「『DOA6』をガチ勢とキャラ好きが住み分けられるゲームに」【『DOA6』プロゲーマー・輝Rock選手&シオロジカ選手 インタビュー<後編>】

2019.7.29 岡安学
eスポーツタイトルとして大規模な大会が開催されている格闘ゲームの中で、最も新しいタイトル『デッド オア アライブ6』(DOA6)。そのプロプレイヤーとして、日本のみならず世界のトップに常に君臨し続けている輝Rock(テルロック)選手とシオロジカ選手のふたりへのインタビュー

新システムの評価や『DOA6』の面白さと難しさを語る前編に続いて、後編ではeスポーツタイトルとしての『DOA6』の可能性、キャラクターゲームとしての側面の是非、そしてeスポーツタイトルとしての今後の展望をうかがった。

前編はこちら
「『DOA』が好きだからこそ本気で辞めようと思った」【『DOA6』プロゲーマー・輝Rock&シオロジカ インタビュー<前編>】
https://esports-world.jp/interview/1215

『DOA』上級者は3すくみの読み合いに「見る」が加わる


――『DOA6』にeスポーツとして取り組む際に難易度が高い要素として、シリーズの特徴である打撃/投げ/ホールドという3すくみがあると思います。『DOA6』の「ホールド」は上段・中段のパンチとキック・下段という4種類なので、読み勝ちしないと返せない感じでかなりハードルが高いです。ただ、上中下関係なく反撃できる「ブレイクホールド」が実装されて、初心者でもやっと「ホールド」が使えると思えるようになったんですが、上級者としてはこの読み合い部分についてはどう思われますか?

輝Rock選手(以下、輝Rock):システム上はちゃんと3すくみになっています。ただ、均等にどれも3分の1で使われているかというと、やはり「ホールド」は少めですね。

打撃と投げは「攻める行動」で、ホールドは「守る行動」なので、必然的に攻める行動が増えます。打撃だけで終わる試合もありますし、打撃オンリーの相手ならホールドが有効かっていうとそうでもなかったりします。

『DOA2』の頃などは、「3回ホールドできてしまえば勝ち」といったホールドのダメージがすごく高い時があって、その頃は頻度も高かったと思います。

「ブレイクホールド」については、私は入ってよかったと思っています。嫌っている人も多いんですが、ゲージを使ってリソースを割いていますからね。しかも、先ほど言ったとおり「守る行動」なので、必ずリターンを得られるものではありません。相手が打撃を出してこなかったり、ディレイしてきたり、投げを入れてきたりすれば負けてしまいますから。

シオロジカ選手(以下、シオロジカ):それに、上級者は3すくみとは思っていないんですよ。3つの行動以外に、「見る」っていう行動が入るんです。

ホールドにも硬直があるので、ホールドを確認した後にコンボが入ったりするんです。なので、ホールドのタイミングを知らなかったり無闇にホールドを出していると、逆に相手の打撃を全部食らうという状況にもなってしまうんです。

例えば輝さんとかは、僕の攻撃を「見る」行動をとって、僕がホールドを回避するために遅らせて放った打撃をホールドで捕ったりしますから。その辺りはお互いに読み合いになりますね。

輝Rock:試合を観ている人にとっては、なんでこのタイミングでホールドできたかよくわからない状況が生まれることがあって、それって偶然捕れた場合だけじゃなくて、そこに読み合いが絡んだ結果そうなっていることもあるんです。


シオロジカ:普通の打撃をするとホールドで捕られるから遅らせて打撃を出したり、その遅らせた打撃に合わせてホールドしてくるから、今度はさらにタイミングをずらしたり、そのずらしたタイミングすら読んできたりとか。なんかだんだん考えすぎるようになっちゃって。神園さんにアドバイスをもらったら、「もう普通にやった方が良いよ」って言われたり(笑)。深く読み過ぎているから、一度基本に戻すと攻撃が通ったりしますね。

輝Rock:『DOA』シリーズはプレイヤーの個性がすごく出るゲームなんです。そこが魅力なのでずっとプレイしているわけですけど、長く対戦しているとその人柄というか、どういうことをやりたがっている人なのかとかが感じられるようなってくるんです。そういう感じでシオロジカとのプレイを続けているとどんどん先に行きすぎてしまって、観ている人にとっては訳がわからない行動になっていることもあると思います。

