【特集】eスポーツの闇
eスポーツ界にはびこる不正行為、「チート」の現実とは?
eスポーツは、ひとつのゲームをとことんまで突き詰めて練習し、プレイヤーの頭脳とテクニック、チームの戦略などを巧みに生かしてライバルと戦う「競技」だ。その中で生まれるスーパープレイやドラマが、観る者の気持ちを熱狂させて世界中で人気となり、巨額の賞金やスポンサーがつくまでに成長している。
しかし、ビジネスとして大きな予算が動くようになればなるほど、死角を突くような悪巧みをする者が出てくるもの。実力に見合わない強さを手にする方法や、わずかに手が届かない高みに安易な方法で上るための悪魔のささやきが、eスポーツ業界には確実に存在する。
今回はそんな「チート」(Cheat)の存在について、あらためてご紹介したい。
まず、大前提を宣言しておきたい。
「チート」は「犯罪」である。
ゲームだからとか、どうせ遊びだからといった甘い考えは通用しない。それがプロであろうがアマチュアであろうが、ゲーム開発者が目指そうとした世界を壊し、一緒にマッチングして楽しもうとしている誰かを傷つけている。開発元に対してもプレイヤーに対しても、大きな損害を与えていることは間違いないのだ。
実際にチートに手を伸ばしたことで身を滅ぼした例もある。
『フォートナイト』では、チートを用いた海外の小学生に対して、開発元のエピックゲームズから訴訟が起こされている。日本ではあまり大きな騒ぎになってはいないものの、チートツール(チートするためのソフトやハード)を販売したり、プロゲーマーの中でもチート疑惑を持たれたケースも聞かれる。使用していることが確定すれば、それまでどれだけ努力を積み重ねていても、一瞬でキャリアはフイになる。
そして、チートは「麻薬」のようなものとも言われる。一度チートの味を知ってしまった人は、努力によってテクニックや経験を積み重ねることが難しくなる。「チート」を使用してのランクや名誉は何の意味も持たないばかりか、eスポーツで生きていこうとする人にとって何一ついいことはない。
なので、本企画を進める前に伝えておきたい。
もしいま、何らかのチートを出来心であっても使用している人がいたら、すぐに使うのをやめてほしい。
大多数のプレイヤーにとっては、チートは縁遠い話だろう。そこで、具体的にチートが使われている例を、リリース直後から膨大なチーター(チートツールなどを使用しているプレイヤー)が存在すると言われている『エーペックスレジェンズ』(Apex Legends)の例でご紹介したい。
『エーペックスレジェンズ』は、生き残りをかけたバトルロイヤルゲームの進化形として、キャラクターの個性的なスキルや武器を回収する運の要素、3人1組というシステムなど、いま日本で最も人気のある基本無料のFPSだ。Nintendo Switch版もリリースされ(こちらは有料)、勢いはとどまるところを知らない。
『エーペックスレジェンズ』の面白さ自体を否定することはまったくない。ただし、人気のタイトルであればあるほど、チーターやチートツール開発者にとっては格好の餌食となってしまうのも事実だ。
開発元も、チート行為に関わった人のアカウントを停止もしくは削除することを公式サイトでうたっている。ただし、個人の良心に任せる対策であり、残念ながら実効性はそれほど強くはない。
開発元のエレクトロニック・アーツとしても、根本的なチート対策が施し切れていないのが現状だ。
たとえば、Steamで配信されている『Counter Strike :Global Offensive』(CS:GO)はアンチチートツールが用意されているし、ライアットゲームズがリリースしたタクティカルシューター『VALORANT』は、開発段階からeスポーツ競技としてチートを断固として許さないことを宣言しており、アンチチートツールが常駐している。しかし、『エーペックスレジェンズ』にはそういった対策がない。
チートが影響するレベルも様々だ。OS上で動作するゲームプログラム自体を書き換えるものから、OS自体に働きかけるもの、さらにOSよりも下層レベル(UEFIなど)で動作するものまであり、不用意にインストールしてしまうだけでPCに甚大な影響をもたらす可能性もなくはない。
