【大会特集】『LoL』国際大会「Mid Season Invitational 2022」

【MSI 2022 ランブル&ノックアウトステージ振り返り】地域の威信をかけた因縁の対決を振り返る

2022.6.22 SejuPoro
世界各地の『リーグ・オブ・レジェンド(LoL)』プロリーグより、春の優勝チームが集まって王座を競い合う国際大会「Mid-Season Invitational(MSI)」。今年の「MSI」は久々に、ほとんどの参加チームが開催地である韓国・釜山に集まり、地元の観客たちが固唾をのんで、あるいは素晴らしいプレイに歓声を上げる中で行われた。

前回の記事では、出場した全11チームが激突した前半戦「グループステージ」の総括をお届けした。

今回は、グループステージの上位2チーム×3グループ、合計6チームがぶつかった「ランブルステージ」、そしてその上位4チームが勝ち抜きトーナメント方式で世界一のトロフィー獲得を目指した「ノックアウトステージ」を振り返ってみたい。春夏間の王者として戴冠したのはどのチームだっただろうか?

ランブルステージ:プール1のプライド、プール2の意地


地元開催の国際大会出場は初となるT1、そしてFaker選手。そのプライドにかけて、優勝を目指す

グループステージに参加した11チーム中、各グループの上位2チームがさらに先のノックアウトステージ出場権を巡って戦うのがランブルステージとなる。

ランブルステージの見どころはやはり、グループステージでその強さを存分に見せつけたプール1の強豪同士の対決となった。各地域のリーグ戦やプレイオフから連勝記録を伸ばし続けているG2 Esports(G2)とT1が含まれており、両チームが激突すれば一方のレコードが止まることも確定していたため多くの期待と注目が集まっていた。昨年の王者として優勝候補に挙がるRoyal Never Give Up(RNG)、連勝記録を伸ばし続けている挑戦者のT1とG2、それらに対してプール2のチームが立ち向かえるかというのがランブルステージの基本的な構図だ。

そんな中始まったランブルステージで、真っ先に快調なスタートを切ったのはG2となった。初戦から無敗同士だったT1と対決してこれを破ると、RNGに対しても勝利。プール1同士の対戦を2勝して初日を終えたのだ。

しかし、好調だったG2は3日目にPSG Talon戦を落とすとその後は連敗、T1もRNGとG2に敗れてのスタートで調整に苦しむなど順位は波乱気味となった。

RNGはほぼ安定した強さを見せて1位を、終盤調子を取り戻したT1が2位を確保したが、ノックアウトステージ進出圏である4位までの順位は最終日までもつれ込むこととなった。PSGがG2に2勝を挙げ、Evil Geniuses(EG)もT1を破り、Saigon Buffaloも攻撃的なスタイルを貫いてG2を破るなど、プール2チームが意地を見せた結果でもある。

最終的な結果こそ、いわゆる強豪地域として数えられる地域が順当に勝ち上がる結果となったものの、下馬評を覆すようなジャイアントキリングもあり、白熱した5日間は瞬く間に過ぎた。

ランブルステージ最終結果
  • 1位:⁠Royal Never Give Up(中国代表・プール1) - 8勝2敗
  • 2位:⁠T1(韓国代表・プール1) - 7勝3敗
  • 3位:⁠G2 Esports(欧州代表・プール1) - 5勝5敗
  • 4位:⁠Evil Geniuses(北米代表・プール2) - 5勝5敗
  • 5位敗退:⁠PSG Talon(太平洋代表・プール2) - 3勝7敗
  • 6位敗退:⁠Saigon Buffalo(ベトナム代表・プール2) - 2勝8敗

ノックアウトステージ:トロフィーまであと数歩


国際大会といえば、きらびやかなチャンピオンになりきったコスプレイヤーたちが華を添えるのが常だ。韓国のコスプレイヤーは質の高さで知られている

全世界から11チームが参加したMSIも残るは4チーム。3日間に行われるBo5で最終的な勝者が決するノックアウトステージを残すのみとなった。トーナメントの組み合わせは、ランブルステージを1位通過したRNGが対戦相手を指定する形で決定され、RNG vs EGとT1 vs G2に決まった。奇しくもこの対戦カードはMSI2019と同じ地域で組み合わせられる結果となった。

