DetonatioN FocusMeは『LoL』の歴史に新たな一歩を刻むか? 「MSI 2021」を読み解く

2021.5.4 よよよ
今年もこの時期がやってきた。そう、『リーグ・オブ・レジェンド』(LoL)で年に2回開催されている世界大会のうちのひとつ、「Mid Season Invitational」(MSI)開幕の時期だ。

2020年は新型コロナウイルス(COVID-19)の影響により未開催だったMSI。制限された行動様式の鬱憤を晴らすかのように、各地域から2021 Spring Seasonの王者たちが出揃い、2021年5月6日(木)からの準備は整った。

本記事は「MSI 2021」の開幕に先駆けて、今大会の変更点と、日本代表のDetonatioN FocusMe(DFM)を中心とした戦況を予想する。



MSI 2021 参戦チーム一覧
グループA
Royal Never Give Up (LPL)
GAM Esports (VCS)
Unicorns Of Love (LCL)
Pentanet.GG (LCO)
※GAM EsportsはCOVID-19の渡航制限により不参加

グループB
MAD Lions (LEC)
PSG Talon (PCS)
İstanbul Wildcats (TCL)
paiN Gaming (CBLOL)

グループC
DWG KIA (LCK)
Cloud9 (LCS)
Infinity Esports (LLA)
DetonatioN FocusMe (LJL)


「MSI」の大きな変更点


今大会はこれまでの「MSI」と大きく異なる点がある。それは、予選にあたるプレイインステージとシード枠がない点だ。

ステージ1(グループステージ)
  • グループAはクアドラプルラウンドロビン方式(4回総当たり)。
  • グループBとグループCはダブルラウンドロビン方式(2回総当たり)。
  • Bo1方式で実施し、グループ内の上位2チームがステージ2へ進出。
ステージ2(ランブルステージ)
  • 1グループ6チームによるダブルラウンドロビン方式。
  • Bo1方式で実施し、上位4チームがステージ3へ進出。
ステージ3(ノックアウトステージ)
  • 4チームによるトーナメント方式。
  • Bo5方式で実施し、1チームが優勝。

全チームがグループステージから始まるため、昨年の世界大会「World Championship」(Worlds)優勝チームのDAMWON KIA(当時はDAMWON Gaming)と日本代表のDFMがいきなりぶつかることとなった。強豪チームに大きな問題はないだろうが、プレイインステージの通過経験がないLJLとDFMにとっても大きなチャンスだ。

そして、プレイインステージに代わって、グループステージの次にランブルステージが設けられた。これは従来のグループステージに近い、6チームによる総当たりリーグ戦だ。ここで勝利した4チームがノックアウトステージに進み、春時点での世界最強チームの称号を手にする。

また、4チーム中2チームがBo1方式(1戦先取)で通過できる点も、DFMにとっては次のステージへ歩みを進める可能性が増す要素だ。

Bo1方式はバン&ピックの意外性で大きく勝負に出られる方式だ。複数回同じ相手と試合を行うBo3やBo5に比べて、瞬発力が問われる。幸いにも「LJL」では春夏ともに、レギュラーシーズンはBo1にて実施している。そのため、試合方式について懸念点はない。

しかし、意外性があるピックは春の「LJL」では多くはなかった。国際大会にて事前に行われるスクリムでメタに変化が起きやすいため、大会メタに着目するのもおすすめだ。

以下のURLは有志が配信サイト「Twitch」にて行っている、プロ選手のソロキュー観戦チャンネルだ。国際大会直前は非常に面白い試合が目白押しとなっている。先述した大会メタの兆しを感じられるため、気が向いたらチェックしてみよう。

TrackingThePros
https://www.trackingthepros.com/

プレイヤーのみなさんも大会と同じパッチ11.9にてゲームができるため、大会期間中のサモナーズリフトには用心して出かけたい。


大会展望:DFMが上位に食い込むチャンスは?


ここからは、「LJL」代表のDFMが所属するグループCに目を向けよう。

相手はLCK代表で2020年Worlds覇者のDK、LCS代表で2018年WorldsでDFMが惜敗したCloud 9(C9)、LLA代表で現地FINALのBo5を3連勝で逆転勝ちしたInfinity Esports(INF)と、一筋縄ではいかないチームばかりだ。

間違いなく世界最強のDK、ネームバリューも実力も申し分ないC9に注目しがちだが、このグループCではINFに注目したい。

DFMが警戒すべきINFの選手とは?


