【特集】 eスポーツ言いたい放題

【eスポーツ言いたい放題 2025-2026〈第4話〉】 公式大会より盛り上がるコミュニティ大会 ──eスポーツは“勝ち負け”だけでいけるのか?

2026.7.14 宮下英之
2026年度(令和8年度)に向けて、eスポーツシーンの現在地をゆるく、時にまじめに語っていく「eスポーツ言いたい放題 2025-2026」。

前回までは、『VALORANT』や『リーグ・オブ・レジェンド(LoL)』など、日本でも大きな人気を集めてきたタイトルの現状や、競技シーンとエンタメの関係について語ってきた。

一方で近年、プロによる公式大会とは別に、ストリーマーやVTuber、元プロ選手などが参加するイベント的なコミュニティ大会も大きな盛り上がりを見せている。勝敗を競う大会でありながら、どこかお祭りのようでもあり、プロシーンとは違った熱狂がある。

第4話では、「コミュニティ大会と公式大会」をテーマに、競技シーンがこれからどう選手を見せていくべきなのかを考えてみた。

宮下英之
eSports Worldの企画・立ち上げから関わっている中堅編集者。『LoL』ではついにシルバーに到達したものの、また大きな壁にぶつかり、サポートからレーン変更を検討中。モルガナOTP。

井ノ川結希(いのかわゆう)
eSports Worldの企画・立ち上げから関わっている編集者兼ライター。『スト2』全盛期から格闘ゲームにどハマりするも、ふとしたきっかけで『Counter-Strike: Global Offensive』をプレーしFPSに足を突っ込む。そんなこんなで今では、『ストリートファイター6』や『VALORANT』がメインの担当に。ゴルフにはまりすぎてeスポーツ界隈の人とラウンドするきっかけをうかがってしまうゴルフ女子。

なぜコミュニティ大会は“安心して見られる”のか


井ノ川:第4回のテーマは「プロの試合より盛り上がるコミュニティ大会」です。簡単にいえば、プロ選手が戦う公式競技大会とは異なり、VTuberやストリーマーが主催するイベント的な大会を示しています。

『VALORANT』とか『LoL』などのガチな公式大会では、現在は国内リーグとは別に海外チームと競い合っていますが、残念ながら「日本代表が勝てない」ことが続いています。サッカーW杯などもそうですが、あまりにも自国のチームが勝てなさすぎると、いくらファンでもしんどくなるじゃないですか。

宮下:確かに……。

『VALORANT』のアジアリーグ「VCT Pacific」。DFMが7位タイ、ZETAが9位タイに終わった


『LoL』のアジアリーグ「LCP 2026 Split 2」。SHGはプレーオフで2位DCGに善戦。DFMはレギュラーシーズン8位だった

井ノ川:応援の気持ちは消えなくても、負けが増えてくるとやっぱり選手もつらいし見ている方もつらい。そういうところで、「League the k4sen」(LTK)とか「Devil Clutch杯」みたいに、勝ち負けにこだわりすぎずに楽しめる大会の方がファンとしては安心するし、どんな結末でも苦じゃないのかなって。

宮下:確かにVTuberとかストリーマーの大会は、彼ら自身がエンターテイナーでありエンタメコンテンツとして作られてますからね。やっぱりeスポーツのストイックさ、プレッシャーとは全然違う方向。負けた方にもフォーカスを当ててるし、それを見たいファンもいる。

最近は日本人ならではの考え方で、争いをあまり好まない傾向が強いですからね。幼稚園とかの運動会でも、「みんなが一等賞」みたいに、勝ち負けはあるけど楽しく終われるイベントになっているとか言われてます。個人的には勝敗はいじめでも差別でもないとは思うし、プロの試合は白黒つけてなんぼだろうとは思うけど……。

井ノ川:まあ、最近は勝敗そのものを否定する流れではなくなってきていますよね。順位はちゃんと付けた上で、努力や挑戦も評価するという考え方が主流になっている印象です。だからプロの世界ではなおさら、推しの勝利に渇望しているんじゃないかと。

公式大会が「結果だけ見ればいい」になってしまう危機感


井ノ川:もうひとつ。先ほど上げたコミュニティ大会の「Devil Clutch杯」は、競技シーンの第一線で戦ってきた引退したプロたちが参戦している大会です。こっちの方が面白くなっちゃうと、プロシーンに興味がなくなっちゃうんじゃないかなって。

宮下:正直、競技としてのeスポーツが好きな人間としては、その危機感はちょっと感じてます。

ZETAのClutch_Fiが主催する、引退した選手たちが輝ける場所を作りたいというコンセプトの大会

井ノ川:現役のeスポーツ選手は「強くて○○」がセットじゃないと、「Devil Clutch杯」に出ている引退した選手たちに人気とかで勝てていないんですよね。「面白い」とか「かっこいい」とか、勝敗じゃなくてコンテンツの面白さとして。

それに、『VALORANT』などは引退した選手でも十分に若くてうまいから、全然見られる試合なんです。そうなると、本気で戦っているけどなかなか勝てないプロの競技シーンを見る人が少なくなっちゃうんじゃないかなって。

ただでさえeスポーツタイトルも大会もかなり増えたから、視聴者自身もそんなに全部見られる時間はない。となると、面白いイベントだけ見て「競技は結果だけ見ればいいや、どうせ勝てないんでしょ」みたいなことになりかねないのがすごく心配ですね。

宮下:現役選手にフォーカスが当たらない理由は明確で、やっぱり強くないことがはっきりしちゃっているから。だって、強ければ『スト6』のさはら選手とかひなお選手みたいに、無名からでも一気にシンデレラボーイになれますからね。

