【インタビュー】東京eスポーツフェスタ主催者に聞いた成長の秘訣とは
東京都および関連団体で構成される実行委員会が主催するeスポーツイベント「東京eスポーツフェスタ」は、2026年で7回目の開催を迎えた。会場となった東京ビッグサイトには、小池百合子東京都知事が来場するなど、東京都としての力の入れようは随所に見て取れた。

今回は主催を担う東京都の担当者に話をうかがいながら、「東京eスポーツフェスタ」が掲げる狙いや、現場で見えたeスポーツイベントが抱える構造的な課題について掘り下げていく。

——今年で7年目となる「東京eスポーツフェスタ」ですが、まずとっかかりとして、東京都がeスポーツに着目した理由をおうかがいしたいです。
根岸:eスポーツはゲームやアニメなどと同様に日本の優良な産業として、今後さらに成長していく分野だと考えていました。単なる競技としてだけでなく、機材や制作、配信、教育など、さまざまな関連産業が広がっていく可能性がある。そうした点に東京都として注目したのが大きなきっかけです。
——東京都がeスポーツに着目してから、どのような経緯で「東京eスポーツフェスタ」というイベントを開催するに至ったのでしょうか。
根岸:eスポーツ自体は、すでに民間主導で大会やイベントが開催されていました。一方で、eスポーツには年齢や障害の有無に関係なく、誰でも楽しめるという特性があります。東京都としては、そうした特長に改めて着目し、より多くの人がふれられる機会をつくりたいと考えました。
そのため、誰でも楽しめるイベントとして「東京eスポーツフェスタ」を開催し、eスポーツそのものの普及とあわせて、先ほどお話しした関連産業の振興にもつなげていこうと考えたのが、開催の背景です。
——eスポーツのイベントを都が主催すると聞いて、真っ先に思い浮かんだのが「スポーツ推進本部」でした。しかし実際に「東京eスポーツフェスタ」の運営を担っているのは、根岸さんが在籍されている「産業労働局」です。なぜ、eスポーツの担当が「産業労働局」なのでしょうか。
根岸:eスポーツは、身体を使うスポーツとは少し性質が異なる部分があります。特に事業を始めた当初は、今ほどeスポーツの認知度も高くなく、純粋な“スポーツ政策”として扱うのは難しい面もありました。
一方で、eスポーツにはゲーム開発、機材、配信、イベント運営、教育など、幅広い関連産業が存在します。東京都としては、そうした産業面の広がりに注目し、関連産業の活性化を図る観点から、東京eスポーツフェスタを始めた経緯がありますので、産業労働局が所管しています。
——なるほど。eスポーツを通じて企業や事業者にどう貢献していくのか、具体的な狙いはあったのでしょうか。
根岸:東京eスポーツフェスタは、競技大会だけでなく、企業や学校などが出展する展示会の要素も大きな特徴です。展示会を通じて事業者同士がつながり、商談が生まれたり、新たなビジネスチャンスにつながったりすることを期待しています。eスポーツという共通テーマのもとで、事業者が交流し、新しい取り組みや市場が生まれていく。そうした「産業展示会」としての役割も、このイベントには込めています。

——「東京eスポーツフェスタ」は一般入場が無料と、かなり気軽に参加しやすいイベントだと感じています。どういったターゲット層を期待していたのでしょうか。
根岸:eスポーツ自体が、年齢や経験を問わず、どなたでも楽しめるコンテンツだと考えています。eスポーツは一般的に若い世代を中心に人気が高い印象がありますが、特定の層にターゲットを絞るというよりも、お子さまから高齢の方まで、本当に幅広い方に来場していただきたいという思いがあります。
競技大会や展示会、体験ブース、プロチームのファンミーティングなど、さまざまなコンテンツを用意することで、当初は興味がなかったものに対しても、会場で新たな発見がある。そうした偶然の出会いも含めて楽しんでもらえる場にしたいと考えています。
——ちなみに、昨年(2025年)の来場者数は、3日間で約9,100人と公式サイトで発表されていました。今年もリアルとオンラインを併用したハイブリッド開催となりましたが、来場者数や全体の手応えについてはいかがでしたか。
根岸:3日間の延べ来場者数は約11,500人となり、オンライン動画配信の総視聴数も、会期中で約6万回に達しています。オフライン開催としては過去最多の数字になりました。
競技大会には小学生の参加もありますし、長くゲームに親しんできた、ベテラン層の方も多く来場されています。それに伴って、会場全体としても家族連れの方や、年齢層の高い方など、本当に幅広い方に足を運んでいただいている印象です。
フェスタとして掲げている“誰でも楽しめる”という狙いについては、来場者の構成を見ても、一定程度は実現できているのではないかと感じています。
——ある意味、狙いが刺さったって感じですね。