どのようなゲームにもクラッキングやバグを利用した裏技は少なからず存在するため、いたちごっこになってしまうことは否めない。しかし、プレイヤーの良心に委ねるようなやり方ではなく、何らかのツールなどを用いた反強制的な対処は絶対に必要だ。
ことeスポーツについては、賞金のありなしにつながる場合もある。そのような勝利はすべて「不正」であり、許されることではない。
では、具体的にどんなチートが行われているのかを、FPSタイトルを例としてご紹介しよう。多くのFPSゲームでも似たようなチートがあるので、「こいつ、チーターか?」という怪しい動きのプレイヤーを探す参考にしてほしい。
名前のとおり、壁をハッキングするチート。壁の向こう側が透けて見えて、武器による攻撃も届いてしまうというものだ。大会の実況解説で見えている「神の目」のような映像をイメージすればいい。
FPSの場合、障害物に隠れることが確実に生存するための方法だ。それが、敵の居場所がわかり、一方的に銃撃できてしまったら、勝ち目などあるわけがない。
「エイム」とは照準を相手に合わせる操作のことだが、それが「オート」で行われるというチート。シーズン7までは、照準にかかわらず発射した弾が相手にヒットする「ホーミング」も多かったが、シーズン8からは照準自体を100%合わせてくれるものが主流となっているようだ。
一瞬でも姿が見えれば、あとは弾を撃つだけでいい。どんなプロゲーマーのエイムよりも正確無比な射撃を実現できる。ホーミングと比べるとより自然に見えるようになった分だけたちが悪いチートだ。
シップからの降下時、着陸後の徒歩移動などを、ゲームの設定以上の速度で行うこと。移動速度は攻撃にも防御にも活用できるため、万能なチートのひとつだ。
当然のことながら、降下や移動が早ければ先にアイテムを回収して優位に立てるし、戦闘中なら相手の攻撃を食らわずに逃げられる。ゲームバランスを大きく崩す理由になってしまっている。
マシンガンなどの連射ではなく、単発撃ちのR-301カービンやフラットラインなどで行う連射のこと。単発でしか撃たれないはずの武器で連射されれば反応できないのも無理はないし、取得するアイテムや地形の有利不利を覆してしまう。
『エーペックスレジェンズ』はクロスプラットフォームを実現しており、ゲームパッドとキーボード&マウスのどちらも利用できるが、ゲームパッドを使用した時のみ「エイムアシスト」が有効になる。そのアシスト機能をキーボード&マウスでも利用可能にするためのコンバーターが存在する。
マウスによるエイムは移動速度も非常に早くコントローラブルだが、そこにエイムアシストが入ることで凶悪なチートとなる。コンバーターにはこの「エイムアシスト追加」のほか、武器による照準のブレを自動的に補正する「アンチリコイル」機能を持ったものなどもある。
プレイヤーレベル10からしか入れないランクマッチに、レベル1から入れるというチートだ。
実力がなければ勝負にはならないが、実力者の新規アカウントであれば話は別。初心者かと思ったらとてつもなく強いといったケースもある。運営元にバレそうなものだが、そもそもこの手のチーターはアカウントBANをくらって何度も新規アカウントを作っているような輩のため、手っ取り早く実力者とマッチングさえできればそれでいいのだ。
オンライン時代ならではのチートだが、強いプレイヤーに自分のアカウントでプレイしてもらい、意図的に高いランクにしてもらったり、特定の試合に勝つために交代する「プレイ代行」も当然チートと呼べるもの。
実際にプレイするプレイヤーは実力が伴わないため、なんの意味もないが、ゲーム内アイテムや名誉、見栄といった部分の満足感のために代行してもらうというケースも後を絶たない。
このケースは実力のあるプレイヤーが自ら請け負わなければ成立しないが、かなり横行していると聞く。つまり、せっかく実力を持っているのにその力を別の方向に(主に金銭面で)使ってしまっているのだ。
目先の利益と自分のキャリア、どちらかが大切かをしっかり考えるべきだ。
スマートフォンゲームでは専門売買サイトまであるほどで、一見問題がないように思えてしまうが、ある程度のランクや実績を積んだアカウントをお金で売買することは、どのようなゲームにおいても不正行為だ。
こちらも依頼主が欲しているのはゲーム自体をプレイする楽しさや強さの追求ではなく、単なるアイコンとしてのランクや実績のみ。そのようなプレイヤーのために、実力者がその手を汚す必要などない。
