【インタビュー】 キャスター歴15年のトンピ?が語る、eスポーツキャスターとしての心構え、eスポーツ業界の未来
- 『AVA』イベントでキャスター初体験
- 高校生で「東京ゲームショウ」MCデビュー
- キャスターとしての師匠は古舘伊知郎?
- ポノスへの転職からプロのキャスターに
- タイトルを絞らずマルチに活動する理由
- キャスターを柱としつつ、若手にはそれ以外の道も示したい
- ストリーマー人気と配信しないプロゲーマーへの誤解
- どんな仕事からでも「eスポーツ」に関われる時代に
eスポーツ大会において、ゲームのルールを知らない初心者からガチのファンまで、幅広い視聴者に向けて試合の流れやゲームの面白さを実況してくれるゲーム・eスポーツのキャスター。ルールが複雑で何が起きているのかがわかりにくいタイトルも多く、観戦する上でなくてはならない存在だ。
そんな中、FPS、MOBA、パズル、スポーツ、スマートフォンゲームまで、さまざまなeスポーツタイトルで実況をこなし、マルチな才能を発揮しているのがトンピ?氏だ。
高校生時代から始めたというキャスター歴は実に15年以上にも及び、2024年現在で31歳とまだまだ若いものの、日本のeスポーツキャスターとしてのキャリアで言えばかなり長い方だ。現在も『#コンパス』『第五人格』『フォートナイト』といった多くのゲームで公式キャスターを務め、テレビ、ラジオと多方面でその才能を発揮している。
そんな、常にeスポーツ業界の先陣を切ってきたトンピ?氏にインタビュー。ゲームとの出会い、キャスターを志したきっかけ、eスポーツ業界への思いなどをうかがう中で、華々しいキャスターとしての顔とは別の、実業家や教育者としての側面が見えてきた。
特に、これからキャスターになりたいと考えている若い方たちにとって、金言となる言葉がたくさん詰まったインタビューとなった。
──トンピ?さんと言えば、若くして公式大会の実況などを務めてこられた優等生というイメージがありますが、最初にゲームにふれたきっかけは?
トンピ?:最初にハマったゲームは、中2のお年玉で買ったゲームボーイアドバンス(GBA)の『ロックマンエグゼ』でした。うちは両親が学校の先生なんですが、完全にゲームを禁止させられていたんです。GBAを買ってからは、親が寝るのを見計らってゲームをつけたりしていました。
中3の時にパソコンでゲームができると知り、家にあったパソコンで初めてやったゲームがMMORPGの『チョコットランド』です。そこから、同じハンゲームが開発した『Special Force』というFPSを同級生に誘われて始めて、めちゃくちゃ面白くてハマりました。
──でも、パソコンゲームはご両親にバレなかったんですか?
トンピ?:パソコンは調べ物をしているという体で、親が後ろを通る瞬間だけウェブページに切り替えて、通りすぎたらまた戻す、といった姑息な手段を使っていました。なので、最初に覚えたキーボードショートカットはアプリを瞬時に切り替えられる「alt」+「tab」です(笑)。
当時、部活もやっていましたが、家に帰ってからはずっとゲームをしていたので、そのあたりで親も諦めていましたね。
大きな転機になったのは高2の時。同級生と一緒にFPSの『AVA』というゲームを「Skype」でつなぎながらやっていたのですが、その年の秋に秋葉原の「アイ・カフェ」で店舗主催の第1回オフラインイベントにプレーヤーとして参加したんです。それが面白すぎて、「(2回目から)スタッフできませんか?」と店長に聞いて、イベントスタッフとして活動し始めました。
──プレーヤーとしてではなくスタッフ側?
トンピ?:大学でも文化祭の広報をしたり、裏方仕事が好きだったんです。当時はネットカフェのオフラインイベントがたくさんあって、秋葉原、八王子、池袋の店ではスタッフとして、代々木、大森ではプレーヤーとして通っていました。その頃にSHAKAさんとかDeToNatorのNicoRob1Nさんとよくイベントで遊んでいました。
キャスターになった直接のきっかけは、ネットカフェ主催のオフラインイベントで、店長にお声がけいただいたことでした。
──ゲームのキャスターを仕事として意識し始めたきっかけは?
トンピ?:大きな舞台に出たのは、『AVA』の公式大会「AVAれ祭」で、当時のプロデューサー(井上さん)にお声がけいただいた時でした。
学生団体を経由して「東京ゲームショウ」(TGS)でのぷよぷよの学生大会のMCの依頼をいただいたのが最初です。
『AVA』でははじめは僕が護衛部門で実況を担当していて、メインの実況はmejikaさん、解説をもるちゃん(元SunSisterオーナーの太田桂氏)とかMax Jamさん(DeToNatorオーナーの江尻勝氏)とか、当時『AVA』で有名な方々と一緒にやっていました。
https://www.famitsu.com/matome/everydaybeta/2013_05_15_165.html
──当時はまだ、キャスターという立ち位置で仕事をされている方はそんなにいなかったですよね。
トンピ?:いなかったですね。「TGS」のMCもメーカーの社員さんがやっていることが多かったし。自分もまだ学生だったので、お金はもらっていませんでしたが、『AVA』の時は4万〜5万円の課金でしかもらえないガチャのシリアルコードがもらえるのが、自分の中では超うれしかったです。
この頃からシューティングゲームが流行り始めて、『レインボーシックス シージ』や『オーバーウォッチ』や『PUBG』がほぼ同じタイミングでやってきました。『BATTLEFIELD 4』が流行った時代に八王子の「快活カフェ」で大会配信をしている時には、JCGさん(イベント運営会社)とも出会って、それをきっかけにキャスターもやらせていただきました。
一番カチっとハマったのは『レインボーシックス シージ』ですね。Year 1〜3までの公式放送はほぼ自分とふり〜ださんが担当していました。
──ただ、その後大学に進学されて、教職も取得されていますよね。
トンピ?:高校時代に「ゲームをすると頭が悪くなる」と本気で信じていた両親への反抗心から、「ゲームをしても教員免許は現役で取れるし就職もできる!」と、社会科の免許を取得しました。もともと何かを伝えた時に「へぇ〜」と思ってもらえることがうれしくて。そこは今も変わっていないですね。
ただ、社会人経験がある先生の方が面白いと思っていたので、一般企業に就職して社会を学んでから伝えたいと考えていました。
──当時のキャスターというと、トンピ?さんが先駆者だったと思います。どんな努力をされていたんですか?
