「eスポーツをブームで終わらせない!」 【「RAGE」総合プロデューサー大友真吾氏インタビュー】

2019.12.16 OGA
eスポーツはハイプ・サイクルにおける黎明期を過ぎ“「過度な期待」のピーク期”へと突入した。ここから“幻滅期”へと突入するのか、“啓蒙活動期”へと転換していくのか。

「eスポーツの盛り上がりのため、ゲームの興行化・大衆化に注力していく」

業界のトップランナー、株式会社CyberZ、RAGE総合プロデューサーの大友真吾氏にお話を伺った。

優勝賞金1億円の『シャドウバース』。OPENREC.tvなどで放送中の『ストリートファイターリーグ』。国内最大級のeスポーツイベント「RAGE」は、これからゲームをどのような未来に導いていくのだろうか。

誰もが知るような「eスポーツ界のスター選手」が必要


──以前の講演会で、大友さんは「eスポーツの興行化・大衆化に注力したい」というお話をされていました。中でも「スター選手が必要」というお話が印象に残りました。

大友:そうですね。現在のeスポーツ界では、タイトルごとに人気選手や人気チームは出てきてはいますが、“国民的”なスター選手はまだ出てきていないと思うんです。

例えば、大坂なおみさんのような、テニスに詳しくなくても、その選手の動向が気になる選手。そのような方が日本のeスポーツ市場に出てきて欲しいと思っています。

──そのためには、世間への露出度を増やすことが重要なのでしょうか? 「観戦文化を根付かせることが重要」ともおっしゃっていましたが、観戦者を増やすという観点だと、最終的にはプロ野球のように平日にもプロリーグの試合が展開される必要があるのでしょうか?

大友:おっしゃる通り、観戦文化を根付かせるために、頻度は重要だと思います。

ただ現状は、平日にも放送しようというようなこだわりはありません。現在の週1日頻度の体制でも比較的多い方ではあります。まずは週1回、週2回の観戦習慣を根付かせること、そのステップを1つずつクリアしていくことが大切だと思います。

──eスポーツの大衆化という点で、我々ウェブメディアはどのようなご協力ができるのでしょうか?

大友:選手のパーソナルな部分をうまく引き出してもらえるとありがたいですね。

我々も7月からテレビ朝日さんと協業体制になり、eスポーツをマスに届けることに注力しています。テレビ朝日さんはこれまで、世界水泳やフィギュアスケート等、野球やサッカーなどと比べてまだまだマイナーなスポーツを地上波のゴールデンで放送し、ライバル関係なども上手くストーリー立てて、スター選手を生み出してこられた実績があります。

そこはテレビ朝日さんと一緒に取り組んでいる部分でもあるので、メディアの方々にも後押ししていただけると嬉しいです。

──我々も尽力させていただきます。現状のメディアは「ふぇぐ選手が1億円を勝ち取った」等、話題になった選手のことを閲覧数稼ぎで消費するような報じ方が続いてしまっています。この辺りの取り組み方については、メディア全体としても見直していくべきだと思います。


「RAGE」はコアとマスを両立させる


──初めて「RAGE」の会場に来た時の衝撃を未だに覚えています。来場者の年齢層がとても若く、爽やか&エネルギッシュな雰囲気に驚きました。私が普段参加しているゲームの大会には、ご年配の方も参加されていて、雰囲気は多少異なっています。盛り上がってはいるのですが、興行化・大衆化という観点では少し苦戦しています。そのような、従来型のゲーム大会に関してはどのような印象をお持ちでしょうか?