——実際に会場を拝見して、正直な印象としては「想像していたより来場者が少ない」と感じました。一方で、コンテンツ自体には、まだ広げられる余地もあるように思います。主催者として、現在の来場規模をどのように受け止めていらっしゃいますか。

根岸:初回開催時は、来場者数がおよそ8,000人規模でした。その後、コロナ禍の影響もあり、オンライン中心の開催を余儀なくされた時期には、どうしても数字が落ち込んでしまいました。そこからリアル開催を再開し、少しずつ来場者数は回復してきており、今年は3日間で約11,500人と、オフライン開催としては過去最多となっています。
ただし、数字が伸びているからといって、これで十分だとは考えていません。お話しいただいたように、内容面についても、まだ広げられる余地はあると認識しています。
ただ、フェスタは一般的な興行目的のイベントとは性質が異なり、“誰でも楽しめるイベント”というコンセプトのもとで開催しております。このコンセプト自体を大きく変えるつもりはありません。その軸は維持したうえで、毎年少しずつ内容をアップデートし、新しい要素を取り入れながら、これまでとは異なる層にもリーチしていきたいと考えています。
短期間で大きく伸ばすというよりは、フェスタとしての方向性を変えることなく、着実に来場者を増やしていく。その積み重ねが重要だと考えています。
——現時点で考えられる具体的な案はございますか?
根岸:「東京eスポーツフェスタ」は東京都だけで企画・運営しているものではなく、eスポーツ関連団体の皆さんと実行委員会形式で進めています。そのため、何かを一方的に決めて動かすというよりも、毎年、関係団体の意見を聞きながら内容を検討しています。
現時点で詳細な施策をお伝えできる段階ではありませんが、フェスタをより多くの方に楽しんでいただけるよう、次につながる新しい取り組みについては継続的に検討しています。
——来場者数の話とあわせて、展示会の出展社にも変化が出てきているように感じました。ここ数年を振り返ると、周辺機器や制作、教育といったeスポーツ業界内の事業者が中心だった時期から、eスポーツチームの出展が目立つ年があり、今年はヤマト運輸さんのように、eスポーツと直接関係のない企業の参加も増えている印象があります。こうした出展社の広がりについて、主催側としてはどのように受け止めていますか。
根岸:eスポーツと直接関係のない企業が出展してくださるのは、eスポーツそのものに魅力を感じていただいている証だと受け止めています。eスポーツをきっかけに、企業同士が新たなつながりを持ったり、相乗効果が生まれたりすることは、我々としても非常にありがたいことです。異業種も含めて、さまざまな立場の方に関わっていただけるイベントになってきていると感じています。

——産業振興という観点では、一定の成果が出ていると感じています。一方で、一般来場者に向けた告知や認知については、十分だったのか疑問も残りました。私自身、東京在住ですが、「東京eスポーツフェスタ」が東京ビッグサイトで開催されることを日常生活の中では把握できていませんでした。電車広告やテレビ、ラジオといったマスメディアを含めたプロモーションをあえて行わなかった理由や、何らかの制約があったのか、その点を教えてください。
根岸:特に制約があってマスメディアを使わなかった、というわけではありません。ただし行政としての事業ですので、予算が無尽蔵にあるわけではなく、その中で事業の目的やKPI(目標がどれだけ達成できたかを示す数字)を達成するために、どこにどれだけ予算を配分するかは常に検討が必要になります。
これまでも、毎年限られた予算の中で“より効果的だと考えた手法を選んできた”というのが実情です。そうした中で、今回のフェスタでは、SNS広告やYouTube広告などを中心に、比較的ターゲットを絞ってリーチできる手法を優先しました。その結果として、会場に来るまで情報が届きにくかった方がいた可能性はあると思います。
次年度以降についても、どのような形で周知していくのがより効果的なのか、改めて検討していきたいと考えています。

——会場を拝見して感じたのは、競技大会、ファンミーティング、企業ブースと、それぞれのコンテンツ単体では盛り上がっている一方で、来場者の動線がうまくつながっていないように見えた点です。それぞれが“点”としては成立しているものの、イベント全体として“線”になりきれていない。この点について、主催者としてはどのように受け止めていますか。

