【特集】 eスポーツ 2024-2025 言いたい放題
【eSports World新春トーク】 eスポーツのセカンドキャリアは大丈夫? eスポーツ2024-2025 言いたい放題〈第4話〉
2024年のeスポーツ業界をひたすら追いかけ続けてきたeSports World編集部員ふたりが、2024年を振り返りつつ、2025年以降の展望についても語ってみた。
第4話は、相次ぐチーム・部門解散により若手選手が放出されているeスポーツのセカンドキャリアについて。ストリーマーやコーチになれるのも一握りの選手のみ。果たしてセカンドキャリアはしっかり確立されてきているのか?
井ノ川:2024年もたくさんの大会を取材したり、チームのオーナーや選手にもインタビューしてきましたが、気になってるのが「セカンドキャリア」です。
宮下:これ、ずっと言われ続けてますよね。特にFPSとかMOBAは若くして引退する選手も多いし。
井ノ川:セカンドキャリアっていうと目につくのはストリーマーへの転向ですが、Lazさんみたいに元々選手として人気がある方や、トーク力とか編集力がある人じゃないと難しそう。それで、eスポーツ選手のセカンドキャリア支援団体とかってないのかなと思って。
宮下:チームが直接やってるのでは?
井ノ川:チームや選手によって違うんですよ。SNSとかで華々しく「THANK YOU!」とか「ありがとうございました!」って感謝のポストは出るんだけど、その後に元プロのSNSを見ると特に就職している様子もなかったりして。
彼らは若い頃からゲームを一生懸命やってきて、逆に言えばそれしかやってこなかった。社会人経験はほとんどなくて、就職の仕方も分からないまま野放しにされてるんじゃないかなって、心配になってしまうんです。
宮下:eスポーツという実力主義の世界の残酷な一面かもしれませんね。競技タイトルやチームが増えてきたからこそ表面化してきた部分で、活躍できるのはひと握りの選手だけですし。
井ノ川:他のスポーツを見ると、JOCが運営している「アスナビ」みたいにセカンドキャリアを応援する仕組みはあるんですよ。プロ野球とかJリーグでも、引退した選手が支援している。ひとつのことに打ち込んできた人たちだからこそ、支援が必要な点は共通しています。
宮下:eスポーツ関連の支援団体はないの?
井ノ川:調べてみたら、ひとつの例としてCyGamesが『シャドウバース』の選手向けにキャリア支援プログラムをやっていました。エンタメ系全般を対象にした支援組織などもあるにはあるみたいですけど……。
https://www.cygames.co.jp/business/esports/
宮下:このシーズンオフでもチームの解散、部門解散とか結構ありましたしね。難しい問題ですね……。
井ノ川:コーチなどの道もあると思うんですが、難しいのはeスポーツはタイトルに特化した知識が必要なところで。FPS/TPSなどは共通でも、タイトルが違うと攻略のしかたは野球とサッカーくらいの違いがあるものもあります。
『VALORANT』と『CS2』で転向する人は結構いますけど、『フォートナイト』とか『Apex Legends』にあまり行かないのは、ノウハウが全然違うからだと思うんです。たとえ上手くても、プロやコーチとしてやれるかどうかはまた別の話で。
宮下:その意味では、eスポーツ選手って得意なゲーム以外はつぶしが効かないのかもね。XQQさんのように『オーバーウォッチ』や『レインボーシックス シージ』で活躍した人が『VALORANT』で活躍したケースもありますが、本人の強さとコーチに適しているかどうかも別ですから。
宮下:2024年は「もうeスポーツ、オワコンだろ」って言ってる人もちらほら出てきました。例えば、PC版の『PUBG: BATTLEGROUDS』とかは、日本では全盛期ほどの人気はないけど、サービスも継続していて世界大会もやっているのに……。『CS2』や『Dota 2』みたいに、世界ではとてつもなく人気なのに日本ではマイナーなビッグタイトルもたくさんあります。
それで、年末の「RTA in Japan」のレトロゲームを見ていて、何十年か後に「レトロeスポーツ」として生き残るゲームってあるのかなぁって思って。サーバーがなくなったらさすがに厳しいけど、いまは無理でも『マインクラフト』みたいに自前サーバーを立てられるようになったりするかもしれませんよね。
井ノ川:オワコンではないですが、『PUBG』とか『Apex Legends』みたいに運要素が強いタイトルは、これから厳しそうな気がしますね。たとえば、最初に持てる装備をポイント制で選べるようにするとか、公平性を担保した状態でゲームを始められればいいんだけど。
宮下:共感はできるけど、間違いなくバトロワファンからは批判が来ますよ(笑)。だって、その運要素があるからこそプレーしてて面白いところもあるんだから。
井ノ川:確かに実力ではどうしようもない、という場面での“神の引き”は、カジュアル層ならいいんですけど、eスポーツのプロの大会では運要素が少ない方が望ましいとは思うんです。
宮下:ゲームとしては人気でも、eスポーツとしては廃れてしまったりプレーヤーが減ってしまうこともあるかもしれませんね。メーカーの考え方も影響してきそう。
逆に、「70歳になっても遊んだり観戦できそうなeスポーツは?」と言われたら、どんなタイトルを思い浮かべます?
