静音式ボタンや着脱式レバーなど数々のヒット商品を生み出すアーケードパーツの老舗「三和電子」に聞く! (1/2)
eスポーツ元年と呼ばれた2018年を皮切りに、eスポーツ競技タイトルも増加。もちろん格闘ゲームのタイトルも増え続けている。一方でプレイヤーに要求されるのは、より正確なコマンド入力と、抜群の操作性を持つアーケードスティックだ。
プレイヤーにとってアーケードスティック選びは重要なポイントのひとつとなっていて、外観だけでなくボタンやレバーといったパーツにこだわる人も少なくない。そこで今回は、アーケードパーツ製造販売の老舗、三和電子株式会社に、アーケードスティックのレバーやボタンパーツ製作のノウハウや、新製品、パーツ購入にあたって注意するべきことのノウハウをうかがい、eスポーツメディアとしてご紹介していきたい。
お話をうかがったのは、三和電子株式会社 営業部 第一課 コンシューマーチーム 主任の佐藤 望さん、営業部 第一課の鈴木 智之さん、そして生産部技術課の鵜木 智之さんだ。
——三和電子がはじめて手がけたアーケードパーツはどのようなものでしたか?
三和電子(以下、三和):三和電子が創業したのは1982年の6月8日で、当時からジョイスティックレバーやコントロールパネルに加えて、各種押しボタンスイッチを開発していました。
——レバーやボタンといったパーツで一躍技術革新した時代はございますか?
三和:三和というメーカーが認知されたのは、1994年の『バーチャファイター2』が稼働した頃ですね。この『バーチャファイター2』の筐体だったアストロシティに純正で採用されたのがきっかけでした。
これを機に三和が参入したことで、知名度が一気に上がりました。
斜め入力のしやすさをとことん追求
——創業からジョイスティックレバーを開発、製造をなさってますが、現在のジョイスティックレバーにはどのような進化がありますか?
三和:アーケード筐体やアーケードスティックのパーツとして使われているジョイスティックレバーは、JLFシリーズですが、標準ジョイスティックレバーのほかに、静音ジョイスティックレバー、着脱式ジョイスティックレバーの3種類を販売しております。
基本的な構造は変わっておりませんが、入力の感覚や精度などマイナーチェンジを行って今のJLFシリーズが完成しました。
——静音ジョイスティックレバーを開発するきっかけとなったのは、やはり家庭用アーケードスティックの普及が影響しているのですか?
三和:そうですね。ゲームセンターとは違い、家庭ではレバーやボタン操作による音が気になりますからね。僕も家でゲームをしていると家族から「うるさい」って怒られることもありますし(笑)。
そこで静音タイプのジョイスティックレバーを製品化したのですが、標準レバーと同等の入力感を出すのに苦労しました。
開発当初から斜め入力をしっかりしつつ、静音化させるという課題がありました。静音タイプは標準タイプとは異なるスイッチを使用しています。当然、スイッチひとつが変わるだけで、入力に対する特性も変わってきますので、既存のガイドを装着しても同じ操作感は得られませんでした。
特に斜めの入力が入りづらいということもあり、静音タイプ用にガイドもいちから作り直しましたね。
また、レバーのシャフトに付属しているこの丸い素材はパイプと言うのですが、こちらも標準のレバーとは異なり、やや大きめのパイプを使っています。
このパイプが大きければ大きいほどスイッチを深く入力できるわけですが、大きすぎるとスイッチを押し込みすぎてしまい、スイッチに負荷がかかってしまいます。そのため、このパーツを絶妙なサイズに調整して、スイッチはしっかり入力されるけど、負荷をかけすぎずに入力できるポイントを試行錯誤して開発しました。
——それこそ試作品を何度も作ったりして?
三和:はい。たくさんつくりましたね。取り付け面よりレバーの下の部分の方に三和の技術が詰まっています(笑)。
——ちなみにこの形になるまでにどれくらいかかったのでしょうか?
三和:3年くらいはかかってますね。
——3年も!
あと、静音タイプは「静音にしただけなのに高価」と思われがちですが、実は耐久性が非常に高く、標準のレバーに比べると5倍くらい壊れにくくなっています。そういった意味でも値段に見合った性能があると思います。
——ちなみにジョイスティックレバーの裏面にあるガイドですが、標準タイプとは別に8角のガイドがありますよね。具体的にどのような特徴があるのでしょうか?
三和:より円に近いガイドにすることでぐるぐる回しやすくなっているので、回転系のコマンドが入力しやすくなっています。逆に斜めに止めようとしても難しいですね。
少しマニアックな話をすると、標準のガイドは四角形なので、傾斜角が上下左右が8.5度で、斜めに入力した際は12度になります。つまり、斜めに入力するときだけストロークが深くなるということです。一方、8角ガイドはその間をとって全方向の傾斜角が10度前後に設定してあります。標準ガイドよりも斜め入力によるストロークが浅くなるので、素早く回転コマンドが入力できるというわけです。
——なるほど!