根岸:ご指摘の点は、複合的なイベントが抱えている難しさだと感じています。来場者が自分の興味のあるコンテンツだけを見て帰ってしまう、という状況は課題として認識しています。今回は、できるだけ多くのエリアを回ってもらうためにスタンプラリーを実施するなど、来場者の行動を後押しする仕掛けを用意しました。

——競技タイトルについてもおうかがいします。「東京eスポーツフェスタ」では、『太鼓の達人』や『パズドラ』といったタイトルが長年採用されてきました。一方で、『VALORANT』や『リーグ・オブ・レジェンド』のように、現在プロシーンで大きな盛り上がりを見せている世界的タイトルは扱われていません。こうしたタイトル選定には、どのような狙いや考え方があるのでしょうか。
根岸:「東京eスポーツフェスタ」は、「eスポーツの普及と関連産業の振興」というふたつの目的を掲げて開催しています。その中で、第1回から一貫して大切にしているのが、“誰でも楽しめるイベント”であるという点です。
そのため、基本的には年齢制限のない、CERO A(全年齢対象)のタイトルを中心に扱ってきました。eスポーツに初めてふれる方や、親子連れでも安心して参加できることを重視しています。
一方で、今年は新たな試みとして、CERO C(15歳以上対象)ではありますが、人気の高い『ストリートファイター6』を初めて採用しました。これは「これまでフェスタに足を運んでいなかった層にも来場していただくきっかけを作りたい」という狙いがありました。
また、産業振興という観点では、東京都として国内産業の振興を担う立場にあります。特に、都内の中小企業や国内IP(知的財産)を軸としたeスポーツ関連産業を支えていくことが重要だと考えており、タイトル選定においても、まずは国内タイトルを優先するという考え方を取っています。
——なるほど。つまりタイトル選定の背景には、“誰でも楽しめるイベント”という普及の軸と、国内産業を後押しするという産業振興の軸、その2軸があったということですね。その結果として、海外タイトルよりも国内IPを優先してきた、と。

——最後に、今後東京都としてeスポーツをどのように活用していきたいのか、現時点で描いている方向性やロードマップがあれば教えてください。
根岸:eスポーツは競技だけで完結するものではなく、教育や福祉、パラスポーツ的な要素など、さまざまな分野と横断的に結びつく可能性を持っています。
そのため「東京eスポーツフェスタ」としても、競技大会、展示、体験型コンテンツなどを組み合わせながら、毎年少しずつ内容をアップデートしていく形を取っています。
何かひとつの形に固定するというよりも、来場者に新しい発見を提供し続けられる場として、柔軟に進化させていきたいと考えています。
■関連サイト
東京eスポーツフェスタ公式サイト:
https://tokyoesportsfesta.jp

▲サウジアラビアeスポーツ連盟の会長を務めるファイサル・ビン・バンダル王子も来場。会場を視察したり、イベントに登壇したりと、「東京eスポーツフェスタ」への期待の高さがうかがえる
今回は主催を担う東京都の担当者に話をうかがいながら、「東京eスポーツフェスタ」が掲げる狙いや、現場で見えたeスポーツイベントが抱える構造的な課題について掘り下げていく。
“競技”だけじゃない——産業としてeスポーツを育てる、東京都の狙い

