RTA(リアルタイムアタック)は次のeスポーツカテゴリーになれるのか? 「RTA in Japan」に聞いてみた (2/2)
eスポーツの競技としても注目を浴びるRTAの世界
——そんなRTA界隈で、最近「eスポーツ」のジャンルでも注目された出来事があると伺いました。
Cma:最近の大きな出来事と言えば、RTAプレイヤーでアッキーさんという方がいるのですが、その彼が海外のeスポーツイベントに招待されて、Speedrunのリーグ戦に出場されたことですね。
ちなみに出場した競技は、1996年に発売されたニンテンドー64の『スーパーマリオ64』というタイトルのSpeedrunです。
——Speedrunのイベントに日本人が招待されるということは稀なんですか?
Cma:海外のSpeedrunのリーグ戦に招待された日本人は初めてです。そして、彼が注目を浴びているのは、『スーパーマリオ64』がうまいのはもちろん、彼がまだ高校生だということなんです。
——高校生!? なんでまたそんな若い子が『スーパーマリオ64』を……。
Cma:『スーパーマリオ64』はSpeedrunの競技タイトルでもっとも人気のあるタイトルといっても過言ではないくらい人気があります。日本、海外問わず不動の1位でもあるタイトルです。
また、『スーパーマリオ64』のSpeedrunの中には何種類かルールがあるのですが、その中で日本で最もメジャーなルールの「16 Star」でアッキーさんは世界1位の記録を持っているんです。
『スーパーマリオ64』におけるRTAのルールについて
『スーパーマリオ64』には「パワースター」というアイテムがあり、これを一定数集めることで新たなコースに進入できるようになる。この「パワースター」の取得枚数を制限してRTAの競技にしている。
「パワースター」をまったく取らずにクリアを目指す「0 star」や、すべての「パワースター」を取得してクリアする「120 star」などがある。
『スーパーマリオ64』には「パワースター」というアイテムがあり、これを一定数集めることで新たなコースに進入できるようになる。この「パワースター」の取得枚数を制限してRTAの競技にしている。
「パワースター」をまったく取らずにクリアを目指す「0 star」や、すべての「パワースター」を取得してクリアする「120 star」などがある。
そもそもeスポーツイベントの中にRTAの競技があること自体、日本人にはあまりゆかりのないことかと思います。その種目に日本人が招待されるということはかなり話題性のある出来事でしたね。
——eスポーツの大会となれば賞金もあるとは思いますが、海外のSpeedrunのeスポーツイベントというのはどのように行われているのですか?
Hoishin:最近ですと「EVO」のように、さまざまなタイトルで行われるeスポーツ大会がありますが、そのサイドトーナメントとしてSpeedrunの大会が開かれることが多いです。
アッキーさんが出場した大会は、2019年5月31日〜6月2日に、アメリカのウィスコンシン州で開催されたeスポーツイベント「Smash’N’Splash 5」でのサイドトーナメントです。
——『スマブラDX』や『スプラトゥーン』なども採用されている大きな大会ですね。でも、eスポーツの競技の中にSpeedrunがあったとは!
もか:海外ではGSA(Global Speedrun Association)という団体がSpeedrunのトーナメントを頻繁に開催していて、例えばTwitchのドネーションを賞金として上位入賞者に贈呈したりしています。
——しっかりとしたeスポーツの大会になっているのですね。ところで、RTAやSpeedrunというと古いゲームが多いイメージですが、最近のゲームタイトルで話題のタイトルはありますか?
Cma:最近人気があるのは、インディーゲームの『Celeste(セレステ)』ですね。シンプルな操作ながらアクション性が高く、RTAの種目として注目されています。
——海外のSpeedrunの選手を見ると個人で活動していますよね。実際のところ、Speedrunの選手というのはどのようなプレイヤーが多いのでしょうか?
Hoishin:チームというよりは、あくまでそのタイトルが好きだからやっているというプレイヤーが多いです。昨今のチームに所属しているプロゲーマーとはカテゴリ的にも異なりますね。
プロ選手というよりは、配信で人気を集めているエンターテイナーとしての役割が大きいと思います。
——やっぱり好きだからこそやり続けていられるという部分が大きいんですね。今後、eスポーツとの関わりはどうなっていくと思いますか?
