【Apex Legends 開発者インタビュー】1プレー15分でリスポーン可能な新モード「ワイルドカード」の意図は?——なぜ長い間調整されないレジェンドがいたのかなど、メタ環境の展望についても本音をぶつけてみた

2025年8月6日(水)より開幕する『Apex Legends』シーズン26。配信に先駆けて開発者に向けた合同インタビューが開催された。
このインタビューでは新モード「ワイルドカード」やレジェンドやランクマッチの調整について聞くことができたので、気になる方は本稿をチェックしてほしい。
新モード「ワイルドカード」では、Senior Technical Designer ModesのKevin Wolski氏とChris Ruvolo氏にインタビューを実施。「ワイルドカード」とはどんなモードなのか、なぜこのタイミングで新モードを実装したのかなど、気になることをうかがった。
——「ワイルドカード」というモードは一体どんなモードなのでしょうか?
Chris:「ワイルドカード」は、通常の『Apex Legends』に比べて、よりフォーカスを絞ったゲーム体験ができるモードです。ラウンド数は少なめに設定され、1ゲームのプレー時間も最大で約15分とコンパクトになっています。
また、リングのダメージが抑えられているほか、試合開始時点ですでにある程度リングが縮小された状態から始まります。マップはキングスキャニオンのみとなっていますが、コミュニティーからのフィードバックをもとに、今後もアップデートしていく予定です。
ゲーム内で手に入るアイテムのルート(経路)も限定されており、プレーヤーは自分の持っている武器や弾薬に集中しながら、余計な要素に気を取られずプレーできるモードになっています。プレーヤー数はトリオ編成の10チーム(合計30人)と、通常より少人数での対戦となります。
Kevin:さらに補足すると、「ワイルドカード」にはいくつかの柱となる要素があります。ひとつは、リスポーンが可能な恒常モードである点です。そしてもうひとつは、強化済みの武器で戦えるという点です。これはこれまでの「ミックステープ」などのモードでも見られた特徴ですね。
また、ゲーム内には「EVOオーブ」と呼ばれるアイテムが存在しており、これを拾うことで武器のアップグレードや回復のチャージが可能になります。これにより、よりアグレッシブかつテンポの速い戦闘が展開され、アクション中心のエネルギッシュなゲーム体験が味わえるようになっています。

——開発コンセプトや、開発において苦労した点を教えてください。
Kevin:開発初期の段階では、ふたつの明確なゴールを掲げていました。ひとつは、できるだけ多くのプレーヤーが気軽にプレーできるモードにすること。もうひとつは、アクション要素にフォーカスした体験を提供することです。
これまでにも「リバイバル」や「スリーストライク」など、期間限定で楽しめるモードはいくつかありましたが、それらをプレーした方々からは「リスポーン機能のある常設モードが欲しい」という声が多く寄せられていました。そうしたコミュニティの要望に応える形で誕生したのが、今回の「ワイルドカード」です。
本モードには、リバイバル要素に加えて、EVOオーブによるアップグレード要素など、複数の新しい仕組みが組み込まれています。これらの要素に一貫性を持たせて、ひとつの滑らかなゲーム体験としてまとめ上げることはとても苦労しましたが、最終的にはアクション満載で常に動きのある、レジェンドたちの個性も際立つモードに仕上がったと感じています。
——なぜシーズン26というタイミングでの実装になったのでしょうか?
Kevin:「ワイルドカード」モードは、コミュニティーからのフィードバックと、開発チームとして試してみたかったアイデアの両方を掛け合わせて生まれたモードです。
もともと、「リスポーンのある恒常的なモードがほしい」という声は以前からコミュニティーの中で多く寄せられていました。今回、それをひとつの形として実現しています。
さらに、私たちとしても通常のゲームモードではなかなか挑戦できないような新しい要素を「ワイルドカード」で実験したいという思いがありました。結果として、リラックスしながらカジュアルかつアクション要素たっぷりで楽しめるモードに仕上がっています。