▲インタビューにお答えいただいたのは、産業労働局 商工部 海外販路開拓担当課長 根岸 太(ねぎし ふとし)さん
——今年で7年目となる「東京eスポーツフェスタ」ですが、まずとっかかりとして、東京都がeスポーツに着目した理由をおうかがいしたいです。
根岸:eスポーツはゲームやアニメなどと同様に日本の優良な産業として、今後さらに成長していく分野だと考えていました。単なる競技としてだけでなく、機材や制作、配信、教育など、さまざまな関連産業が広がっていく可能性がある。そうした点に東京都として注目したのが大きなきっかけです。
——東京都がeスポーツに着目してから、どのような経緯で「東京eスポーツフェスタ」というイベントを開催するに至ったのでしょうか。
根岸:eスポーツ自体は、すでに民間主導で大会やイベントが開催されていました。一方で、eスポーツには年齢や障害の有無に関係なく、誰でも楽しめるという特性があります。東京都としては、そうした特長に改めて着目し、より多くの人がふれられる機会をつくりたいと考えました。
そのため、誰でも楽しめるイベントとして「東京eスポーツフェスタ」を開催し、eスポーツそのものの普及とあわせて、先ほどお話しした関連産業の振興にもつなげていこうと考えたのが、開催の背景です。
——eスポーツのイベントを都が主催すると聞いて、真っ先に思い浮かんだのが「スポーツ推進本部」でした。しかし実際に「東京eスポーツフェスタ」の運営を担っているのは、根岸さんが在籍されている「産業労働局」です。なぜ、eスポーツの担当が「産業労働局」なのでしょうか。
東京都スポーツ推進本部とは
スポーツ・パラスポーツの振興、国際スポーツ大会の誘致・開催、スポーツ施設の管理運営、政策連携団体等との連携・協力などを推進する組織。
誰もがスポーツを楽しむ「世界に誇れるスポーツ拠点」の実現に向け、都民が気軽にスポーツやパラスポーツを楽しめる機会の充実、国際スポーツ大会の開催支援やスポーツ施設の管理運営などを行っている。
スポーツ・パラスポーツの振興、国際スポーツ大会の誘致・開催、スポーツ施設の管理運営、政策連携団体等との連携・協力などを推進する組織。
誰もがスポーツを楽しむ「世界に誇れるスポーツ拠点」の実現に向け、都民が気軽にスポーツやパラスポーツを楽しめる機会の充実、国際スポーツ大会の開催支援やスポーツ施設の管理運営などを行っている。
東京都産業労働局とは
東京の産業を活性化し、雇用の確保を図るためのさまざまな施策を推進する組織。産業や労働に関する課題に対し、商工、金融、産業・エネルギー、観光、農林水産、雇用就業の6つの分野で取組を行っている。
東京の産業を活性化し、雇用の確保を図るためのさまざまな施策を推進する組織。産業や労働に関する課題に対し、商工、金融、産業・エネルギー、観光、農林水産、雇用就業の6つの分野で取組を行っている。
根岸:eスポーツは、身体を使うスポーツとは少し性質が異なる部分があります。特に事業を始めた当初は、今ほどeスポーツの認知度も高くなく、純粋な“スポーツ政策”として扱うのは難しい面もありました。
一方で、eスポーツにはゲーム開発、機材、配信、イベント運営、教育など、幅広い関連産業が存在します。東京都としては、そうした産業面の広がりに注目し、関連産業の活性化を図る観点から、東京eスポーツフェスタを始めた経緯がありますので、産業労働局が所管しています。
——なるほど。eスポーツを通じて企業や事業者にどう貢献していくのか、具体的な狙いはあったのでしょうか。
根岸:東京eスポーツフェスタは、競技大会だけでなく、企業や学校などが出展する展示会の要素も大きな特徴です。展示会を通じて事業者同士がつながり、商談が生まれたり、新たなビジネスチャンスにつながったりすることを期待しています。eスポーツという共通テーマのもとで、事業者が交流し、新しい取り組みや市場が生まれていく。そうした「産業展示会」としての役割も、このイベントには込めています。

▲企業ブースエリアでは、さまざまな企業がブースを出展していた。企業や学校間での横のつながりに貢献しているようにも感じ取れる
——「東京eスポーツフェスタ」は一般入場が無料と、かなり気軽に参加しやすいイベントだと感じています。どういったターゲット層を期待していたのでしょうか。
根岸:eスポーツ自体が、年齢や経験を問わず、どなたでも楽しめるコンテンツだと考えています。eスポーツは一般的に若い世代を中心に人気が高い印象がありますが、特定の層にターゲットを絞るというよりも、お子さまから高齢の方まで、本当に幅広い方に来場していただきたいという思いがあります。
競技大会や展示会、体験ブース、プロチームのファンミーティングなど、さまざまなコンテンツを用意することで、当初は興味がなかったものに対しても、会場で新たな発見がある。そうした偶然の出会いも含めて楽しんでもらえる場にしたいと考えています。
——ちなみに、昨年(2025年)の来場者数は、3日間で約9,100人と公式サイトで発表されていました。今年もリアルとオンラインを併用したハイブリッド開催となりましたが、来場者数や全体の手応えについてはいかがでしたか。
根岸:3日間の延べ来場者数は約11,500人となり、オンライン動画配信の総視聴数も、会期中で約6万回に達しています。オフライン開催としては過去最多の数字になりました。
競技大会には小学生の参加もありますし、長くゲームに親しんできた、ベテラン層の方も多く来場されています。それに伴って、会場全体としても家族連れの方や、年齢層の高い方など、本当に幅広い方に足を運んでいただいている印象です。
フェスタとして掲げている“誰でも楽しめる”という狙いについては、来場者の構成を見ても、一定程度は実現できているのではないかと感じています。
——ある意味、狙いが刺さったって感じですね。