シオロジカ:本来はそこまでやらなくていいのかもしれない、ということをするんですよね。でも、それが決まれば精神的ダメージを与えられるのでやってしまうんです。ここは普通にガードでいいのにホールドしてみたり、ホールドが来るかもって思ったら見ていればいいのに投げを合わせてみたり。

輝Rock:こういった読み合いというか、戦い方が初心者から地続きになっているかどうかはわからないですね。

『DOA2』をプレイし始めて対戦会とかに出るようになった頃と今では、考え方自体は真逆になっています。当時は読み合いを制するのが『DOA』ってゲームでしょうって、小生意気な感じで思っていました。下がるのとかダサいし、離れて適当な技を出しているなんて寒い行動はないでしょうって思っていたんです。

でもある程度やり込んでくると、それまで寒いと思っていたプレイをしていた人の方が、よっぽどこのゲームに向き合っていたんだなって気づきました。安定して勝つにはリスクを減らさないといけない。そうするにはどうすればいいのかって考えた結果がそこなんだなって。

ただ、それが初心者にとっていいことかどうかはわからないですね。やはりゲームは楽しんでプレイしてもらいたいので、そこまで勝ちにこだわってやる必要もないですし、必ずしもプロを目指さないといけないものでもないですから。

シオロジカ:今は動画とかを簡単に見られるようになったので、うまい人のプレイを見てそれを真似ていければ、どんどんうまくなっていくと思いますし、自分なりに咀嚼して自分のプレイに反映できればと思います。状況は私が始めた頃に比べれば格段に良くなっていますので。

世界ツアーで『DOA6』を知る人が増えれば


――ワールドチャンピオンシップの話題が出ましたが、今年からツアーが開始されました。全世界でオフライン11大会、オンライン3大会があり、11月23日に日本でグランドファイナルの予選と決勝が予定されています。プロとしての活動の場が広がったことについてはいかがでしょうか。

輝Rock:ワールドチャンピオンシップに関しては、個人的には嬉しいですが、いちプレイヤーとしては微妙なところでもあります。私は運良く株式会社コンプに支援してもらい、世界の大会へ頻繁に行くことができますが、多くのプレイヤーにとっては、渡航費や滞在費の工面ができず、無関係な大会となるんじゃないでしょうか。それだったらもっと国内での大会も増やしてほしかったですね。以前、日本全国で予選をした時は楽しかったですから。

DOA6 World Championship公式サイト

シオロジカ:私としてはワールドチャンピオンシップをやってもらえたのは良かったですね。『DOA6』で活躍する人を観る機会が単純に増えたのは嬉しいです。

私がそうだったように、強い人のプレイを観て「いつかああなりたい」って思えるような世界があるというのは、プレイし続けるモチベーションにもなると思うんです。

日本でもっと大会を開いてほしいというのも、すごくわかります。でも、日本を中心にしてしまえば、今度はアメリカやヨーロッパの子どもたちが「日本ばっかり……」って思ってしまうと思うんですよね。今回のワールドチャンピオンシップの開催地は、フランス2回、アメリカ5回、日本3回、台湾1回。プレイ人口から言えば妥当ですし、グランドファイナルは日本で行われます。むしろ、開催地に選ばれなかった国や地域でも『DOA6』をプレイしている人はたくさんいるので、その人たちから見たら恵まれた環境にあるとは思います。

ただ、ワールドチャンピオンシップを開催するには、スタートが早すぎた感はありますね。リリースして間もなくフランスの大会「The MIXUP」でしたから、もう少し準備期間が欲しかった。あと、全国大会に関してもちょっと早いかもしれません。『DOA5 LR』が出た時って、『DOA4』から6~7年経った状態で、しかもその間はあまりプレイされていなくて、ある意味『DOA5 LR』でリセットされた感じだったんですよね。だから、誰が強いかもわからなかった。

一方、『DOA5 LR』と『DOA6』も7年くらい間があるんですけど、私たちは続けてプレイしている印象なんです。ゲーム的にも『DOA4』と『DOA5 LR』はガラッと変わりましたが、『DOA5 LR』と『DOA6』は似通っていますし。なので、全国各地で予選しても、誰が抜けてくるかわかってしまうんですよね。『DOA5 LR』の後期と同じだなって。

