「『鉄拳ワールドツアー』3年目にしてようやく土台ができた」【『鉄拳7』プロデューサー マイケル・ムレイ氏 インタビュー】 (1/4)
eスポーツを代表する格闘ゲームのひとつ『鉄拳7』。2018年の「鉄拳ワールドツアー ファイナル」での盛り上がりを受け、今年も「国際チャレンジカップ」や「EVO Japan」など、早くも『鉄拳7』のeスポーツ大会への注目度は高くなっている。
今回はそんな2019年からの『鉄拳7』、そして「鉄拳ワールドツアー」のキーマンである『鉄拳』シリーズプロデューサーのマイケル・ムレイ氏に、新たな時代に突入した『鉄拳7』のeスポーツ戦略についてじっくりお話を伺った。『鉄拳』シリーズには長く関わって来られたムレイ氏だが、プロデューサーに就任したのはこの4月。その熱い『鉄拳』愛でこれからの『鉄拳7』はどう展開していくのだろうか。
マイケル・ムレイ プロデューサー(以下、マイケル):『鉄拳7』に「eスポーツ」というフレーズがつながって、年々人気が上がってきているように感じます。
これまでの大会では、「参加することに意義がある」と言いますか、大会を楽しんでいる人たちはプレイヤーの方々でした。しかし現在は、大会に参加しない鉄拳プレイヤーや、そもそも『鉄拳7』自体をプレイしない層も大会の動画を視聴するようになってきており、『鉄拳』ファンだけのイベントではなくなってきています。そもそも配信すら行っていなかった大会などもありましたからね。
また、これまでは弊社単独で大会を開催していましたが、支援してくださるスポンサーも増えてきています。観戦する方たちと同様に、観てくださる企業が増えているのだと思います。
海外での人気も高まってきており、むしろ日本以上の盛り上がりを見せていますね。日本ではまだ無名の鉄拳プレイヤーが海外では有名人、ということもよくありますよ。
――海外人気という意味では、いよいよシーズン2のキャラクターが出揃って初めての「TWT」、『The MixUp』やコミュニティ主導の大会も開催されましたね。まずは、シーズン2の新キャラクターのセレクト理由について教えてください。
マイケル:実は、『鉄拳7』をリリースしたときから、シーズンパスのような形式は取り入れたかったのですが、それが実際にプレイヤーに喜んでもらえるものかどうかはわかりませんでした。
そもそもリリース直後に開催した大会は、実際どうなるかは未知数でしたからね。私や原田(プロデューサー)はいいものになると確信していましたが、会社としても正直測りかねていたんだと思います。
結果としては、その後しっかり実績を作れたので、会社に対しては価値を示すことができたわけです。それで大会自体を今後も続けていこうという方針になったわけですが、競技シーンの確立と同時に、ゲームとしての継続性も求めていく必要がありました。同じゲームをずっと遊んでいると、どうしても新鮮味がなくなってしまいますから。
そこで、新しいモードを作ったり、新キャラクターを追加してみたところ、好評でした。コラボキャラクターの「豪鬼」は人気キャラクターとなりましたし、「ギース」は日本のトッププレイヤーの一人であるチクリン選手が使っていることもあり、こちらも人気が高いですね。
今回のシーズン2も、よりゲームを長く楽しんでもらう施策として行っているわけですが、シーズン1の追加キャラクターがゲストキャラクターメインだったので、今回は『鉄拳』シリーズに登場し、『鉄拳7』でまだ登場していないキャラクター「アンナ・ウイリアムズ」、「レイ・ウーロン」、「アーマーキング」、「クレイグ・マードック」、「ジュリア・チャン」を中心に、『ウォーキング・デッド』に登場した「ニーガン」も加えた6名を追加しようという話になりました。これで多くのファンから要望があったキャラクターは出せたのではないでしょうか。もちろん、まだまだ登場していないキャラクターはいるのですが、希望の高かったキャラクターは揃った印象ですね。
ーーなるほど、そもそもシーズンパス自体も大会の成功あってのものだったんですね。その新キャラたちが登場して初めての大会で、使用キャラの変化などはありましたか?