▲2020年から開催されている「東京eスポーツフェスタ」の来場者数推移。2021年〜22年はコロナ禍ということもあり、オフライン開催はなかったため、来場者数は0。そう考えると直近の3年は横ばい、もしくは微増といった形で来場者数に変化があるのが読み取れる
「産業としては成功、熱狂はこれから」——会場で感じた“静けさ”の課題
——実際に会場を拝見して、正直な印象としては「想像していたより来場者が少ない」と感じました。一方で、コンテンツ自体には、まだ広げられる余地もあるように思います。主催者として、現在の来場規模をどのように受け止めていらっしゃいますか。

▲会場は、言い方を変えれば「過ごしやすい」快適な空間ではあったが、「めちゃくちゃ盛り上がってる!」という雰囲気は感じ取れない静けさがあった
根岸:初回開催時は、来場者数がおよそ8,000人規模でした。その後、コロナ禍の影響もあり、オンライン中心の開催を余儀なくされた時期には、どうしても数字が落ち込んでしまいました。そこからリアル開催を再開し、少しずつ来場者数は回復してきており、今年は3日間で約11,500人と、オフライン開催としては過去最多となっています。
ただし、数字が伸びているからといって、これで十分だとは考えていません。お話しいただいたように、内容面についても、まだ広げられる余地はあると認識しています。
ただ、フェスタは一般的な興行目的のイベントとは性質が異なり、“誰でも楽しめるイベント”というコンセプトのもとで開催しております。このコンセプト自体を大きく変えるつもりはありません。その軸は維持したうえで、毎年少しずつ内容をアップデートし、新しい要素を取り入れながら、これまでとは異なる層にもリーチしていきたいと考えています。
短期間で大きく伸ばすというよりは、フェスタとしての方向性を変えることなく、着実に来場者を増やしていく。その積み重ねが重要だと考えています。
——現時点で考えられる具体的な案はございますか?
根岸:「東京eスポーツフェスタ」は東京都だけで企画・運営しているものではなく、eスポーツ関連団体の皆さんと実行委員会形式で進めています。そのため、何かを一方的に決めて動かすというよりも、毎年、関係団体の意見を聞きながら内容を検討しています。
現時点で詳細な施策をお伝えできる段階ではありませんが、フェスタをより多くの方に楽しんでいただけるよう、次につながる新しい取り組みについては継続的に検討しています。
——来場者数の話とあわせて、展示会の出展社にも変化が出てきているように感じました。ここ数年を振り返ると、周辺機器や制作、教育といったeスポーツ業界内の事業者が中心だった時期から、eスポーツチームの出展が目立つ年があり、今年はヤマト運輸さんのように、eスポーツと直接関係のない企業の参加も増えている印象があります。こうした出展社の広がりについて、主催側としてはどのように受け止めていますか。
根岸:eスポーツと直接関係のない企業が出展してくださるのは、eスポーツそのものに魅力を感じていただいている証だと受け止めています。eスポーツをきっかけに、企業同士が新たなつながりを持ったり、相乗効果が生まれたりすることは、我々としても非常にありがたいことです。異業種も含めて、さまざまな立場の方に関わっていただけるイベントになってきていると感じています。

▲インディーゲームを中心とした展示エリア。近年は、競技大会だけでなく、来場者が実際にゲームを体験できる出展も増えている
——産業振興という観点では、一定の成果が出ていると感じています。一方で、一般来場者に向けた告知や認知については、十分だったのか疑問も残りました。私自身、東京在住ですが、「東京eスポーツフェスタ」が東京ビッグサイトで開催されることを日常生活の中では把握できていませんでした。電車広告やテレビ、ラジオといったマスメディアを含めたプロモーションをあえて行わなかった理由や、何らかの制約があったのか、その点を教えてください。
根岸:特に制約があってマスメディアを使わなかった、というわけではありません。ただし行政としての事業ですので、予算が無尽蔵にあるわけではなく、その中で事業の目的やKPI(目標がどれだけ達成できたかを示す数字)を達成するために、どこにどれだけ予算を配分するかは常に検討が必要になります。
これまでも、毎年限られた予算の中で“より効果的だと考えた手法を選んできた”というのが実情です。そうした中で、今回のフェスタでは、SNS広告やYouTube広告などを中心に、比較的ターゲットを絞ってリーチできる手法を優先しました。その結果として、会場に来るまで情報が届きにくかった方がいた可能性はあると思います。
次年度以降についても、どのような形で周知していくのがより効果的なのか、改めて検討していきたいと考えています。

