【インタビュー+体験レポート】新宿ピカデリー初導入の“ゲーミングチェア席”「AKRacing BOXシート」のこだわりを聞いてきた

2025.7.18 宮下英之
「長時間の映画鑑賞はちょっと疲れる……」
「隣の人が気になって、作品に集中できない……」

そんな映画館の“ちょっとしたストレス”を、快適なゲーミングチェアで解決する新しい座席が、東京・新宿ピカデリーに登場した。

2025年6月に導入された特別席「AKRacing BOXシート」は、ゲーミングチェアの代表的なブランド「AKRacing」と、「新宿ピカデリー」を運営する松竹マルチプレックスシアターズの異色コラボで生まれた、まったく新しい鑑賞体験を提供するシートだ。

スクリーン1のAKRacing BOXシート

今回は、このコラボを企画した株式会社松竹マルチプレックスシアターズ 劇場建設部の高橋将晃氏にインタビュー。ゲーミングチェアを映画館に導入するというユニークなアイデアはどこから生まれたのか、映画用シートの開発秘話、そして完成したAKRacing BOXシートの魅力をうかがった。

株式会社松竹マルチプレックスシアターズ 劇場建設部の高橋将晃氏

さらに、実際にこの「AKRacing BOXシート」でブラッド・ピット主演の話題作「F1®️/エフワン」も鑑賞させていただいた。筆者がこれまでに経験したことのなかった映画鑑賞体験レポートも合わせてお伝えしたい。


「ゲーミングチェアは映画鑑賞にも最適なのでは?」


──まず、AKRacingのゲーミングチェアを導入しようとしたきっかけを教えてください。

高橋氏:AKRacingさんの製品は、レーシングシートの技術をルーツに、長時間でも疲れにくい快適性を備えており、ゲーム業界やオフィスチェアでも高い評価を得ていますよね。実際に試座してみると、ヘッドレストやランバーサポートが身体をしっかりと支え、長時間座っていても姿勢が保たれることに感動しました。そんな性能が、映画の長時間鑑賞にも最適だと感じたのが導入の出発点でした。

──シートの開発から導入までに、どれくらいの期間がかかったのでしょうか?

高橋氏:2022年から相談を始めて、3年かけて映画館用に最適化したAKRacing BOXシートを完成させました。導入したのは2025年6月17日からで、おかげさまで大きな反響をいただいています。

──「AKRacing BOXシート」のこだわりポイントを教えてください。

高橋氏:一番の特徴は、1席ごとに仕切られた「プライベート空間」と、AKRacingの高級モデル「Premium」シリーズをベースにした特注仕様の快適性です。

背面には「Premium」、座面には高級ライン「Premium Monarca」を組み合わせて、包み込まれるようなホールド感とリラックス感を両立させました。リクライニングの角度は映画館向けに最適化して、お好みに合わせて最大115度まで調整可能です。。リクライニングできる映画館シートはまだあまり普及していないので新鮮ですね。

また、高級車の張地にも採用されているPUレザーの質感や高級感、特別な「見た目」や「さわり心地」でも満足していただけると思います。

ベースとなったAKRacing Premiumシリーズ。PUレザーと上質なクッションなどでオフィスチェアとして法人向けにも人気の商品だ

こちらがAKRacing BOXシート。映画鑑賞用にさまざまなチューニングが施されている

私も約3時間の長編映画を鑑賞しましたが、腰や背中に疲れが出ることなく集中して観られました。普段からAKRacingに慣れている方ならご存じのとおりの性能になっていますし、初めてゲーミングチェアに長時間座るという方には、「映画館でこんな快適さが得られるんだ」という驚きを感じていただけると思います。


eスポーツも映画館で観る&楽しむ時代へ


──ゲーミングチェア発祥の「AKRacing BOXシート」だけに、eスポーツイベントやパブリックビューイング(PV)とも相性が良さそうですね。

高橋氏:まさにその通りで、過去には試験的にeスポーツイベントを実施したこともあります。ゲーミングチェアの導入をきっかけに、ファンミーティングや大会などのライブビューイングで、こうしたシートが観客の快適性をアピールできれば、新宿ピカデリーとしてもより多様な興行が可能になると考えています。

──ゲームを通じて、新たな客層を映画館に呼び込みたいという狙いもあるのでしょうか?

