【インタビュー】あえて“プロ選手だけをゴールにしない”eスポーツスクール——ZETA DIVISION GAMING ACADEMYの狙いとは
国内eスポーツシーンの盛り上がりを皮切りに、日本のeスポーツ教育市場も大きく変化。専門学校型のeスポーツスクールが急増している。しかし、プロゲーマー輩出率はおろか、就職実績も曖昧な内容にとどまるケースが散見されるのが現状だ。
こうしたeスポーツ専門学校では、プロゲーマーとして輩出されている人数自体が少ない点に加え、輩出されたとしても、国内最前線で活躍し続けている選手がどれだけいるのかという点にも疑問が残る。現在の国内トッププロの多くは、専門学校出身ではなくアマチュアコミュニティや独学で頭角を現している。そういった観点からも、eスポーツ専門学校は「夢を売るビジネスなのではないか」という批判も一定数あるのが現状だ。
そうした状況下で、eスポーツチームZETA DIVISIONを運営するGANYMEDE株式会社と、さまざまな専門スクールを運営している株式会社バンタンがタッグを組み、まったく新しいeスポーツスクール「ZETA DIVISION GAMING ACADEMY powered by VANTAN」が2027年4月から開校することが発表された。

プロ選手育成だけではなく、イベントプランナー・ディレクター・クリエイターなどのビジネス人材育成に注力するとしており、従来の批判を意識した設計とも読める。
今回は「ZETA DIVISION GAMING ACADEMY powered by VANTAN」のキーマンでもあるGANYMEDE株式会社 執行役員 千葉 哲郎氏にインタビューを実施。本校が目指すビジョンとは、既存のeスポーツ専門学校とは何が違うのかなどをうかがった。
——まずGANYMEDEがeスポーツ教育事業に着目した背景を教えてください。
千葉:このスクールを立ち上げようと考えた最も大きな理由は、eスポーツ産業を支える“裏方人材”が圧倒的に不足しているという課題感です。
ここ数年でeスポーツ大会やゲームイベントの規模はどんどん大きくなり、メジャーなエンタメコンテンツと肩を並べるレベルまで成長してきた実感があります。ただその一方で、それらのイベントやコンテンツを制作したり、選手やインフルエンサーをマネジメントしたり、といったビジネスサイドの人材供給が追いついていない状況を日々感じていました。
今のeスポーツ産業の成長を止めないためにも、我々が積み上げてきたノウハウを次世代に還元していくことが必要なのではないかと考えたのです。
——eスポーツの学科を持つ専門学校は年々増えてきています。数あるeスポーツ・ゲーム系の教育機関の中で、なぜバンタンをパートナーに選んだのですか。
千葉:バンタンさまとの連携を決めた要因は、大きく分けるとふたつあります。ひとつ目はなんといっても創立60周年という実績です。専門スクールという、若者の貴重な人生の一部をお預かりする事業を始める上で、実績に裏打ちされた安心感は何よりも大切だと考えていました。
ふたつ目は、最前線のトレンドをリアルタイムで授業に落とし込めるカリキュラムの柔軟性です。バンタンさまの大きな特徴でもある自由度の高い運営スタイルが本スクール事業を成功させる上でベストだと考えたんです。
——具体的に指導に当たるのはZETA DIVISIONの現役スタッフですか。別途採用した講師でしょうか。
千葉:講師に関しては現在お声がけを進めている最中で、契約ができた段階で順次アナウンスしていく予定でございます。
——本校の魅力のひとつとして特別講師が挙げられます。実際にZETA DIVISION所属の選手やスタッフが特別講師として登壇する機会は年にどれくらい予定されていますか?
