【特集】 eスポーツ言いたい放題
【eスポーツ言いたい放題 2025-2026〈第5話〉】 次のeスポーツは生まれるか? チームの変化と新作タイトルの壁
- eスポーツチームのタレント事務所化の是非
- 選手のトレード・去就の透明性
- 新たなeスポーツタイトルが生まれにくい理由
- 無料格ゲー『2XKO』が苦戦した理由
- ひとり用タイトルがeスポーツ化する可能性は
- eSports Worldの今後
2026年度(令和8年度)に向けて、eスポーツシーンの現在地をゆるく、時にまじめに語っていく「eスポーツ言いたい放題 2025-2026」。
前回までは、『VALORANT』や『リーグ・オブ・レジェンド(LoL)』など、日本でも大きな人気を集めてきたタイトルの現状、競技シーンとエンタメの関係について語ってきた。
長く続いてきたこの座談会もいよいよ最終回。第5話では、eスポーツチームの変化やeスポーツの未来——そして本メディアの今後を考えてみた。
井ノ川:最後は「eスポーツの将来像」について。最近、チームのタレント事務所化というか、ストリーマー、VTuber、インフルエンサー、クリエイターといった方々が、eスポーツチームにどんどん合流していますよね。
DetonatioN FocusMeの梅崎さんのインタビューでも言っていたように、クリエイターが必要不可欠だということはオーナーさん自身も感じていて、業界としてそこに広がっていくのは当然の流れと感じます。
関連記事:【DFMオーナー 梅崎伸幸氏インタビュー 前編】200万円から始まった挑戦——DetonatioN FocusMe誕生秘話
【DFMオーナー 梅崎伸幸氏インタビュー 後編】応援歌を作りたい!?——梅崎ismが描く、次世代へつなぐチームビジョン

宮下:確かに、彼らがいることでeスポーツ業界、ゲーム業界がコロナ以降ものすごく伸びたことは間違いない。それと同じことを選手たちが練習や試合の合間にやれるかって言ったら、かなり難しいですからね。
井ノ川:ですよね。プロの選手が配信したとしても、そのゲームの魅力とか、その選手のうまさを分かりやすく伝える専門家がいないと、盛り上がらないとは感じます。
宮下:タレント事務所というと、仕事をアテンドしたり、タレントを守ったり、大手企業の仕事につなげるために存在しているイメージがあります。フリーだと連絡先が分からない、連絡が取れない、交渉ができない、だから事務所に入るのが一般的。
ゲームが好きなだけで生きてきた人たちが、交渉力とかチーム運営力を個人で学ぶ難しさを考えると、チームがタレント事務所的な役割を担うことは、業界の発展にとってはすごくいいことだとは思います。エンタメ力をフルに発揮して、いろいろなクライアントの要望に応えられる意味でも、必要性が高まっているのも間違いない。
ただ、同じチームに所属して日々努力しているeスポーツ選手たちの将来が、どうしても自分は気になっちゃって。
井ノ川:前回の話とつながりますが、ストリーマーの人気が出すぎると、逆に競技シーンが衰退してしまうんじゃないか——みたいな不安はありますね。
eスポーツタイトルの新作が出た時に、人気のあるストリーマーが配信で遊んでいるのを見て、そのタイトルが盛り上がるっていうのは、これからのプロモーションの流れとして増えていきそうだけど、そこにプロ選手が参加しづらいというか——。
宮下:今まで我々がeスポーツチームと呼んでいた組織が、全然違う企業や団体に変容していく途中過程なんでしょうね。
選手の強さを追求する部門はもちろん絶対あるんだけど、「ゲーム」という「eスポーツ」より大きなくくりの中に、新しいビジネスが生まれてきているんだろうなとは思います。
井ノ川:それの最たるものがZETA DIVISIONですよね。最近、チームを運営するGANYMEDE株式会社側のXができたり、サイトがリニューアルされたり。ZETA DIVISIONは、あくまでGANYMEDE株式会社が運営するeスポーツチームという位置づけをより明確にしていくのではないかと感じています。

宮下:今までのチームに多かったのは、大会に出る選手たちが中心となって頑張ってきた、アマチュア出身のチーム。『荒野行動』から始まったFENNEL、『PUBG MOBILE』から始まったREJECTなどが有名ですが、最近だと『オーバーウォッチ』とか『ポケモンユナイト』なんかでアマチュアチームの活躍が増えている気がします。
井ノ川:でも、競技結果だけだと今のeスポーツシーンでは続けていくのは難しそうで——。やっぱりクリエイター部門とかアパレル・グッズとか、ある程度収益性の高い部門も持った中でeスポーツチームを運営するっていうのが、今後のビジネスの主流になっていきそうです。