井ノ川:うーん、『ぷよぷよ』とか『テトリス』かなぁ。あと、レースゲームとかサッカーゲームみたいにスポーツに結びついたものも強いかも。私は「ストリートファイター」が好きなので観続けるかもしれませんが。
宮下:自分も同じで、これだけいまは『LoL』とか『VALORANT』を遊んでるし見てるのに、高齢者向けのeスポーツとかで採用されているタイトルばかり考えてしまって。その意味では、「東京eスポーツフェスタ」とか「全国都道府県対抗eスポーツ選手権」は時代を先取りしてるのかもしれません。
井ノ川:ただ、eスポーツとしての熱狂的な盛り上がりとかはないような気がする。
宮下:とか言いながら、『CS2』や『Dota 2』のように競技志向が強いゲームも20年近く人気が続いてるんですよね。
井ノ川:「ストリートファイター」シリーズも35周年ですね。歳を取ると新しいシステムやUIについていけなくなる人は増えそうだけど。
宮下:そう考えると、「若い人向け」と「普遍的なゲーム」の二極化が進むのかもしれない。あるいは「レトロeスポーツゲーム」として継続していくとか。
井ノ川:それもまた、eスポーツの今後のあり方としては面白いかもしれませんね。
(続く)
第4話は、相次ぐチーム・部門解散により若手選手が放出されているeスポーツのセカンドキャリアについて。ストリーマーやコーチになれるのも一握りの選手のみ。果たしてセカンドキャリアはしっかり確立されてきているのか?
宮下英之
eSports Worldの企画・立ち上げから関わっている中堅編集者。主に『LoL』のソロQに生息するも、これだけ攻略記事を企画しているのに一向にランクが上がらない万年ブロシル勢(もはやただの下手くそ)。みなさん、今年こそ一緒にランクアップしましょう。
eSports Worldの企画・立ち上げから関わっている中堅編集者。主に『LoL』のソロQに生息するも、これだけ攻略記事を企画しているのに一向にランクが上がらない万年ブロシル勢(もはやただの下手くそ)。みなさん、今年こそ一緒にランクアップしましょう。
井ノ川結希(いのかわゆう)
eSports Worldの企画・立ち上げから関わっている編集者兼ライター。『スト2』全盛期から格闘ゲームにどハマりするも、ふとしたきっかけで『Counter-Strike: Global Offensive』をプレーしFPSに足を突っ込む。そんなこんなで今では『VALORANT』がメインの担当に。ゴルフにはまりすぎてeスポーツ界隈の人とラウンドするきっかけをうかがってしまうゴルフ女子。
eSports Worldの企画・立ち上げから関わっている編集者兼ライター。『スト2』全盛期から格闘ゲームにどハマりするも、ふとしたきっかけで『Counter-Strike: Global Offensive』をプレーしFPSに足を突っ込む。そんなこんなで今では『VALORANT』がメインの担当に。ゴルフにはまりすぎてeスポーツ界隈の人とラウンドするきっかけをうかがってしまうゴルフ女子。
eスポーツのセカンドキャリア、今のままで大丈夫?
井ノ川:2024年もたくさんの大会を取材したり、チームのオーナーや選手にもインタビューしてきましたが、気になってるのが「セカンドキャリア」です。
宮下:これ、ずっと言われ続けてますよね。特にFPSとかMOBAは若くして引退する選手も多いし。
井ノ川:セカンドキャリアっていうと目につくのはストリーマーへの転向ですが、Lazさんみたいに元々選手として人気がある方や、トーク力とか編集力がある人じゃないと難しそう。それで、eスポーツ選手のセカンドキャリア支援団体とかってないのかなと思って。
👋
— Laz (@lazvell) August 26, 2024
みなさん長い間たくさんの応援をありがとうございました! https://t.co/OXFRlSmb38
宮下:チームが直接やってるのでは?
井ノ川:チームや選手によって違うんですよ。SNSとかで華々しく「THANK YOU!」とか「ありがとうございました!」って感謝のポストは出るんだけど、その後に元プロのSNSを見ると特に就職している様子もなかったりして。
彼らは若い頃からゲームを一生懸命やってきて、逆に言えばそれしかやってこなかった。社会人経験はほとんどなくて、就職の仕方も分からないまま野放しにされてるんじゃないかなって、心配になってしまうんです。
宮下:eスポーツという実力主義の世界の残酷な一面かもしれませんね。競技タイトルやチームが増えてきたからこそ表面化してきた部分で、活躍できるのはひと握りの選手だけですし。
井ノ川:他のスポーツを見ると、JOCが運営している「アスナビ」みたいにセカンドキャリアを応援する仕組みはあるんですよ。プロ野球とかJリーグでも、引退した選手が支援している。ひとつのことに打ち込んできた人たちだからこそ、支援が必要な点は共通しています。
宮下:eスポーツ関連の支援団体はないの?