トンピ?:スポーツ観戦は好きで、プロレス、野球、テニス、バレーボールとかをよく見ていたんです。なので、独学でそういったフレーズを自然に頭の中で再生してしゃべり方などを覚えていきました。
──参考にされたキャスターや好きなキャスターは?
トンピ?:古舘伊知郎さんです。親がプロレス好きでF1ももちろん見ていましたし、幼い頃に「筋肉番付」の実況もされていて、誇張した表現にインパクトがあるじゃないですか。「人間山脈!」とか「音速の貴公子」とか、自分の言葉やフレーズで選手たちがよりカッコよく思えるのがいいなと思って、勝手に古舘さんの弟子だと言っていました。
そうしたら、ちょうど2年前にテレビ東京の番組で、古舘さんが審査員として実況・解説バトルをする特番に出演させていただけたんです。根がオタクなもので「すごく参考にさせていただいています!」と伝えたら、MCの陣内智則さんが「もうこれ、弟子って認めていいんじゃないですか?」と振ってくださって。「そうだね」と言ってもらえたので、やや公認ですかね(笑)。
──実況のスタイルは古舘さんから学んだものだったんですね。
トンピ?:直接ではないですが、スポーツって型にハマっている実況が多いので、その中でどういう表現をするか、点が入ったとか特別なポイントでどういう部分を抜き出すかとか……しゃべり手として活動を始めてからそういう視点で見るようになりました。結果的に、(古舘さんの)真似をしながら自分の中でブレンドしていって、トンピ?が出来上がったという感じです。
──自分がキャスターをした大会で、特に印象に残っているものはありますか?
トンピ?:一番最初の頃に実況した「ぷよぷよ学生王選手権」ですね。下手くそだしチャラいし、実はあの時目の前に800人くらいのお客さんがいる中で膝が笑っていたんです。お客さんの方も見られないから、肩に乗せた「ぷよ」ばかりいじっていて。でも、あの経験があったからこそ、それ以降の現場は「あれに比べれば全然大丈夫」と思えます。
──ちなみに、大失敗とかもありましたか?
トンピ?:細かいものはあるんですが、多分大失敗がないから仕事が来るのかな、という気がします。一部の人には「eスポーツ界のガンジー」なんて言われて、悪目立ちしないようにはしていて炎上もないんです。睡眠は必ず8時間確保していますし、病欠とかもほとんどありません。普通に生きているだけなんですけどね。
──キャリアの中で話題になったのが、2017年のポノス株式会社への就職でした。どういういきさつがあったんでしょうか?
トンピ?:当時は一般企業に就職していたんですが、『リーグ・オブ・レジェンド』の大学生を支援する「League U」というプログラムの立ち上げに携わっていました。まだ学生だったイェーガーくんとリクルートくんに実況・解説や就職のアドバイスとかもしていて。
ただ、当時の会社は副業が禁止だったので、1年間ずっとボランティアだったんです。でも、依頼してくださるクライアントさん側としてもお金を払わないわけにはいかない。
そんな時期にちょうどポノスがeスポーツ採用をしていて、自分よりも先にガリレオさんが入っていて、僕が2人目として入社しました。
──では、言ってみればゲームのキャスターを本業にしたタイミングはここだった?
トンピ?:そうですね。でも、キャスターだけが本業というわけではなく、あくまでも自分の仕事の柱のうちの1本という考え方でした。
ポノス時代もゲームキャスターをしながらも、『ファイトクラブ』のプロデューサーや『クラッシュロワイヤル』のプロゲーマーのマネジメント・動画制作に加えて、会社の通常業務もやっていましたから。
それは独立した現在も同じで、自分としては普通の会社員がキャスターという副業をやっているという気持ちでずっと活動しています。
──そうなんですね。今日お話をうかがうまで、トンピ?さんの肩書きは「キャスター」もしくは「タレント」だと思っていました。
トンピ?:YouTuberとかストリーマーみたいになりたいという気持ちももちろんあるんですけど、自分の性格上、堅実になってしまうんです。炎上もないけど上振れもない人生です(笑)。
──トンピ?さんがポノスに入社した2017年頃から、日本でも「eスポーツ」という言葉がブームになっていきました。2018年に流行語大賞にノミネートされ、「eSports World」も2019年に開設しました。当時トンピ?さんは「eスポーツ」についてどんなふうに感じていました?
トンピ?:「eスポーツ」という言葉が一般の方々に浸透し始めたくらいのタイミングから、決してみんなが知っているわけではないけれど、若者に向けて発信したりeスポーツに関わっている自分に対して「そういう仕事、新しいね」と言ってもらえるようになりました。
とはいえ、2019年頃はまだ25歳のペーペーでしたから、人生の先読みなんてできませんでしたね。ただ、すでに世界でeスポーツは流行っていて、それが日本にも遅れて広がってきているということは、シュンと消えることはないだろうと。
実況・解説も『LJL』のeyesさんやRevolさんのような方がすでにいましたし、eスポーツの人気が落ちていくビジョンはまったくなかったですね。
──『LJL』の話が出ましたが、eyesさんやRevolさんは「LJLの顔」というくらい専任されている一方で、トンピ?さんはあまり特定のタイトルに縛られず、マルチにこなしているイメージがあります。
トンピ?:タイトルを絞らずにマルチに活動している理由は、ひとことで言ってしまえば僕にとってはそれが一番強い戦術だと考えているから(笑)。毎週の土日を埋めるには限定されたタイトルだと不足するので、MCやキャスターとして実況できるタイトルをたくさん抱えていた方が、必要とされるシーンも増えますから。
また、もともと社会科教師として「社会を学ぶため」に社会人になったので、いろいろな活動の中で結果的にeスポーツのキャスターがハマったという感じです。
それと、ゲームとはちょっと関係ないのですが、僕は三人兄弟の長男で真ん中の弟が重い心臓の病気で障害があるんです。障害者年金ももらえていますし、親も貯蓄してはいるんですが、兄として責任を感じていて、就職する時に「人の2倍以上稼ぎたい!」と考えていました。
なので、最初に給料が高い会社に入って、そこをベースに転職すればより高い給料になる──そういう現実的な考えもありましたね。
──ポノスへの入社からは、さまざまなタイトルでキャスターとして活躍されていますが、当時のインタビューでも、「自分がプロキャスターになって後進に道を示したい」と話されていました。ご自身のキャスター活動を振り返ってみていかがですか?
https://note.com/nasobem/n/ndb472c88229a
トンピ?:ゲームやeスポーツのキャスターという職業を選んで、ゲームの実況やイベントMCをすることで、今はおそらくメシは食っていけると思うんです。いまやるなら『ストリートファイター6』とか『VALORANT』は一番人気があります。
ただ、流行っているタイトルだけしか実況できないことにはリスクも感じます。
──リスクというのは?