宮下:なかなか試合で勝てないとしても、存続できるだけのチームの魅力をつけることはできますからね。競技の強さとブランドの強みを成功させてきたチームとしては、『コール・オブ・デューティ』で活躍したRush Gamingとかが先駆けかな。残念ながら今年の9月でチームはなくなってしまうんですけど……。

ストリーマーが全然いなくて、自分たちのチームのことを全然発信していないチームがなにかの大会で優勝したとしても、次の大会で負けて解散……なんてことも多々あります。
そうはならないところが、やっぱり今勢いのあるチームの強みなんですよね。チームが強いということと競技に強いということがイコールになってきていることを感じます。
井ノ川:チームとしての強さに関連して、選手の移籍問題もタイトルによってはふわっとしていますよね。プロ野球みたいに「金にモノを言わせてドリームチームを作る」みたいなやり方にネガティブ発言をする人もいる。この辺ってルールがあまりファンには見えていないから、「そこまでやるのか」と疑問が湧くこともありそう。
宮下:一応『VALORANT』とか『LoL』にはしっかり移籍条件もルール化されていて、フリーエージェント権とかが保証されているんですよね。オフシーズンになると「チームから許可をいただいたので……」という前置き付きで、次のチームを探しているというSNSの投稿が出てきますし。
井ノ川:ただ、裏で引き抜きとかがあったりはするらしいです。選手自身が自分の価値と権利を守るために、メーカーや主催者などに主張・交渉できるようにって考えると、次はやっぱり選手会を作るとかの動きになっていくのかな。
若い子たちが戸惑うような契約とかを、大人が支えてあげられたらいいんですけどね。JESUがプロライセンスをすべてのeスポーツタイトルに適用して、そういう状況もサポートしてくれれば、全員がプロとして区別もつくんだけど、『LoL』や『VALORANT』はライセンス対象外だし。
宮下:自分は、選手側がもっと賢くしたたかになった方がいいと思ってます。報酬とか給料とかをチラつかされると、「ゲームを遊んでお金がもらえる」ということで若い子たちは満足しちゃうかもしれないけど、それじゃダメで。
今は、選手の価値が特定の大会での「強さ」や「活躍度」だけで測られている面が強い。だから、「勝てなくなった」「勝利に貢献できなかった」という時点で放出された時に、チームは守ってくれないし、自分でも「仕方ない」と納得してしまうかもしれません。
井ノ川:eスポーツって1シーズン結果が出ないとすぐロスター変更しますよね。オフシーズンになると、選手の写真に「THANK YOU」と入れたあの画像がタイムラインに並ぶ。同じ日に何チームからも流れてくることもある。
ただ、あの投稿って本人が望んで移籍するのか、成績で切られたのか、文面からは分からないじゃないですか。ファンからも見えないし、選手側も本当に納得できているのかどうか——。
宮下:納得できていないんじゃないかなぁ。もしプロになった瞬間から成績がまったく伸びなかったとしても、自分だけが責任を負うことは本来しなくていいと思うんです。チーム全体とか、コーチとか、いろいろな要因の中で起きた結果のはずだから。
だけど、どうしても周囲の人やファンからも「弱い」とか「下手」とか言われてしまう。普通のプレーヤーに比べて圧倒的に実力が高いにもかかわらず——。批判も仕方ないことだとはいえ、もっと自分自身が価値がある人間だっていうことに自信を持ってもらえる環境であってほしいとは思いますね。チームにはそういう選手を育ててほしいし、メンタルも含めて守ってほしいです。
宮下:新作eスポーツタイトルが総じて苦戦しているというのも、いますごく気になっています。
2025年くらいから、FPSとかMOBAの新作が実は出ているんですけど、どれもeスポーツとして定着できていない。『Apex Legends』や『VALORANT』以降、新しいeスポーツタイトルが売れるのがすごく難しくなったなって肌で感じているんです。
印象的だったのは『PARAVOX』という日本人が開発を主導した3vs3のTPS。優勝賞金1億円のプレ大会を品川でやったり、ヒップホップアーティストがコラボしたりもして話題になったんですけど、ベータ版以降音沙汰がなくなってしまった。

井ノ川:日本人が関わった新タイトルって感じで期待も大きかったんですけど……。難しいですよね、今のeスポーツの状況に切り込むのは。Valveの『Deadlock』とかもあまり音沙汰がない。