千葉:特別講師の登壇回数については、現時点で明確に「年に何回」といった回数は決めておりません。講師ごとのスケジュールにも左右されるため、柔軟に調整していく想定です。
ただ、できる限り多くの機会を設けたいと考えています。例えば、大阪でイベントがあった際にそのまま大阪校へ立ち寄ってもらうなど、比較的カジュアルな形での登壇も実現できれば理想的ですね。
実際に、開講発表会で紹介したストリーマー以外のメンバーも、本企画に賛同してくれて、「何か協力できることがあればぜひ関わりたい」といった声を多くいただいています。
本取り組みは、講師側にとっても自身のコンテンツ制作や活動に直結する価値のあるものとしてとらえているので、メンバーによっては積極的に関わってくれることを期待しています。



——本校の特徴を見て改めて感じたのは、「プロ選手を輩出すること」だけに重きを置いていないという印象を受けました。どちらかというとeスポーツ業界全体を底上げするような、そういった意図が感じられました。

千葉:おっしゃる通りで、その点は非常にシンプルな考えに基づいています。私たちはeスポーツチームを運営する立場として、プロゲーマーという職業の難しさを誰よりも理解しているつもりです。
非常に狭き門であるうえに、仮にプロになれたとしても長く活躍し続けられるのはほんの一握りです。だからこそ、スクール側がプロ輩出を前面に押し出すことには、ある種の責任が伴うと考えています。
もちろん、プロを目指すこと自体はとても尊いことです。ただ、その厳しさを理解しているからこそ、eスポーツに熱中した経験を起点に、たとえ選手としての道が叶わなかった場合でも、自分の得意分野を見つけて業界の中で活躍できる道を提示したいと考えています。
そのため、本校はプロゲーマーの育成に特化するのではなく、将来的に裏方も含めてeスポーツ業界の中で仕事を得られる人材を育てることに重きを置いています。
——千葉さんのお話を聞いて、ものすごく安心できました。eスポーツスクールの中には、「プロ選手を目指せる」といった側面が強く打ち出されているケースも多く見受けられます。しかし実際には、その道は非常に狭き門であり、長く活躍し続けられるのはごく一部のプレーヤーに限られるのが現実です。そうした中で、本校のようにプロという選択肢だけでなく、ビジネスサイドや裏方としてeスポーツ業界に関わり続けられる道をしっかり提示している点は、非常に現実的であり、業界全体の広がりにもつながる取り組みだと感じました。
千葉:プロ選手になれる道は狭いけど、ビジネスサイドであればeスポーツの業界という裾野は非常に広いですしね。
——なるほど。すべて合点がいきました。つまり、1年次にeスポーツ実技を設けている点についても、突出した才能を持つプレーヤーであればプロの道に進む可能性を残しつつ、それ以外の生徒に対しても適性に応じた進路へと導くための設計なのだということなんですね。
千葉:おっしゃる通りです。私たちとしても、そうした形でeスポーツに関わる人材を増やしていきたいと考えています。
——今回タッグを組んだバンタン株式会社は、学校法人ではない企業法人のスクールです。「ZETA DIVISION GAMING ACADEMY powered by VANTAN」が、あえてこのバンタンとの提携を選んだ理由を教えてください。
千葉:言い方を変えると「企業法人だからこそタッグを組んだ」というのが近いと思います。
ご存じの通り、eスポーツの競技シーンの変化はめまぐるしく、日々進化しています。新たなゲームタイトルが突然、競技シーンの最前線に立つことも珍しくありません。
そうした変化に対応しながらカリキュラムをアップデートしていくには、スピードが非常に重要になります。しかし学校法人の場合、新しいカリキュラムを導入するためには申請や審査といったプロセスが必要となり、実際に反映されるまでに2〜3年かかるケースもあります。
eスポーツ業界にとって2〜3年って、めちゃめちゃ環境が変化するじゃないですか。だからこそ、変化に即応できる柔軟性を重視し、企業法人スクールという形を選択しました。
新しい動きに対して、即座にカリキュラムへ落とし込める点は、本校の大きな強みだと考えています。

——今回タッグを組んだバンタンにも「バンタンゲームアカデミー」というeスポーツに特化した学部があります。既存の専門部との違いを教えてください。
千葉:他校との比較という形でお話しするのは難しい部分もありますが、本校の特徴としては、現場に近い経験を得られる機会の多さが挙げられると思います。
また、特別講師として関わっていただける方の数も非常に多く、通常であれば限られた機会でしか接点を持てないようなメンバーと、比較的高い頻度で関われる環境を用意できると考えています。そうした環境の中で得られるのは、単なる知識や技術だけではなく、「業界の中にいる感覚」だと思っています。
eスポーツ業界を目指す上で、実際にその最前線で活躍している人たちと日常的に接点を持てることは大きな意味を持ちますし、環境が人を育てるという観点でも、視座の引き上げにつながるのではないかと考えています。結果として、ZETA DIVISIONの目線で物事をとらえられるようになる点は、本校ならではの価値のひとつだと思います。
——本校を卒業した後のキャリアについてですが、例えばGANYMEDE株式会社への就職など、運営側との接点はどのように考えられているのでしょうか。
千葉:優先的に採用するといった形で明言してしまうのは難しいのですが、優秀な人材であれば、まずは私たちから声をかけたいという思いはあります。
一方で、仮に他のチームや企業を志望しているのであれば、それも当然尊重されるべきだと考えています。明確に「毎年何名を採用する」といった枠があるわけではありませんが、私たちとしてはしっかりと向き合って育てていく以上、その中からZETA DIVISIONに加わってくれる人材が出てくれば非常にうれしいです。
また、仮にほかのチームやほかの制作会社など別のフィールドに進んだとしても、現場で再会できるような関係性を築けることが理想だと考えています。
——eスポーツを題材とする教育環境を長続きさせるのは難しいことなのかなと感じていますが、本スクール事業を長期的に継続させるための仕組みはどのように設計していますか?