——アクション性の高いモードという点では「アリーナ」もありましたが、そちらを復活させるのではなく「ワイルドカード」を選んだ理由は?
Kevin:かつて『Apex Legends』には「アリーナ」というモードが存在しており、遊んでくださったプレーヤーの皆さんには非常に好評をいただいていました。ただし、「ワイルドカード」はアリーナとはいくつかの点で異なります。
まず大きな違いは、本モードがバトルロイヤルをベースとしている点です。プレーヤー数も多く、リングによる収縮も存在します。一方のアリーナは、3対3のラウンド制で、より小規模かつ戦略的なゲーム体験でした。
「ワイルドカード」はそうした通常のモードでは少し入りにくいと感じるプレーヤーに向けて、よりシンプルで直感的なバトルロイヤル体験を提供することを目指しています。
ゲームが始まればテンポは非常に速く、アクションもたっぷり。仲間と一緒にリラックスしながら楽しめる——。そんな新しいタイプのバトルロイヤルになっていると思います。
——「ワイルドカード」を通してプレーヤーからどのようなリアクションを期待していますか?
Chris:ユーザーの皆さんには、この「ワイルドカード」モードを通じてたくさんの時間を費やし、存分に遊んでほしいという思いがあります。そして、その中でさまざまな“ワクワクする体験”を届けたいと考えています。
今回のモードは、これまでの『Apex Legends』にはなかったようなスピーディーかつアクション重視のペースで進行するのが特徴です。マップは「キングスキャニオン」に限定されていますが、このマップにもいくつか手を加えており、フレッシュな体験を味わっていただけるはずです。
また、「EVOオーブ」を拾うことで武器の強化や回復のチャージが可能になるなど、新たな要素も多数追加されています。なお、レジェンドごとのアップグレードシステムには今回あえて手を加えていませんが、プレーヤーの認知負荷をできる限り軽減するよう工夫を凝らしています。
例えばアイテムを拾わなくても自動的にルートが整う仕様や、自分の体力やヘルスの管理に過度に気を取られることなく、次の戦いへテンポよく移行できる設計になっているのもその一環です。プレーヤーがアクションや戦闘により集中できるようにすることで、純粋にバトルの楽しさに没頭できるモードになっていると思います。

——「ワイルドカード」という要素が『Apex Legends』にどのような変化や新しい魅力をもたらすと考えていますか?
Chris:この「ワイルドカード」モードを通じて、新しく『Apex Legends』の世界に足を踏み入れるプレーヤーが増えてほしいと思っています。また、何らかの理由で離れていたプレーヤーが戻ってくるきっかけにもなればうれしいです。
実際、1ゲームあたりのプレー時間が短く、気軽に楽しめる設計になっているので、プレースタイルに応じた自由な遊び方ができると思います。例えばランクマッチの前のウォームアップとして活用するプレーヤーもいれば、「ワイルドカード」をメインの遊び場として選ぶ方も出てくるかもしれません。どのように楽しむかはプレーヤー次第ですが、いずれにしてもこのモードが広がっていくことが楽しみです。
Kevin:「ワイルドカード」はランクマッチとは完全に別の枠で運用されているため、私たち開発チームにとっても、さまざまな新要素を実験できる場となっています。
例えばシーズン26で導入予定の「バット」や、新しいバトル関連の機能もここで試すことが可能です。モード内では、アップグレードの選択肢が複数用意されており、通常のバトルロイヤルには存在しないパッシブ効果なども盛り込まれています。
「バット」に関していえば、走りながら攻撃するとダメージが上がるといった要素もあり、これは通常モードでは実装されていないような仕様です。
もちろん、通常のバトルロイヤルは公平性やバランスが重視されますが、「ワイルドカード」ではそこにこだわらず、まずは気軽に“試してみる”ことができるモードになっています。
こうした自由度の高いモードは、まさにコミュニティーが求めていたものでもありますので、ぜひ多くの方に楽しんでいただければと思います。
——ありがとうございました!
シアは見捨てられたのでは——
こちらのインタビューではレジェンドのアップデート調整やランクマッチに関するインタビューが行われた。登壇したのは開発チームのLegend DesignerのBrian Berryhill氏、BR DesignerのJJ Odell氏、Apex Legends Design DirectorのEvan Nikolich氏、Lead Level DesignerのSteve Young氏、Player Investment DirectorのChris Cleroux氏、Principal Game DesignerのBilal Arshad氏、Lead Legend DesignerのJosh Mohan氏。
長い間調整されてこなかったレジェンドやメタ環境の展望、新システムのAMPについて、気になることをおうかがいした。
——現在のメタについて、開発チームとして満足している点や注視している点は?
Josh:シーズン25のバランスには全体として満足していますし、プレーヤーからのフィードバックも良好でした。特にワットソンとヴァンテージのバフはいい反応をいただきましたね。
一方で、アッシュ、バリスティック、オルターといった、GOD Tierレジェンド(最も優れているレジェンド群)は、本当にそのレジェンドしか見ないという状況でした。
その人気がメタの偏りに繋がると判断し、ミッドシーズンでバランス調整のパッチを投入しました。その結果、選ばれるレジェンドの幅が広がったように感じています。私たちとしては、適度なバランスを保ちつつ、プレーヤーが多様な選択肢を持てる環境を目指しています。

