中野サガット、「EVO 2019」で世界チャンピオンに!! 26年ぶり復活の舞台裏とは? (2/2)


ゲームとは無縁の人生が、eスポーツの隆盛で一変


——少年時代にそんなとてつもない大会で優勝した中野さんですが、その後の生活はどんなふうに変化したんですか?

中野:特に何にも変わっていないです(笑)。

学校でも「なんか優勝したらしいな」程度で、別に誰かに褒められるわけでもなく。扱い的にはただのゲームオタクという感じでしたね。

——当時はゲーム大会なんてそれほどなかったですし、“世に出るのが早すぎたチャンプ”という感じでしょうか……。

中野:そうですね。

その後はゲームは趣味程度にしかさわらなくなって、どんどん疎遠になっていきました。

——では、今こうしてeスポーツ事業の仕事をやるようになったのは、本当にここ最近の出来事ということですか?

中野:それこそ『ウルトラストリートファイターII』が発売された2017年頃からですね。

僕が当時勤めていた会社は、ゲームとはまったく関係がなかったのですが、ある日社長が「お前、昔ゲームの大会で優勝したことあるとか言ってたな。eスポーツを仕事にしないか?」って持ちかけられたんです。

あまりに突然のことすぎて、即答はできませんでした。しかし社長から「悩んでいるくらいならやめておけ」と言われたんです。


「俺からやれと言われてやるのは簡単だ。でも、それでは自分のためにはならない。お前が本気でやりたいと思うなら俺は応援する」という社長の言葉を聞いて、このチャンスを逃すわけにはいかないと思った僕は、社長に「ぜひやらせてください」と返事をしてスタートしたのが2018年の5月の話です。

——いやー、社長さんが言われている「eスポーツの仕事」の内容はよくわかりませんが、すごい急ピッチで進んだのですね。

中野:そうですね。そのあとはもうトントン拍子で、今までやっていた業務をほかの人に任せて、僕はひたすらゲームをやる日が続きました。

そして、2018年の6月28日〜7月1日に米国フロリダ州に向かい、eスポーツ大会「CEO 2018 FIGHTING GAMES CHAMPIONSHIPS」(以下、CEO)に出場しました。

▲CEO 2018での様子

——その時は、「選手としてがんばれ」という話だったのですね。

中野:
そうみたいですね(笑)。

地域でeスポーツを盛り上げるサポートがスサノオの使命


中野:実は、京都スサノオというeスポーツのチームを結成するという話は後付けでして、「CEO」に出場したときはチーム名もありませんでした。その次の10月に開催された「カナダカップ」では、「京都スサノオ」というチーム名で参加しています。

その後、年が明けて2019年に株式会社スサノオを設立して法人化して本格的にスタートしました。

——すごい! まるでジェットコースターのような展開です。

中野:
もう毎日が勉強勉強の日々で、おかげさまで従業員も増え、人脈も増え、今僕は人生をeスポーツに捧げて生きています。

会社の方針も段々見えてきまして、今うちの会社はeスポーツの新規事業創出日本一を目指しています。

——eスポーツの新規事業創出というのは具体的にはどんなことなんですか?

中野:今、さまざまな企業がeスポーツに興味を持ち参入していますが、何をやっていいのかわからないという企業がたくさんあります。というか、うちの会社もそうでした(笑)。

そういった企業に、自分たちの失敗から学んだ知識を伝え、eスポーツ事業をしてもらうことを目的に活動しています。

eスポーツを一過性のブームで終わらせるのではなく、長く続く文化にするために産業化するという考えですね。

——会社を設立してから間もないですが、実際にどんな活動をされているのでしょうか?

中野:この半年間で、3カ所の地域でeスポーツの施設を立ち上げることが決まりました。そして来年末までに12の施設を全国に作ることが目標になっています。

株式会社スサノオが出資して施設を立ち上げるのではなく、地域の企業に施設を立ち上げてもらうことで、地域が活性化しその地域が潤う。そうすることでeスポーツ全体が盛り上がる、ということです。

▲「東京ゲームショウ2019」で「TGSフォーラム」に登壇する中野サガット氏

おそらく株式会社スサノオを知っている人のほとんどが、京都に本社があり、eスポーツチームeスポーツ施設を持っている会社という認識だと思いますが、実はそれだけではなく、全国各地にeスポーツ施設を作っていくという業務も行っています。

——なるほど。中野さんは26年前にスト2全国大会のチャンピオンになって、それからさまざまな人生を歩んだのち、eスポーツ事業を手がけていますが、今こうして盛り上がっているeスポーツシーンをどのように見ていますか?

中野:もちろんゲームから離れている期間も、ウメハラ選手やときど選手のようなプロゲーマーの活躍は拝見していて、eスポーツが盛り上がっているのは感じていました。

そのeスポーツに自分が関わるようになったからには、少しでもプラスの影響を与えられるような存在になりたいと思います。

―――――

26年前、eスポーツの先駆けとも言える全国大会でチャンピオンに上りつめた少年は、日の目を浴びることなくいつしかゲームから離れ、まったく別の人生を歩んでいた。そんな彼がめぐりめぐって今、eスポーツ事業の代表取締役として日々まい進し、再び選手としてeスポーツ大会での頂きに登りつめた。

20年以上のブランクを経て世界で渡り合えたことからも、紛れもなく格ゲーの実力を持っていることは証明されている。しかも、当時の大会はスーファミとはいえ全試合がBo1。つまり、全勝優勝という、現在のeスポーツからは到底考えられない過酷な道のりを制しての日本一だったのだ(ちなみに、スーファミ以前にはゲーセンに通いつめて猛者を相手に実力を身につけたという裏のエピソードもあるのだが、その話はまたいずれ)。

EVO 2019」で再びeスポーツ選手としての頂点を極めた中野サガットは、今まさに新たなフィールドで世界の頂点を目指している。eSports World編集部として、今後も選手、そして経営者としての中野サガットのeスポーツ界での活躍を追いかけていきたい。


株式会社スサノオ:https://www.susanoo.kyoto
京都スサノオ:https://e-athlete.co.jp/susanoo/
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