千葉:この点については、株式会社バンタンとタッグを組んでいること自体が大きなポイントだと考えています。
バンタンは長年にわたって教育事業を続けてきた実績があり、運営面での知見や基盤がしっかりしています。私たちとしても短期的な取り組みではなく、長期的に継続していく前提で本スクールを設計しています。また、eスポーツ業界はトレンドの変化が非常に速く、新しいタイトルが台頭したり、これまで主流ではなかったジャンルが一気に広がることも珍しくありません。こうした変化は避けて通れないものだと認識しています。
だからこそ、本校では特定のタイトルに依存するのではなく、トレンドを読み解く力や本質を見極める力といった、変化に対応できるスキルの育成にも力を入れています。
そのうえで、新しい動きに対してはできるだけ早く対応していくことも重視しています。特に最近ではZETA DIVISIONの所属メンバー自身がトレンドを生み出すケースも少なくないので、その意味ではトレンドへのキャッチアップはどこよりも早いのではないかと思います。

——最後に、本校への入校を検討している読者に向けてメッセージをお願いします。
千葉:eスポーツという領域はまだ新しく、今後どのような発展を遂げて行くのか予想できない部分があるのも事実だと思います。ただ、僕らとしては一過性のものではなく、これから産業としても文化としても大きくなっていく分野だと感じています。
その中で、自分もその一員として関われるチャンスがあるというのは、すごく面白い環境なんじゃないかなと思います。
また、ZETA DIVISIONの選手やストリーマーの活動を身近に感じながら、「自分もこの世界に関わっている」という実感を持てる環境でもあるので、モチベーションを保ちながら取り組んでもらえるのではないかと思っています。
そういった中で、自分なりの目標や情熱を持って取り組んでくれる子たちと出会えたらうれしいなと思っています。
——ありがとうございました!
千葉さんとの対談を通して感じたのは、株式会社GANYMEDEがeスポーツを単なる競技シーンの枠を超えて、ひとつの“カルチャー”として根付かせようとしている強い意思だった。
プロ選手の輩出だけをゴールとするのではなく、その先にある多様な関わり方や、業界全体の広がりまでを見すえた設計。そこには、これまでのeスポーツ教育に対する課題意識と、それを乗り越えようとする明確な思想が感じられた。
そして、この理念は6年前にインタビューを行ったGANYMEDE株式会社 代表・西原大輔氏の言葉にも通じるものがある。当時、西原さんはeスポーツについて「強さだけじゃ足りない。いまeスポーツ選手に必要なのは格好よさだ」と語っていた。
参考インタビュー:
強さだけじゃ足りない。いまeスポーツ選手に必要なのは格好よさ【JUPITERオーナー 西原大輔氏インタビュー】
競技としての強さだけでなく、その先にある魅力や価値までを含めてeスポーツをとらえる視点。もしかすると、あの時、すでにeスポーツを競技の枠にとどめず、ひとつのカルチャーへと昇華させていく構想があったのかもしれない。
国内でeスポーツが広がりを見せる中で、教育という文脈もまた変化の途上にある。選択肢が増えたこと自体は歓迎すべきことだが、その一方で「どの道を選ぶか」はこれまで以上に個人の判断に委ねられる時代になったともいえる。
だからこそ、これからeスポーツの道を志す人にとって重要なのは、「どの学校に行くか」だけではなく、「その先で何をしたいのか」という視点だろう。余談だが、筆者自身も「なんとなく」で進学先を決めて、盛大に遠回りをした口だ。その経験があるからこそ、「進む前に、少しだけ先を想像してみてほしい」と若者に伝えたい。
進学先が認可校であれ無認可校であれ、それ自体が正解かどうかは後になってみないと分からない。ただ、選択の軸を持たないまま進んでしまうと、その後の修正に大きなエネルギーが必要になる。「ZETA DIVISION GAMING ACADEMY powered by VANTAN」が、悩める若者にとっての道しるべとなってくれることを切に願う。
先述したとおり、「ZETA DIVISION GAMING ACADEMY powered by VANTAN」の開校は2027年4月。開校に先立ち、2026年4月12日(日)には、特別イベント第一弾としてcrow&Lazが登壇するスペシャルイベントが開催される。気になる人はぜひ下記ポストもチェックしてほしい。
