「eスポーツよりもまずはゲームとしての楽しさを」【『DEAD OR ALIVE 6』プロデューサー 新堀洋平インタビュー】

2019.6.4 岡安学
格闘ゲームの中で、特徴的な対戦システムで人気を博してきた『DEAD OR ALIVE 』シリーズ。2019年3月に、約7年ぶりとなるナンバリング最新作『DEAD OR ALIVE 6』(デッド・オア・アライブ6。以下、DOA6)が発売された。

攻撃、ガード、投げに加えて、相手の攻撃を受け止めて逆転につなげる「ホールド」により、他の格闘ゲームにはない駆け引きを楽しめることはもちろん、最新作『DOA6』ではゲージを使用した強力な連携攻撃やホールド技を利用できる「スペシャル」ボタンを新たに追加。「ホールド」の存在により、新規プレイヤーにはやや敷居が高い印象もあった本作だが、逆に初心者にはより楽しみやすく、上級者には新たな逆転要素を追加することで、世界的にも高い評価を得ている。

発売から2カ月が経過した5月には、アップデートによるゲームシステムの改良やキャラクターの強さの調整、新たなダウンロードコンテンツ(DLC)の配信なども行われ、基本無料版の全世界累計ダウンロード数も100万ダウンロードを超えた。

そんな好評を博している『DOA6』プロデューサーの新堀洋平氏に、前作からの開発秘話、発売からのお話をインタビューした。

新堀洋平氏

2004年にテクモ株式会社(当時)に入社し、『DEAD OR ALIVE Ultimate』からすべての『DOA』シリーズに携わる。前作『DOA5』シリーズではディレクターを務め、本作『DOA6』ではプロデューサーも兼任。なお、現在はプロデューサー業務に専念するため、ディレクター業務は後継者に引き継いでいる。

新エンジン&新システムを短期間で開発

――『デッド・オア・アライブ』シリーズは、『DOA6』の情報が昨年まで出ておらず、開発している気配も見せておりませんでしたが、いつ頃開発が決まったのでしょうか?

新堀洋平プロデューサー(以下、新堀):『DOA6』自体の企画はずっと動いてはいましたが、いざ開発することになってからはかなり急ぎになりました。たぶん2年くらいだと思います。ゲームの開発と同時に、会社としては新しい世代に通じる新エンジンの開発も命題でしたので、エンジンの開発が進まないと、キャラクターを動かすこともできませんでした。新エンジンは現状『DOA6』で初めて本格的に使われていましたが、今後は他のタイトルでも活用されると思います。

――エンジンと同時進行で2年というのはかなり短いですね。

新堀:ゲームエンジンができるまでは『DOA6』のことは頭の中で考えるしかなかったんです。そこで『DOA6』から新搭載されたさまざまなシステムは脳内や会議で膨らませたり、ダメ出ししながら磨いていました。例えば「ブレイクゲージ」を使用しての「ブレイクブロー」や「ブレイクホールド」、「フェイタルラッシュ」などですね。


――3D格闘ゲームは、2D格闘ゲームに比べてストイックなバトルを展開することが多く、ユーザーもそれを求めていたところがありますが、「ブレイクゲージ」を搭載することでよりゲーム的になった感じがしました。

新堀:確かに3D格闘ゲームは、ストイックな戦い方を好むプレイヤーが多いのですが、『DOA5』ではカジュアルなプレイヤーも増えていました。『DOA』シリーズはゲームシステムだけでなく、キャラクター人気の高いゲームなので、そこまでバトルにこだわらず、ゲームを楽しんでいる人たちもいるようです。

『DOA6』を開発するにあたり、まず考えたのが前作までのシリーズ全タイトルの良かった点や悪かった点です。『DOA2』では遊びやすいDOAの土台ができたがホールドや移動はやや困難、『DOA3』は大味だけど前作の課題がクリアできており海外でウケがよく、『DOA4』ではシステムや駆け引きが細かすぎて、ついてこられない人も多かったように感じます。『DOA5』は5年以上かけてブラッシュアップした相当な自信作ですが、完ぺきということもなく、見つめ直してみると一部初心者が入りづらい面が増えているのがわかった、という感じです。