宮下:ゲームビジネスとして考えると、一定数のファンがつけばメーカーとしては生きていけると思うんです。たとえそれが規模の小さなゲームでも、利益が出て回せるならね。だけど、「eスポーツタイトルとして成功する」となると必要な金額の規模もかなり大きくなってきている。
新作のPvPタイトルが出ると、我々は立場的にも「このゲームはeスポーツ化する考えはありますか?」ってよく聞くじゃないですか(笑)。
井ノ川:対戦ができるゲームだと、とりあえず最初に聞きますね(笑)。
宮下:でも、対戦するにはサーバーが必要で、相手がいないとゲームが成立しなくて、過疎化して終わってしまう。だから、対人戦じゃない「PvE」(プレーヤーではなく敵キャラを倒すゲーム)、もしくはそれに類する何かを作ればいいのかというとそうでもない。
井ノ川:『VALORANT』も明確なひとり用モードはないですからね。
宮下:『VALORANT』はタイミングが良かったこともあるのかなって気はしますね。『Counter-Strike』(CS)があまり変化がなかった時期に、『CS』の要素を取り入れたゲームがポンと出てきた。
井ノ川:しかもちょっとアニメ調でね。
宮下:そうそう、どっちかっていうと『CS2』が流行っていないアジア圏の人たちが好きそうなグラフィックやキャラクターで。『Apex Legends』も同じで、出したタイミングとゲーム性がハマったんだと思います。
井ノ川:格闘ゲームだと『2XKO』も、『LoL』のキャラで基本プレー無料ということで期待されていましたが、早々にeスポーツとしての大会規模は縮小、開発も12月までと発表されましたよね。ベースがアーク系(アークシステムワークスが制作する『ギルティギア』などと系統が似ているゲームの総称)だから、ちょっととっつきにくいところはあったのかなぁ。キャラチェンジも前提だし。
宮下:そうですね。自分はアークのタッグ系ゲームに苦手意識もあるんだけど、好きな人にはものすごく刺さるシステムだとは思うんです。でも、実際には『2XKO』は初期のブーストはかからなかった。
個人的には、『LoL』が好きな人を格ゲーに取り込めなかったのかなと。チャンピオンも人気順というよりは格ゲーのために選んだ感じもしたし、ストーリーなしだと魅力が伝わりにくかったのかも。『LoL』ファン以外はユニバースとか知らないでしょうからね……。
井ノ川:格ゲーは本当に難しいと思います。『スト6』もモダンタイプを入れて初心者の間口を広げたけど、やりすぎるとクソゲーと言われたりもする。
それに、『スト6』については、多分プロの中でもゲーム自体をあまり面白いと思っていない人もいると思うんですよ。過去のシリーズの方が面白かったって人は案外多い気がする。
宮下:新しい要素がもっと欲しい、飽きてきたっていう声もありますね。Year 4の新キャラがかなり意外で盛り返した感じはするけど。
井ノ川:大枠で見るとやっていることはシンプルで、やたらパーフェクト勝ち・パーフェクト負けが増えたのも『スト6』の特徴ですよね。一度画面端に追い込んだら、じゃんけんみたいな駆け引きが始まって、そのまま終わるっていうパターンがすごく多い気がして。
宮下:じゃんけんの要素はあるけど、以前よりも運だけで返せない感じが強くなった気がします。
井ノ川:そう。柔道とか本当に絵面が悪くて、LeSharも「嫌いなものは柔道」って即答しちゃうくらい批判の多いシステムのひとつですよね。ただ、「投げ」というガード不能な要素がないと、一生ガードできちゃうから、必要な要素ではあるんですけど——。
投げか投げじゃないかの2択になった時に、打撃をくらった時の方がダメージが大きいから、結局投げを捨てざるを得ない。バックステップでも避けられるけど、読み負けた時のリスクが大きすぎて、やっぱり捨てるしかない。
そういった心理的描写はあるけれど、画面に映っているのはただ一方的に投げられ続けている映像なんですよね。
宮下:全部格ゲーで必要な駆け引きなんですけどね。投げられないようにするのも、投げられて次へつなげるのも、体力も含めたゲージ管理もあるから。
井ノ川:そのあたりも含めて、eスポーツタイトルの調整って本当に難しい……。
井ノ川:eスポーツかと言われると微妙ではあるんですが、個人的にはひとり用のタイトルでタイムを競う、RTAみたいなeスポーツも流行ってもらいたいとは感じます。対人じゃなくて精度とかスコアを極めていくみたいな競技。
『スーパーマリオブラザーズ』のRTAってまだまだ更新されているじゃないですか。あれってなんか陸上競技の100m走とかに似ていて。0.01秒単位で世界新記録が出たとか、ずっとやってていまだに進化し続けている。そういうものがeスポーツにもないかなって。
宮下:何が一番近いんですかね?