INFのチームロースターは以下の通り。
Top: Buggax
Jungle: SolidSnake
Mid: cody
Bot: WhiteLotus
Sup: Ackerman

『LoL』の国際大会を観戦してきたみなさんなら、見覚えのある名前がないだろうか。TopのBuggax選手、その人だ。彼はかつてIsurus Gaming(Isurus)に所属しており、MidのSeiya選手とともにDFMの前に立ちはだかっていた。

思い返せば、2019年のWorldsプレイインステージ。Splyce(LEC)、Isurus(LLA)、DFM(LJL)の三つ巴で本選への出場権が争われていた。Evi選手がソロキルをし、Splyceの本陣前でケネンのウルトをナーのウルトでディスエンゲージしたあの試合を覚えている方も多いだろう。

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DFMはLJL代表として初めて、メジャーリージョンのLECから1勝をもぎ取ったが、成績は1勝3敗とプレイインステージのRound1で敗退。雌雄を決したのがIsurusへの2敗だったのだ。

そのIsurusのTopとして、両試合でBuggax選手は目立たずとも安定したパフォーマンスを発揮していた。当時を少し振り返ってみよう。

第1試合 DFM(Blue)vs Isurus(Red)

Evi選手のサムズアップから始まった1戦目は、試合中盤でCeros選手の絶妙なステップ、「セロステップ」によるアウトプレイがあった。当時の「The Penta」という好プレイ集にも選出された、これぞプロという動きだ。

しかし、試合はチーム構成での差があり敗北となった。

DFMは前線を張れるタンクを持たず、アグロピンポンで柔らかいチャンピオンたちがダメージをやり過ごすという難しい構成だった。エンゲージとディスエンゲージはカルマとラカンによって可能だったが、Isurusのナー、グラガス、レオナによる強力なエンゲージを受け流し切れなかったのだ。

終盤の集団戦でも、的確にキャリーへCCをかけようとするIsurusのプレッシャーは大きかった。ケイルやザヤのウルトで回避できるが、敵もプロである以上捕まるときはやってくる。ダメージを互いに受ける中で、Buggax選手がタンクビルドのナーで確実にダメージを吸収し、Isurusのキャリーに触らせないよう立ちはだかっていた。

終盤の集団戦でIsurusを崩しきれなかったDFMは、タンクの重量感に押し込まれるよう黒星がついたのだ。

第2試合 Isurus(Blue)vs DFM(Red)
2戦目ではEvi選手がナーをピックし、Buggax選手はガングプランクをピック。それ以外は、互いにエンゲージツールを備えた集団戦に重きを置いた構成だった。

Buggax選手はガングプランクのグローバルウルトで要所の影響力を発揮し、Seiya選手がシンドラのCCを的確に撒いたのがゲーム全体を通した印象だ。

試合時間は63分を超えて3度のエルダードラゴンを取り合う激戦となった。

DFMは試合を詰め切れない展開が続く。3度目のエルダードラゴンが湧いたタイミングで、DFMがTopのチェイスによる1キル獲得とINFがエルダーの獲得。この釣り合わないトレードの後に敗北を喫した。

あのとき2度の敗北を喫したBuggax選手とは、DFMにとって今回の「MSI 2021」が2019年以来の対戦機会だ。当時はコーチとしてDFMを率いたKazu選手も、選手として舞い戻りチームを支えている。

ステージ1からは上位2チームが進出するため、前評判はDKとC9が優位だ。これを覆すためにはまず、INF相手の戦いにDFMが勝利する必要がある。

ステージ2へ駒を進めるためにも、国際戦の雰囲気や試合勘を取り戻す意味でも、初戦のINF戦はDFMの大会全体を占う重要な試合となる。

勝利の鍵はTopレーン側のオブジェクト


大会を通してレーン戦に注目するならば、Topレーンを抑えたい。試合を決定づける華やかな活躍は少ないロールだが、チームの前線を支える重要な役割を担う。

すでに、Evi選手とC9のFudge選手やKhan選手は、場外でも激しいレーニングフェイズ中だ。FudgeサンドとEviすしのツイートからも、激しいレーニングが手に取るようにわかる。