こういったチートは、「チートツール」と呼ばれるプログラムやハードウェアを導入することで簡単に実現できるという。GoogleやYouTubeで検索すると、ゲームごとのチートツールの紹介動画まで公開されているものもあり、購入するためのECサイトやTwitter、Discordの情報などがわんさか出てくる。
料金は無料のものから有料のものまで様々で、開発者も個人からチームまで幅広い(助長はしたくないので、ここでは紹介はしない)。
しかし、誰でも手に入るマーケットにチートツールが並んでいるからといって、信用していいわけではない。チートツールの中には、PCに悪影響を及ぼすウイルスが混入していたり、データを不正にのぞき見たり改竄するための「マルウェア」が含まれている場合もある。当然、誰もこのツールが「安全」である保証はしてくれない。
そもそもチートツール自体が違法なものであり、購入したりインストールした時点でリスクを負っていることも忘れてはいけない。スマホの無料アプリとは訳が違う。
過去には、チートツールの開発者から名指しでチートを使用していることを公表されたプロゲーマーもいた。ゲーマーからすれば裏切られたかたちに見えるが、開発者からすれば有名選手が使用しているということはプロモーションになるうえ、購入している時点でゲーマー側も言い訳できない。
このように、プレイヤーのテクニックにかかわらず勝利してしまう「チーター」だが、前向きな対策として、プレイ上の対抗手段はないのか。
本誌にて『エーペックスレジェンズ』の攻略連載を執筆している九条選手によれば、戦闘に関しては「ウォールハックとオートエイムで勝負されるとどうしようもありませんが、ドームの中でインファイトするとか、アークスター(投擲武器)を使って相手の体力を削るという方法ならなくはないです。でも、基本的にチーターに本気で来られたらまず勝ち目はありませんね……」とのこと。
また、実力があるプレイヤーがチーターを使っているケースと、そもそも実力がないチーターはすぐに見分けがつく。いくらチートツールを使ったとしても、立ち回りの動きはまったく違うからだ。
結局のところ、対抗手段としては開発元に対して不正を働いているプレイヤーを報告し、アカウントをバン(永久削除)してもらうしかない。
『エーペックスレジェンズ』の通報方法(https://help.ea.com/ja-jp/help/faq/report-players-for-cheating-abuse-and-harassment/)
スポーツの世界では、筋肉増強剤はもちろんのこと、以前はおとがめがなかった頭痛薬や風邪薬などに関しても、摂取成分が厳密にチェックされ、一定の成分が検出されれば「薬物使用」による不正とみなされる。名のあるオリンピック選手がたった1回の「不正」で長年競技に出場できなくなったり、チームをやめさせられたり、スポンサーを失うこともある。
eスポーツにおけるチートも、それと似た状況になりつつある。大きく異なるのは、スポーツにおける薬物と比べて、オンラインゲームのチートは誰もが簡単に実行可能ということ、費用がかからないこと、そしてバレにくいということだ。
さすがに大会の中でチートを実行する人は少ないと思うが、八百長や替え玉といったケースはないわけではない。オンライン大会が増え、自宅などで自分の機材で戦う環境になったことで、運営の目が届かなくなっていることも確かだ。
参考記事:なぜ“事件”が起きるのか? 「eスポーツの闇」を考える
https://esports-world.jp/column/6944
eスポーツが子どもたちにとって夢を持てる世界としてさらに成長するためには、こういったチートに対する厳格な対処がもっと重視されてしかるべきだろう。
そして、最も大事なことは、チートツール業者やチートに協力するプレイヤーの旨味をなくすこと。ツールを購入したり、アカウント売買を行う人がいなくなれば、チート提供者もいなくなるはずだ。
最後にあらためて言おう。
「チート」は「犯罪」である。
甘い蜜の誘惑に負けることのないよう、チート撲滅に向けてひとりひとりのプレイヤーがしっかり自らを律していくことが大切だ。