トンピ?:キャスターの席はイス取りゲームなので、独占できれば仕事は安定します。実況できるキャスターの人数が多くない方が自分に依頼される可能性も高くなりますよね。でも、それだと業界が小さくなってしまう。
だから、僕自身がひとつのケーススタディとして「会社員+キャスター」をやってみようと考えてきました。僕の知識や経験を出し渋ってイベントが失敗したり、「eスポーツってもう面白くないよね」と思われないようにしながら。
そもそもキャスターは脇役で、主役ではありません。だから、ストリーミング活動もほとんどせず、SNSもXだけに限定しています。
僕は、アップルの新しいARゴーグルとか、パソコンやコンシューマー機ではない別次元のゲーム機とかが、5年後、10年後に出てくると思っています。そのタイミングで20代後半〜30代くらいになっている今の若い子たちが、一番キャスターとして脂が乗る時期だと思うんです。
その子たちの選択肢のひとつとして、キャスターを柱にしつつ、ゲームのマーケティングやeスポーツ界隈のアドバイザーもするような働き方があるということを証明したくて、いま頑張っています。
転職にしても仕事選びにしても、正しいかどうかは正直やってみないとわかりません。ただ、キャスターとして最もおいしい思いができるのは、いま活躍している僕らではなく、ひとつ下の世代の子たちだと思っています。
──トンピ?さんがeスポーツのキャスターとして、日頃から意識しているのはどんなことですか?
トンピ?:eスポーツを構築するものの中には大きな要素が3つあります。ゲームのバトル(試合)、そこについているスポンサーさん、そしてそれを見ている視聴者です。
インフルエンサーによる大会なら、ガチの試合解説よりもインフルエンサーの情報にふれた方が視聴者はうれしいでしょう。視聴者はインフルエンサーを見にきていますからね。であれば、インフルエンサーの情報を事前に調べておいて、「○○さん、誕生日だったんですよねー」といった話ができた方が盛り上がります。
これからキャスターになりたいという人に対しては、視聴者が何を期待しているのか、スポンサーさんが何を期待しているのか、ゲームのコンテンツ・タイトルホルダー(メーカー)が何を期待しているのかを考えながら仕事をしてほしいです。
──ちなみに、これも難しい問題だと思いますが、キャスターとしてひとつのタイトルはどこまで理解しておくべきですか?
トンピ?:キャスターは、ゲームの深い部分は解説者にお願いできる立ち位置にいます。もちろん、僕も基本的にはそれぞれのタイトルを500時間くらいはプレーしていますし、『プロスピ』なんかは400万円くらい、『コンパス』とかも多分300万円くらいは課金しています。これは単に自分が好きだから、ですけどね(笑)。
でも、それくらい課金しないと見えない部分もあるじゃないですか。このパラメーターなら一発で倒せるとか、プレーして知っておくべきこともある。その上で、さらに深い部分は解説の方にしゃべっていただくという考え方です。
──実況も解説もできる方も増えていますが、トンピ?さんとしてはあくまで実況者なんですね。
トンピ?:そうですね、やっぱり解説者は競技をされてきた方とか、本当にゲームについてよく知っている方ですし、解説者にも活躍してほしいですから。そのためには、自分でもいろいろ知った上で、あえて知らない感じで聞くことも大事です。
スポーツの試合においては選手が主役であり一番です。ですが、キャスターがその選手の名前を呼んで取り上げなかったら、選手たちは画面に映れませんからね。
2番目は同率で視聴者とスポンサーさん。3番目にそのゲーム自体という感じです。その後に解説者、番組のコンセプトとかが来て、さらにその後がキャスターだと自分の中では思っています。
──以前Xのポストで「チームは選手よりもストリーマーを抱えた方がマネタイズができるのが現状」「どうしたらいいかは直接聞いて」と投稿されていました。その答えをうかがってもいいですか?(笑)
トンピ?:自分もゲーム業界側にいる人間ですが、ゲーム会社がお金を使ってプロモーションの一環として行っているのがeスポーツであり、『LoL』でも『VALORANT』でも同じです。なので、プロモーションの一環としてインフルエンサーやストリーマーを使うのはごく自然なことです。
逆に、プロゲーマーたちは自分のことを発信するとなると、練習とかスクリムとか、本来バレてはいけない戦術とかを配信しなければいけなくなってきます。そんな配信を継続的にやるのは不可能というか難しいんです。
──ストリーマーが活躍する一方で、プロが配信しない、できない理由の部分が理解されていないようにも思いますね。格闘ゲームなどは配信もたくさんしていますが、MOBAやFPSはあまり配信するプロがいませんし……。
トンピ?:そこはもう、めちゃくちゃ大きいチームが声を発するしかないと思うんです。以前チームのオーナーが集まった座談会がありましたが、ああいう場で言われたことは誰もが納得してくれますから、そういうところで発信してほしいですね。
プロゲーマーは勝つこと、パフォーマンスを最大限発揮することがそもそもの仕事なので、その価値があると感じてくれる人たちをどんどん増やしていくことは絶対的に必要だなと思います。
特に日本では、企業で決裁権を持っている方々が、このeスポーツの熱さとか、若者たちが本気で打ち込む姿勢とかをまだまだ知らないことが多いんです。
個人的には、本田翼さんや山田涼介さんが「ゲーム好き」だと前面に出した時に革命が起きたと思っています。それまで大物タレントさんとかがゲームとかeスポーツに熱心なことをカミングアウトしづらかったんですよね。かっこ悪いと思われたり、オタクっぽいとかブランドがマイナスになる可能性もありました。
そういう中で前面に押し出してくれたこのふたりは、キーマンだったと思います。しかもふたりともものすごくうまいですしね(笑)。
──eスポーツのブームはだいぶ落ち着いて定着してきたと思いますが、いま「eスポーツに夢はあるか?」という質問にはどう答えますか?