また、DKのKhan選手は最も警戒すべき相手がEvi選手だと明言している。KRサーバーのソロキューでも対戦経験があり、互いのプレイングを理解する同士だ。

「이어 그는 가장 경계되는 선수로 '에비' 무라세 슌스케를 꼽았다. 그는 이유에 대해 "처음 만나기도 하고 솔랭에서도 만날 수 있기 때문에 더 경계된다"고 전했다.」
(訳)「Khan選手は最も警戒する選手に”Evi” 村瀬俊介(Evi選手の本名)を挙げた。理由については、KRチャレンジャー帯のソロキューでよく会うからだと言う」

引用:'칸' 김동하 "FPX 못 오는 건 호재…'에비' 선수가 가장 경계된다"(“Khan”キムドンハ「FPXがいないのは都合がいい…最も警戒する選手は”Evi”」)
http://www.xportsnews.com/?ac=article_view&entry_id=1416708

ただ、C9のFudge選手はパフォーマンスにむらがある。Steal選手とEvi選手のラインでガンクが決まれば、Top側のジャングル管理も主導権を握れそうだ。

Khan選手は安定感が抜群。ソロキルや1対多の戦闘で成果を上げる劇場型のNuguri選手(FPX)とはタイプが異なる。それでも、世界最高のTopに数えられる内のひとりだ。大きく崩して試合を動かすプランは立てにくい。そして、DKはLCK Springでのリフトヘラルド獲得率がLCK内で一番高い。

ゆえに、C9との試合はTop側から崩し、DKとの試合はTop側から崩されないようにしたい。

キャリーが育つ15分を目安に、C9戦ではTopの有利からタワープレートをどれだけ取れるか。DK戦はタワープレートをどれだけ守れるか。Topでの攻めと守りが、この2戦で明暗を分けるだろう。

今大会のパッチ11.9やこれまでの傾向から予想すると、Topレーンはタンクのピックが主流となるだろう。アーゴット、サイオン、ナー、レネクトンなどがピックの中心に据えられ、エンゲージをする集団戦構成が多くを占めそうだ。

Evi選手はどのチャンプも得意なピックのため、見せ場は必ずやって来る。だが、世界のTopレーナーにとってこれらのチャンプは義務教育と言っても過言ではない。対面でのプレイングは熟知されているため、マクロで差をつけたい。

息を潜めているのは、世界の上位レートで見られるTopリー・シンだ。ゴアドリンカーでサステインが高まるビルドは「MSI」で活躍できるだろうか。Bo1ならではの奇襲的なピックに期待したい。

セトについてもADの反映率が上昇し、ダメージの増加が見込まれる。これまでの感覚で戦うと予想しないダメージで思いがけないシーンがうまれそうだ。

この6試合を通して、「LJL」代表であるDFM全員に注目するのはもちろんだが、中でも放送に多く映されないTopの戦いに注目してほしい。どんなマッチアップでもCSに差がつかず安定したレーニングを行う名手たちの戦いが試合を動かす鍵になるだろう。DFMがINFから2勝を挙げれば、グループC突破は見えてくる。

現在、DFMのオブジェクトへの目的意識は非常に高い。2019年のように苦渋を舐める展開を、今度はDFMが味わわせることに期待しよう。


「MSI 2021」の日本での放送は連日22時〜2時まで


開催場所のアイスランドと日本の時差は9時間。日本時間ではいずれも22時からの放送となる。

観戦は公式サイトの「LoLEsports」から、ライアットアカウントでログインして視聴しよう。観戦報酬のDropsがゲットできる。アーカイブ放送のVODでは報酬が得られないので注意が必要だ。限定のアイコンやエモートなど、リアルタイムの観戦でしか手に入らない。



LoL Esport:https://lolesports.com/
MSI 2021、アイスランド レイキャビクで開催決定:https://lolesports.com/article/msi-2021%E3%80%81%E3%82%A2%E3%82%A4%E3%82%B9%E3%83%A9%E3%83%B3%E3%83%89-%E3%83%AC%E3%82%A4%E3%82%AD%E3%83%A3%E3%83%93%E3%82%AF%E3%81%A7%E9%96%8B%E5%82%AC%E6%B1%BA%E5%AE%9A/blt3eeb31a597dd4db2

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