しかし、ビジネスとして大きな予算が動くようになればなるほど、死角を突くような悪巧みをする者が出てくるもの。実力に見合わない強さを手にする方法や、わずかに手が届かない高みに安易な方法で上るための悪魔のささやきが、eスポーツ業界には確実に存在する。
今回はそんな「チート」(Cheat)の存在について、あらためてご紹介したい。
「チート」は犯罪
まず、大前提を宣言しておきたい。
「チート」は「犯罪」である。
ゲームだからとか、どうせ遊びだからといった甘い考えは通用しない。それがプロであろうがアマチュアであろうが、ゲーム開発者が目指そうとした世界を壊し、一緒にマッチングして楽しもうとしている誰かを傷つけている。開発元に対してもプレイヤーに対しても、大きな損害を与えていることは間違いないのだ。
実際にチートに手を伸ばしたことで身を滅ぼした例もある。
『フォートナイト』では、チートを用いた海外の小学生に対して、開発元のエピックゲームズから訴訟が起こされている。日本ではあまり大きな騒ぎになってはいないものの、チートツール(チートするためのソフトやハード)を販売したり、プロゲーマーの中でもチート疑惑を持たれたケースも聞かれる。使用していることが確定すれば、それまでどれだけ努力を積み重ねていても、一瞬でキャリアはフイになる。
そして、チートは「麻薬」のようなものとも言われる。一度チートの味を知ってしまった人は、努力によってテクニックや経験を積み重ねることが難しくなる。「チート」を使用してのランクや名誉は何の意味も持たないばかりか、eスポーツで生きていこうとする人にとって何一ついいことはない。
なので、本企画を進める前に伝えておきたい。
もしいま、何らかのチートを出来心であっても使用している人がいたら、すぐに使うのをやめてほしい。
リリース当初からチートがはびこる『エーペックスレジェンズ』の場合
大多数のプレイヤーにとっては、チートは縁遠い話だろう。そこで、具体的にチートが使われている例を、リリース直後から膨大なチーター(チートツールなどを使用しているプレイヤー)が存在すると言われている『エーペックスレジェンズ』(Apex Legends)の例でご紹介したい。
『エーペックスレジェンズ』は、生き残りをかけたバトルロイヤルゲームの進化形として、キャラクターの個性的なスキルや武器を回収する運の要素、3人1組というシステムなど、いま日本で最も人気のある基本無料のFPSだ。Nintendo Switch版もリリースされ(こちらは有料)、勢いはとどまるところを知らない。
『エーペックスレジェンズ』の面白さ自体を否定することはまったくない。ただし、人気のタイトルであればあるほど、チーターやチートツール開発者にとっては格好の餌食となってしまうのも事実だ。
開発元も、チート行為に関わった人のアカウントを停止もしくは削除することを公式サイトでうたっている。ただし、個人の良心に任せる対策であり、残念ながら実効性はそれほど強くはない。
開発元のエレクトロニック・アーツとしても、根本的なチート対策が施し切れていないのが現状だ。
たとえば、Steamで配信されている『Counter Strike :Global Offensive』(CS:GO)はアンチチートツールが用意されているし、ライアットゲームズがリリースしたタクティカルシューター『VALORANT』は、開発段階からeスポーツ競技としてチートを断固として許さないことを宣言しており、アンチチートツールが常駐している。しかし、『エーペックスレジェンズ』にはそういった対策がない。
チートが影響するレベルも様々だ。OS上で動作するゲームプログラム自体を書き換えるものから、OS自体に働きかけるもの、さらにOSよりも下層レベル(UEFIなど)で動作するものまであり、不用意にインストールしてしまうだけでPCに甚大な影響をもたらす可能性もなくはない。
どのようなゲームにもクラッキングやバグを利用した裏技は少なからず存在するため、いたちごっこになってしまうことは否めない。しかし、プレイヤーの良心に委ねるようなやり方ではなく、何らかのツールなどを用いた反強制的な対処は絶対に必要だ。
ことeスポーツについては、賞金のありなしにつながる場合もある。そのような勝利はすべて「不正」であり、許されることではない。
