「サッカーファン、クラブ、eスポーツをつなげる架け橋になりたい」【『FIFA』解説者&JeSU職員 羽染貴秀インタビュー】

2019.7.18 岡安学
かつて『FIFA』日本一プレイヤーとして世界での戦いを経験し、現在は日本eスポーツ連合(JeSU)の職員として、またJリーグチームが参加するeスポーツ大会「明治安田生命eJ.LEAGUE」の解説者として、eスポーツおよび『FIFA』シリーズを支える羽染貴秀氏。

日本ではまだ知名度が低いものの徐々に存在感を強めているスポーツゲームの分野で、自身も元日本チャンピオンという実力者であり、シーンの中心人物としても活躍している羽染氏に、インタビューをお願いした。

裏方に回った羽染氏にとって、注目度が右肩上がりで高まっているeスポーツをどうみるのか。また、羽染氏自身は今後どのようにeスポーツのさらなる発展に寄与していくのか。

リアルスポーツからゲームへ、そして日本一に


――羽染さんが『FIFA』シリーズで日本一を目指すきっかけはなんだったのでしょうか。

羽染貴秀(以下、羽染):『FIFA』シリーズがサッカーゲームであるということから想像がつくと思いますが、元々はサッカー少年だったんです。中学までは結構本格的に取り組んでいたんですが、その反動か高校ではちょっと遊ぼうと思い、サッカーは辞めてしまったんです。

でも、サッカー自体は大好きだったので、ゲームをするにしてもどうしても自然とサッカーゲームを選んでしまい、そこで『FIFA』にハマっていきました。部活を辞めてまで遊びたかったんですけど、『FIFA』を始めてから部活以上に真剣になってしまい、『FIFA 2012』では大会に出場し、日本で優勝することができました。

大学に進学して就職活動をする頃になって、自分はプロゲーマーとして活動することは考えなかったんですが、eスポーツに関わる仕事をしたいと思い、一般社団法人日本eスポーツ協会(当時。略称はJeSPA)に入りました。

JeSPAの設立は2015年4月とできたばかりの団体で、2016年には「第1回 日本eスポーツ選手権大会」を開催していました。その後、日本に複数あったeスポーツ団体が統合・合流することになり、一般社団法人日本eスポーツ連合(JeSU)が発足。私はそのままJeSPAからJeSUに移ったわけです。

その頃は選手活動を休止していたんですけど、『FIFA』の大会のイベントMCや解説などは継続して行っていました。結構間違われるんですが、これらは個人的な活動で、JeSUの仕事ではないんですよ。


――確かに、羽染さんが解説をするとなると、元日本チャンピオンとJeSUの職員という2つの側面から、どちらも関わったうえでのことだと思いがちですね。

羽染:eスポーツを世に知らしめて、広めていきたいという気持ちは、私個人としてもJeSUとしても変わらないんです。なので、『FIFA』に関しては、直接的にJeSUとは関わり合いがないのですが、活動の理念としては同じ方向を向いている感じです。

eJ.LEAGUEに関しても解説としてお手伝いしていますが、運営や開催については関わっていないですね。あくまでも個人的にサポートしています。

日本の『FIFA』シーンも世界と共通ルールに


――そのeJ.LEAGUEですが、2018年から始まり、2019年からさらにレギュレーションが変わりました。なかなか現状を把握しにくい部分もあり、参加枠やポイントについても複雑な印象があります。

羽染:そうですね。eJ.LEAGUEは、新しい世代のサッカーファンが必要ということで、eスポーツを取り入れたのがきっかけです。

すでに各国のクラブチームでは『FIFA』を使ったeスポーツ大会が開かれており、FIFA──これは国際サッカー連盟の方ですね──ここがリアルなサッカーリーグの名を冠した大会を各国で開催することになりました。前回はその大会優勝者が世界大会(eワールドカップにつながる最終プレイオフ大会)へ出場できるような形だったんですが、2019年からポイント制に変わり、ポイント上位者から世界大会(同上)への出場権がもらえるようになっています。