準決勝 RNG vs EG:ゴリアテに挑むダビデ


競技歴の長いベテランとして、若手の多いEGを支え、引っ張ったImpact選手。試合後の記者会見では沈痛な表情を見せた

連覇を目指し、大会を通して安定したパフォーマンスを見せ続けるRNGに対し、国際大会初出場の若手2名を擁するEG。「MSI 2019」では、前年世界王者で中国代表のiGを北米代表のTeam Liquidが破ったことから、ファンの間では「アメリカチームによるジャイアントキリングの再現成るか?」という視点でも注目された試合となった。

試合では、全チームの中でも最ベテランで、国際戦でのパフォーマンスの高さにも定評のあるトップレーナー・Impact選手を集中的にマークする戦略をRNGが採用。今大会でもEGが反撃する際の起点となっていたこのポジションを失速させることで試合を掌握しきった。EGはトップを抑えられたところからの不利を覆すことはできず、結果は3勝0敗でRNGがまずは決勝進出を決めた。

EGは敗れたものの、昨年以降のデビューで北米出身の若手選手が国際的な有力プレイヤー相手に十分に戦い、大会を通しても成長していった点は、昨今の北米ファンにとって大きな収穫となった。

準決勝 T1 vs G2:因縁の対決再び


「MSI 2019」優勝時の写真を使ったチアボードを掲げるファン。その鮮やかなプレイで知られるcaPs選手は世界中にファンを持つ

RNGがEGとの対戦を選択した結果、もう一方の準決勝は「MSI 2019」と同様にG2 vs T1という因縁の対戦となった。2019年の「MSI」では、G2はT1を破って決勝進出の後、優勝までたどり着いている。G2にとっては当時の再現、T1にとっては雪辱という点で負けられない対戦である。

試合ではピックの時点で作った有利をレーンから押し付け、場合によっては一般的な有利不利を個人技でひっくり返して主導権を握るT1に対し、少数戦やオブジェクトの交換で逆転のチャンスを作り出そうとするG2という形が中心となった。G2は不利な状況でも少しでも獲得したゴールドを中心プレイヤーに集める形で反撃の機会をうかがったが、T1の攻めをひっくり返すことはできず、3勝0敗でT1が勝利となった。


決勝 T1 vs RNG:ライバルの歴史に新たなページを記せ


T1の左ブースには選手たちが座り、RNGの右ブースは空席。特異な光景の決勝戦となった

決勝戦は、「MSI 2017」を最後に国際大会優勝から遠ざかっていたT1と、T1を超える3度目の「MSI」優勝かつ連覇を目指すRNGが決勝で激突することとなった。決勝のBo5(ベストオブファイブ、3本先取)にふさわしく、直前までの試合を踏まえて変化していくピックとバン、目まぐるしく切り替わる攻防と卓越した個人技の応酬、最終戦となる第5ゲームまでもつれ込んだ決勝戦だったが、最後に上回ったのはRNGだった。

RNGはチームの歴史上初めてT1とのBo5に勝利、3度目の「MSI」優勝かつ連覇を達成したことにより、記録の面でもT1を上回る結果を手にした。


LCK・LPLのライバル関係と国際大会


ロックダウン中の上海市内にあるゲーミングハウス内にて、MSIトロフィーを掲げるRNGのメンバーたち

RNGとT1、そしてLPLとLCKのライバル関係は2013年の「Worlds」まで遡る。この年に突如現れた韓国の新星がSK Telecom T1のFakerであり、決勝でT1の優勝を見届けることとなったチームがRNGの前身であるRoyal Clubなのだ。

その後もLPLとLCKの両チームは、時に低迷する時期を挟みながらも、国際大会でたびたび相まみえてきた。「MSI 2016」では準決勝、「Worlds 2016」では準々決勝、「Worlds 2017」では準決勝、「Worlds 2019」ではグループCと、何度もライバルとして激突しながら、RNGはT1との戦いでは後塵を拝する結果が続いていたのだ。

今大会で初めてBo5の対決を制し、MSIの優勝回数や連覇という記録の面でもT1を上回ったことは、RNGでのキャリアが長いベテランの選手たちにとっても大きな意味を持つ勝利だっただろう。

決勝戦での両チームの戦いぶりも興味深い。地域リーグごとに得意とするスタイルは異なるのだが、ハンドスキル重視で戦闘を好むのがLPL、高い技術に裏打ちされた緻密な視界管理やゲームコントロールで確実に戦うのがLCKと言われていた。