——アサルトやスカーミッシャーに続いて、ワットソンやコースティックといったコントローラーにも調整が入りました。シーズン26におけるメタの変化について、どのような展望をお持ちですか?
Brian:今回のバンガロールへの調整によって、彼女のピック率がTOP10に戻ってきてほしいという期待があります。終盤の戦闘でも、彼女のスモークやアルティメットがしっかりと力を発揮し、戦場をコントロールできる存在になっていると感じています。
コースティックも同様に、ディフェンス型の能力がより際立ち、扱いやすくなっていると思います。特にアッシュ対策として効果的に働くシーンが増えるでしょう。ただし、完全にアッシュをシャットダウンできるわけではないので、プレーヤーの工夫や腕前が問われる部分でもあります。
——現状のアッシュのパッシブが非常に強力で、アッシュだけ使えばいいという状況ですが、この現状を開発チームはどのように受け止めていますか?
Josh:現在のアッシュが非常に強力であることは認識していますし、その状態が一定期間続いていることも理解しています。
ただし、アッシュの持つユニークな個性や「使っていて楽しい」という感覚は失いたくないとも考えています。そのため、少しずつ段階的にバランスを調整する形で進めています。
プレーヤーの中には、対面してフラストレーションを感じる方もいるかもしれませんが、過去数回のパッチでアッシュには段階的な弱体化を加えていることも見ていただけると思います。

——開発チームとして、理想的なレジェンドのピック率はあるのでしょうか?
Josh:実は、理想とする具体的なピック率は設定していません。というのも、競技性の高いゲームである『Apex Legends』において、「このレジェンドを使えば勝てる」といった方程式が成立する状態は避けたいと考えているからです。
「最強Tierリスト」のようなものが固定化してしまうと、メタが停滞してしまいます。常に動きがあり、選択肢が多様であることが重要だと思っています。
そのために、私たちは数週間ごとのパッチや新機能の導入を通じて、継続的に環境に変化を加えています。完璧な数字よりも、多様性のある健全なメタを目指すことを大切にしています。
——使用率が低いにも関わらず、長い間シアだけ調整がされていません。SNSでは「シアは見捨てられたのでは」といった声も見られますが、調整が入らない理由を教えてください。
Josh:最初にお伝えしたいのは、「シアを見捨てたという事実は一切ない」ということです。実際、調整を行うべきかどうかについては常に検討しています。
ただし、かつてのシアは非常に強力すぎた時期がありました。特に、壁越しにダメージを与える能力は、多くのプレーヤーにとってフラストレーションの原因となっていたと認識しています。
そのため、今後シアに手を加えるとしても、再びバランスを崩すような調整にはしたくないという思いがあります。そこは非常に慎重に取り組む必要があります。今回は、長らく待たれていたコースティックのバフを実施しましたが、シアに関しても将来的には必ず調整を行う予定です。

——シア以外にも使用率の低いレジェンドがいますが、これらも今後強化されていくのでしょうか?
Josh:もちろん、使用率の低いレジェンドを再びプレーヤーに使ってもらうための調整は、常に目標として掲げています。実際に、それに向けたロードマップも存在しています。
ただし、シーズンごとにできることには限りがありますし、一度に大量の調整を加えるのはプレーヤーにとっても混乱のもとになりかねません。そのため、限られた時間とリソースの中で、段階的に最適な調整を行っていく予定です。
——下位ランクでは使われるが、上位ランクでは見かけないレジェンドもいます。上級者・初心者向けへの調整は今後行われる予定でしょうか?
Josh:おっしゃる通り、ランク帯によって使用されるレジェンドに偏りが出ることはあります。ただ、それ自体は悪いことではないと考えています。
大切なのは、「どのランク帯でもまったく使われないレジェンドをなくす」という点です。使われ方に偏りがあるのは、レジェンドの個性を考えれば自然なことでもあります。
例えばブラッドハウンドはシンプルで初心者にも扱いやすいレジェンドですよね。そうしたレジェンドが新規プレーヤーの入り口になるのは歓迎すべきことです。ただし、その強さが突出しすぎないようにバランスを調整する必要はあると考えています。
——スパローのように、リコンクラスでありながらスカーミッシャー並みの機動力を持つレジェンドもいます。こうした存在によってクラス分けの役割が曖昧になっている印象もありますが、現状のクラス設計についてどう考えていますか?
Josh:私たちがクラス設計を考える際には、単に「このアビリティが何をするか」ではなく、チーム全体としてのフィット感や、クラス同士の組み合わせがどんな戦術を生むかを重視しています。
例えばアッシュは過去にリコン系のパッシブを持っていた時期があり、そういったクラスを越えた傾向は時折見られるものです。しかし、それらは例外的なものであって、全体のバランスや相性を軸にクラス設計を調整しているという点は強調したいですね。
また、レヴナントが一時期シールドを持っており、戦闘のイニシエーター的な役割を果たしていたことや、アッシュがスカーミッシャー的な動きをしていた時期もありましたが、最近のパッチではレジェンドのクラスそのものを再調整するケースも増えています。最終的には、アビリティの内容だけでなく、クラスごとの相性やチームでの役割を通じて、ゲーム全体のバランスを整えることを目指しています。