高橋氏:もちろんです。AKRacingというゲーミングチェアを導入することで、「映画ファン」だけでなく「ゲームファン」や「eスポーツファン」を劇場に招くきっかけになると思います。例えば『グランツーリスモ』のPVができれば、映画とゲーム、両方のファンにとっても魅力的な環境になると期待しています。

ゲームファンに対しては、普段ゲームに集中して使っているゲーミングチェアと同じような座席で、映画も体感的に楽しめますし、推しチームのパブリックビューイングやライブビューイングを臨場感×快適な姿勢で集中して楽しめます。

──ちなみに、新宿ピカデリーではゲームイベントやパブリックビューイングを開催できるのでしょうか?

高橋氏:可能です。「貸し館」という形式で、サッカーなどのパブリックビューイングの実績もございます。弊社が持っている大阪などの映画館との中継もできますので、全国規模のパブリックビューイングも開催可能です。興味があるeスポーツイベントなどの主催者さまは、ぜひお気軽に事業開発部までご相談ください。

──座席だけでなく、音響・視覚・環境面でも工夫された点はありますか?

高橋氏:シートの快適性は当たり前として、特に鑑賞する際の視界に関しては、問題がないようにしっかり丁寧に検証を行いました。そのためのレイアウトや、視界が遮られないようにしつつ、快適性を保った高さを確保しています。

また、周囲を気にせずくつろげるプライベート感を作るために、仕切りの高さなども考えながら設計しています。

AKRacing BOXシートの目線の高さからスマホで撮影。前方のスペースも足を投げ出せるくらいの広さがかなり快適


「AKRacing BOXシート」が生む新たな鑑賞体験


──隣とのスペースが狭いのが大前提の映画鑑賞が、大きく変わりそうですね。

高橋氏:そうですね、いまや配信サービスが当たり前の時代ですが、逆に映画館でしか味わえない体験価値が、私たちに問われていると思っています。中でも、座席というのは鑑賞中にお客様の体に最も長くふれる部分なので、これを真っ先に差別化するべきだと考えました。

今回のコラボもまったくゼロから始まりましたが、いわば映画館体験を変えるひとつの出発点とも言えます。映画館が苦手な理由として、他人と隣り合わせになるのが嫌で、プライベート感が欲しいというお客様もいらっしゃいます。「AKRacing BOXシート」であれば、自室で気軽に動画配信を観るのと同じように、他人の目をあまり気にせず観られるという良さも感じていただけると思います。

AKRacingさんのおかげで、その改革を最初に形にできたと思っていますし、快適性と特別感を兼ね備えた座席ができたので、次なる展開に向けて手応えを感じているところです。

──最後にあらためて、「AKRacing BOXシート」のアピールポイントをお聞かせください。

高橋氏:とにかく「イスに座る瞬間」から違いを感じられ、シートに体を沈め、ゆったりと身を預けるだけで自然とフィットしてくれます。いままでの映画館のシートにはなかったこの感覚を、ぜひ味わっていただきたいですね。

また、長時間座ると疲れてしまうという方にも、ぜひ一度これまでの鑑賞体験をリセットして、「AKRacing BOXシート」を体験いただきたいです。隣の席を気にせずに荷物を横のボックスに収めて、フードやドリンクも置いて、自宅のようにリラックスして観られるのも魅力です。

コアな映画ファンの中には、作品に応じて映画館を選んでいる方もいらっしゃると思います。ぜひ「AKRacing BOXシート」のある新宿ピカデリーを選ぶきっかけにしていただければ幸いです。


体験レポート:2倍の空間で観られる快適さは想像以上


インタビューの後、特別に「AKRacing BOXシート」で「F1®️/エフワン」鑑賞もさせていただいた。


今回鑑賞したスクリーン1は、「AKRacing BOXシート」が初めて導入されたスクリーン。座席の最後列がすべて置き換えられているが、一般シートと同じフロアに設置されているため、上映前の入れ替え時間に誰でも見ることは可能だ。

実際に座ってみた第一印象は、まさにAKRacing。ヘッドレスト、ランバーサポートのクッションのおかげで包み込まれるような座り心地が味わえる。リクライニングによる角度調整も可能。唯一異なるのは、イスの高さが固定されていることと、アームレストがクッション+ドリンクホルダー付きになっている点だ。