具体的なチート事例
では、具体的にどんなチートが行われているのかを、FPSタイトルを例としてご紹介しよう。多くのFPSゲームでも似たようなチートがあるので、「こいつ、チーターか?」という怪しい動きのプレイヤーを探す参考にしてほしい。
ウォールハック
名前のとおり、壁をハッキングするチート。壁の向こう側が透けて見えて、武器による攻撃も届いてしまうというものだ。大会の実況解説で見えている「神の目」のような映像をイメージすればいい。
FPSの場合、障害物に隠れることが確実に生存するための方法だ。それが、敵の居場所がわかり、一方的に銃撃できてしまったら、勝ち目などあるわけがない。
オートエイム
「エイム」とは照準を相手に合わせる操作のことだが、それが「オート」で行われるというチート。シーズン7までは、照準にかかわらず発射した弾が相手にヒットする「ホーミング」も多かったが、シーズン8からは照準自体を100%合わせてくれるものが主流となっているようだ。
一瞬でも姿が見えれば、あとは弾を撃つだけでいい。どんなプロゲーマーのエイムよりも正確無比な射撃を実現できる。ホーミングと比べるとより自然に見えるようになった分だけたちが悪いチートだ。
加速オート
シップからの降下時、着陸後の徒歩移動などを、ゲームの設定以上の速度で行うこと。移動速度は攻撃にも防御にも活用できるため、万能なチートのひとつだ。
当然のことながら、降下や移動が早ければ先にアイテムを回収して優位に立てるし、戦闘中なら相手の攻撃を食らわずに逃げられる。ゲームバランスを大きく崩す理由になってしまっている。
オート連射
マシンガンなどの連射ではなく、単発撃ちのR-301カービンやフラットラインなどで行う連射のこと。単発でしか撃たれないはずの武器で連射されれば反応できないのも無理はないし、取得するアイテムや地形の有利不利を覆してしまう。
コンバーターによるエイムアシスト+キーボード&マウス
『エーペックスレジェンズ』はクロスプラットフォームを実現しており、ゲームパッドとキーボード&マウスのどちらも利用できるが、ゲームパッドを使用した時のみ「エイムアシスト」が有効になる。そのアシスト機能をキーボード&マウスでも利用可能にするためのコンバーターが存在する。
マウスによるエイムは移動速度も非常に早くコントローラブルだが、そこにエイムアシストが入ることで凶悪なチートとなる。コンバーターにはこの「エイムアシスト追加」のほか、武器による照準のブレを自動的に補正する「アンチリコイル」機能を持ったものなどもある。
レベルチート
プレイヤーレベル10からしか入れないランクマッチに、レベル1から入れるというチートだ。
実力がなければ勝負にはならないが、実力者の新規アカウントであれば話は別。初心者かと思ったらとてつもなく強いといったケースもある。運営元にバレそうなものだが、そもそもこの手のチーターはアカウントBANをくらって何度も新規アカウントを作っているような輩のため、手っ取り早く実力者とマッチングさえできればそれでいいのだ。
プレイ代行・ランク上げ
オンライン時代ならではのチートだが、強いプレイヤーに自分のアカウントでプレイしてもらい、意図的に高いランクにしてもらったり、特定の試合に勝つために交代する「プレイ代行」も当然チートと呼べるもの。
実際にプレイするプレイヤーは実力が伴わないため、なんの意味もないが、ゲーム内アイテムや名誉、見栄といった部分の満足感のために代行してもらうというケースも後を絶たない。
このケースは実力のあるプレイヤーが自ら請け負わなければ成立しないが、かなり横行していると聞く。つまり、せっかく実力を持っているのにその力を別の方向に(主に金銭面で)使ってしまっているのだ。
目先の利益と自分のキャリア、どちらかが大切かをしっかり考えるべきだ。
アカウント売買
スマートフォンゲームでは専門売買サイトまであるほどで、一見問題がないように思えてしまうが、ある程度のランクや実績を積んだアカウントをお金で売買することは、どのようなゲームにおいても不正行為だ。
こちらも依頼主が欲しているのはゲーム自体をプレイする楽しさや強さの追求ではなく、単なるアイコンとしてのランクや実績のみ。そのようなプレイヤーのために、実力者がその手を汚す必要などない。
「チートツール」の入手方法は?