——ランクマッチの公平性や、プレーヤーの満足度向上に向けた取り組みはありますか?
Bilal:さまざまな改善を検討・実施しています。最近行ったRP(ランクポイント)のチューニングもそのひとつです。これは、公平性を維持しながらも、競争性を損なわないよう配慮した調整となっています。
また、マッチメイキングのアルゴリズムにも継続的に手を加えています。プレーヤーとしては、自分と同じスキル帯の相手と対戦したいと感じるのが自然ですし、それを実現するためにリセット直後でも同じ実力の相手とマッチできるよう調整しています。こうした改善は一度で完了するものではなく、継続的な取り組みとして進めています。
——バンガロールのアルティメットに付与されるEMPについて、建物内にも効果があるのか教えてください。
Brian:基本的には、視界に入っている範囲にのみEMP効果が届くようになっています。
ただし、新たに導入されるパークの影響によって、ドアを貫通してダメージを与えることが可能になります。これにより、建物の中にいる敵にもこれまで以上にEMPの効果を及ぼしやすくなったといえるでしょう。

——AMPが非常に強力な印象ですが、出現率やチーム戦術とのバランスについて教えてください。
JJ:AMPは、新しい形のパワーアップ手段として導入した要素です。ゲーム開始時にはいくつかが配置されており、ビンがリセットされた後にはより頻繁に出現するようになります。
リセット前は、チームのひとり、多くてもふたりが恩恵を受けられる程度ですが、リセット後は特定のAMPを狙いやすくなり、戦術的な選択肢も広がります。
今までにもレジェンドや武器のアップグレードで強くなる要素はありましたが、AMPはそれとはまた異なる新しいパワーアップの道として設計されています。プレーヤーの選択と運によって、チーム戦術の幅が広がる要素として機能することを期待しています。

——今後、ホップアップの付け替えや、ダブルタップトリガーなど過去のホップアップの復活予定はありますか?
JJ:現時点で「ダブルタップトリガーの復活」は検討していません。ただし、この新しいホップアップシステムの魅力は、自由度が高い点にあります。新たなホップアップを追加することも、過去のホップアップを復活させることも、技術的には可能です。
また、1マッチ内で最大4つのホップアップを入手できる仕組みもあり、強力なものからユニークなものまで、バトルの中でさまざまな体験ができるようになっています。
一方で、現在のところホップアップの付け替えは検討していません。というのも、ホップアップを手に入れたらそのまま使ってもらい、「それがどう作用し、どんな火力を生むのか」を実際に体感してほしいという意図があります。ひとつのホップアップに集中し、その特徴をしっかり楽しんでもらえればと思います。
——ありがとうございました!
新モードの「ワイルドカード」の実装により、よりカジュアルに楽しめるようになった『Apex Legends』。「ワイルドカード」はバトルロイヤルに実装する要素の実験場にもなるようなので、これからさまざまなシステムが導入されていくと思われる。
また、今回強化されたコースティックは競技シーンでも必ず出てくるような強さになっているので、オルターやアッシュと同じくらい競技シーンで使われるようになると感じた。
新要素が盛りだくさんのシーズン26は2025年8月6日(水)より開幕するということで、今から非常に楽しみだ。
■関連リンク
公式サイト:
https://www.ea.com/ja/games/apex-legends/apex-legends
編集:いのかわゆう
このインタビューでは新モード「ワイルドカード」やレジェンドやランクマッチの調整について聞くことができたので、気になる方は本稿をチェックしてほしい。
「ワイルドカード」はリスポーン可能な新モード
新モード「ワイルドカード」では、Senior Technical Designer ModesのKevin Wolski氏とChris Ruvolo氏にインタビューを実施。「ワイルドカード」とはどんなモードなのか、なぜこのタイミングで新モードを実装したのかなど、気になることをうかがった。
——「ワイルドカード」というモードは一体どんなモードなのでしょうか?
Chris:「ワイルドカード」は、通常の『Apex Legends』に比べて、よりフォーカスを絞ったゲーム体験ができるモードです。ラウンド数は少なめに設定され、1ゲームのプレー時間も最大で約15分とコンパクトになっています。
また、リングのダメージが抑えられているほか、試合開始時点ですでにある程度リングが縮小された状態から始まります。マップはキングスキャニオンのみとなっていますが、コミュニティーからのフィードバックをもとに、今後もアップデートしていく予定です。
ゲーム内で手に入るアイテムのルート(経路)も限定されており、プレーヤーは自分の持っている武器や弾薬に集中しながら、余計な要素に気を取られずプレーできるモードになっています。プレーヤー数はトリオ編成の10チーム(合計30人)と、通常より少人数での対戦となります。
Kevin:さらに補足すると、「ワイルドカード」にはいくつかの柱となる要素があります。ひとつは、リスポーンが可能な恒常モードである点です。そしてもうひとつは、強化済みの武器で戦えるという点です。これはこれまでの「ミックステープ」などのモードでも見られた特徴ですね。
また、ゲーム内には「EVOオーブ」と呼ばれるアイテムが存在しており、これを拾うことで武器のアップグレードや回復のチャージが可能になります。これにより、よりアグレッシブかつテンポの速い戦闘が展開され、アクション中心のエネルギッシュなゲーム体験が味わえるようになっています。