しかし今回の決勝では、より確実に詰めるゲームをするRNGに対して、定石からずらした動きで揺さぶり、個人技の高さで巻き返しを図るT1、という構図が見られた。

更なる高みを目指し、ライバルの強みをどん欲に取り入れて切磋琢磨していく中で、地域リーグの特色と単純にくくれない成長を目の当たりにできるのも、競技シーンを追う楽しみの一つと言えるだろう。この勝利と敗北が次の国際大会、すなわち今年の世界王者を決める「Worlds」へとつながっていくのだ。

「MSI 2022」を振り返って


MSI 2022 最終結果

  • 優勝:Royal Never Give Up(中国、プール1)
  • 準優勝:⁠T1(韓国、プール1)
  • 3~4位:⁠Evil Geniuses(北米、プール2) / ⁠G2 Esports(欧州、プール1)
  • 5~6位:⁠PSG Talon(太平洋、プール2) / Saigon Buffalo(ベトナム、プール2)
  • 7~8位:⁠RED Canids(ブラジル、プール4) / ⁠ORDER(オセアニア、プール4)
  • 9~10位:⁠DetonatioN FocusMe(日本、プール4) / ⁠Team Aze(ラテンアメリカ、プール3)
  • 11位:⁠İstanbul Wildcats(トルコ、プール3)

今回の「MSI」は、これまでの国際大会での結果から決定される「プール」の順番通りとなった。直近数年間の国際大会で優勝を争うレベルの「プール1」地域代表が最上位をさらっているし、「プール2」以下も、3と4の力関係は微妙なところだが、ランブルステージ進出の境界線を見るに、やはりそれぞれにはまだ歴然とした差があると見ていいだろう。

ファンの間で物議をかもしたRNGのリモート出場と、それに続いて起こったレイテンシー問題のほかにも、さまざまな問題があった。開幕の約2週間前に突如発表されたグループステージ開催場所の変更や、開催前日にチームに伝達された「選手はステージでのプレイ中もマスクを着用せよ」という規定(後に撤回)などだ。久々に観客を入れる大規模会場での開催や、新型コロナウイルス感染拡大防止規定の運用などで、大会運営にある程度の混乱があっただろうことは、想像に難くない。

それでも、久々の有観客開催の国際大会は、配信画面の向こう側からも熱狂が伝わってきて、ファンとして本当に楽しいものだった。今後の国際大会では、今回の教訓を活かしてほしいのはもちろんだが、有観客での熱い大会が秋の「Worlds」以降も開催できることを願ってやまない。

世界大会への道!各地でSummer Splitが開幕中


「MSI 2022」決着の興奮も冷めやらぬなか、各地では次々にSummer Splitが開幕している。

トップバッターは6月6日に開幕したオセアニアリーグ「LCO」。この「MSI」でオセアニア代表を務めたORDでは、ジャングラーのKevy選手が北米チームCLGへと移籍し、メンバーが多少変わっている。

その次、6月10日に開幕したのは中国リーグ「LPL」だ。なんと先の「MSI」に優勝したばかりのRNGはBin選手を放出し、Bilibili GamingよりBreath選手を新たなトップレーナーとして迎え入れた。春スプリットの開幕前に本来獲得を目指していた選手だという話だが、国際大会優勝実績を勝ち取ったばかりの選手のトレードはファンを驚かせた。

6月11日にはラテンアメリカリーグ「LLA」とトルコリーグ「TCL」、さらにブラジルリーグ「CBLoL」も開幕した。6月15日には韓国リーグ「LCK」も満を持して開幕。6月17日には北米リーグ「LCS」と「LEC」が開幕し、夏スプリットの競技も本番に突入していく。

そして、6月24日には我らが「LJL」もいよいよ開幕だ。



パッチ12.10で行われた「チャンピオンの耐久力アップデート」がプロシーンに与えた影響も大きいようだ。チャンピオンの体力と防御力が一律増加したことで、バーストダメージから生き残りやすくなったため、継続してダメージを与える能力の高いチャンピオンが試合終盤に活躍しやすい環境になった。レーンでの力関係も変化している。

ここから「Worlds」へ向けてさらに調整されるであろうゲームの変化と、そこから生まれるプロたちの激しい戦い──どれも見逃せない、熱い夏が始まっている。


画像出典:LoL Esports Photos Flickr

MSI 2022 日本語実況アーカイブ
https://www.youtube.com/playlist?list=PLpOVkT2nygTtijBGbJqEBEoYHxk-EMAOz
MSI 2022 - Leaguepedia
https://lol.fandom.com/wiki/2022_Mid-Season_Invitational
LoL Esports
https://lolesports.com/
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