■関連リンク
ZETA DIVISION GAMING ACADEMY powered by VANTAN:
https://www.vantan.co.jp/zetadivision/
ZETA DIVISION GAMING ACADEMY POWERED BY VANTAN 公式X:
https://x.com/zetadivision_ac
株式会社バンタン:
https://vantan.jp
撮影:いのかわゆう
編集:いのかわゆう
こうしたeスポーツ専門学校では、プロゲーマーとして輩出されている人数自体が少ない点に加え、輩出されたとしても、国内最前線で活躍し続けている選手がどれだけいるのかという点にも疑問が残る。現在の国内トッププロの多くは、専門学校出身ではなくアマチュアコミュニティや独学で頭角を現している。そういった観点からも、eスポーツ専門学校は「夢を売るビジネスなのではないか」という批判も一定数あるのが現状だ。
そうした状況下で、eスポーツチームZETA DIVISIONを運営するGANYMEDE株式会社と、さまざまな専門スクールを運営している株式会社バンタンがタッグを組み、まったく新しいeスポーツスクール「ZETA DIVISION GAMING ACADEMY powered by VANTAN」が2027年4月から開校することが発表された。

▲開校発表会の様子。左からGANYMEDE株式会社 執行役員 事業開発部 部長 千葉 哲郎(ちば てつろう)氏、GANYMEDE株式会社 代表取締役 西原 大輔(にしはら だいすけ)氏、ZETA DIVISION クリエイター部門所属 crow(くろう)氏、株式会社バンタン 代表取締役社長 木村 良輔(きむら りょうすけ)氏
プロ選手育成だけではなく、イベントプランナー・ディレクター・クリエイターなどのビジネス人材育成に注力するとしており、従来の批判を意識した設計とも読める。
今回は「ZETA DIVISION GAMING ACADEMY powered by VANTAN」のキーマンでもあるGANYMEDE株式会社 執行役員 千葉 哲郎氏にインタビューを実施。本校が目指すビジョンとは、既存のeスポーツ専門学校とは何が違うのかなどをうかがった。
あえて「プロゲーマー育成に特化しない」——ZETAが語るeスポーツ教育の現実
——まずGANYMEDEがeスポーツ教育事業に着目した背景を教えてください。
千葉:このスクールを立ち上げようと考えた最も大きな理由は、eスポーツ産業を支える“裏方人材”が圧倒的に不足しているという課題感です。
ここ数年でeスポーツ大会やゲームイベントの規模はどんどん大きくなり、メジャーなエンタメコンテンツと肩を並べるレベルまで成長してきた実感があります。ただその一方で、それらのイベントやコンテンツを制作したり、選手やインフルエンサーをマネジメントしたり、といったビジネスサイドの人材供給が追いついていない状況を日々感じていました。
今のeスポーツ産業の成長を止めないためにも、我々が積み上げてきたノウハウを次世代に還元していくことが必要なのではないかと考えたのです。
——eスポーツの学科を持つ専門学校は年々増えてきています。数あるeスポーツ・ゲーム系の教育機関の中で、なぜバンタンをパートナーに選んだのですか。
千葉:バンタンさまとの連携を決めた要因は、大きく分けるとふたつあります。ひとつ目はなんといっても創立60周年という実績です。専門スクールという、若者の貴重な人生の一部をお預かりする事業を始める上で、実績に裏打ちされた安心感は何よりも大切だと考えていました。
ふたつ目は、最前線のトレンドをリアルタイムで授業に落とし込めるカリキュラムの柔軟性です。バンタンさまの大きな特徴でもある自由度の高い運営スタイルが本スクール事業を成功させる上でベストだと考えたんです。
——具体的に指導に当たるのはZETA DIVISIONの現役スタッフですか。別途採用した講師でしょうか。
千葉:講師に関しては現在お声がけを進めている最中で、契約ができた段階で順次アナウンスしていく予定でございます。
——本校の魅力のひとつとして特別講師が挙げられます。実際にZETA DIVISION所属の選手やスタッフが特別講師として登壇する機会は年にどれくらい予定されていますか?