▲通常のバトルロイヤルもカジュアルに遊べるがよりシンプルなルールとなって遊べるのが「ワイルドカード」のようだ
——開発コンセプトや、開発において苦労した点を教えてください。
Kevin:開発初期の段階では、ふたつの明確なゴールを掲げていました。ひとつは、できるだけ多くのプレーヤーが気軽にプレーできるモードにすること。もうひとつは、アクション要素にフォーカスした体験を提供することです。
これまでにも「リバイバル」や「スリーストライク」など、期間限定で楽しめるモードはいくつかありましたが、それらをプレーした方々からは「リスポーン機能のある常設モードが欲しい」という声が多く寄せられていました。そうしたコミュニティの要望に応える形で誕生したのが、今回の「ワイルドカード」です。
本モードには、リバイバル要素に加えて、EVOオーブによるアップグレード要素など、複数の新しい仕組みが組み込まれています。これらの要素に一貫性を持たせて、ひとつの滑らかなゲーム体験としてまとめ上げることはとても苦労しましたが、最終的にはアクション満載で常に動きのある、レジェンドたちの個性も際立つモードに仕上がったと感じています。
——なぜシーズン26というタイミングでの実装になったのでしょうか?
Kevin:「ワイルドカード」モードは、コミュニティーからのフィードバックと、開発チームとして試してみたかったアイデアの両方を掛け合わせて生まれたモードです。
もともと、「リスポーンのある恒常的なモードがほしい」という声は以前からコミュニティーの中で多く寄せられていました。今回、それをひとつの形として実現しています。
さらに、私たちとしても通常のゲームモードではなかなか挑戦できないような新しい要素を「ワイルドカード」で実験したいという思いがありました。結果として、リラックスしながらカジュアルかつアクション要素たっぷりで楽しめるモードに仕上がっています。

▲アクション中心のモードということで、より撃ち合いに集中できるモードになっているようだ
——アクション性の高いモードという点では「アリーナ」もありましたが、そちらを復活させるのではなく「ワイルドカード」を選んだ理由は?
Kevin:かつて『Apex Legends』には「アリーナ」というモードが存在しており、遊んでくださったプレーヤーの皆さんには非常に好評をいただいていました。ただし、「ワイルドカード」はアリーナとはいくつかの点で異なります。
まず大きな違いは、本モードがバトルロイヤルをベースとしている点です。プレーヤー数も多く、リングによる収縮も存在します。一方のアリーナは、3対3のラウンド制で、より小規模かつ戦略的なゲーム体験でした。
「ワイルドカード」はそうした通常のモードでは少し入りにくいと感じるプレーヤーに向けて、よりシンプルで直感的なバトルロイヤル体験を提供することを目指しています。
ゲームが始まればテンポは非常に速く、アクションもたっぷり。仲間と一緒にリラックスしながら楽しめる——。そんな新しいタイプのバトルロイヤルになっていると思います。
——「ワイルドカード」を通してプレーヤーからどのようなリアクションを期待していますか?
Chris:ユーザーの皆さんには、この「ワイルドカード」モードを通じてたくさんの時間を費やし、存分に遊んでほしいという思いがあります。そして、その中でさまざまな“ワクワクする体験”を届けたいと考えています。
今回のモードは、これまでの『Apex Legends』にはなかったようなスピーディーかつアクション重視のペースで進行するのが特徴です。マップは「キングスキャニオン」に限定されていますが、このマップにもいくつか手を加えており、フレッシュな体験を味わっていただけるはずです。
また、「EVOオーブ」を拾うことで武器の強化や回復のチャージが可能になるなど、新たな要素も多数追加されています。なお、レジェンドごとのアップグレードシステムには今回あえて手を加えていませんが、プレーヤーの認知負荷をできる限り軽減するよう工夫を凝らしています。
例えばアイテムを拾わなくても自動的にルートが整う仕様や、自分の体力やヘルスの管理に過度に気を取られることなく、次の戦いへテンポよく移行できる設計になっているのもその一環です。プレーヤーがアクションや戦闘により集中できるようにすることで、純粋にバトルの楽しさに没頭できるモードになっていると思います。