井ノ川:『テトリス』100万点最速達成、みたいなものとか?
宮下:美しさを競う競技もゲームにはないですよね。フィギュアスケートとか、新体操みたいな。
井ノ川:確かに、『スト6』のコンボ職人大会みたいに、より美しいコンボが評価されるとか。ハメコ。さんとかに、「ここ、ちょっと歩かないとコンボがつながらないんですよ」みたいな超マニアックな解説をしてもらえると面白そう。
宮下:以前取材した『フォートナイト』を使った五輪競技なんかは、移動するルートが決まっていて、ゴールを目指しながらすべての的を射撃していって、そのタイムを競うというものでした。招待制大会だったけど、出場していたeスポーツのプロたちのテクニックはすごかったです。

井ノ川:『VALORANT』にも似たようなゲームモードはあるんですよね。トレーニングルームに、フィジカルとかキャラコンを学べる場所があって、要はすごく小さい足場をジャンプしていって、フラッグを取って頂上まで行くとクリアみたいなミニゲーム。それの最速を目指すとか。
宮下:何かご褒美があればやる人たちもいそうだし、普通の対戦だと勝ち目がなくてもこっちなら俺は遊べるっていう人もいるかもしれない。対戦が苦手っていう人もいるでしょうしね。
井ノ川:ほとんどRTAなんですが、そういう違った大会が流行ったら、もっと可能性が広がりそうですね。
宮下:最後に、個人的にeSports Worldでやってみたい企画とかありますか?
井ノ川:もっといろいろな大会を現地で観戦したいという話を1年前もしてたと思うんですが、結局そんなに新しいジャンルの大会には行けませんでした。
宮下:大会自体もすごく増えてますしね。
井ノ川:おそらくちゃんと初めて見たのって、『太鼓の達人』の取材くらいで。本当は『ビートマニア』とか、他のタイトルの大会とかも生で見たいですね。

宮下:現場に行った時の、ゲーム自体が分からなくても、選手の頑張りを見て泣けてくるようなところが、やっぱりeスポーツを追いかけていて楽しいところだったりします。
井ノ川:「オフライン大会力入れすぎ問題」もあって。もうちょっと小規模なオフ大会もやってほしいんですよね。
宮下:必死で頑張った子たちが報われる姿をもっと多くの人にも見てほしいですよね。世界で戦うのももちろんいいんですけど、相撲の地方巡業みたいなかたちでもいい。
井ノ川:地方の大会、私も見たいです。旅費が問題になりますが(笑)。
宮下:2026年は愛知・名古屋でアジア競技大会もあるし、大阪で『レインボーシックス シージX』の国際大会もあります。コンベンションビューローとか、自治体ごとに誘致しているイベントとして、eスポーツも対象になったらいいですね。
井ノ川:アジア大会でeスポーツが正式なメダル競技になったのは大きいですよね。こういった動きがどんどん増えていってほしい。
編集:いのかわゆう
前回までは、『VALORANT』や『リーグ・オブ・レジェンド(LoL)』など、日本でも大きな人気を集めてきたタイトルの現状、競技シーンとエンタメの関係について語ってきた。
長く続いてきたこの座談会もいよいよ最終回。第5話では、eスポーツチームの変化やeスポーツの未来——そして本メディアの今後を考えてみた。
宮下英之
eSports Worldの企画・立ち上げから関わっている中堅編集者。『LoL』ではついにシルバーに到達したものの、また大きな壁にぶつかり、サポートからレーン変更を検討中。モルガナOTP。
eSports Worldの企画・立ち上げから関わっている中堅編集者。『LoL』ではついにシルバーに到達したものの、また大きな壁にぶつかり、サポートからレーン変更を検討中。モルガナOTP。
井ノ川結希(いのかわゆう)
eSports Worldの企画・立ち上げから関わっている編集者兼ライター。『スト2』全盛期から格闘ゲームにどハマりするも、ふとしたきっかけで『Counter-Strike: Global Offensive』をプレーしFPSに足を突っ込む。そんなこんなで今では、『ストリートファイター6』や『VALORANT』がメインの担当に。ゴルフにはまりすぎてeスポーツ界隈の人とラウンドするきっかけをうかがってしまうゴルフ女子。
eSports Worldの企画・立ち上げから関わっている編集者兼ライター。『スト2』全盛期から格闘ゲームにどハマりするも、ふとしたきっかけで『Counter-Strike: Global Offensive』をプレーしFPSに足を突っ込む。そんなこんなで今では、『ストリートファイター6』や『VALORANT』がメインの担当に。ゴルフにはまりすぎてeスポーツ界隈の人とラウンドするきっかけをうかがってしまうゴルフ女子。
eスポーツチームのタレント事務所化の是非
井ノ川:最後は「eスポーツの将来像」について。最近、チームのタレント事務所化というか、ストリーマー、VTuber、インフルエンサー、クリエイターといった方々が、eスポーツチームにどんどん合流していますよね。