千葉:特別講師の登壇回数については、現時点で明確に「年に何回」といった回数は決めておりません。講師ごとのスケジュールにも左右されるため、柔軟に調整していく想定です。
ただ、できる限り多くの機会を設けたいと考えています。例えば、大阪でイベントがあった際にそのまま大阪校へ立ち寄ってもらうなど、比較的カジュアルな形での登壇も実現できれば理想的ですね。
実際に、開講発表会で紹介したストリーマー以外のメンバーも、本企画に賛同してくれて、「何か協力できることがあればぜひ関わりたい」といった声を多くいただいています。
本取り組みは、講師側にとっても自身のコンテンツ制作や活動に直結する価値のあるものとしてとらえているので、メンバーによっては積極的に関わってくれることを期待しています。



▲本校ではZETA DIVISION所属のメンバーやGANYMEDE所属の社員などが特別講師として登壇することもあるとのこと。メンバーの中には、Lazやcrowといった世界大会を経験した元プロ選手も名を連ねている。千葉氏によると、さらに特別講師の数は増えるとのこと
——本校の特徴を見て改めて感じたのは、「プロ選手を輩出すること」だけに重きを置いていないという印象を受けました。どちらかというとeスポーツ業界全体を底上げするような、そういった意図が感じられました。

▲カリキュラムの基本的な流れ。興味深いのが「eスポーツ実技」が1年次にしかないというところ。つまり、この段階でプロ選手になれる素養があるのか、それともeスポーツ業界人として就業を目指すのかというジャッジが行われ、2年次以降は、しっかりと生徒に合ったカリキュラムが学べると行った仕組みになっているのだ
千葉:おっしゃる通りで、その点は非常にシンプルな考えに基づいています。私たちはeスポーツチームを運営する立場として、プロゲーマーという職業の難しさを誰よりも理解しているつもりです。
非常に狭き門であるうえに、仮にプロになれたとしても長く活躍し続けられるのはほんの一握りです。だからこそ、スクール側がプロ輩出を前面に押し出すことには、ある種の責任が伴うと考えています。
もちろん、プロを目指すこと自体はとても尊いことです。ただ、その厳しさを理解しているからこそ、eスポーツに熱中した経験を起点に、たとえ選手としての道が叶わなかった場合でも、自分の得意分野を見つけて業界の中で活躍できる道を提示したいと考えています。
そのため、本校はプロゲーマーの育成に特化するのではなく、将来的に裏方も含めてeスポーツ業界の中で仕事を得られる人材を育てることに重きを置いています。
——千葉さんのお話を聞いて、ものすごく安心できました。eスポーツスクールの中には、「プロ選手を目指せる」といった側面が強く打ち出されているケースも多く見受けられます。しかし実際には、その道は非常に狭き門であり、長く活躍し続けられるのはごく一部のプレーヤーに限られるのが現実です。そうした中で、本校のようにプロという選択肢だけでなく、ビジネスサイドや裏方としてeスポーツ業界に関わり続けられる道をしっかり提示している点は、非常に現実的であり、業界全体の広がりにもつながる取り組みだと感じました。
千葉:プロ選手になれる道は狭いけど、ビジネスサイドであればeスポーツの業界という裾野は非常に広いですしね。
——なるほど。すべて合点がいきました。つまり、1年次にeスポーツ実技を設けている点についても、突出した才能を持つプレーヤーであればプロの道に進む可能性を残しつつ、それ以外の生徒に対しても適性に応じた進路へと導くための設計なのだということなんですね。
千葉:おっしゃる通りです。私たちとしても、そうした形でeスポーツに関わる人材を増やしていきたいと考えています。
即応性を重視したカリキュラムと卒業後の道筋
——今回タッグを組んだバンタン株式会社は、学校法人ではない企業法人のスクールです。「ZETA DIVISION GAMING ACADEMY powered by VANTAN」が、あえてこのバンタンとの提携を選んだ理由を教えてください。
学校法人と企業法人スクールの違い
学校法人とは、認可校とも呼ばれ、さまざまな条件を満たさなければならない。その例として、下記のような基準が設けられている。
■専門学校(専修学校)レベルの主な基準
・最低でも1年以上のカリキュラムを有すること
・年間の授業時間が800時間以上(夜間課程は450時間以上)
・体系的な教育課程(授業内容・評価基準など)が整備されている