トンピ?:僕の中では、eスポーツというかより広くオンラインゲームの世界って、普通に学生生活をしていたら絶対に出会えない大人たちに出会えるきっかけだったんです。
昔の話ですが、『AVA』で一番最初にクラン(チーム)に入った高2の頃、クランのオフ会に参加したことがあるんです。その会場が、六本木ヒルズの54階の「RIGOLETTO BAR AND GRILL」という店の貸切で。
フタを開けてみたら、クランのリーダーが日本に3人しかいないという日本舞踊の家元で、副リーダーが世界的に有名な某企業の副社長だったんです。
──一般の高校生が出会える人たちじゃないですね(笑)。ゲーム内ではわからなかったんですか?
トンピ?:声は知っているんですけど、当時はビデオ通話もなかったのでまったく。でもその時の縁で、今でもつながっています。
──まさに夢があるお話ですね。では、eスポーツ業界で働きたいという若い方は、これからどんな勉強や経験をしたらいいでしょう?
トンピ?:eスポーツってだいたい、プロゲーマー、ストリーマー、イベンターになるかと言われていると思うんですが、「eスポーツに関わりたい」ということであれば、もうどんなかたちでも関われます。ゲームとはまったく関係ない製品を作る会社でもカメラマンでも、そこを盛り上げたいという気持ちさえあればいいんです。
なぜなら、eスポーツやゲームが面白いものであることは変わりませんから。
進化というよりも、ゲームは面白いものであり続けるので、いろいろな出会いや経験をすることで、別のところに行っても「いつでも帰ってきていいんだよ」ということを言いたいですね。
──「どんなところに行っても、日本のeスポーツに君が関わってきた時間は無駄にならない」というような?
トンピ?:それ、いいですね(笑)。いまは多様性の時代なので、ゲームをやるとかeスポーツをやることに対してマイナスに考える方はどんどん減っていくと思います。
特にeスポーツのプレーヤーって、課題解決能力がとても高いんですよ。強くなりたいという目標に対して、むちゃくちゃ頑張るじゃないですか。
就活とか講演会とかでもeスポーツの話を出したりするんですが、eスポーツ好きや元プロゲーマーには、「稼ぎたい」という会社のシンプルな考えに対して、熱心になれる子が多いと思います。逆に、真っ直ぐになりすぎて多角的に見られない。なので、視野を広げることを大事にしてほしいです。
僕は、eスポーツという業界がもっと大きくなっていくことに確信を持っています。いま高校とか専門学校、大学とかで学びながらeスポーツ業界に向かって進んでいる若い方には、自信を持って突き進んでほしいと伝えたいです。
僕自身、胸を張って「eスポーツの仕事をしています」と言えますし、おそらく一般的なサラリーマンに比べれば稼げてはいると思うので、「夢はある」と思いますよ。
トンピ?公式サイト:https://www.tonpiofficial.com/
トンピ?X:https://x.com/tonpiava
そんな中、FPS、MOBA、パズル、スポーツ、スマートフォンゲームまで、さまざまなeスポーツタイトルで実況をこなし、マルチな才能を発揮しているのがトンピ?氏だ。
高校生時代から始めたというキャスター歴は実に15年以上にも及び、2024年現在で31歳とまだまだ若いものの、日本のeスポーツキャスターとしてのキャリアで言えばかなり長い方だ。現在も『#コンパス』『第五人格』『フォートナイト』といった多くのゲームで公式キャスターを務め、テレビ、ラジオと多方面でその才能を発揮している。
そんな、常にeスポーツ業界の先陣を切ってきたトンピ?氏にインタビュー。ゲームとの出会い、キャスターを志したきっかけ、eスポーツ業界への思いなどをうかがう中で、華々しいキャスターとしての顔とは別の、実業家や教育者としての側面が見えてきた。
特に、これからキャスターになりたいと考えている若い方たちにとって、金言となる言葉がたくさん詰まったインタビューとなった。
トンピ?
本名・福岡智洋。1993年生まれ、東京都出身。FPS『AVA』のネットカフェでのイベントをきっかけにキャスターとして活動し始め、『レインボーシックス シージ』『BATTLEFIELD 4』の公式大会、『プロ野球スピリッツA』『#コンパス』『第五人格』の公式キャスターなどで活躍。2017年から2022年まで株式会社ポノスに所属し、株式会社Focusを設立して独立。1000回以上のイベント出演実績のほか、テレビや配信など、eスポーツ・ゲーム以外の分野でもアドバイザーなどでマルチに活動している。「トンピ?」の由来は幼少期のあだ名「ともピ」から派生したハンドルネーム。最後の「?」は好きなマンガ「名探偵コナン」に由来する。
本名・福岡智洋。1993年生まれ、東京都出身。FPS『AVA』のネットカフェでのイベントをきっかけにキャスターとして活動し始め、『レインボーシックス シージ』『BATTLEFIELD 4』の公式大会、『プロ野球スピリッツA』『#コンパス』『第五人格』の公式キャスターなどで活躍。2017年から2022年まで株式会社ポノスに所属し、株式会社Focusを設立して独立。1000回以上のイベント出演実績のほか、テレビや配信など、eスポーツ・ゲーム以外の分野でもアドバイザーなどでマルチに活動している。「トンピ?」の由来は幼少期のあだ名「ともピ」から派生したハンドルネーム。最後の「?」は好きなマンガ「名探偵コナン」に由来する。
『AVA』イベントでキャスター初体験
──トンピ?さんと言えば、若くして公式大会の実況などを務めてこられた優等生というイメージがありますが、最初にゲームにふれたきっかけは?
トンピ?:最初にハマったゲームは、中2のお年玉で買ったゲームボーイアドバンス(GBA)の『ロックマンエグゼ』でした。うちは両親が学校の先生なんですが、完全にゲームを禁止させられていたんです。GBAを買ってからは、親が寝るのを見計らってゲームをつけたりしていました。
中3の時にパソコンでゲームができると知り、家にあったパソコンで初めてやったゲームがMMORPGの『チョコットランド』です。そこから、同じハンゲームが開発した『Special Force』というFPSを同級生に誘われて始めて、めちゃくちゃ面白くてハマりました。
──でも、パソコンゲームはご両親にバレなかったんですか?
トンピ?:パソコンは調べ物をしているという体で、親が後ろを通る瞬間だけウェブページに切り替えて、通りすぎたらまた戻す、といった姑息な手段を使っていました。なので、最初に覚えたキーボードショートカットはアプリを瞬時に切り替えられる「alt」+「tab」です(笑)。
当時、部活もやっていましたが、家に帰ってからはずっとゲームをしていたので、そのあたりで親も諦めていましたね。
大きな転機になったのは高2の時。同級生と一緒にFPSの『AVA』というゲームを「Skype」でつなぎながらやっていたのですが、その年の秋に秋葉原の「アイ・カフェ」で店舗主催の第1回オフラインイベントにプレーヤーとして参加したんです。それが面白すぎて、「(2回目から)スタッフできませんか?」と店長に聞いて、イベントスタッフとして活動し始めました。
──プレーヤーとしてではなくスタッフ側?