三和:ちなみに、標準のガイドは中心の部分を回転させることで、4方向レバーにすることができます。
——おおっ、すごい!
ボタンを押したときの感覚を大事にした
——ボタンについても静音式のものがあるとのことですが、静音式のボタンについてはどのような構造になっていますか?
三和:今までの静音式ボタンは、ボタンの内部にスポンジのような緩衝シートを挟み込んで静音化を図っていました。しかし、それだと緩衝シートの厚みがある分、通常のボタンよりもストロークが浅くなり、ボタンの入力感覚が大きく変わってしまうのがネックでした。
また通常のボタンに緩衝シートを入れるというのは、誰でもできちゃうんですよね……。それが悔しくて(笑)。
やっぱりメーカーの強みを出したいということもあり、新しく開発し直しました。
それが、2019年の4月に発売したエラストマー式静音ボタンになります。エラストマーという素材をボタンに使うことで、緩衝シートを使わずに静音化することに成功しました。
——エラストマー?
三和:簡単にいうとゴムのように柔らかい素材で、高級車の内装パーツでも使われています。このエラストマーを絶妙な割合で配合することで、入力感は残しつつも静音性のあるボタンが完成しました。
また、通常のボタンと入力感を同じにするために、ボタンの重さも一律にしています。エラストマーという素材は重い素材でもあるので、側面に凹みをいれることで軽量化を図っているところもポイントです。
——耐久性の方はどうなっていますか?
三和:プラスチック同士だとどうしても摩耗していくので、通常のボタンはある程度使っていくと入力感が変わってしまいます。一方、エラストマー式静音ボタンは、ゴムのように柔らかいので、摩耗が少なく、ボタンの部分だけで言えば、半永久的に使えるといっても過言ではありません。
またボタンのスイッチ部分は、ボタン入力時にプラスチック同士が干渉することで削りカスが発生し、そのカスがスイッチ内部に入ってしまうことで故障してしまうことがあるのですが、エラストマー式静音ボタンならばそのカスも出ることがないので、スイッチの寿命も間接的に延びるということです。
そう考えると、家庭用だけでなくゲームセンターでも使ってもらいたいですね(笑)。
——静音だけじゃなくて耐久性も優れているというのはうれしいポイントですね。
プレイヤーにとってアーケードスティック選びは重要なポイントのひとつとなっていて、外観だけでなくボタンやレバーといったパーツにこだわる人も少なくない。そこで今回は、アーケードパーツ製造販売の老舗、三和電子株式会社に、アーケードスティックのレバーやボタンパーツ製作のノウハウや、新製品、パーツ購入にあたって注意するべきことのノウハウをうかがい、eスポーツメディアとしてご紹介していきたい。
お話をうかがったのは、三和電子株式会社 営業部 第一課 コンシューマーチーム 主任の佐藤 望さん、営業部 第一課の鈴木 智之さん、そして生産部技術課の鵜木 智之さんだ。
三和=格ゲーのイメージは『バーチャファイター2』から
——三和電子がはじめて手がけたアーケードパーツはどのようなものでしたか?
三和電子(以下、三和):三和電子が創業したのは1982年の6月8日で、当時からジョイスティックレバーやコントロールパネルに加えて、各種押しボタンスイッチを開発していました。
——レバーやボタンといったパーツで一躍技術革新した時代はございますか?
三和:三和というメーカーが認知されたのは、1994年の『バーチャファイター2』が稼働した頃ですね。この『バーチャファイター2』の筐体だったアストロシティに純正で採用されたのがきっかけでした。
これを機に三和が参入したことで、知名度が一気に上がりました。
斜め入力のしやすさをとことん追求
三和の技術がつまったジョイスティックレバー
——創業からジョイスティックレバーを開発、製造をなさってますが、現在のジョイスティックレバーにはどのような進化がありますか?
三和:アーケード筐体やアーケードスティックのパーツとして使われているジョイスティックレバーは、JLFシリーズですが、標準ジョイスティックレバーのほかに、静音ジョイスティックレバー、着脱式ジョイスティックレバーの3種類を販売しております。
基本的な構造は変わっておりませんが、入力の感覚や精度などマイナーチェンジを行って今のJLFシリーズが完成しました。
——静音ジョイスティックレバーを開発するきっかけとなったのは、やはり家庭用アーケードスティックの普及が影響しているのですか?