こういったチートは、「チートツール」と呼ばれるプログラムやハードウェアを導入することで簡単に実現できるという。GoogleやYouTubeで検索すると、ゲームごとのチートツールの紹介動画まで公開されているものもあり、購入するためのECサイトやTwitter、Discordの情報などがわんさか出てくる。
料金は無料のものから有料のものまで様々で、開発者も個人からチームまで幅広い(助長はしたくないので、ここでは紹介はしない)。
しかし、誰でも手に入るマーケットにチートツールが並んでいるからといって、信用していいわけではない。チートツールの中には、PCに悪影響を及ぼすウイルスが混入していたり、データを不正にのぞき見たり改竄するための「マルウェア」が含まれている場合もある。当然、誰もこのツールが「安全」である保証はしてくれない。
そもそもチートツール自体が違法なものであり、購入したりインストールした時点でリスクを負っていることも忘れてはいけない。スマホの無料アプリとは訳が違う。
過去には、チートツールの開発者から名指しでチートを使用していることを公表されたプロゲーマーもいた。ゲーマーからすれば裏切られたかたちに見えるが、開発者からすれば有名選手が使用しているということはプロモーションになるうえ、購入している時点でゲーマー側も言い訳できない。
「チーター」への対抗手段は?
このように、プレイヤーのテクニックにかかわらず勝利してしまう「チーター」だが、前向きな対策として、プレイ上の対抗手段はないのか。
本誌にて『エーペックスレジェンズ』の攻略連載を執筆している九条選手によれば、戦闘に関しては「ウォールハックとオートエイムで勝負されるとどうしようもありませんが、ドームの中でインファイトするとか、アークスター(投擲武器)を使って相手の体力を削るという方法ならなくはないです。でも、基本的にチーターに本気で来られたらまず勝ち目はありませんね……」とのこと。
また、実力があるプレイヤーがチーターを使っているケースと、そもそも実力がないチーターはすぐに見分けがつく。いくらチートツールを使ったとしても、立ち回りの動きはまったく違うからだ。
結局のところ、対抗手段としては開発元に対して不正を働いているプレイヤーを報告し、アカウントをバン(永久削除)してもらうしかない。
『エーペックスレジェンズ』の通報方法(https://help.ea.com/ja-jp/help/faq/report-players-for-cheating-abuse-and-harassment/)
「チート撲滅」はeスポーツが認められるためのステップ
スポーツの世界では、筋肉増強剤はもちろんのこと、以前はおとがめがなかった頭痛薬や風邪薬などに関しても、摂取成分が厳密にチェックされ、一定の成分が検出されれば「薬物使用」による不正とみなされる。名のあるオリンピック選手がたった1回の「不正」で長年競技に出場できなくなったり、チームをやめさせられたり、スポンサーを失うこともある。
eスポーツにおけるチートも、それと似た状況になりつつある。大きく異なるのは、スポーツにおける薬物と比べて、オンラインゲームのチートは誰もが簡単に実行可能ということ、費用がかからないこと、そしてバレにくいということだ。
さすがに大会の中でチートを実行する人は少ないと思うが、八百長や替え玉といったケースはないわけではない。オンライン大会が増え、自宅などで自分の機材で戦う環境になったことで、運営の目が届かなくなっていることも確かだ。
参考記事:なぜ“事件”が起きるのか? 「eスポーツの闇」を考える
https://esports-world.jp/column/6944
eスポーツが子どもたちにとって夢を持てる世界としてさらに成長するためには、こういったチートに対する厳格な対処がもっと重視されてしかるべきだろう。
そして、最も大事なことは、チートツール業者やチートに協力するプレイヤーの旨味をなくすこと。ツールを購入したり、アカウント売買を行う人がいなくなれば、チート提供者もいなくなるはずだ。
最後にあらためて言おう。
「チート」は「犯罪」である。
甘い蜜の誘惑に負けることのないよう、チート撲滅に向けてひとりひとりのプレイヤーがしっかり自らを律していくことが大切だ。
【特集】eスポーツの闇
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