Hoishin:海外ではeスポーツというよりは、チャリティーイベントとの結びつきが強くて、Games Done QuickというSpeedrunのチャリティーイベントが、季節ごとやTwitchのイベントの中などで数回開催されています。
こちらのイベントは1週間ホテルを貸し切って、その中でさまざまなタイトルのSpeedrunを楽しむという内容になっています。
今年の6月に行われた「Summer Games Done Quick 2019(SGDQ)」では、日本円にして約3億円の募金が集まったそうです。
——1週間で? すごいっ!
Hoishin:このイベントは競技というより、ある種ショーのようにSpeedrunに挑戦することで集客しています。
会場に行けない人は配信を通じてPayPal経由で募金をしたりと、募金の方法も割と直接的ですね。また寄付する団体も毎年事前に決められていて、「今年はここに寄付します」と明言してイベントが開催されています。
ちなみに今年は、「国境なき医師団」に寄付されました。
——めちゃめちゃ社会貢献しているじゃないですかっ!
Cma:配信の方も右肩上がりで、今年の配信は同時視聴者数が20万人くらいいましたよ。
選手が賞金を稼ぐという感覚とはまた違った方面で、お金が動いているという感じですね。
RTAやSpeedrunの走者は、そのゲームが本当に好きで好きで堪らないからそのゲームをプレイしているわけで、そうでないと病んでしまいます(笑)。
——確かに、同じゲームを何年も何年もやり続けるというのは根気がいりますもんね。
もか:そうですね。
Speedrunのチャリティーイベントは、まだまだ成長していく文化だと思っているので、今後の成長が楽しみでもあります。
何せ、新しいゲームが出れば出るほど、競技タイトルも増えるということですからね。
——最後に、みなさんにとってのRTAとはなにか、お聞かせください!
もか:RTAはゲームが好きなら誰でも参加できる競技です。コミュニティの人間も新しいプレイヤーを歓迎していますし、なにより自分自身の記録がランキングに載ることは自信にもなります。
Hoishin:まずは挑戦することから始めてみてください。そこでRTAの魅力に気づいてもらえたらなによりです。
Cma:2019年12月27日(金)〜31日(火)にかけて「RTA in Japan 2019」というRTAのイベントを、東京秋葉原にある「ハンドレッドスクエア倶楽部」で開催します。RTAに少しでも興味を持たれた方は、ぜひ足を運んでみてください!
——ありがとうございました!
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eスポーツとは似て非なる道を突き進むRTA、Speedrunの世界。なにより感じたのは、プレイヤーや視聴者などコミュニティに関わる人々がみな温かい心を持っているということだ。
競技とは言え、戦う相手はかつての自分の記録。そしてリアルタイムだからこそ運の要素もつきまとう。常に自分自身と戦い、記録を塗り替えるために日々まい進している姿が、イベント会場にいるすべての人間をエンターテイメントとして魅了しているのだろう。
ゲームやハードウェアのバグ活用OKなルールもあり、ややアンダーグラウンドな世界を醸し出しているという印象が大きかったRTAの世界だが、こうして取材をすることで、ゲームを純粋に楽しみ、腕を磨き続けるアスリートのような新たな一面を知ることができた。
eスポーツという言葉の概念が、単なる賞金付きの競技大会から、より広くゲームを用いた競技前半へと広がる中、「RTA」も立派なeスポーツのひとつだ。積み重ねてきた努力と研鑽だけでなく、なによりプレイヤーが楽しみ、エンタメとして披露するイベントである「RTA in Japan」の今後に注目したい。
RTA in Japan公式:https://rtain.jp/
RTA in Japan Twitter:https://twitter.com/rtainjapan
RTA in Japan Discord:https://discordapp.com/invite/dqpB8y6
SPEEDRUN.COM:https://www.speedrun.com/
TWIN GALAXIES:https://www.twingalaxies.com/
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