——「ワイルドカード」という要素が『Apex Legends』にどのような変化や新しい魅力をもたらすと考えていますか?
Chris:この「ワイルドカード」モードを通じて、新しく『Apex Legends』の世界に足を踏み入れるプレーヤーが増えてほしいと思っています。また、何らかの理由で離れていたプレーヤーが戻ってくるきっかけにもなればうれしいです。
実際、1ゲームあたりのプレー時間が短く、気軽に楽しめる設計になっているので、プレースタイルに応じた自由な遊び方ができると思います。例えばランクマッチの前のウォームアップとして活用するプレーヤーもいれば、「ワイルドカード」をメインの遊び場として選ぶ方も出てくるかもしれません。どのように楽しむかはプレーヤー次第ですが、いずれにしてもこのモードが広がっていくことが楽しみです。
Kevin:「ワイルドカード」はランクマッチとは完全に別の枠で運用されているため、私たち開発チームにとっても、さまざまな新要素を実験できる場となっています。
例えばシーズン26で導入予定の「バット」や、新しいバトル関連の機能もここで試すことが可能です。モード内では、アップグレードの選択肢が複数用意されており、通常のバトルロイヤルには存在しないパッシブ効果なども盛り込まれています。
「バット」に関していえば、走りながら攻撃するとダメージが上がるといった要素もあり、これは通常モードでは実装されていないような仕様です。
もちろん、通常のバトルロイヤルは公平性やバランスが重視されますが、「ワイルドカード」ではそこにこだわらず、まずは気軽に“試してみる”ことができるモードになっています。
こうした自由度の高いモードは、まさにコミュニティーが求めていたものでもありますので、ぜひ多くの方に楽しんでいただければと思います。
——ありがとうございました!
シアは見捨てられたのでは——
レジェンドやランクマッチの現状を開発者はどう見ているのか
こちらのインタビューではレジェンドのアップデート調整やランクマッチに関するインタビューが行われた。登壇したのは開発チームのLegend DesignerのBrian Berryhill氏、BR DesignerのJJ Odell氏、Apex Legends Design DirectorのEvan Nikolich氏、Lead Level DesignerのSteve Young氏、Player Investment DirectorのChris Cleroux氏、Principal Game DesignerのBilal Arshad氏、Lead Legend DesignerのJosh Mohan氏。
長い間調整されてこなかったレジェンドやメタ環境の展望、新システムのAMPについて、気になることをおうかがいした。
——現在のメタについて、開発チームとして満足している点や注視している点は?
Josh:シーズン25のバランスには全体として満足していますし、プレーヤーからのフィードバックも良好でした。特にワットソンとヴァンテージのバフはいい反応をいただきましたね。
一方で、アッシュ、バリスティック、オルターといった、GOD Tierレジェンド(最も優れているレジェンド群)は、本当にそのレジェンドしか見ないという状況でした。
その人気がメタの偏りに繋がると判断し、ミッドシーズンでバランス調整のパッチを投入しました。その結果、選ばれるレジェンドの幅が広がったように感じています。私たちとしては、適度なバランスを保ちつつ、プレーヤーが多様な選択肢を持てる環境を目指しています。

▲オルターなどのレジェンドはレジェンドとしてのパワーが高いので、よく使われている印象だ
——アサルトやスカーミッシャーに続いて、ワットソンやコースティックといったコントローラーにも調整が入りました。シーズン26におけるメタの変化について、どのような展望をお持ちですか?
Brian:今回のバンガロールへの調整によって、彼女のピック率がTOP10に戻ってきてほしいという期待があります。終盤の戦闘でも、彼女のスモークやアルティメットがしっかりと力を発揮し、戦場をコントロールできる存在になっていると感じています。
コースティックも同様に、ディフェンス型の能力がより際立ち、扱いやすくなっていると思います。特にアッシュ対策として効果的に働くシーンが増えるでしょう。ただし、完全にアッシュをシャットダウンできるわけではないので、プレーヤーの工夫や腕前が問われる部分でもあります。
——現状のアッシュのパッシブが非常に強力で、アッシュだけ使えばいいという状況ですが、この現状を開発チームはどのように受け止めていますか?
Josh:現在のアッシュが非常に強力であることは認識していますし、その状態が一定期間続いていることも理解しています。
ただし、アッシュの持つユニークな個性や「使っていて楽しい」という感覚は失いたくないとも考えています。そのため、少しずつ段階的にバランスを調整する形で進めています。
プレーヤーの中には、対面してフラストレーションを感じる方もいるかもしれませんが、過去数回のパッチでアッシュには段階的な弱体化を加えていることも見ていただけると思います。