これらは文部科学省が定める「専修学校設置基準」に基づくものであり、例えば授業時間については 「一年間にわたり800時間以上」と明確に規定されている。 また、夜間課程についても 「450時間を下ることができない」とされており、教育の質を担保するための最低基準が設けられている。 (出典:https://www.mext.go.jp/a_menu/shougai/senshuu/04062901.htm)
一方で、認可校には制度的なメリットも存在する。卒業時に「専門士」の称号が付与され、学歴として公的に認められる点はその代表格だ。また、日本学生支援機構の奨学金や通学定期の学割といった公的支援も利用できる。進路の選択肢や経済的なサポートという観点では、認可校ならではの強みといえる。
対してバンタンのような企業法人によるスクールは、無認可校に分類され、上記のような厳格な基準を満たす必要がないため、比較的自由に設計・運営できるという特徴がある。
■企業法人スクールの主なメリット
・カリキュラムの自由度が高い(最新分野に対応し、実践的な教育環境を提供しやすい)
・入学条件が柔軟(学歴・年齢などの制限が緩い)
・短期間・低コストで学べるケースが多い
つまり、企業法人スクールは学校法人に比べて入学しやすく、業界の変化に即対応できるというメリットがある。一方で、学歴として認められない、公的支援(奨学金・学割など)が受けづらい、卒業後の進路が制度的に保証されないといった側面もある。そのため、企業法人スクールは実力次第で評価が決まる環境であり、目的やキャリア設計を明確にした上で選択することが重要である。
学校法人とは、認可校とも呼ばれ、さまざまな条件を満たさなければならない。その例として、下記のような基準が設けられている。
■専門学校(専修学校)レベルの主な基準
・最低でも1年以上のカリキュラムを有すること
・年間の授業時間が800時間以上(夜間課程は450時間以上)
・体系的な教育課程(授業内容・評価基準など)が整備されている
これらは文部科学省が定める「専修学校設置基準」に基づくものであり、例えば授業時間については 「一年間にわたり800時間以上」と明確に規定されている。 また、夜間課程についても 「450時間を下ることができない」とされており、教育の質を担保するための最低基準が設けられている。 (出典:https://www.mext.go.jp/a_menu/shougai/senshuu/04062901.htm)
一方で、認可校には制度的なメリットも存在する。卒業時に「専門士」の称号が付与され、学歴として公的に認められる点はその代表格だ。また、日本学生支援機構の奨学金や通学定期の学割といった公的支援も利用できる。進路の選択肢や経済的なサポートという観点では、認可校ならではの強みといえる。
対してバンタンのような企業法人によるスクールは、無認可校に分類され、上記のような厳格な基準を満たす必要がないため、比較的自由に設計・運営できるという特徴がある。
■企業法人スクールの主なメリット
・カリキュラムの自由度が高い(最新分野に対応し、実践的な教育環境を提供しやすい)
・入学条件が柔軟(学歴・年齢などの制限が緩い)
・短期間・低コストで学べるケースが多い
つまり、企業法人スクールは学校法人に比べて入学しやすく、業界の変化に即対応できるというメリットがある。一方で、学歴として認められない、公的支援(奨学金・学割など)が受けづらい、卒業後の進路が制度的に保証されないといった側面もある。そのため、企業法人スクールは実力次第で評価が決まる環境であり、目的やキャリア設計を明確にした上で選択することが重要である。
千葉:言い方を変えると「企業法人だからこそタッグを組んだ」というのが近いと思います。
ご存じの通り、eスポーツの競技シーンの変化はめまぐるしく、日々進化しています。新たなゲームタイトルが突然、競技シーンの最前線に立つことも珍しくありません。
そうした変化に対応しながらカリキュラムをアップデートしていくには、スピードが非常に重要になります。しかし学校法人の場合、新しいカリキュラムを導入するためには申請や審査といったプロセスが必要となり、実際に反映されるまでに2〜3年かかるケースもあります。
eスポーツ業界にとって2〜3年って、めちゃめちゃ環境が変化するじゃないですか。だからこそ、変化に即応できる柔軟性を重視し、企業法人スクールという形を選択しました。