三和:そうですね。ゲームセンターとは違い、家庭ではレバーやボタン操作による音が気になりますからね。僕も家でゲームをしていると家族から「うるさい」って怒られることもありますし(笑)。
そこで静音タイプのジョイスティックレバーを製品化したのですが、標準レバーと同等の入力感を出すのに苦労しました。
開発当初から斜め入力をしっかりしつつ、静音化させるという課題がありました。静音タイプは標準タイプとは異なるスイッチを使用しています。当然、スイッチひとつが変わるだけで、入力に対する特性も変わってきますので、既存のガイドを装着しても同じ操作感は得られませんでした。
特に斜めの入力が入りづらいということもあり、静音タイプ用にガイドもいちから作り直しましたね。
また、レバーのシャフトに付属しているこの丸い素材はパイプと言うのですが、こちらも標準のレバーとは異なり、やや大きめのパイプを使っています。
このパイプが大きければ大きいほどスイッチを深く入力できるわけですが、大きすぎるとスイッチを押し込みすぎてしまい、スイッチに負荷がかかってしまいます。そのため、このパーツを絶妙なサイズに調整して、スイッチはしっかり入力されるけど、負荷をかけすぎずに入力できるポイントを試行錯誤して開発しました。
——それこそ試作品を何度も作ったりして?
三和:はい。たくさんつくりましたね。取り付け面よりレバーの下の部分の方に三和の技術が詰まっています(笑)。
——ちなみにこの形になるまでにどれくらいかかったのでしょうか?
三和:3年くらいはかかってますね。
——3年も!
あと、静音タイプは「静音にしただけなのに高価」と思われがちですが、実は耐久性が非常に高く、標準のレバーに比べると5倍くらい壊れにくくなっています。そういった意味でも値段に見合った性能があると思います。
——ちなみにジョイスティックレバーの裏面にあるガイドですが、標準タイプとは別に8角のガイドがありますよね。具体的にどのような特徴があるのでしょうか?
三和:より円に近いガイドにすることでぐるぐる回しやすくなっているので、回転系のコマンドが入力しやすくなっています。逆に斜めに止めようとしても難しいですね。
少しマニアックな話をすると、標準のガイドは四角形なので、傾斜角が上下左右が8.5度で、斜めに入力した際は12度になります。つまり、斜めに入力するときだけストロークが深くなるということです。一方、8角ガイドはその間をとって全方向の傾斜角が10度前後に設定してあります。標準ガイドよりも斜め入力によるストロークが浅くなるので、素早く回転コマンドが入力できるというわけです。
——なるほど!
三和:ちなみに、標準のガイドは中心の部分を回転させることで、4方向レバーにすることができます。
——おおっ、すごい!
ボタンを押したときの感覚を大事にした
エラストマー式静音式ボタン
——ボタンについても静音式のものがあるとのことですが、静音式のボタンについてはどのような構造になっていますか?
三和:今までの静音式ボタンは、ボタンの内部にスポンジのような緩衝シートを挟み込んで静音化を図っていました。しかし、それだと緩衝シートの厚みがある分、通常のボタンよりもストロークが浅くなり、ボタンの入力感覚が大きく変わってしまうのがネックでした。
また通常のボタンに緩衝シートを入れるというのは、誰でもできちゃうんですよね……。それが悔しくて(笑)。
やっぱりメーカーの強みを出したいということもあり、新しく開発し直しました。
それが、2019年の4月に発売したエラストマー式静音ボタンになります。エラストマーという素材をボタンに使うことで、緩衝シートを使わずに静音化することに成功しました。
——エラストマー?
三和:簡単にいうとゴムのように柔らかい素材で、高級車の内装パーツでも使われています。このエラストマーを絶妙な割合で配合することで、入力感は残しつつも静音性のあるボタンが完成しました。
また、通常のボタンと入力感を同じにするために、ボタンの重さも一律にしています。エラストマーという素材は重い素材でもあるので、側面に凹みをいれることで軽量化を図っているところもポイントです。
——耐久性の方はどうなっていますか?
三和:プラスチック同士だとどうしても摩耗していくので、通常のボタンはある程度使っていくと入力感が変わってしまいます。一方、エラストマー式静音ボタンは、ゴムのように柔らかいので、摩耗が少なく、ボタンの部分だけで言えば、半永久的に使えるといっても過言ではありません。
またボタンのスイッチ部分は、ボタン入力時にプラスチック同士が干渉することで削りカスが発生し、そのカスがスイッチ内部に入ってしまうことで故障してしまうことがあるのですが、エラストマー式静音ボタンならばそのカスも出ることがないので、スイッチの寿命も間接的に延びるということです。
そう考えると、家庭用だけでなくゲームセンターでも使ってもらいたいですね(笑)。
——静音だけじゃなくて耐久性も優れているというのはうれしいポイントですね。
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