ただ、映画鑑賞で最も重要なのは、ゲーミングチェアとしての機能性ではなく、いかに作品に没入できるか。気になったのは、最後列での視線の位置と音響だ。

まず、視線の位置については、身長175cmの筆者でちょうど画面の中央あたりが水平の高さになる。前方の席ではやや見上げる形になったりするが、スクリーン1では最後列がちょうど自分にとって観やすい高さになっていた。

通常シートから見た様子。AKRacing BOXシートは頭ひとつぶん上に設置されているため、前の席が邪魔になることはない

音響については、すぐ後ろの壁にスピーカーが設置され、左右の大型スピーカーにより迫力ある音場が作られていた。天井が近いのはすぐ上に「プラチナルーム」があるためだが、だからといって音がこもったりするようなこともなく、F1マシンの迫力のエンジン音が体の芯まで届くような音響になっていた。

シートの座り心地については、筆者は映画館の通常シートだとどうしても腰がズルズル滑っていってしまうクセがあるのだが、座った姿勢を維持して座れるPUレザーのおかげで、ずり落ちるクセが出ることもない。それもこれも、マッサージのように腰を押し返してくれるランバーサポートと、包み込まれるような上質な座面クッションのおかげだ。

特に、「F1®️/エフワン」はコクピット視点でレースが展開されるシーンが多く、しっかり座った姿勢を保てる「AKRacing BOXシート」で観るには最適。クラッシュシーンのように没入感がありすぎてつい瞬間的に体に力が入ってしまうような場面でも、柔らかくボリュームのあるクッションでリラックスして鑑賞できた。

ヘッドレストは「AKRacing × ピカデリー」のオリジナルデザイン。首などに合わせて上下の調整も可能

腰当て部分のランバーサポートも上下の調整ができるのは本家譲り

そして圧倒的に快適さを感じたのは、やはり2人分というパーソナルスペースの広さだ。

通常シートでは、ポップコーンセットを乗せたトレーはドリンクホルダーに入れて体の前に来る。しかし「AKRacing BOXシート」では、左側にあるボックス上のスペースにおけば、目の前に邪魔なものは一切なくなる。

新宿ピカデリーの通常シート。比較するとAKRacing BOXシートの広さや荷物スペースの利便性が伝わるかと思う

また、座り疲れた時に体を横にひねったり足を組んだりしても周囲の人に迷惑をかける心配がないのは、映画を観てきて初めての経験だった。今回も右隣に一般のお客様がいたが、隣の人が何をしているか分からないほどだ。

シート脇のボックススペースは、暗闇でモノが落ちないようにガイドもついている。ボックス内にはカバンなども収められる

隣のシートとの間には、パーテーションと荷物などを置くボックスで距離があるため、隣に座っていても気にならない


特別なシートで、特別な鑑賞体験を


これまで映画を鑑賞してきて、通常シートで不満を感じたことはなかったし、疑問にも思ったことはなかった。しかし、飛行機のエコノミー席や新幹線のようなもので、やはり隣に見ず知らずの方が座っている環境で2〜3時間を過ごすという緊張感はそれなりにあるということに、「AKRacing BOXシート」を体験することで気付かされた。

鑑賞料金は通常大人料金よりも1000円割増の3000円(※一部特別料金、特別興行を除く)だが、その快適さ・集中力・プライベート感は、“それ以上”の価値を感じられるはず。

自分にとって特別な作品、月に一度のゆったり映画を楽しみたい日、人気作品などで満員になるような時にも、「AKRacing BOXシート」なら周囲に気兼ねせずに鑑賞できる。それもこれも、AKRacingのゲーミングチェアとしての機能性があればこそだ。

映画の大作、ライブビューイング、eスポーツ観戦——そのすべてを快適に、そして特別に変える「AKRacing BOXシート」は、2025年6月よりスクリーン6を除くすべてのスクリーンに順次導入される予定だ。

上映スケジュール・座席予約は新宿ピカデリーの公式サイトにアクセスしてほしい。


新宿ピカデリー:https://www.smt-cinema.com/site/shinjuku/index.html
AKRacing公式直販ストア:https://www.akracing.jp/


eSports World の
Discord をフォローしよう
SALE 大会 チーム 他にも...? 他にも

この記事を読んだ人はこんな記事も読んでいます