新しい動きに対して、即座にカリキュラムへ落とし込める点は、本校の大きな強みだと考えています。

▲「ZETA DIVISION GAMING ACADEMY powered by VANTAN」は大きく分けて高等部、専門部、大学部の3つの部門に分かれており、提携する通信学校と連携することで、学歴が取得できる道筋も担保されている
——今回タッグを組んだバンタンにも「バンタンゲームアカデミー」というeスポーツに特化した学部があります。既存の専門部との違いを教えてください。
千葉:他校との比較という形でお話しするのは難しい部分もありますが、本校の特徴としては、現場に近い経験を得られる機会の多さが挙げられると思います。
また、特別講師として関わっていただける方の数も非常に多く、通常であれば限られた機会でしか接点を持てないようなメンバーと、比較的高い頻度で関われる環境を用意できると考えています。そうした環境の中で得られるのは、単なる知識や技術だけではなく、「業界の中にいる感覚」だと思っています。
eスポーツ業界を目指す上で、実際にその最前線で活躍している人たちと日常的に接点を持てることは大きな意味を持ちますし、環境が人を育てるという観点でも、視座の引き上げにつながるのではないかと考えています。結果として、ZETA DIVISIONの目線で物事をとらえられるようになる点は、本校ならではの価値のひとつだと思います。
——本校を卒業した後のキャリアについてですが、例えばGANYMEDE株式会社への就職など、運営側との接点はどのように考えられているのでしょうか。
千葉:優先的に採用するといった形で明言してしまうのは難しいのですが、優秀な人材であれば、まずは私たちから声をかけたいという思いはあります。
一方で、仮に他のチームや企業を志望しているのであれば、それも当然尊重されるべきだと考えています。明確に「毎年何名を採用する」といった枠があるわけではありませんが、私たちとしてはしっかりと向き合って育てていく以上、その中からZETA DIVISIONに加わってくれる人材が出てくれば非常にうれしいです。
また、仮にほかのチームやほかの制作会社など別のフィールドに進んだとしても、現場で再会できるような関係性を築けることが理想だと考えています。
——eスポーツを題材とする教育環境を長続きさせるのは難しいことなのかなと感じていますが、本スクール事業を長期的に継続させるための仕組みはどのように設計していますか?
千葉:この点については、株式会社バンタンとタッグを組んでいること自体が大きなポイントだと考えています。
バンタンは長年にわたって教育事業を続けてきた実績があり、運営面での知見や基盤がしっかりしています。私たちとしても短期的な取り組みではなく、長期的に継続していく前提で本スクールを設計しています。また、eスポーツ業界はトレンドの変化が非常に速く、新しいタイトルが台頭したり、これまで主流ではなかったジャンルが一気に広がることも珍しくありません。こうした変化は避けて通れないものだと認識しています。
だからこそ、本校では特定のタイトルに依存するのではなく、トレンドを読み解く力や本質を見極める力といった、変化に対応できるスキルの育成にも力を入れています。
そのうえで、新しい動きに対してはできるだけ早く対応していくことも重視しています。特に最近ではZETA DIVISIONの所属メンバー自身がトレンドを生み出すケースも少なくないので、その意味ではトレンドへのキャッチアップはどこよりも早いのではないかと思います。

——最後に、本校への入校を検討している読者に向けてメッセージをお願いします。
千葉:eスポーツという領域はまだ新しく、今後どのような発展を遂げて行くのか予想できない部分があるのも事実だと思います。ただ、僕らとしては一過性のものではなく、これから産業としても文化としても大きくなっていく分野だと感じています。
その中で、自分もその一員として関われるチャンスがあるというのは、すごく面白い環境なんじゃないかなと思います。
また、ZETA DIVISIONの選手やストリーマーの活動を身近に感じながら、「自分もこの世界に関わっている」という実感を持てる環境でもあるので、モチベーションを保ちながら取り組んでもらえるのではないかと思っています。
そういった中で、自分なりの目標や情熱を持って取り組んでくれる子たちと出会えたらうれしいなと思っています。
——ありがとうございました!