▲アッシュのパッシブアビリティ「ダッシュ」は機動力が高く使っていて非常に楽しいので、弱体化するにしてもこの楽しさが失われないように調整してほしい
——開発チームとして、理想的なレジェンドのピック率はあるのでしょうか?
Josh:実は、理想とする具体的なピック率は設定していません。というのも、競技性の高いゲームである『Apex Legends』において、「このレジェンドを使えば勝てる」といった方程式が成立する状態は避けたいと考えているからです。
「最強Tierリスト」のようなものが固定化してしまうと、メタが停滞してしまいます。常に動きがあり、選択肢が多様であることが重要だと思っています。
そのために、私たちは数週間ごとのパッチや新機能の導入を通じて、継続的に環境に変化を加えています。完璧な数字よりも、多様性のある健全なメタを目指すことを大切にしています。
——使用率が低いにも関わらず、長い間シアだけ調整がされていません。SNSでは「シアは見捨てられたのでは」といった声も見られますが、調整が入らない理由を教えてください。
Josh:最初にお伝えしたいのは、「シアを見捨てたという事実は一切ない」ということです。実際、調整を行うべきかどうかについては常に検討しています。
ただし、かつてのシアは非常に強力すぎた時期がありました。特に、壁越しにダメージを与える能力は、多くのプレーヤーにとってフラストレーションの原因となっていたと認識しています。
そのため、今後シアに手を加えるとしても、再びバランスを崩すような調整にはしたくないという思いがあります。そこは非常に慎重に取り組む必要があります。今回は、長らく待たれていたコースティックのバフを実施しましたが、シアに関しても将来的には必ず調整を行う予定です。

▲以前のシアは壁越しにスキャンしながら10ダメージを与えられるという非常に強力なレジェンドだった。その頃の強さでなくてもシアがランクマッチや大会で使われている場面が見られると個人的にはうれしい
——シア以外にも使用率の低いレジェンドがいますが、これらも今後強化されていくのでしょうか?
Josh:もちろん、使用率の低いレジェンドを再びプレーヤーに使ってもらうための調整は、常に目標として掲げています。実際に、それに向けたロードマップも存在しています。
ただし、シーズンごとにできることには限りがありますし、一度に大量の調整を加えるのはプレーヤーにとっても混乱のもとになりかねません。そのため、限られた時間とリソースの中で、段階的に最適な調整を行っていく予定です。
——下位ランクでは使われるが、上位ランクでは見かけないレジェンドもいます。上級者・初心者向けへの調整は今後行われる予定でしょうか?
Josh:おっしゃる通り、ランク帯によって使用されるレジェンドに偏りが出ることはあります。ただ、それ自体は悪いことではないと考えています。
大切なのは、「どのランク帯でもまったく使われないレジェンドをなくす」という点です。使われ方に偏りがあるのは、レジェンドの個性を考えれば自然なことでもあります。
例えばブラッドハウンドはシンプルで初心者にも扱いやすいレジェンドですよね。そうしたレジェンドが新規プレーヤーの入り口になるのは歓迎すべきことです。ただし、その強さが突出しすぎないようにバランスを調整する必要はあると考えています。
——スパローのように、リコンクラスでありながらスカーミッシャー並みの機動力を持つレジェンドもいます。こうした存在によってクラス分けの役割が曖昧になっている印象もありますが、現状のクラス設計についてどう考えていますか?
Josh:私たちがクラス設計を考える際には、単に「このアビリティが何をするか」ではなく、チーム全体としてのフィット感や、クラス同士の組み合わせがどんな戦術を生むかを重視しています。
例えばアッシュは過去にリコン系のパッシブを持っていた時期があり、そういったクラスを越えた傾向は時折見られるものです。しかし、それらは例外的なものであって、全体のバランスや相性を軸にクラス設計を調整しているという点は強調したいですね。
また、レヴナントが一時期シールドを持っており、戦闘のイニシエーター的な役割を果たしていたことや、アッシュがスカーミッシャー的な動きをしていた時期もありましたが、最近のパッチではレジェンドのクラスそのものを再調整するケースも増えています。最終的には、アビリティの内容だけでなく、クラスごとの相性やチームでの役割を通じて、ゲーム全体のバランスを整えることを目指しています。