井ノ川:そこはチーム戦のeスポーツタイトルの難しさでもありますけどね……。

宮下:ただ、その中にも勝っても負けても人気の選手もいる。ルックスや個人の性格、プレー自体の魅力もあるかもしれないけど、ひとつのチーム内でも差があります。

若くて頑張っていて強い選手もたくさんいるんですが、自己PRなのかチームのブランディングなのか、公式の取り上げ方が足りていないのか、なかなかそういう選手たちの様子が見えて来ない……。

井ノ川:それこそ、そういう選手たちを発掘したり知らせることが我々メディアの役割なんですよ。「この選手がこれから行けそうだぞ」とか「この選手にいま注目しよう!」と、伝えなきゃいけない。とはいえ、全員を伝えられるわけでもないし、やっぱり勝利とか劇的な試合とか、そういうものがないと伝えるきっかけもなくて。

宮下:予算などの限界もありますが、メディアとしても反省は必要ですね……。

プロ選手を“ヒーロー”にするのは誰の仕事なのか


井ノ川:前々から思っているんですけど、メディアの立場から言うと、チーム側が選手の育成のひとつとして、メディア対応教育をするのも大事なのかなって。

宮下:それは自分も思います。特に日本のeスポーツ界って、スポークスマン的にいつもしゃべれるメンバーはチームに誰かしらいるんだけど、個人個人は寡黙(かもく)で、質問しにくい雰囲気がある選手もいる。いつもストイックに練習ばっかりしている方が硬派でかっこいい、みたいな感覚があるのかな。

たとえば、世界的なスポーツで例えると、バスケットボールのNBAにしても野球のMLBにしてもモータースポーツのF1にしても、確実にメディア対応のための時間が試合の前後に用意されていて、メディア対応が義務だったりもするんですよね。負けて気分が悪いからと拒否したら罰金なんてこともある。

井ノ川:選手にとってメディア対応は、自分たちをアピールする場であり、ファンが知りたい言葉や思いを伝える意味ですごく大事だと思うんだけど——。

特に日本では大会側からもチーム側からも、「メディア対応はめんどくさい、二の次」と思われているような気がします。我々の力不足、集客力不足も課題だとは思いますが。

宮下:一方で、『スト6』のチーム戦である「SFL」のメンバーの多くは、試合に勝っても負けてもすぐ自分で配信しているんですよね。動画の収益を狙う面もあるんだろうけど、あれはすごいと思う。『ポケモンユナイト』の選手とかも個人配信はかなり頻繁です。

もちろん、秘密にしたいことや言えないこともあるでしょうし、負けた悔しさとかもあると思うんですよ。でも、配信のおかげでファンは集まってきてくれるし、事前に言っていいことといけないことはチーム内で共有されていないとできないことで。本当は他のタイトルでももっとやってほしい。

Crazy RaccoonのShuto選手をはじめ、多くの選手が「SFL」終了後にすぐに配信等を行っており、試合の裏側なども語っている

井ノ川:私はその点は逆で、もっとオフィシャルなメディアもいる場で、自由に声を発した方がいいと思うんですよね。

結局、個々の選手の配信って熱心なファンしか見ていないんです。だから、ファン以外も含めて広く見るメディアで顔と名前を残すことによって、「この選手、気になるな」みたいに、元々のファンじゃない人が見つけてくれる機会が増えると思うので。もうちょっと露出を頑張ってほしい。

そのために、インタビューでの対応の仕方を、チーム側がもっとしっかり教えてあげてほしい。だって、社会人経験がないような若い選手が、いきなり誰だかよく分からない大人たちに囲まれて、自分が答えたくないような、よく分からない質問をされる時もあるわけじゃないですか。

でも、そういう場面でもこうやって返せばいいというパターンを教えてあげれば、メディア側に対しても「この選手、真面目だな」とか好感を持ってもらえたりもする。

プロ野球とかは、ドラフトなどで入団するとそういう取材に対する研修から入るみたいなんです。大相撲とかもそう。スポーツ界隈で一番最初に教えるくらい大切なことだから、eスポーツでも重きを置いてもいいのかなって感じます。

宮下:知名度がないとか予算に余裕がないとか、いろいろな事情もあるかもしれないけど、できないことはないと思いますね。日々の練習や教育のたまものというか、ネットリテラシーを学ぶ意味でも役に立つかもしれない。

井ノ川:いまだにSNSとかでアポを取って勧誘したeスポーツの選手が、チームに加入してから暴言を吐いて炎上したり……という話もあります。

最近は、謎の正義感で過去のSNSの発言を掘り起こして「こいつ、こんなこと言ってたぞ」みたいな告げ口する人が増えて来ています。非常に息苦しい世界だと感じていますが、プロになった選手はSNSのアカウントを作り直すとか、過去の投稿を消すなどしてクリーンにしておいた方がいいのかなぁとも感じちゃいますね。

宮下:大会によってもメディアの集め方も違えば、集まるメディア側も新聞、一般誌、ゲーム専門誌、eスポーツ専門誌、さらに個人ブログなどもあっていろいろですからね。本当はもっと新聞やテレビみたいなマスメディアにこそeスポーツに注目してほしいし、ゲームメディア、eスポーツメディアももっと増えて欲しいけど……。

井ノ川:取材をしていても、勝利者インタビューなどでは決して参加メディアは多くはないんですよね……。

宮下:でも、メディア対応の練習自体は、チームや選手にとってもまったく無駄にはならないとは思います。eSports Worldがその練習としてインタビューしてもいいし、勝利者インタビューの研修サポートとかもやれそう。興味のあるチームの方、ぜひご連絡お待ちしています(笑)。

──第5話に続く──
 

編集:いのかわゆう

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