▲昨年の11月にイオンモールむさし村山1階サウスコートで開催された「東京eスポーツフェスタ2026プレイベントin多摩」。イオンモールという日常の中にeスポーツのイベントを入れ込むといった試みは、より多くの人にeスポーツの魅力を伝えるきっかけになったのではないだろうか
点で盛り上がり、線にならない——eスポーツイベントが抱える構造的課題
——会場を拝見して感じたのは、競技大会、ファンミーティング、企業ブースと、それぞれのコンテンツ単体では盛り上がっている一方で、来場者の動線がうまくつながっていないように見えた点です。それぞれが“点”としては成立しているものの、イベント全体として“線”になりきれていない。この点について、主催者としてはどのように受け止めていますか。

▲eスポーツチームのファンイベントには多くのファンが集まっていたが、そこから他のエリアへ回遊していく動きは限定的だった。競技大会においても、試合を終えた参加者や観戦者が、次の体験へ自然につながっていく流れはあまり見られない。結果として、目的のブースだけを訪れて会場を後にする来場動線が目立っていた
根岸:ご指摘の点は、複合的なイベントが抱えている難しさだと感じています。来場者が自分の興味のあるコンテンツだけを見て帰ってしまう、という状況は課題として認識しています。今回は、できるだけ多くのエリアを回ってもらうためにスタンプラリーを実施するなど、来場者の行動を後押しする仕掛けを用意しました。

▲会場内に点在するスタンプを集めて福引きに参加できるスタンプラリー。来場者に会場全体を回ってもらう狙いは感じられる一方で、体験そのものよりも、スタンプを集める行為が目的化してしまう側面も見受けられた
——競技タイトルについてもおうかがいします。「東京eスポーツフェスタ」では、『太鼓の達人』や『パズドラ』といったタイトルが長年採用されてきました。一方で、『VALORANT』や『リーグ・オブ・レジェンド』のように、現在プロシーンで大きな盛り上がりを見せている世界的タイトルは扱われていません。こうしたタイトル選定には、どのような狙いや考え方があるのでしょうか。
根岸:「東京eスポーツフェスタ」は、「eスポーツの普及と関連産業の振興」というふたつの目的を掲げて開催しています。その中で、第1回から一貫して大切にしているのが、“誰でも楽しめるイベント”であるという点です。
そのため、基本的には年齢制限のない、CERO A(全年齢対象)のタイトルを中心に扱ってきました。eスポーツに初めてふれる方や、親子連れでも安心して参加できることを重視しています。
一方で、今年は新たな試みとして、CERO C(15歳以上対象)ではありますが、人気の高い『ストリートファイター6』を初めて採用しました。これは「これまでフェスタに足を運んでいなかった層にも来場していただくきっかけを作りたい」という狙いがありました。
また、産業振興という観点では、東京都として国内産業の振興を担う立場にあります。特に、都内の中小企業や国内IP(知的財産)を軸としたeスポーツ関連産業を支えていくことが重要だと考えており、タイトル選定においても、まずは国内タイトルを優先するという考え方を取っています。
——なるほど。つまりタイトル選定の背景には、“誰でも楽しめるイベント”という普及の軸と、国内産業を後押しするという産業振興の軸、その2軸があったということですね。その結果として、海外タイトルよりも国内IPを優先してきた、と。

▲国内IPとして絶大な人気を誇っている『ストリートファイター6』は、「東京eスポーツフェスタ」で初の採用タイトルとなった。予選では多くのプレーヤーが参加しているのがうかがえる
——最後に、今後東京都としてeスポーツをどのように活用していきたいのか、現時点で描いている方向性やロードマップがあれば教えてください。
根岸:eスポーツは競技だけで完結するものではなく、教育や福祉、パラスポーツ的な要素など、さまざまな分野と横断的に結びつく可能性を持っています。
そのため「東京eスポーツフェスタ」としても、競技大会、展示、体験型コンテンツなどを組み合わせながら、毎年少しずつ内容をアップデートしていく形を取っています。
何かひとつの形に固定するというよりも、来場者に新しい発見を提供し続けられる場として、柔軟に進化させていきたいと考えています。
■関連サイト
東京eスポーツフェスタ公式サイト:
https://tokyoesportsfesta.jp
※本記事は取材内容をもとに編集部で構成し、掲載にあたり関係者による事実確認および内容調整を行っています。
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