井ノ川:調べてみたら、ひとつの例としてCyGamesが『シャドウバース』の選手向けにキャリア支援プログラムをやっていました。エンタメ系全般を対象にした支援組織などもあるにはあるみたいですけど……。
https://www.cygames.co.jp/business/esports/
宮下:このシーズンオフでもチームの解散、部門解散とか結構ありましたしね。難しい問題ですね……。
井ノ川:コーチなどの道もあると思うんですが、難しいのはeスポーツはタイトルに特化した知識が必要なところで。FPS/TPSなどは共通でも、タイトルが違うと攻略のしかたは野球とサッカーくらいの違いがあるものもあります。
『VALORANT』と『CS2』で転向する人は結構いますけど、『フォートナイト』とか『Apex Legends』にあまり行かないのは、ノウハウが全然違うからだと思うんです。たとえ上手くても、プロやコーチとしてやれるかどうかはまた別の話で。
宮下:その意味では、eスポーツ選手って得意なゲーム以外はつぶしが効かないのかもね。XQQさんのように『オーバーウォッチ』や『レインボーシックス シージ』で活躍した人が『VALORANT』で活躍したケースもありますが、本人の強さとコーチに適しているかどうかも別ですから。
オワコンなeスポーツ、長く続きそうなeスポーツとは?
宮下:2024年は「もうeスポーツ、オワコンだろ」って言ってる人もちらほら出てきました。例えば、PC版の『PUBG: BATTLEGROUDS』とかは、日本では全盛期ほどの人気はないけど、サービスも継続していて世界大会もやっているのに……。『CS2』や『Dota 2』みたいに、世界ではとてつもなく人気なのに日本ではマイナーなビッグタイトルもたくさんあります。
それで、年末の「RTA in Japan」のレトロゲームを見ていて、何十年か後に「レトロeスポーツ」として生き残るゲームってあるのかなぁって思って。サーバーがなくなったらさすがに厳しいけど、いまは無理でも『マインクラフト』みたいに自前サーバーを立てられるようになったりするかもしれませんよね。
井ノ川:オワコンではないですが、『PUBG』とか『Apex Legends』みたいに運要素が強いタイトルは、これから厳しそうな気がしますね。たとえば、最初に持てる装備をポイント制で選べるようにするとか、公平性を担保した状態でゲームを始められればいいんだけど。
宮下:共感はできるけど、間違いなくバトロワファンからは批判が来ますよ(笑)。だって、その運要素があるからこそプレーしてて面白いところもあるんだから。
井ノ川:確かに実力ではどうしようもない、という場面での“神の引き”は、カジュアル層ならいいんですけど、eスポーツのプロの大会では運要素が少ない方が望ましいとは思うんです。
宮下:ゲームとしては人気でも、eスポーツとしては廃れてしまったりプレーヤーが減ってしまうこともあるかもしれませんね。メーカーの考え方も影響してきそう。
逆に、「70歳になっても遊んだり観戦できそうなeスポーツは?」と言われたら、どんなタイトルを思い浮かべます?
井ノ川:うーん、『ぷよぷよ』とか『テトリス』かなぁ。あと、レースゲームとかサッカーゲームみたいにスポーツに結びついたものも強いかも。私は「ストリートファイター」が好きなので観続けるかもしれませんが。
宮下:自分も同じで、これだけいまは『LoL』とか『VALORANT』を遊んでるし見てるのに、高齢者向けのeスポーツとかで採用されているタイトルばかり考えてしまって。その意味では、「東京eスポーツフェスタ」とか「全国都道府県対抗eスポーツ選手権」は時代を先取りしてるのかもしれません。
井ノ川:ただ、eスポーツとしての熱狂的な盛り上がりとかはないような気がする。
宮下:とか言いながら、『CS2』や『Dota 2』のように競技志向が強いゲームも20年近く人気が続いてるんですよね。
井ノ川:「ストリートファイター」シリーズも35周年ですね。歳を取ると新しいシステムやUIについていけなくなる人は増えそうだけど。
宮下:そう考えると、「若い人向け」と「普遍的なゲーム」の二極化が進むのかもしれない。あるいは「レトロeスポーツゲーム」として継続していくとか。
井ノ川:それもまた、eスポーツの今後のあり方としては面白いかもしれませんね。
(続く)
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