大友:僕らも4年前に「RAGE」を立ち上げたときに、大会の運営面についてはいろいろな業界の方からアドバイスを受けて進めてきました。よって、eスポーツという文化ができるまでのゲームイベントを運営されていた方々へのリスペクトは強く持っています。

他のスポーツでもトッププロのシーンがあれば、アマチュア向けの大会シーンや草野球的なコミュニティもあります。eスポーツも同様に世界一や日本一を決める大会もあれば、その地域でそのゲームが大好きな人が集まって開かれる大会もある。なので集まる人や場の雰囲気も様々な大会があることは全然良いんじゃないでしょうか。

──興行化を促進するとファンビジネスなどの要素が加わり、新規層の増加と収益化が進む一方、従来からのゲームを楽しんでいるコア層とは趣向性のズレが生まれるように思えますがいかがでしょうか?

大友:そうですね。コアに寄っていくか、マスに向けるかはトレードオフだと思っていますが、僕らは両方を取り入れていきたいと思っています。

どちらかに偏るわけでもなく、マス向けだけどコアの方にも楽しんでもらえるコンテンツ。一方、コア向けのコンテンツがマスにも届くよう、演出面の強化に取り組んでいます。

──最近はゲームをプレイしない層がゲームの観戦をするようになってきて、フィジカルスポーツと近い形での興行化・大衆化が進んでいると実感します。ゲーム実況や大会中継が充実してきた辺りから、私自身もゲームをプレイしなくなってきた気がします。ゲームをプレイさせることよりもイベント集客に経済合理性があると、将来的には観戦文化のみが拡大し、一般の方がゲームをプレイする機会は減ってしまうのでしょうか?

大友:非ゲームユーザーがゲームに興味を持ってくれている傾向については、好意的に捉えていて、大衆化の面では重要だと思います。ただ、ゲームを遊んでもらえなくなるのは我々としても本意ではないので、次回(2020年1月25日〜26日)に開催予定の「RAGE Shadowverse 2020 Spring」のオフライン予選の定員枠を1万人にしたように、プレイヤー参加型のイベントにも力を入れています。

出典:https://twitter.com/esports_rage/status/1198160035387363329


ご指摘の通り、観戦に傾倒したeスポーツ文化が浸透していくと、一般の方々が参加できる大会が減っていく恐れもありますね。やがては収益率の良いプロリーグだけになったり、儲かる大会運営だけをする団体も出てくるでしょう。興行団体も儲かるので、それが自然になってしまう可能性はあります。

ただし、他のフィジカルスポーツのように競技文化の繁栄ともに、グラスルーツのところも発展していくのかなと考えています。「RAGE」ではプロリーグとともに一般プレイヤー参加型の大会も充実させていく方向です。


eスポーツだからこその盛り上がりとは?


──eスポーツの興行化&ファンビジネスに関しては、フィジカルスポーツや音楽業界のノウハウを踏襲することで、ある程度は上手くいく部分もあるかと思います。一方、eスポーツが世間的に注目されるためには、従来のノウハウから逸脱したeスポーツ独自の角度からの成長があると、より世間から注目される業界になる気がします。将来的にeスポーツ側から他業界に、ノウハウの支援ができる要素は何かありますか?

大友:集客の部分に着目すると、若年層の集客に成功している点では支援できるかと思います。

今の子どもたちのゲームプレイを観ていると、『マインクラフト』とか『フォートナイト』とか、最初からオンライン対戦要素があるものがほとんどです。オンラインゲームの流行により、最初から全世界の人とつながる文化形成は、従来の若者とは変わってきている部分です。

若者の観戦者が減ってきているという課題感がフィジカルスポーツにはあると思うので、新しい価値観を持って育ってきた若年層への訴求に関して、eスポーツは強いと考えます。

あとはテクノロジーの進化と連動しやすいのも、eスポーツの特徴かもしれません。ARやVRなど、ゲーム自体のプレイスタイルが変化すると観戦方法も変わってくるでしょう。これは大きな変革が起こりえる部分でもあるので、僕らは伸びしろとして期待していますね。

──時代に合わせた変化をする臨機応変な体制そのものが、他業界に良い刺激を与えるということですね。「RAGE」はゲームを観戦する人、プレイする人、両方のためのイベントだということがわかりました。本日はありがとうございました!



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