「『鉄拳ワールドツアー』3年目にしてようやく土台ができた」【『鉄拳7』プロデューサー マイケル・ムレイ氏 インタビュー】 (3/4)

2019.6.11 岡安学

興行としてのコミュニティ大会開催は国内法に則って

――コミュニティの大会をポイント対象にしてもらえるのは、運営コミュニティ側としても喜ばしいことだと思います。ただ、多くのeスポーツ大会では、収益性があると大会の許諾が降りないことがあり、配信番組の広告収益、ビッツやサブスクライブなどについても収益と見なすかが問題になってくる場合も出てくると思います。そのあたりについては、どういったレギュレーションで行うのでしょうか。

マイケル:これはかなりセンシティブな問題で難しいですね。

特にeスポーツの発展途上にある現在の日本では、様々な法律の解釈により、会場や賞金面で制限されてしまう場合もあり、大会の開催自体が難しい場合もあります。

また、弊社の許諾を得ずに大々的に収益を目的とする大会を開催するというのは、確かに望ましいものではありません。かといって、まったく収益がない状態では大会も開けませんよね。

現状では、eスポーツ発展のために、大会スポンサーを付けることや、配信による収益を得ることに関しては、ある程度OKとしている部分はありますが、これはまだ国内のeスポーツが発展途上の状態での措置なので、今後どうなっていくかは状況によって変化すると思います。現在でも、スポンサーが公序良俗に抵触するような企業であれば禁止することはあり得ますし、グッズなども著作権に絡むものは原則、認められません。

海外では収益を出している大会などもあるのですが、日本は日本で独自の判断が必要だと思います。これらの整備はできるだけ早く行えるようにしていきたいと思っています。

もし興行を生業としている企業が大会を開きたいという希望がありましたら、「DOJO」とは別の話として弊社に相談してほしいですね。ただ、ゲームのことと興行のことの両方を理解している企業はなかなかいないのが現状です。

ファイナルの開催地は観光も楽しめる場所からチョイス

――大会の話に戻りますと、ツアーの最終戦となる「鉄拳ワールドツアー ファイナル」の今年の開催地はタイのバンコクとなりましたが、そこに決定した決め手は何だったのでしょうか?

マイケル:バンダイナムコエンターテインメントのeスポーツの拠点は、アメリカとヨーロッパとシンガポールにあります。「鉄拳ワールドツアー」の初年度は、eスポーツの経験値の高いアメリカに任せ、サンフランシスコで開催しました。2年目は前年のアメリカ大会の経験やノウハウを活かして、ヨーロッパで開催しようということになりました。そこで選ばれたのが、オランダのアムステルダムです。

大きな大会は移動日や滞在日を含めると数日をかけて行うことになりますが、多くの選手が初日に敗退してしまうんです。そこで、敗退した選手も現地で楽しめる、観光ができる場所を考えたとき、アムステルダムの人気が高いというところで選ばれたわけです。


3年目の今年、バンコクが選ばれた理由は、世界各国からの飛行機の乗り継ぎの良さや、旅費、滞在費などの物価も考慮に入れています。あと、移動時間なども重要ですね。

もちろん東京も候補に入っていたのですが、鉄拳プレイヤーにとってはすでに訪れたことのある国だと思うんですよね。東京に来て、巣鴨に行っていたり……。

――え? なぜ巣鴨……あ! 「キャロット」ですね!

マイケル:そうです。鉄拳プレイヤーにとって「プレイシティキャロット巣鴨店」(現在は、namco巣鴨店)は聖地として有名ですので。なので、新鮮味を出す意味としても他の国がいいかなと思いまして。

昨年のアムステルダムもそうですが、観光地としても行ってみたい、そこに行けたらワクワクする、ということも選定理由のひとつです。その点、バンコクは多くのスタッフがワクワクすると感じていました。個人的な話をすると、私はムエタイをちょっとやっていまして、そういう意味でもバンコクには憧れていたんです(笑)。

他にも、『鉄拳』シリーズは今、東南アジアや中東で伸びているという理由もありますね。以前の人気国は韓国、日本、アメリカとヨーロッパの一部という感じでしたが、最近だと東南アジアや中東などにプレイヤーが増えています。

――たしかに、「EVO Japan」ではまさかのパキスタンのAsh選手が優勝し、その時のコメントで「パキスタンには自分よりも強い選手が最低でも7人いる」という発言もありましたし、中東でもプレイヤーが広がっている印象があります。

マイケル:中東にも『鉄拳』のコミュニティがあるんですよ。そんなこともあって、『鉄拳7』からアラビア語にローカライズしていますし、中東・サウジアラビア出身の「シャヒーン」というキャラクターも登場させています。やはり自分の国に関連したキャラクターが出ると盛り上がりますからね。

シャヒーン

それから、中東で『鉄拳7』の大会の申請があれば、積極的に許諾するようにもしています。弊社の原田も何度も出向いており、中東での普及活動には他の地域と同様に力を入れています。

パキスタンのお話に関しては、我々にとっては運が良かった面もありました。パキスタンにはゲームセンターの文化があり、そこでゲームを楽しむ人が大勢います。PCやスマホでゲームをする国が多い中、ゲームセンターが健在なことで『鉄拳7』をプレイしてくれる人が集まったわけですね。

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