DetonatioN FocusMeの梅崎さんのインタビューでも言っていたように、クリエイターが必要不可欠だということはオーナーさん自身も感じていて、業界としてそこに広がっていくのは当然の流れと感じます。
関連記事:【DFMオーナー 梅崎伸幸氏インタビュー 前編】200万円から始まった挑戦——DetonatioN FocusMe誕生秘話
【DFMオーナー 梅崎伸幸氏インタビュー 後編】応援歌を作りたい!?——梅崎ismが描く、次世代へつなぐチームビジョン

宮下:確かに、彼らがいることでeスポーツ業界、ゲーム業界がコロナ以降ものすごく伸びたことは間違いない。それと同じことを選手たちが練習や試合の合間にやれるかって言ったら、かなり難しいですからね。
井ノ川:ですよね。プロの選手が配信したとしても、そのゲームの魅力とか、その選手のうまさを分かりやすく伝える専門家がいないと、盛り上がらないとは感じます。
宮下:タレント事務所というと、仕事をアテンドしたり、タレントを守ったり、大手企業の仕事につなげるために存在しているイメージがあります。フリーだと連絡先が分からない、連絡が取れない、交渉ができない、だから事務所に入るのが一般的。
ゲームが好きなだけで生きてきた人たちが、交渉力とかチーム運営力を個人で学ぶ難しさを考えると、チームがタレント事務所的な役割を担うことは、業界の発展にとってはすごくいいことだとは思います。エンタメ力をフルに発揮して、いろいろなクライアントの要望に応えられる意味でも、必要性が高まっているのも間違いない。
ただ、同じチームに所属して日々努力しているeスポーツ選手たちの将来が、どうしても自分は気になっちゃって。
井ノ川:前回の話とつながりますが、ストリーマーの人気が出すぎると、逆に競技シーンが衰退してしまうんじゃないか——みたいな不安はありますね。
eスポーツタイトルの新作が出た時に、人気のあるストリーマーが配信で遊んでいるのを見て、そのタイトルが盛り上がるっていうのは、これからのプロモーションの流れとして増えていきそうだけど、そこにプロ選手が参加しづらいというか——。
宮下:今まで我々がeスポーツチームと呼んでいた組織が、全然違う企業や団体に変容していく途中過程なんでしょうね。
選手の強さを追求する部門はもちろん絶対あるんだけど、「ゲーム」という「eスポーツ」より大きなくくりの中に、新しいビジネスが生まれてきているんだろうなとは思います。
井ノ川:それの最たるものがZETA DIVISIONですよね。最近、チームを運営するGANYMEDE株式会社側のXができたり、サイトがリニューアルされたり。ZETA DIVISIONは、あくまでGANYMEDE株式会社が運営するeスポーツチームという位置づけをより明確にしていくのではないかと感じています。

ZETA DIVISIONの運営元としても知られるGANYMEDE株式会社は、プロゲーマー集団からではなく、クリエイティブスタジオからeスポーツ事業に広がっていった(出典:https://gnmd.com/)
宮下:今までのチームに多かったのは、大会に出る選手たちが中心となって頑張ってきた、アマチュア出身のチーム。『荒野行動』から始まったFENNEL、『PUBG MOBILE』から始まったREJECTなどが有名ですが、最近だと『オーバーウォッチ』とか『ポケモンユナイト』なんかでアマチュアチームの活躍が増えている気がします。
井ノ川:でも、競技結果だけだと今のeスポーツシーンでは続けていくのは難しそうで——。やっぱりクリエイター部門とかアパレル・グッズとか、ある程度収益性の高い部門も持った中でeスポーツチームを運営するっていうのが、今後のビジネスの主流になっていきそうです。

REJECTやVARRELといった大手eスポーツチームは、特にグッズの販売に力を入れている印象だ。ただチームのロゴが入ったものだけではなく、デザイン性、機能性としても楽しめる——そんなグッズがファンの心をつかんでいる(出典:https://store.varrel.jp)
宮下:なかなか試合で勝てないとしても、存続できるだけのチームの魅力をつけることはできますからね。競技の強さとブランドの強みを成功させてきたチームとしては、『コール・オブ・デューティ』で活躍したRush Gamingとかが先駆けかな。残念ながら今年の9月でチームはなくなってしまうんですけど……。

Greedz選手、ハセシン選手らが活躍したRush Gamingもその役目を終えることに。創業者である西谷麗さんのコメントが泣けます……(出典:https://www.rushgaming.co/post/rushend)
ストリーマーが全然いなくて、自分たちのチームのことを全然発信していないチームがなにかの大会で優勝したとしても、次の大会で負けて解散……なんてことも多々あります。
そうはならないところが、やっぱり今勢いのあるチームの強みなんですよね。チームが強いということと競技に強いということがイコールになってきていることを感じます。
選手のトレード・去就の透明性