トンピ?:大学でも文化祭の広報をしたり、裏方仕事が好きだったんです。当時はネットカフェのオフラインイベントがたくさんあって、秋葉原、八王子、池袋の店ではスタッフとして、代々木、大森ではプレーヤーとして通っていました。その頃にSHAKAさんとかDeToNatorのNicoRob1Nさんとよくイベントで遊んでいました。
キャスターになった直接のきっかけは、ネットカフェ主催のオフラインイベントで、店長にお声がけいただいたことでした。
高校生で「東京ゲームショウ」MCデビュー
──ゲームのキャスターを仕事として意識し始めたきっかけは?
トンピ?:大きな舞台に出たのは、『AVA』の公式大会「AVAれ祭」で、当時のプロデューサー(井上さん)にお声がけいただいた時でした。
学生団体を経由して「東京ゲームショウ」(TGS)でのぷよぷよの学生大会のMCの依頼をいただいたのが最初です。
『AVA』でははじめは僕が護衛部門で実況を担当していて、メインの実況はmejikaさん、解説をもるちゃん(元SunSisterオーナーの太田桂氏)とかMax Jamさん(DeToNatorオーナーの江尻勝氏)とか、当時『AVA』で有名な方々と一緒にやっていました。
https://www.famitsu.com/matome/everydaybeta/2013_05_15_165.html
──当時はまだ、キャスターという立ち位置で仕事をされている方はそんなにいなかったですよね。
トンピ?:いなかったですね。「TGS」のMCもメーカーの社員さんがやっていることが多かったし。自分もまだ学生だったので、お金はもらっていませんでしたが、『AVA』の時は4万〜5万円の課金でしかもらえないガチャのシリアルコードがもらえるのが、自分の中では超うれしかったです。
この頃からシューティングゲームが流行り始めて、『レインボーシックス シージ』や『オーバーウォッチ』や『PUBG』がほぼ同じタイミングでやってきました。『BATTLEFIELD 4』が流行った時代に八王子の「快活カフェ」で大会配信をしている時には、JCGさん(イベント運営会社)とも出会って、それをきっかけにキャスターもやらせていただきました。
一番カチっとハマったのは『レインボーシックス シージ』ですね。Year 1〜3までの公式放送はほぼ自分とふり〜ださんが担当していました。
キャスターとしての師匠は古舘伊知郎?
──ただ、その後大学に進学されて、教職も取得されていますよね。
トンピ?:高校時代に「ゲームをすると頭が悪くなる」と本気で信じていた両親への反抗心から、「ゲームをしても教員免許は現役で取れるし就職もできる!」と、社会科の免許を取得しました。もともと何かを伝えた時に「へぇ〜」と思ってもらえることがうれしくて。そこは今も変わっていないですね。
ただ、社会人経験がある先生の方が面白いと思っていたので、一般企業に就職して社会を学んでから伝えたいと考えていました。
──当時のキャスターというと、トンピ?さんが先駆者だったと思います。どんな努力をされていたんですか?
トンピ?:スポーツ観戦は好きで、プロレス、野球、テニス、バレーボールとかをよく見ていたんです。なので、独学でそういったフレーズを自然に頭の中で再生してしゃべり方などを覚えていきました。
──参考にされたキャスターや好きなキャスターは?
トンピ?:古舘伊知郎さんです。親がプロレス好きでF1ももちろん見ていましたし、幼い頃に「筋肉番付」の実況もされていて、誇張した表現にインパクトがあるじゃないですか。「人間山脈!」とか「音速の貴公子」とか、自分の言葉やフレーズで選手たちがよりカッコよく思えるのがいいなと思って、勝手に古舘さんの弟子だと言っていました。
そうしたら、ちょうど2年前にテレビ東京の番組で、古舘さんが審査員として実況・解説バトルをする特番に出演させていただけたんです。根がオタクなもので「すごく参考にさせていただいています!」と伝えたら、MCの陣内智則さんが「もうこれ、弟子って認めていいんじゃないですか?」と振ってくださって。「そうだね」と言ってもらえたので、やや公認ですかね(笑)。
【eスポーツキャスター史上初】
— トンピ?🦅ゲームキャスター (@tonpiava) June 6, 2022
日曜夕方の地上波特番テレビ出演📺
75分の全国特番に出演します🔥🔥
しかも、、、主役の1人です。
6/12(日)16時~テレビ東京系列
『ゲーム実況者バトル!
DRAMATIC-MIC!!』
審査員:古舘伊知郎さん
MC:陣内智則さん#ポケモンユナイト #テレビ東京 pic.twitter.com/PCkhB3xQCo
──実況のスタイルは古舘さんから学んだものだったんですね。
トンピ?:直接ではないですが、スポーツって型にハマっている実況が多いので、その中でどういう表現をするか、点が入ったとか特別なポイントでどういう部分を抜き出すかとか……しゃべり手として活動を始めてからそういう視点で見るようになりました。結果的に、(古舘さんの)真似をしながら自分の中でブレンドしていって、トンピ?が出来上がったという感じです。
──自分がキャスターをした大会で、特に印象に残っているものはありますか?
トンピ?:一番最初の頃に実況した「ぷよぷよ学生王選手権」ですね。下手くそだしチャラいし、実はあの時目の前に800人くらいのお客さんがいる中で膝が笑っていたんです。お客さんの方も見られないから、肩に乗せた「ぷよ」ばかりいじっていて。でも、あの経験があったからこそ、それ以降の現場は「あれに比べれば全然大丈夫」と思えます。
──ちなみに、大失敗とかもありましたか?
トンピ?:細かいものはあるんですが、多分大失敗がないから仕事が来るのかな、という気がします。一部の人には「eスポーツ界のガンジー」なんて言われて、悪目立ちしないようにはしていて炎上もないんです。睡眠は必ず8時間確保していますし、病欠とかもほとんどありません。普通に生きているだけなんですけどね。
ポノスへの転職からプロのキャスターに
──キャリアの中で話題になったのが、2017年のポノス株式会社への就職でした。どういういきさつがあったんでしょうか?