マイケル:「鉄拳ワールドツアー」はまだ始まったばかりなので、今年の傾向というのはまだ見てとれないのですが、プール(大会の予選トーナメント)では、新キャラを結構見かけますね。決勝トーナメントでは昨年に近いキャラクターが残っているので、上位選手は既存のキャラクターを選んでいたり、新キャラクターの練度がそこまで上がっていないということなのではないでしょうか。
今回の大会では、韓国のKnee選手が「ニーガンは意外と弱いです」と発言したことなどもあり、新キャラに手を出している人は少ない感じがしました。ただ、「弱い」と判断してしまうにはまだ早いですよね。
「ギース」がいい例で、リリース当初はみんながみんな使い始めましたが、1カ月くらいすると落ち着いていったんです。その後、ペコス選手やチクリン選手が「ギース」を使って活躍し出すと、また「ギース」が増えるんですよ。先日の「ファイティングチューズデー」でもギースは多かったです。
「豪鬼」もリリースされた当時は強くて人気が高かったんですが、何段階かの調整を経た結果、使用人口が一気に下がってしまいました。でも、先日フランスで開催された「The MIXUP 2019」で、SUPER AKOUMA(スーパーアクマ)選手が「豪鬼」を使って優勝したことで、また「豪鬼」人気が復活してきました。
TWT2019 - The Mixup - Top 8(Twitch)
https://www.twitch.tv/videos/414423843
したがって、現時点で弱いと見られているキャラクターも、どこかのプレイヤーが攻略し、大会で優勝するようなことがあれば強キャラと見られる可能性もあります。バランス調整に関してはもう少し様子見をしたいと思います。
今回はそんな2019年からの『鉄拳7』、そして「鉄拳ワールドツアー」のキーマンである『鉄拳』シリーズプロデューサーのマイケル・ムレイ氏に、新たな時代に突入した『鉄拳7』のeスポーツ戦略についてじっくりお話を伺った。『鉄拳』シリーズには長く関わって来られたムレイ氏だが、プロデューサーに就任したのはこの4月。その熱い『鉄拳』愛でこれからの『鉄拳7』はどう展開していくのだろうか。
マイケル ムレイ(MICHAEL MURRAY)プロフィール
アメリカ・バージニア州出身。2001年株式会社ナムコに入社。『鉄拳4』から『鉄拳6』まではローカライズを担当し、『鉄拳タッグトーナメント2』からは企画として「FIGHT LAB」というモードのリードプランナーを務める。『鉄拳7』においてはワールドワイドのマーケティングを統括しながら、原田勝弘総合プロデューサーや米盛佑一ディレクターらと共に、「鉄拳プロジェクト」のコアメンバーとして製品コンセプトの立案にも関わる。また、「鉄拳ワールドツアー」の立ち上げや運営の中心メンバーとしてeスポーツの分野からも『鉄拳』シリーズの盛り上げの一翼を担っている
アメリカ・バージニア州出身。2001年株式会社ナムコに入社。『鉄拳4』から『鉄拳6』まではローカライズを担当し、『鉄拳タッグトーナメント2』からは企画として「FIGHT LAB」というモードのリードプランナーを務める。『鉄拳7』においてはワールドワイドのマーケティングを統括しながら、原田勝弘総合プロデューサーや米盛佑一ディレクターらと共に、「鉄拳プロジェクト」のコアメンバーとして製品コンセプトの立案にも関わる。また、「鉄拳ワールドツアー」の立ち上げや運営の中心メンバーとしてeスポーツの分野からも『鉄拳』シリーズの盛り上げの一翼を担っている
『鉄拳7』のファンだけのイベントではなくなった
――『鉄拳』シリーズは長い間公式大会を開いており、『鉄拳7』を使った「鉄拳ワールドツアー(TWT)」も今年で3年目となります。日本では2018年が「eスポーツ元年」と言われ、「TWT」も非常に盛り上がりましたがマイケルさんはeスポーツの潮流をどう感じていらっしゃいますか?マイケル・ムレイ プロデューサー(以下、マイケル):『鉄拳7』に「eスポーツ」というフレーズがつながって、年々人気が上がってきているように感じます。
これまでの大会では、「参加することに意義がある」と言いますか、大会を楽しんでいる人たちはプレイヤーの方々でした。しかし現在は、大会に参加しない鉄拳プレイヤーや、そもそも『鉄拳7』自体をプレイしない層も大会の動画を視聴するようになってきており、『鉄拳』ファンだけのイベントではなくなってきています。そもそも配信すら行っていなかった大会などもありましたからね。