井ノ川:チームとしての強さに関連して、選手の移籍問題もタイトルによってはふわっとしていますよね。プロ野球みたいに「金にモノを言わせてドリームチームを作る」みたいなやり方にネガティブ発言をする人もいる。この辺ってルールがあまりファンには見えていないから、「そこまでやるのか」と疑問が湧くこともありそう。
宮下:一応『VALORANT』とか『LoL』にはしっかり移籍条件もルール化されていて、フリーエージェント権とかが保証されているんですよね。オフシーズンになると「チームから許可をいただいたので……」という前置き付きで、次のチームを探しているというSNSの投稿が出てきますし。
井ノ川:ただ、裏で引き抜きとかがあったりはするらしいです。選手自身が自分の価値と権利を守るために、メーカーや主催者などに主張・交渉できるようにって考えると、次はやっぱり選手会を作るとかの動きになっていくのかな。
若い子たちが戸惑うような契約とかを、大人が支えてあげられたらいいんですけどね。JESUがプロライセンスをすべてのeスポーツタイトルに適用して、そういう状況もサポートしてくれれば、全員がプロとして区別もつくんだけど、『LoL』や『VALORANT』はライセンス対象外だし。
宮下:自分は、選手側がもっと賢くしたたかになった方がいいと思ってます。報酬とか給料とかをチラつかされると、「ゲームを遊んでお金がもらえる」ということで若い子たちは満足しちゃうかもしれないけど、それじゃダメで。
今は、選手の価値が特定の大会での「強さ」や「活躍度」だけで測られている面が強い。だから、「勝てなくなった」「勝利に貢献できなかった」という時点で放出された時に、チームは守ってくれないし、自分でも「仕方ない」と納得してしまうかもしれません。
井ノ川:eスポーツって1シーズン結果が出ないとすぐロスター変更しますよね。オフシーズンになると、選手の写真に「THANK YOU」と入れたあの画像がタイムラインに並ぶ。同じ日に何チームからも流れてくることもある。
ただ、あの投稿って本人が望んで移籍するのか、成績で切られたのか、文面からは分からないじゃないですか。ファンからも見えないし、選手側も本当に納得できているのかどうか——。
宮下:納得できていないんじゃないかなぁ。もしプロになった瞬間から成績がまったく伸びなかったとしても、自分だけが責任を負うことは本来しなくていいと思うんです。チーム全体とか、コーチとか、いろいろな要因の中で起きた結果のはずだから。
だけど、どうしても周囲の人やファンからも「弱い」とか「下手」とか言われてしまう。普通のプレーヤーに比べて圧倒的に実力が高いにもかかわらず——。批判も仕方ないことだとはいえ、もっと自分自身が価値がある人間だっていうことに自信を持ってもらえる環境であってほしいとは思いますね。チームにはそういう選手を育ててほしいし、メンタルも含めて守ってほしいです。
新たなeスポーツタイトルが生まれにくい理由
宮下:新作eスポーツタイトルが総じて苦戦しているというのも、いますごく気になっています。
2025年くらいから、FPSとかMOBAの新作が実は出ているんですけど、どれもeスポーツとして定着できていない。『Apex Legends』や『VALORANT』以降、新しいeスポーツタイトルが売れるのがすごく難しくなったなって肌で感じているんです。
印象的だったのは『PARAVOX』という日本人が開発を主導した3vs3のTPS。優勝賞金1億円のプレ大会を品川でやったり、ヒップホップアーティストがコラボしたりもして話題になったんですけど、ベータ版以降音沙汰がなくなってしまった。

斬新なウェアシステムや高低差を使った攻防、優勝賞金1億円、OZ・Worldのイメージソングなどで話題をさらったが……。(出典:https://esports-world.jp/report/40956)
井ノ川:日本人が関わった新タイトルって感じで期待も大きかったんですけど……。難しいですよね、今のeスポーツの状況に切り込むのは。Valveの『Deadlock』とかもあまり音沙汰がない。
宮下:ゲームビジネスとして考えると、一定数のファンがつけばメーカーとしては生きていけると思うんです。たとえそれが規模の小さなゲームでも、利益が出て回せるならね。だけど、「eスポーツタイトルとして成功する」となると必要な金額の規模もかなり大きくなってきている。
新作のPvPタイトルが出ると、我々は立場的にも「このゲームはeスポーツ化する考えはありますか?」ってよく聞くじゃないですか(笑)。
井ノ川:対戦ができるゲームだと、とりあえず最初に聞きますね(笑)。
宮下:でも、対戦するにはサーバーが必要で、相手がいないとゲームが成立しなくて、過疎化して終わってしまう。だから、対人戦じゃない「PvE」(プレーヤーではなく敵キャラを倒すゲーム)、もしくはそれに類する何かを作ればいいのかというとそうでもない。
井ノ川:『VALORANT』も明確なひとり用モードはないですからね。