初心者にとってはシンプルなほど取っつきやすくなると思いますが、上級者になってくるとシンプルなだけでは研究や解析をするレベルの面白みを見出すことができなくなってしまいます。なので、その中間かつ新しい刺激のあるゲームとして目指したのが『DOA6』の新システムです。

例えば「ブレイクホールド」は上段、中段、下段とどの攻撃でもホールドすることができる技で、初心者にとってはややこしい上中下属性を考えなくてよく、打撃に関しては絶対の対応力を誇ります。ただ、これがいつでも使えるようになってしまうと、かなり大味で単純な戦いになってしまうわけです。「ブレイクゲージ」により限られたリソース内であれば、いざという時にしか使えないので、「ブレイクホールド」ほど強く便利なものがあってもゲームを壊すことはないと考えました。

もちろん、「ブレイクホールド」自体も万能ではなく、当然投げ技には負けますし、打撃をあえて出さずに「ブレイクホールド」を使わせて「ブレイクゲージ」を消費させるような戦い方もできるようになっています。最近では大会でもよく見かけるシーンとなっていますので、プレイヤーの方はもうご存じの駆け引きだと思います。

▲『DOA6』で新たに搭載された「ブレイクゲージシステム」

――新システムは古参プレイヤーにも受け入れられていますか?

新堀:昨年の「EVO 2018」で『DOA』シリーズのトッププレイヤーの方にさわっていただきましたが、おおむね好評で、その時点で手応えがありました。アメリカの『DOA』プレイヤーは順応力が高く、システムの変更に関しては前情報がなかったにもかかわらず、すでにシステムを利用した戦い方を見つけ出していました。その場が初見のはずでしたが、本当はどこかでプレイしてたんじゃないの? というくらい使いこなしていました。ただ自由すぎたり、初心者にきついであろう部分などはそのあと見直して調整を繰り返しました。ゲームシステムについては必ず賛否両論になるので、大会のレベルも上がってきて初心者との実力差も大きくなってきている中、今は色々な人の遊び方や感想にアンテナを張っています。


世界を見据えたeスポーツ戦略

――トッププレイヤーの戦いというとeスポーツ大会となるわけですが、先日のフランスの「The MIXUP 2019」や「DEAD OR ALIVE 6 World Championship」の「KVO × TSB」の2大会が終了しましたが(※取材時点)、手応えはいかがでしたでしょうか。

新堀:『DOA』シリーズは以前から大会を開いていましたが、現状のeスポーツブームのような形になってからの大会としても、『DOA6』の大会としても初めてのことだったので、どうなるかは心配でした。私は現地に行けなかったのでどちらも動画配信で観ていたのですが、格闘ゲームの配信としては視聴者数も多く盛り上がっていました。

「The MIXUP 2019」はフランスの大会だったので、ヨーロッパの各国に加えてアメリカからの参加者がいて、使用するキャラクターもバラエティに富んでいました。日本での戦い方とは違った戦い方をする人もいて、ヨーロッパ独自の『DOA6』が観られましたね。

The MIXUP 2019
※画像は公式サイトより https://themixup.eu/en

大阪の「KVO × TSB」は全国から選手が集まり濃い大会となりました。日本だけでなく海外の選手が参加していたのを確認しています。

気になったのは、若手の台頭です。トーナメントのウイナーズもルーザーズもどちらも過去の公式大会の決勝戦では見かけなかった選手が勝ち上がっており、新しい選手が入り、育っていることを感じました。どちらの大会も思った以上の盛り上がりで、このふたつの大会により、eスポーツ大会を開催し続けられると確信しました。

KVO × TSB
※画像は公式サイトより http://kvo2k.com/

――海外で格闘ゲームが好評なのは朗報でしたね。


新堀:元々『DOA』シリーズはアメリカが最もプレイ人口が多いのですが、『DOA6』も販売数で言うとアメリカがトップで、それと同じくくらい欧州でも売れています。その後に日本、アジアと続いています。