輝Rock:確かにね。『DOA6』がリリースされて1年くらい経てば、『DOA6』から入ってきた新規勢が出てくるかもしれないけど、今はたぶんいつものメンツが決勝に残る感じではあるよね。

ただ、やはり全国大会の予選が各地で行われれば、いきなり全国に行こうとするのはちょっとって思う人も、地方予選で自分ってどれくらい強いのかなってくらいで出られるわけですよね。出ることのハードルが下がっていけば、全国大会とかeスポーツとか参加するなり、観るなりできるようになっていくんだと思います。


eスポーツ化してもキャラ好きも楽しめる『DOA6』に


シオロジカ:あと、根本的な話なんですけど、『DOA』シリーズをプレイしているってことを少し言いにくいじゃないですか。「あれって格ゲーだったんですね」とか「ああ、キャラクターは知っています」とか「男性キャラクターもいたんですね」って言われてしまうんですよ。

輝Rock:そうなんですよね。冗談でもなんでもなく真剣に聞かれてしまうんです。最近ようやく一部で「ああ、今度新作出るんですね」とか「大会も盛り上がっているみたいですね」みたいな声が聞かれるんですけど、本当にごくわずかです。

シオロジカ:キャラクターの女の子がカワイイとか乳揺れとかって、eスポーツとは相性が悪い部分もあるんですよね。でも、『DOA』シリーズには、eスポーツの選手を目指すガチプレイヤーだけでなく、キャラクターの女の子が好きな層もいて、両方とも『DOA』シリーズのファンなんです。

キャラクターが好きな人にとってみればeスポーツには興味がないと思いますが、『DOA』のダウンロードコンテンツの衣装とかでお金を落としてくれるのは、どちらかというとキャラクターが好きな層ですから。

輝Rock:特にシオロジカはそういうのに興味がないからね。私の場合は、自分が使うキャラクターの新しい衣装が気に入ったら買いますよ。


シオロジカ:そういう人たちが『DOA』を支えてくれているので、eスポーツになったからって、キャラクター推しの部分をなくしたりすることはないと思います。

輝Rock:うまい住み分けができていれば、それでいいと思いますけどね。

シオロジカ:ただ、『DOA6』が発表された時、「eスポーツを目指します」って宣言されて、もう乳揺れとかキャラクターの良さが出なくなるのかって思ってしまったんですよね。後々「なくす方向ではありません」って話が出たんですけど、最初から『DOA6』はいつも通り2大要素の魅力をどちらも打ち出しますって言ってくれれば良かった。

――「やわらかエンジン」を使わないという話と、初出のかすみの衣装の露出が少なかったことが、そういう方向性の排除なのかと思ってしまいました。結果として従来通りだったので、逆にユーザーにとってはよくわからない感じでしたね。

輝Rock:『DOA5 LR』から『DOA』シリーズ自体の知名度が徐々にアップしてきて、対戦格闘ゲームとしての認知度は上がった感じがします。『DOA4』の時はXbox360のみでしたし、『DOA5』からPS3で遊べるようになって知名度もグッと上がりました。

シオロジカ:『DOA5 LR』は基本無料版が出たのも大きいですね。あれで一気にプレイヤーが増えました。対戦格闘ゲームで基本無料版って珍しいですから。eスポーツは人口が多くないと継続していけないので、人口が増えてくれたのは良かったです。

輝Rock:いろいろなゲームをプレイし、その中で『DOA』シリーズが性に合っていて、今でも『DOA6』を続けていますが、じゃあ「面白いゲームを教えて」って言われた時に、まだ今の『DOA6』は勧められないですね。『DOA5 』でアップデートによって整えられた不具合類が再発していたり、新たなナンバリングで今さら同じたたらを踏むようなことを繰り返しているのはちょっと推せないです。

ただ、プレイヤーとして『DOA6』を支援することはまだまだたくさんあると思います。メーカーも現状に対してなんとかしようという姿勢は見せていますし、対処もしてくれています。リリース当初にあった大きな問題点は解消してきましたし、サイドアタックのゲージ技化など大きな変更もやってきているので、どんどん良くなっていくと期待しています。

ーー長時間ありがとうございました!
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