【拡散希望】ついに発表が入りました!私トンピはゲーマー社員2号としてポノス株式会社にe-Sports事業のPR担当として加入いたしました!何かがものすごい変わるわけではありませんが今後もesportsの発展に尽力を努めます!https://t.co/TTPCWiXkep pic.twitter.com/6f28AvIyrm
— トンピ?🦅ゲームキャスター (@tonpiava) July 24, 2017
トンピ?:当時は一般企業に就職していたんですが、『リーグ・オブ・レジェンド』の大学生を支援する「League U」というプログラムの立ち上げに携わっていました。まだ学生だったイェーガーくんとリクルートくんに実況・解説や就職のアドバイスとかもしていて。
ただ、当時の会社は副業が禁止だったので、1年間ずっとボランティアだったんです。でも、依頼してくださるクライアントさん側としてもお金を払わないわけにはいかない。
そんな時期にちょうどポノスがeスポーツ採用をしていて、自分よりも先にガリレオさんが入っていて、僕が2人目として入社しました。
──では、言ってみればゲームのキャスターを本業にしたタイミングはここだった?
トンピ?:そうですね。でも、キャスターだけが本業というわけではなく、あくまでも自分の仕事の柱のうちの1本という考え方でした。
ポノス時代もゲームキャスターをしながらも、『ファイトクラブ』のプロデューサーや『クラッシュロワイヤル』のプロゲーマーのマネジメント・動画制作に加えて、会社の通常業務もやっていましたから。
それは独立した現在も同じで、自分としては普通の会社員がキャスターという副業をやっているという気持ちでずっと活動しています。
──そうなんですね。今日お話をうかがうまで、トンピ?さんの肩書きは「キャスター」もしくは「タレント」だと思っていました。
トンピ?:YouTuberとかストリーマーみたいになりたいという気持ちももちろんあるんですけど、自分の性格上、堅実になってしまうんです。炎上もないけど上振れもない人生です(笑)。
タイトルを絞らずマルチに活動する理由
──トンピ?さんがポノスに入社した2017年頃から、日本でも「eスポーツ」という言葉がブームになっていきました。2018年に流行語大賞にノミネートされ、「eSports World」も2019年に開設しました。当時トンピ?さんは「eスポーツ」についてどんなふうに感じていました?
トンピ?:「eスポーツ」という言葉が一般の方々に浸透し始めたくらいのタイミングから、決してみんなが知っているわけではないけれど、若者に向けて発信したりeスポーツに関わっている自分に対して「そういう仕事、新しいね」と言ってもらえるようになりました。
とはいえ、2019年頃はまだ25歳のペーペーでしたから、人生の先読みなんてできませんでしたね。ただ、すでに世界でeスポーツは流行っていて、それが日本にも遅れて広がってきているということは、シュンと消えることはないだろうと。
実況・解説も『LJL』のeyesさんやRevolさんのような方がすでにいましたし、eスポーツの人気が落ちていくビジョンはまったくなかったですね。
──『LJL』の話が出ましたが、eyesさんやRevolさんは「LJLの顔」というくらい専任されている一方で、トンピ?さんはあまり特定のタイトルに縛られず、マルチにこなしているイメージがあります。
トンピ?:タイトルを絞らずにマルチに活動している理由は、ひとことで言ってしまえば僕にとってはそれが一番強い戦術だと考えているから(笑)。毎週の土日を埋めるには限定されたタイトルだと不足するので、MCやキャスターとして実況できるタイトルをたくさん抱えていた方が、必要とされるシーンも増えますから。
また、もともと社会科教師として「社会を学ぶため」に社会人になったので、いろいろな活動の中で結果的にeスポーツのキャスターがハマったという感じです。
それと、ゲームとはちょっと関係ないのですが、僕は三人兄弟の長男で真ん中の弟が重い心臓の病気で障害があるんです。障害者年金ももらえていますし、親も貯蓄してはいるんですが、兄として責任を感じていて、就職する時に「人の2倍以上稼ぎたい!」と考えていました。
なので、最初に給料が高い会社に入って、そこをベースに転職すればより高い給料になる──そういう現実的な考えもありましたね。
キャスターを柱としつつ、若手にはそれ以外の道も示したい
──ポノスへの入社からは、さまざまなタイトルでキャスターとして活躍されていますが、当時のインタビューでも、「自分がプロキャスターになって後進に道を示したい」と話されていました。ご自身のキャスター活動を振り返ってみていかがですか?
https://note.com/nasobem/n/ndb472c88229a
トンピ?:ゲームやeスポーツのキャスターという職業を選んで、ゲームの実況やイベントMCをすることで、今はおそらくメシは食っていけると思うんです。いまやるなら『ストリートファイター6』とか『VALORANT』は一番人気があります。
ただ、流行っているタイトルだけしか実況できないことにはリスクも感じます。
──リスクというのは?
トンピ?:キャスターの席はイス取りゲームなので、独占できれば仕事は安定します。実況できるキャスターの人数が多くない方が自分に依頼される可能性も高くなりますよね。でも、それだと業界が小さくなってしまう。
だから、僕自身がひとつのケーススタディとして「会社員+キャスター」をやってみようと考えてきました。僕の知識や経験を出し渋ってイベントが失敗したり、「eスポーツってもう面白くないよね」と思われないようにしながら。
そもそもキャスターは脇役で、主役ではありません。だから、ストリーミング活動もほとんどせず、SNSもXだけに限定しています。
僕は、アップルの新しいARゴーグルとか、パソコンやコンシューマー機ではない別次元のゲーム機とかが、5年後、10年後に出てくると思っています。そのタイミングで20代後半〜30代くらいになっている今の若い子たちが、一番キャスターとして脂が乗る時期だと思うんです。
その子たちの選択肢のひとつとして、キャスターを柱にしつつ、ゲームのマーケティングやeスポーツ界隈のアドバイザーもするような働き方があるということを証明したくて、いま頑張っています。
転職にしても仕事選びにしても、正しいかどうかは正直やってみないとわかりません。ただ、キャスターとして最もおいしい思いができるのは、いま活躍している僕らではなく、ひとつ下の世代の子たちだと思っています。
──トンピ?さんがeスポーツのキャスターとして、日頃から意識しているのはどんなことですか?