――なるほど。だから先日行われた「FIFA 19 グローバルシリーズ eJ.LEAGUE SAMSUNG SSD CUP」で優勝したミノ選手が、ポイント的に世界大会には出場できないかもしれないと発言していたわけですね。

羽染:はい。また、選手の出場については「推薦枠」と「一般枠」のふたつがあり、各クラブチームから最大2名まで参加することができます。推薦枠はすでにクラブチームと契約した選手で、最初から特定のクラブチームの代表として出場します。一般枠は指定したチームの代表になるべく、予選を勝ち抜いた選手が選ばれます。

――一般枠は出場者がどのクラブチームの一員になるか決められるわけですね。そうすると大会ごとに選手が変わってしまうかもしれませんし、クラブチームと選手のつながりというか、印象が薄くなってしまわないでしょうか。

羽染:すべてのクラブチームではないですが、予選を突破した選手が大会のあとにチームに所属しているパターンもあります。先ほど出てきたミノ選手は名古屋グランパスのeスポーツアンバサダーになっていて、クラブチームに所属しています。

他にも、湘南ベルマーレはeスポーツに力を入れており、Jリーグの練習にeJ.LEAGUEの選手が随行しています。まさにクラブの一員として活動しているんです。また、横浜Fマリノスのナスリ選手はJリーグの試合前に『FIFA』の体験会を行っており、リアルスポーツとeスポーツの架け橋になっています。


所属クラブを使って戦える仕組みも


――eJ.LEAGUEは「FIFA 19 グローバルシリーズ」と銘打たれているように、「FIFA」のレギュレーションで行われるわけですよね。

羽染:そうです。試合で使えるクラブは「FIFA Ultimate Team(FUT)」という、いわゆるドリームチームで試合をします。対戦するとき、どちらのチームも選手の選択に規制はないので、どのチームも選手の能力を重視して同じようなメンバーとなってしまいますね。

――eJ.LEAGUEではチームの看板を背負って戦っているのに、そのクラブを使わないというのはちょっと残念な気もしますね。

羽染:確かに、選手は浦和レッズのユニフォームを着て試合に臨んでいるのに、使用するのが世界の有名選手で構成されたドリームチームでは、サポーターは気持ちが入りにくいという点はありますね。まだ、いろいろ手探りなところもありますので、そこは所属クラブと使用するクラブを同じにするようになるかもしれません。


――解説や運営などに携わっている時、もしくはJeSUでの活動をしている時、以前選手であったことや日本一となって世界大会に出場したことのいい影響はありますか?

羽染:選手を経験したというのは大きな利点だと思っています。eスポーツ選手の表に出ない感情、嬉しさや悔しさなどはよくわかっています。そういう点をもっと見せられればと思っています。勝った時のカッコよさ、負けた時の悔しさなど、表も裏も経験したので、eスポーツにはストーリーがあることを知ってほしいですね。

ゲーム自体はだいぶ社会的にも理解されてきましたが、それでもまだ理解されにくい部分もあるので、「ゲームって面白くない?」「eスポーツってやつをちょっと観に行こうよ」って感じで、もっと手軽に楽しめるようにしたいですね。eスポーツが盛り上がるのであれば、何でもしますよ。

――最後に、今後の抱負についてお聞かせください。

羽染:せっかくサッカーやゲームに携わることができたので、もっといろいろな人を巻き込んでいきたいですね。サッカーファンとクラブチームとサッカーゲームをつなげていければと思っています。

もちろん、サッカーゲームだけに限らずJeSUとしてeスポーツ全体の発展のために多くの課題を解消し、選手が活躍していくフィールドを広げていきたいと思っています。


■リンク
FIFA 2019
https://www.ea.com/ja-jp/games/fifa/fifa-19
FIFAグローバルシリーズ eJ.LEAGUE SUMSUNG SSD CUP
https://www.jleague.jp/ejleague/fifa/2019/
一般社団法人日本eスポーツ連合(JeSU)
https://jesu.or.jp/

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