宮下:『VALORANT』はタイミングが良かったこともあるのかなって気はしますね。『Counter-Strike』(CS)があまり変化がなかった時期に、『CS』の要素を取り入れたゲームがポンと出てきた。
井ノ川:しかもちょっとアニメ調でね。
宮下:そうそう、どっちかっていうと『CS2』が流行っていないアジア圏の人たちが好きそうなグラフィックやキャラクターで。『Apex Legends』も同じで、出したタイミングとゲーム性がハマったんだと思います。
ゲーム中では世界観を語られるシーンはほとんどないが、そういった部分を補足するようにアニメーションで見せるやり方がうまい『VALORANT』。大会のプロモーションですらゲーム内に溶け込ませるのはオシャレすぎる
無料格ゲー『2XKO』が苦戦した理由
井ノ川:格闘ゲームだと『2XKO』も、『LoL』のキャラで基本プレー無料ということで期待されていましたが、早々にeスポーツとしての大会規模は縮小、開発も12月までと発表されましたよね。ベースがアーク系(アークシステムワークスが制作する『ギルティギア』などと系統が似ているゲームの総称)だから、ちょっととっつきにくいところはあったのかなぁ。キャラチェンジも前提だし。
宮下:そうですね。自分はアークのタッグ系ゲームに苦手意識もあるんだけど、好きな人にはものすごく刺さるシステムだとは思うんです。でも、実際には『2XKO』は初期のブーストはかからなかった。
個人的には、『LoL』が好きな人を格ゲーに取り込めなかったのかなと。チャンピオンも人気順というよりは格ゲーのために選んだ感じもしたし、ストーリーなしだと魅力が伝わりにくかったのかも。『LoL』ファン以外はユニバースとか知らないでしょうからね……。
本日は @Play2XKO チームより、本作の今後に関する重要なお知らせがあります。
— 2XKO Japan (@2XKOJP) August 20, 2026
- 積極的な開発を12月に終了
- 最後のコンテンツパッチは10月にリリース
- サーバーは引き続き稼働
- 8月21日までに行われたゲーム内での購入に対する返金対応https://t.co/Y20YV0DEce pic.twitter.com/IgHLNvWyhY
8月には『2XKO』の開発が12月で終了する旨が報じられた。残るラックス、サミーラは順次追加され、サーバーも維持されるという
井ノ川:格ゲーは本当に難しいと思います。『スト6』もモダンタイプを入れて初心者の間口を広げたけど、やりすぎるとクソゲーと言われたりもする。
それに、『スト6』については、多分プロの中でもゲーム自体をあまり面白いと思っていない人もいると思うんですよ。過去のシリーズの方が面白かったって人は案外多い気がする。
宮下:新しい要素がもっと欲しい、飽きてきたっていう声もありますね。Year 4の新キャラがかなり意外で盛り返した感じはするけど。
Year 4では、ヤスミンとアルジュンが完全な新キャラ。ボシュは「ワールドツアー」に登場したNPCで、ティファはスクウェア・エニックスの『ファイナルファンタジーVII』からのコラボ参戦となる
井ノ川:大枠で見るとやっていることはシンプルで、やたらパーフェクト勝ち・パーフェクト負けが増えたのも『スト6』の特徴ですよね。一度画面端に追い込んだら、じゃんけんみたいな駆け引きが始まって、そのまま終わるっていうパターンがすごく多い気がして。
宮下:じゃんけんの要素はあるけど、以前よりも運だけで返せない感じが強くなった気がします。
井ノ川:そう。柔道とか本当に絵面が悪くて、LeSharも「嫌いなものは柔道」って即答しちゃうくらい批判の多いシステムのひとつですよね。ただ、「投げ」というガード不能な要素がないと、一生ガードできちゃうから、必要な要素ではあるんですけど——。
投げか投げじゃないかの2択になった時に、打撃をくらった時の方がダメージが大きいから、結局投げを捨てざるを得ない。バックステップでも避けられるけど、読み負けた時のリスクが大きすぎて、やっぱり捨てるしかない。
そういった心理的描写はあるけれど、画面に映っているのはただ一方的に投げられ続けている映像なんですよね。
宮下:全部格ゲーで必要な駆け引きなんですけどね。投げられないようにするのも、投げられて次へつなげるのも、体力も含めたゲージ管理もあるから。
井ノ川:そのあたりも含めて、eスポーツタイトルの調整って本当に難しい……。
ひとり用タイトルがeスポーツ化する可能性は
井ノ川:eスポーツかと言われると微妙ではあるんですが、個人的にはひとり用のタイトルでタイムを競う、RTAみたいなeスポーツも流行ってもらいたいとは感じます。対人じゃなくて精度とかスコアを極めていくみたいな競技。
『スーパーマリオブラザーズ』のRTAってまだまだ更新されているじゃないですか。あれってなんか陸上競技の100m走とかに似ていて。0.01秒単位で世界新記録が出たとか、ずっとやってていまだに進化し続けている。そういうものがeスポーツにもないかなって。
宮下:何が一番近いんですかね?