トンピ?:eスポーツを構築するものの中には大きな要素が3つあります。ゲームのバトル(試合)、そこについているスポンサーさん、そしてそれを見ている視聴者です。
インフルエンサーによる大会なら、ガチの試合解説よりもインフルエンサーの情報にふれた方が視聴者はうれしいでしょう。視聴者はインフルエンサーを見にきていますからね。であれば、インフルエンサーの情報を事前に調べておいて、「○○さん、誕生日だったんですよねー」といった話ができた方が盛り上がります。
これからキャスターになりたいという人に対しては、視聴者が何を期待しているのか、スポンサーさんが何を期待しているのか、ゲームのコンテンツ・タイトルホルダー(メーカー)が何を期待しているのかを考えながら仕事をしてほしいです。
──ちなみに、これも難しい問題だと思いますが、キャスターとしてひとつのタイトルはどこまで理解しておくべきですか?
トンピ?:キャスターは、ゲームの深い部分は解説者にお願いできる立ち位置にいます。もちろん、僕も基本的にはそれぞれのタイトルを500時間くらいはプレーしていますし、『プロスピ』なんかは400万円くらい、『コンパス』とかも多分300万円くらいは課金しています。これは単に自分が好きだから、ですけどね(笑)。
でも、それくらい課金しないと見えない部分もあるじゃないですか。このパラメーターなら一発で倒せるとか、プレーして知っておくべきこともある。その上で、さらに深い部分は解説の方にしゃべっていただくという考え方です。
──実況も解説もできる方も増えていますが、トンピ?さんとしてはあくまで実況者なんですね。
トンピ?:そうですね、やっぱり解説者は競技をされてきた方とか、本当にゲームについてよく知っている方ですし、解説者にも活躍してほしいですから。そのためには、自分でもいろいろ知った上で、あえて知らない感じで聞くことも大事です。
スポーツの試合においては選手が主役であり一番です。ですが、キャスターがその選手の名前を呼んで取り上げなかったら、選手たちは画面に映れませんからね。
2番目は同率で視聴者とスポンサーさん。3番目にそのゲーム自体という感じです。その後に解説者、番組のコンセプトとかが来て、さらにその後がキャスターだと自分の中では思っています。
ストリーマー人気と配信しないプロゲーマーへの誤解
──以前Xのポストで「チームは選手よりもストリーマーを抱えた方がマネタイズができるのが現状」「どうしたらいいかは直接聞いて」と投稿されていました。その答えをうかがってもいいですか?(笑)
いろんな業界や界隈を研究しているのですが密かにMリーグをいま研究してます。
— トンピ?🦅ゲームキャスター (@tonpiava) June 16, 2024
eスポーツと座組は近いけど国内では
先を行っていると感じています。
結果的にポイント制で見てわかりやすく、
チーム戦とはいえど試合ごとに応援するプレイヤーの数が少人数(4人)。
各々にドラマや背負っているものが…
トンピ?:自分もゲーム業界側にいる人間ですが、ゲーム会社がお金を使ってプロモーションの一環として行っているのがeスポーツであり、『LoL』でも『VALORANT』でも同じです。なので、プロモーションの一環としてインフルエンサーやストリーマーを使うのはごく自然なことです。
逆に、プロゲーマーたちは自分のことを発信するとなると、練習とかスクリムとか、本来バレてはいけない戦術とかを配信しなければいけなくなってきます。そんな配信を継続的にやるのは不可能というか難しいんです。
──ストリーマーが活躍する一方で、プロが配信しない、できない理由の部分が理解されていないようにも思いますね。格闘ゲームなどは配信もたくさんしていますが、MOBAやFPSはあまり配信するプロがいませんし……。
トンピ?:そこはもう、めちゃくちゃ大きいチームが声を発するしかないと思うんです。以前チームのオーナーが集まった座談会がありましたが、ああいう場で言われたことは誰もが納得してくれますから、そういうところで発信してほしいですね。
プロゲーマーは勝つこと、パフォーマンスを最大限発揮することがそもそもの仕事なので、その価値があると感じてくれる人たちをどんどん増やしていくことは絶対的に必要だなと思います。
特に日本では、企業で決裁権を持っている方々が、このeスポーツの熱さとか、若者たちが本気で打ち込む姿勢とかをまだまだ知らないことが多いんです。
個人的には、本田翼さんや山田涼介さんが「ゲーム好き」だと前面に出した時に革命が起きたと思っています。それまで大物タレントさんとかがゲームとかeスポーツに熱心なことをカミングアウトしづらかったんですよね。かっこ悪いと思われたり、オタクっぽいとかブランドがマイナスになる可能性もありました。
そういう中で前面に押し出してくれたこのふたりは、キーマンだったと思います。しかもふたりともものすごくうまいですしね(笑)。
どんな仕事からでも「eスポーツ」に関われる時代に
──eスポーツのブームはだいぶ落ち着いて定着してきたと思いますが、いま「eスポーツに夢はあるか?」という質問にはどう答えますか?
トンピ?:僕の中では、eスポーツというかより広くオンラインゲームの世界って、普通に学生生活をしていたら絶対に出会えない大人たちに出会えるきっかけだったんです。
昔の話ですが、『AVA』で一番最初にクラン(チーム)に入った高2の頃、クランのオフ会に参加したことがあるんです。その会場が、六本木ヒルズの54階の「RIGOLETTO BAR AND GRILL」という店の貸切で。
フタを開けてみたら、クランのリーダーが日本に3人しかいないという日本舞踊の家元で、副リーダーが世界的に有名な某企業の副社長だったんです。
──一般の高校生が出会える人たちじゃないですね(笑)。ゲーム内ではわからなかったんですか?
トンピ?:声は知っているんですけど、当時はビデオ通話もなかったのでまったく。でもその時の縁で、今でもつながっています。
──まさに夢があるお話ですね。では、eスポーツ業界で働きたいという若い方は、これからどんな勉強や経験をしたらいいでしょう?
トンピ?:eスポーツってだいたい、プロゲーマー、ストリーマー、イベンターになるかと言われていると思うんですが、「eスポーツに関わりたい」ということであれば、もうどんなかたちでも関われます。ゲームとはまったく関係ない製品を作る会社でもカメラマンでも、そこを盛り上げたいという気持ちさえあればいいんです。
なぜなら、eスポーツやゲームが面白いものであることは変わりませんから。
進化というよりも、ゲームは面白いものであり続けるので、いろいろな出会いや経験をすることで、別のところに行っても「いつでも帰ってきていいんだよ」ということを言いたいですね。
──「どんなところに行っても、日本のeスポーツに君が関わってきた時間は無駄にならない」というような?