また、これまでは弊社単独で大会を開催していましたが、支援してくださるスポンサーも増えてきています。観戦する方たちと同様に、観てくださる企業が増えているのだと思います。
海外での人気も高まってきており、むしろ日本以上の盛り上がりを見せていますね。日本ではまだ無名の鉄拳プレイヤーが海外では有名人、ということもよくありますよ。
――海外人気という意味では、いよいよシーズン2のキャラクターが出揃って初めての「TWT」、『The MixUp』やコミュニティ主導の大会も開催されましたね。まずは、シーズン2の新キャラクターのセレクト理由について教えてください。
マイケル:実は、『鉄拳7』をリリースしたときから、シーズンパスのような形式は取り入れたかったのですが、それが実際にプレイヤーに喜んでもらえるものかどうかはわかりませんでした。
そもそもリリース直後に開催した大会は、実際どうなるかは未知数でしたからね。私や原田(プロデューサー)はいいものになると確信していましたが、会社としても正直測りかねていたんだと思います。
結果としては、その後しっかり実績を作れたので、会社に対しては価値を示すことができたわけです。それで大会自体を今後も続けていこうという方針になったわけですが、競技シーンの確立と同時に、ゲームとしての継続性も求めていく必要がありました。同じゲームをずっと遊んでいると、どうしても新鮮味がなくなってしまいますから。
そこで、新しいモードを作ったり、新キャラクターを追加してみたところ、好評でした。コラボキャラクターの「豪鬼」は人気キャラクターとなりましたし、「ギース」は日本のトッププレイヤーの一人であるチクリン選手が使っていることもあり、こちらも人気が高いですね。
今回のシーズン2も、よりゲームを長く楽しんでもらう施策として行っているわけですが、シーズン1の追加キャラクターがゲストキャラクターメインだったので、今回は『鉄拳』シリーズに登場し、『鉄拳7』でまだ登場していないキャラクター「アンナ・ウイリアムズ」、「レイ・ウーロン」、「アーマーキング」、「クレイグ・マードック」、「ジュリア・チャン」を中心に、『ウォーキング・デッド』に登場した「ニーガン」も加えた6名を追加しようという話になりました。これで多くのファンから要望があったキャラクターは出せたのではないでしょうか。もちろん、まだまだ登場していないキャラクターはいるのですが、希望の高かったキャラクターは揃った印象ですね。
ーーなるほど、そもそもシーズンパス自体も大会の成功あってのものだったんですね。その新キャラたちが登場して初めての大会で、使用キャラの変化などはありましたか?
マイケル:「鉄拳ワールドツアー」はまだ始まったばかりなので、今年の傾向というのはまだ見てとれないのですが、プール(大会の予選トーナメント)では、新キャラを結構見かけますね。決勝トーナメントでは昨年に近いキャラクターが残っているので、上位選手は既存のキャラクターを選んでいたり、新キャラクターの練度がそこまで上がっていないということなのではないでしょうか。
今回の大会では、韓国のKnee選手が「ニーガンは意外と弱いです」と発言したことなどもあり、新キャラに手を出している人は少ない感じがしました。ただ、「弱い」と判断してしまうにはまだ早いですよね。
「ギース」がいい例で、リリース当初はみんながみんな使い始めましたが、1カ月くらいすると落ち着いていったんです。その後、ペコス選手やチクリン選手が「ギース」を使って活躍し出すと、また「ギース」が増えるんですよ。先日の「ファイティングチューズデー」でもギースは多かったです。
「豪鬼」もリリースされた当時は強くて人気が高かったんですが、何段階かの調整を経た結果、使用人口が一気に下がってしまいました。でも、先日フランスで開催された「The MIXUP 2019」で、SUPER AKOUMA(スーパーアクマ)選手が「豪鬼」を使って優勝したことで、また「豪鬼」人気が復活してきました。
TWT2019 - The Mixup - Top 8(Twitch)
https://www.twitch.tv/videos/414423843
したがって、現時点で弱いと見られているキャラクターも、どこかのプレイヤーが攻略し、大会で優勝するようなことがあれば強キャラと見られる可能性もあります。バランス調整に関してはもう少し様子見をしたいと思います。
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