欧州で人気となった理由のひとつはローカライズをしたことです。これまでもいくつかの言語に対応はしていたのですが、『DOA6』は英語、ドイツ語、フランス語、イタリア語に加え、ロシア語にも対応しています。特にロシアには注目しています。ロシアにもファンが多いので。

そういえば『DOA6』にNiCOという新キャラクターが入ったんですけど、ロシアの方から「なぜロシア人ではないのか」と詰め寄られました(笑)。NiCOのキャラクターボイスを務めた上坂すみれさんは奇しくも無類のロシア好きとして有名な方でしたし、じつはそれも彼女を起用した理由にもなるのですが、その後いろいろありまして今の設定に至ります。


eスポーツありきではなく、ゲームの魅力をアップさせたい

――世界で多くの人にプレイされているeスポーツタイトルはフリートゥプレイが基本になっていますが、今回、『DOA6』も発売して2週間後に基本無料版がリリースされました。格闘ゲームとしては『DOA』シリーズ以外ほとんど類を見ない取り組みですが、これもeスポーツとしての世界標準を考えてのことだったのでしょうか?

新堀:そうですね。前作の2作目『DEAD OR ALIVE 5 Ultimate』の時に、当時のプロデューサーである早矢仕(洋介)が無料版のアイデアを出し、私をはじめチームのメンバーも格闘ゲームの未来像を感じて賛同したのですが、当時は社内でも風当たりが強く、それを通すのは思い切った決断だと思いました。それが実際に大ヒットし、『DEAD OR ALIVE 5 Last Round』では累計1000万ダウンロードを突破したわけです。

その時に一度前例ができていますので、『DOA6』では当然のごとく対応する予定でした。企画書にも盛り込んであったほどで、かなり早い段階から無料版のリリースは考えており、できることなら通常版の発売と同時に出したかったんです。

――なるほど。結果として、累計1000万ダウンロードを達成できたわけですね。基本無料版は4キャラクターのみの使用可能(他のキャラクターはDLCとして購入)なので、フルプライス版とはかなり大きな差異がありますし、タイミング的な問題は言うほどなさそうですね。

新堀:いえ、発売2週間後という多くのお客様が望まないタイミングでのリリースになったことや、そのことについて発売段階までに全員に届くかたちで案内ができていなかったことについては、真摯に受け止め、深く反省しております。今後こういったことのないよう、もっと配慮しようと思います。

――最後に、今後の『DOA6』のゲームおよびeスポーツ展開などについてお聞かせください。

新堀:先ほど言った通り、eスポーツは手応えを感じているので、続けていきたいと思っています。

ただ、『DOA6』はeスポーツありきのタイトルではなく、ゲームとして面白いかどうかが重要だと考えています。まずは思う存分遊んでいただき、オンラインで対戦し、『DOA6』の楽しさを感じていただければと思います。そのためには対戦や着せ替えなど重要な要素をアップデートしていくことが重要です。

その先に目指すものとして、eスポーツがあればと考えています。多くの方に触っていただくことが重要なので、まだ未ダウンロードの方は、ぜひ『DOA6』の基本無料版を試してみてください。遊んでいなかった人ほど、触ってみると意外にも「『DOA』って面白い」と思うはずですから。


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インタビューの中で新堀氏は、「まだeスポーツを名乗るには早い」と繰り返し語っていた。ゲームとしての魅力、システムの熟成、そしてそれにファンが付いてくる状況に向けて、じっくり取り組みたいという姿勢の表れだろう。

しかし、3D格闘ゲームの中で「6」まで続いているようなタイトルは、『鉄拳』と『ソウルキャリバー』、そしてこの『DOA』シリーズくらいだ。その中でも期限を設けない基本無料版をリリースしているのは『DOA』シリーズしかない。

『DOA6』がさらなる進化を遂げていけば、世界中でeスポーツタイトルとしてプレイされる日も、そう遠くないかもしれない。


■リンク
DEAD OR ALIVE 6
https://www.gamecity.ne.jp/doa6/
DEAD OR ALIVE 6 WORLD CHAMPIONSHIP
https://www.gamecity.ne.jp/doa6/wc.html

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