している印象の日本チームでも、予選からアマチュアと一緒に頑張るしかないというのが現実じゃないですか。しかもこの予選大会には大きな賞金は出ないから、チームの体力がないと続かない。戦っても報われないのはつらいと思うし、チームも選手も短命にならざるを得ません。
こういうビジネス部分が整ってくると、日本のeスポーツももっと安定的に発展していけるのかなと思ったりしました。
井ノ川:そのためにはもっとeスポーツに出資してくれる人たちが必要ですね。スポンサーの皆様、お待ちしています(笑)。
大盛況なストリーマー&VTuber大会への不安
井ノ川:eSports Worldはどちらかというと、eスポーツの競技面を中心に、ストイックに追いかけているメディアかなとは思っているんですが、その視点から見ると、いまeスポーツが盛り上がっているのはストリーマーのおかげなんじゃないか、という不安も感じています。
海外のeスポーツチームのウェブサイトを見てみると、競技の部門が記載されている中に、「ストリーマー」という部門があるチームはほとんど見つからない。公式ページで「ストリーマー部門がある」と明言している海外チームは少ないのではないかと思います。
宮下:なかなか攻めた話題ですね(笑)。たしかに日本は海外とちょっと違うかも。「クリエイター部門」とかはいくつかありますけどね。
井ノ川:いま日本のeスポーツ業界を支えているのは多分ストリーマーなんです。理由としてはやはり収益になるし、チームの知名度を高められるから。ただ、それってeスポーツをエンタメ化してしまっていないかとも思うんです。
競技で活躍して強さを証明するのが「eスポーツ」の見せ場だと思うんですけど、そこにカジュアルな要素が入ってきた。逆に今では、そのカジュアルな要素の方が、競技よりも収益が手っ取り早く上がってしまっている。
宮下:競技は競技、ストリーマーの配信はエンタメとして、切り分けて考えればいいのでは? 大会をじっくり観戦したい人と、面白おかしくゲーム配信を見たい人はそもそもニーズが違うし、後者の方が視聴数が多いのも仕方ない気がするけど。
井ノ川:それは分かるんですが、行き着く先はeスポーツはあまり本格的でなくてもいいという風潮になり、結果的に世界とのレベルが離れていくのではないかということを懸念しているんです。ストイックさが失われてしまうんじゃないかと。
宮下:日本にはまだ世界に通用するチームが少ないのは確かですからね。その中で、稼ぎどころを模索した結果、ストリーマーの存在が大きくなっているという背景もあるのかも。
井ノ川:ゴルフでカップに寄せたらポイントが入るような、競技とはかけ離れたカジュアルな大会の方が人気になっているんですが、そちらの方が魅力的になってしまうと、プロとしてやっていける土台が崩れてしまうのではないかと心配しています。
宮下:子どもたちの将来の夢は、まだ1位が「スポーツ選手」みたいだから、そこは大丈夫だと思いますけどね。まあ、「eスポーツ選手になりたい」ということと「ストリーマーやVTuberになりたい」というのは近いようで遠いんですが、セカンドキャリアとしてストリーマーを選ぶ人が多いのも、収益化しやすいという理由はありそうですね。
(続く)
【特集】 eスポーツ 2024-2025 言いたい放題
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