トンピ?:それ、いいですね(笑)。いまは多様性の時代なので、ゲームをやるとかeスポーツをやることに対してマイナスに考える方はどんどん減っていくと思います。
特にeスポーツのプレーヤーって、課題解決能力がとても高いんですよ。強くなりたいという目標に対して、むちゃくちゃ頑張るじゃないですか。
就活とか講演会とかでもeスポーツの話を出したりするんですが、eスポーツ好きや元プロゲーマーには、「稼ぎたい」という会社のシンプルな考えに対して、熱心になれる子が多いと思います。逆に、真っ直ぐになりすぎて多角的に見られない。なので、視野を広げることを大事にしてほしいです。
僕は、eスポーツという業界がもっと大きくなっていくことに確信を持っています。いま高校とか専門学校、大学とかで学びながらeスポーツ業界に向かって進んでいる若い方には、自信を持って突き進んでほしいと伝えたいです。
僕自身、胸を張って「eスポーツの仕事をしています」と言えますし、おそらく一般的なサラリーマンに比べれば稼げてはいると思うので、「夢はある」と思いますよ。
番外編:実はAKRacingの立ち上げ時にも関わっていた!
──ちなみに、AKRacingとも浅からぬ縁とお聞きしました。
トンピ?:縁というか、そもそも立ち上げの頃から一緒に関わってきました。2015年に「ゲーミングチェアEXPO」というイベントがTSUKUMOさんで開催されて、グラビアアイドルのyunocyもこのイベントデビューだったはずです。そこで自分がMCを担当したんです。
https://blog.tsukumo.co.jp/honten/2015/08/expo_2015.html
──まだまだ「eスポーツ」という言葉の知名度もなかった時代ですよね。
トンピ?:そうですね。このイベントがきっかけでAKRacingの方と知り合って、紹介動画で自分を使っていただいて。それ以降、僕もずっとAKRacingを使っています。
──そんなトンピ?さんがゲーミングチェアに求める性能はなんですか?
トンピ?:長時間座っていて腰が痛くならないことが一番ですね。元々若年性ヘルニアをやっていて、もう治ってはいるんですが、人一倍腰を大事にしたい。その意味で腰にクッションとか支えてくれるものがあるイスがずっと欲しかったんです。AKRacingを使ってからちょうど10年経ちました。
お気に入りの機能は、180度リクライニング。後ろに倒せる空間を確保して、ローファイ系の音楽を流しつつ企画とかを考えながら思考を巡らす時に最適ですよ。
──ちなみに、AKRacingとも浅からぬ縁とお聞きしました。
トンピ?:縁というか、そもそも立ち上げの頃から一緒に関わってきました。2015年に「ゲーミングチェアEXPO」というイベントがTSUKUMOさんで開催されて、グラビアアイドルのyunocyもこのイベントデビューだったはずです。そこで自分がMCを担当したんです。
https://blog.tsukumo.co.jp/honten/2015/08/expo_2015.html
──まだまだ「eスポーツ」という言葉の知名度もなかった時代ですよね。
トンピ?:そうですね。このイベントがきっかけでAKRacingの方と知り合って、紹介動画で自分を使っていただいて。それ以降、僕もずっとAKRacingを使っています。
──そんなトンピ?さんがゲーミングチェアに求める性能はなんですか?
トンピ?:長時間座っていて腰が痛くならないことが一番ですね。元々若年性ヘルニアをやっていて、もう治ってはいるんですが、人一倍腰を大事にしたい。その意味で腰にクッションとか支えてくれるものがあるイスがずっと欲しかったんです。AKRacingを使ってからちょうど10年経ちました。
お気に入りの機能は、180度リクライニング。後ろに倒せる空間を確保して、ローファイ系の音楽を流しつつ企画とかを考えながら思考を巡らす時に最適ですよ。
取材協力:eSports Studio AKIBA
今回取材で利用させていただいたのは、秋葉原電気街の中心に立つソフマップ AKIBA パソコン・デジタル館8階にある施設「eSports Studio AKIBA」。5vs5のオフライン対決ができる座席のほか、配信に使える設備も充実。ウェブラジオ番組「OooDa&伊織もえ ゲームの学校」の公開収録や、さまざまなイベント・配信の会場としても利用されている。
もちろん、オフライン大会なども開催でき、観客は最大40名。公式サイトから予約状況もわかるので、利用したい方はまずは相談してみよう。
設備:選手席(計10席)、配信ブース、実況解説ブース、観客席(ゲーミングチェア20席。スタッキングチェアの場合は40席)、モニター15枚(センター98インチ)
会場:延べ面積:約106㎡
料金:(いずれも税込)
・1日利用(11:00〜20:00)平日 11万円、土日祝日 22万円
・前日設置+1日利用(11:00〜20:00)平日 13万2000円、土日祝日 26万4000円
・機材貸出(11:00〜20:00)平日・土日祝日 3万3000円
※20時以降、深夜の利用、スタッフや原状回復費等は要相談
アクセス:ソフマップ AKIBA パソコン・デジタル館(〒101-0021 東京都千代田区外神田3丁目13−12 IMYビル)
URL:https://www.sofmap.com/pages/?id=esports_studio_akiba&sid=0
今回取材で利用させていただいたのは、秋葉原電気街の中心に立つソフマップ AKIBA パソコン・デジタル館8階にある施設「eSports Studio AKIBA」。5vs5のオフライン対決ができる座席のほか、配信に使える設備も充実。ウェブラジオ番組「OooDa&伊織もえ ゲームの学校」の公開収録や、さまざまなイベント・配信の会場としても利用されている。
もちろん、オフライン大会なども開催でき、観客は最大40名。公式サイトから予約状況もわかるので、利用したい方はまずは相談してみよう。
設備:選手席(計10席)、配信ブース、実況解説ブース、観客席(ゲーミングチェア20席。スタッキングチェアの場合は40席)、モニター15枚(センター98インチ)
会場:延べ面積:約106㎡
料金:(いずれも税込)
・1日利用(11:00〜20:00)平日 11万円、土日祝日 22万円
・前日設置+1日利用(11:00〜20:00)平日 13万2000円、土日祝日 26万4000円
・機材貸出(11:00〜20:00)平日・土日祝日 3万3000円
※20時以降、深夜の利用、スタッフや原状回復費等は要相談
アクセス:ソフマップ AKIBA パソコン・デジタル館(〒101-0021 東京都千代田区外神田3丁目13−12 IMYビル)
URL:https://www.sofmap.com/pages/?id=esports_studio_akiba&sid=0
トンピ?公式サイト:https://www.tonpiofficial.com/
トンピ?X:https://x.com/tonpiava
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