井ノ川:『テトリス』100万点最速達成、みたいなものとか?
宮下:美しさを競う競技もゲームにはないですよね。フィギュアスケートとか、新体操みたいな。
井ノ川:確かに、『スト6』のコンボ職人大会みたいに、より美しいコンボが評価されるとか。ハメコ。さんとかに、「ここ、ちょっと歩かないとコンボがつながらないんですよ」みたいな超マニアックな解説をしてもらえると面白そう。
宮下:以前取材した『フォートナイト』を使った五輪競技なんかは、移動するルートが決まっていて、ゴールを目指しながらすべての的を射撃していって、そのタイムを競うというものでした。招待制大会だったけど、出場していたeスポーツのプロたちのテクニックはすごかったです。

『フォートナイト』をベースにした“ライフル競技”を日本人が作ったとして話題になったインタビュー。バーチャル化ではなくオリジナル競技にすることの可能性も示した(https://esports-world.jp/interview/42012)
井ノ川:『VALORANT』にも似たようなゲームモードはあるんですよね。トレーニングルームに、フィジカルとかキャラコンを学べる場所があって、要はすごく小さい足場をジャンプしていって、フラッグを取って頂上まで行くとクリアみたいなミニゲーム。それの最速を目指すとか。
宮下:何かご褒美があればやる人たちもいそうだし、普通の対戦だと勝ち目がなくてもこっちなら俺は遊べるっていう人もいるかもしれない。対戦が苦手っていう人もいるでしょうしね。
井ノ川:ほとんどRTAなんですが、そういう違った大会が流行ったら、もっと可能性が広がりそうですね。
eSports Worldの今後
宮下:最後に、個人的にeSports Worldでやってみたい企画とかありますか?
井ノ川:もっといろいろな大会を現地で観戦したいという話を1年前もしてたと思うんですが、結局そんなに新しいジャンルの大会には行けませんでした。
宮下:大会自体もすごく増えてますしね。
井ノ川:おそらくちゃんと初めて見たのって、『太鼓の達人』の取材くらいで。本当は『ビートマニア』とか、他のタイトルの大会とかも生で見たいですね。

若者から小さなお子さんまで老若男女が楽しめる『太鼓の達人』を競技タイトルにしたイベント。ほのぼの系のイベントと思いきや、参加者のレベルが高すぎてビックリしたイベントでもあった(出典:https://esports-world.jp/report/56731)
宮下:現場に行った時の、ゲーム自体が分からなくても、選手の頑張りを見て泣けてくるようなところが、やっぱりeスポーツを追いかけていて楽しいところだったりします。
井ノ川:「オフライン大会力入れすぎ問題」もあって。もうちょっと小規模なオフ大会もやってほしいんですよね。
宮下:必死で頑張った子たちが報われる姿をもっと多くの人にも見てほしいですよね。世界で戦うのももちろんいいんですけど、相撲の地方巡業みたいなかたちでもいい。
井ノ川:地方の大会、私も見たいです。旅費が問題になりますが(笑)。
宮下:2026年は愛知・名古屋でアジア競技大会もあるし、大阪で『レインボーシックス シージX』の国際大会もあります。コンベンションビューローとか、自治体ごとに誘致しているイベントとして、eスポーツも対象になったらいいですね。
井ノ川:アジア大会でeスポーツが正式なメダル競技になったのは大きいですよね。こういった動きがどんどん増えていってほしい。
編集:いのかわゆう
【特集】 eスポーツ言いたい放題
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