▲かつて一世を風靡(ふうび)した「レヴオク構成」はとても強く、さまざまな人から嫌われていた構成だった。そこからさまざまな調整が入り、今はレヴナント単体でも戦闘が強いレジェンドへと進化した
——ランクマッチの公平性や、プレーヤーの満足度向上に向けた取り組みはありますか?
Bilal:さまざまな改善を検討・実施しています。最近行ったRP(ランクポイント)のチューニングもそのひとつです。これは、公平性を維持しながらも、競争性を損なわないよう配慮した調整となっています。
また、マッチメイキングのアルゴリズムにも継続的に手を加えています。プレーヤーとしては、自分と同じスキル帯の相手と対戦したいと感じるのが自然ですし、それを実現するためにリセット直後でも同じ実力の相手とマッチできるよう調整しています。こうした改善は一度で完了するものではなく、継続的な取り組みとして進めています。
——バンガロールのアルティメットに付与されるEMPについて、建物内にも効果があるのか教えてください。
Brian:基本的には、視界に入っている範囲にのみEMP効果が届くようになっています。
ただし、新たに導入されるパークの影響によって、ドアを貫通してダメージを与えることが可能になります。これにより、建物の中にいる敵にもこれまで以上にEMPの効果を及ぼしやすくなったといえるでしょう。

▲アルティメットアビリティ「ローリングサンダー」の制圧力が上がったので、建物にいるパーティーを閉じ込めたり、自分だけ別方向から仕掛けたりするなど戦術の幅がかなり広がりそうだ
——AMPが非常に強力な印象ですが、出現率やチーム戦術とのバランスについて教えてください。
JJ:AMPは、新しい形のパワーアップ手段として導入した要素です。ゲーム開始時にはいくつかが配置されており、ビンがリセットされた後にはより頻繁に出現するようになります。
リセット前は、チームのひとり、多くてもふたりが恩恵を受けられる程度ですが、リセット後は特定のAMPを狙いやすくなり、戦術的な選択肢も広がります。
今までにもレジェンドや武器のアップグレードで強くなる要素はありましたが、AMPはそれとはまた異なる新しいパワーアップの道として設計されています。プレーヤーの選択と運によって、チーム戦術の幅が広がる要素として機能することを期待しています。

▲レジェンドのパークとはまた違ったアップグレードシステム。これらが実際のゲームにどのような影響を与えるのか非常に楽しみだ
——今後、ホップアップの付け替えや、ダブルタップトリガーなど過去のホップアップの復活予定はありますか?
JJ:現時点で「ダブルタップトリガーの復活」は検討していません。ただし、この新しいホップアップシステムの魅力は、自由度が高い点にあります。新たなホップアップを追加することも、過去のホップアップを復活させることも、技術的には可能です。
また、1マッチ内で最大4つのホップアップを入手できる仕組みもあり、強力なものからユニークなものまで、バトルの中でさまざまな体験ができるようになっています。
一方で、現在のところホップアップの付け替えは検討していません。というのも、ホップアップを手に入れたらそのまま使ってもらい、「それがどう作用し、どんな火力を生むのか」を実際に体感してほしいという意図があります。ひとつのホップアップに集中し、その特徴をしっかり楽しんでもらえればと思います。
——ありがとうございました!
まとめ
新モードの「ワイルドカード」の実装により、よりカジュアルに楽しめるようになった『Apex Legends』。「ワイルドカード」はバトルロイヤルに実装する要素の実験場にもなるようなので、これからさまざまなシステムが導入されていくと思われる。
また、今回強化されたコースティックは競技シーンでも必ず出てくるような強さになっているので、オルターやアッシュと同じくらい競技シーンで使われるようになると感じた。
新要素が盛りだくさんのシーズン26は2025年8月6日(水)より開幕するということで、今から非常に楽しみだ。
■関連リンク
公式サイト:
https://www.ea.com/ja/games/apex-legends/apex-legends
編集:いのかわゆう
【フリーダム山中プロフィール】

2022年より活動を始めた新人ライター。RPGやアクション、シューティングなど、さまざまなジャンルのゲームを愛している。最近では『VALORANT』や『Apex Legends』、『リーグ・オブ・レジェンド』などの競技シーンを視聴しており、暇さえあれば日本の大会だけでなく、海外の大会も見るほど競技シーンが好き。

2022年より活動を始めた新人ライター。RPGやアクション、シューティングなど、さまざまなジャンルのゲームを愛している。最近では『VALORANT』や『Apex Legends』、『リーグ・オブ・レジェンド』などの競技シーンを視聴しており、暇さえあれば日本の大会だけでなく、海外の大会も見るほど競技シーンが好き。
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