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千葉さんとの対談を通して感じたのは、株式会社GANYMEDEがeスポーツを単なる競技シーンの枠を超えて、ひとつの“カルチャー”として根付かせようとしている強い意思だった。
プロ選手の輩出だけをゴールとするのではなく、その先にある多様な関わり方や、業界全体の広がりまでを見すえた設計。そこには、これまでのeスポーツ教育に対する課題意識と、それを乗り越えようとする明確な思想が感じられた。
そして、この理念は6年前にインタビューを行ったGANYMEDE株式会社 代表・西原大輔氏の言葉にも通じるものがある。当時、西原さんはeスポーツについて「強さだけじゃ足りない。いまeスポーツ選手に必要なのは格好よさだ」と語っていた。
参考インタビュー:
強さだけじゃ足りない。いまeスポーツ選手に必要なのは格好よさ【JUPITERオーナー 西原大輔氏インタビュー】
競技としての強さだけでなく、その先にある魅力や価値までを含めてeスポーツをとらえる視点。もしかすると、あの時、すでにeスポーツを競技の枠にとどめず、ひとつのカルチャーへと昇華させていく構想があったのかもしれない。
国内でeスポーツが広がりを見せる中で、教育という文脈もまた変化の途上にある。選択肢が増えたこと自体は歓迎すべきことだが、その一方で「どの道を選ぶか」はこれまで以上に個人の判断に委ねられる時代になったともいえる。
だからこそ、これからeスポーツの道を志す人にとって重要なのは、「どの学校に行くか」だけではなく、「その先で何をしたいのか」という視点だろう。余談だが、筆者自身も「なんとなく」で進学先を決めて、盛大に遠回りをした口だ。その経験があるからこそ、「進む前に、少しだけ先を想像してみてほしい」と若者に伝えたい。
進学先が認可校であれ無認可校であれ、それ自体が正解かどうかは後になってみないと分からない。ただ、選択の軸を持たないまま進んでしまうと、その後の修正に大きなエネルギーが必要になる。「ZETA DIVISION GAMING ACADEMY powered by VANTAN」が、悩める若者にとっての道しるべとなってくれることを切に願う。
先述したとおり、「ZETA DIVISION GAMING ACADEMY powered by VANTAN」の開校は2027年4月。開校に先立ち、2026年4月12日(日)には、特別イベント第一弾としてcrow&Lazが登壇するスペシャルイベントが開催される。気になる人はぜひ下記ポストもチェックしてほしい。
⚡️特別イベント第一弾開催!
— ZETA DIVISION GAMING ACADEMY POWERED BY VANTAN (@zetadivision_ac) March 19, 2026
『ZETA DIVISIONゲーミングアカデミー』初のイベントが開催決定!
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ZETA DIVISION GAMING ACADEMY powered by VANTAN:
https://www.vantan.co.jp/zetadivision/
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https://x.com/zetadivision_ac
株式会社バンタン:
https://vantan.jp
撮影:いのかわゆう
編集:いのかわゆう
【井ノ川結希(いのかわゆう)プロフィール】
ゲーム好きが高じて19歳でゲーム系の出版社に就職。その後、フリーランスでライター、編集、ディレクターなど多岐にわたり活動している。最近はまっているゲームは『SEKIRO』。
X:@sdora_tweet
ゲーム好きが高じて19歳でゲーム系の出版社に就職。その後、フリーランスでライター、編集、ディレクターなど多岐にわたり活動している。最近はまっているゲームは『SEKIRO』。X:@sdora_tweet
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