「グラマス(元)女子高生プロゲーマー」は本気で世界を目指す!【ゲーミングチームMOF・Nyanpi選手インタビュー】

2021.3.31 宮下英之
2月12日、YouTubeにてとある選手がプロゲーマー宣言をした。

Nyanpi(にゃんぴ)選手。2021年2月時点で18歳の女子高生だ。


ストリートファイターV チャンピオンエディション』(以下、ストV)ではかりんを操り、グランドマスターにまで上り詰めた。TOPANGAの大会に参戦したり、オンラインで多くのプロゲーマーとも対戦経験もある。配信ではガンプラ制作動画などの趣味も披露しており、ストリーマーとして毎週配信も開始している。

そんな彼女は、格猫合同会社という自分の会社を設立し、4月から上京して本格的にプロゲーマー活動を開始する。

ただ、いちeスポーツファン、格ゲーファンとして、そして高校生の倍の年数を生きてきた者として、どうしても考えてしまうことがある。

「本当に格ゲーに人生をかけていいんですか?」と。

うら若き乙女が格闘ゲームなぞに貴重な青春時代を捧げる。それを見過ごしていいのか? と、40歳を過ぎたオッサンは思ってしまうのだ。もちろん、本人の硬い決意があってこそのプロゲーマー宣言だとは思う。しかし……と思わずにはいられなかった。

そこで、彼女の本気度をうかがうべくオンラインインタビューを依頼したところ、快く引き受けていただいた。だからこそ、こちらも全力で彼女の“本気度”と魅力を引き出してあげたい。

Nyanpi選手はなぜプロゲーマーになろうと思ったのか、どのようにしてそんな強さを身に付けられたのか、そしてこれからどんな活動をしていくのか。格ゲー界に現れた“ニュータイプ”プロゲーマーの思いを、ぜひ聞いてみてほしい。


3歳で『FFXI』にふれた、ゲーム人生の始まり


──最初に、Nyanpiさんがゲームを始めたきっかけから教えてください。

Nyanpi:3歳の頃から、父の影響でMMORPGの『ファイナルファンタジーXI』にふれていました。当時は、ただ目の前にいる敵を倒すだけの遊び方で、レベルもわからず強い敵と戦って、「死んだ!」と泣いて親のもとに走っていったりしていました(笑)。

小学生の頃からは、『真・三國無双Online』や『機動戦士ガンダムオンライン』などのオンラインアクションゲームをやっていました。父に聞くと、8歳くらいから大人と対等に戦っていたようです。オンラインで戦った相手が「この人強い!」と、私と対戦した動画を上げていたこともあったと聞いて驚きました。

その後、中学生になってから、TPS/FPSゲームの『PLAYERUNKNOWN’S BATTLEGROUNDS』(以下、PUBG)を始めたのですが、それ以前のゲームはすべて父の影響です。

──ご両親もかなりゲームをされるのですね。

Nyanpi:父は最近あまりやらなくなったと言っていますが、若い時からゲームは結構やっていたみたいです。母はもともとゲームにまったく興味がなかったのですが、私が『PUBG』を始めた頃から観戦にハマったみたいで、今もよく観戦しています。ただ、プレイするのは無理だと言っていますね。

──「Nyanpi」というプレイヤー名の由来は?

Nyanpi:私が生まれる前から親がゲームで使っていたハンドルネームだそうで、そこからもらいました。猫をイメージする名前で、私も猫が大好きなので。


中学生で『PUBG』のソロランク7位に


──中学生の頃にPC版『PUBG』を始めたのは、どんなきっかけがあったのでしょうか?

Nyanpi:親が配信をきっかけに『PUBG』のことを知って、「このゲーム面白いんじゃない?」と勧めてくれたんです。私自身も『PUBG』のことは知っていて、興味があったので始めました。

──『PUBG』のどんなところが面白そうだと感じたんですか?

Nyanpi:それまでTPS/FPSゲームはやったことがなかったのですが、小さい頃から銃をカッコいいと思っていて、そういうところで惹かれたのかなと思います。

──『PUBG』はどんなふうにプレイされていたのでしょうか。

Nyanpi:『PUBG』を始める前までは、とりあえずゲームを遊んでいるという感じで、頭を使ってゲームをすることが好きではなかったんです。でも、『PUBG』のカスタムマッチに参加したら、全然上位に入れなくて悔しくて……。それ以降、頭を使ってプレイするようになりました。親とも立ち回りについて話し合ったりして、参考にしていました。

16歳の頃の『PUBG』の配信。決して再生回数は多くはなかったが、当時から精力的に配信していた


──お話を聞いていると、本当にご両親と仲が良いんですね。

Nyanpi:そうなんですかね(笑)。

──もともと自身のプレイヤーとしての上手さはどれくらいだと思っていましたか?

Nyanpi:トップ層ではないけれど、平均よりは上にいるだろうという気持ちはあって。そこそこ自信はある、くらいの感じでした。

──『PUBG』では実際どれくらいの戦績だったんでしょうか?

Nyanpi:2018年に日本サーバーができてすぐ挑戦した時に、ソロランクで最高7位まで上げることができました。ただ、『PUBG』は18歳以上でないと出られない大会が多かったので、大会にはあまり出たことがありません。


『ストV』に移行し1年半で“グラマス女子高生”に


──その後、どのような経緯で『ストリートファイターV』(以下、ストV)に移行されたのでしょうか? 格ゲーを遊んでいたわけではないんですよね?

Nyanpi:そうですね、ある日『PUBG』を起動するためにSteamのライブラリを見たら、『ストV』があったんです。親に聞いてみたら「買ったよ」と言われて、あるならやってみようかなと思ったのがきっかけですね。初めて『ストV』にさわったのは、高校1年の10月頃でした。

その時はまだ『PUBG』を続けていたので、まったく違うジャンルに移行することに対して若干の未練があったんですけど、いざ『ストV』を始めたらハマってしまいました。

──FPSから格ゲーに移行したという経歴がとても新鮮なんですが、Nyanpiさんにとって、『ストV』のどんなところが魅力だったんでしょうか?

Nyanpi:私はどのゲームでも、キャラクターやコスチュームを意識することが多くて。最初に選んだキャラクターは春麗だったんですけど、見た目がかわいいと思ったのが理由でした。キャラクター以外にも、『ストV』のデザインや音楽も好きで、そこにも惹かれましたね。

アーカイブの中で最も古い『ストV』動画がこれ。春麗でブロンズだが、すでに片鱗は見える

──『ストV』を始めた頃、格闘ゲームのeスポーツシーンのことは知っていたんですか?

Nyanpi:いえ、まったく知りませんでした。『ストV』にふれるまで、格闘ゲームというジャンル自体を意識したことがなかったので……。『PUBG』のeスポーツシーンについては知っていました。

──「eスポーツ競技の『ストV』」を始めたわけではなかったんですね。そこから『ストV』で本格的にプロを目指そうと思った経緯を教えてください。

Nyanpi:FPSのゲームは他人と一緒に戦うので、自分だけでなくチームとしての勝ち負けがありますよね。でも格闘ゲームは個人戦なので参加する敷居が低いし、勝ち負けも自分次第。そこが気に入って、本格的にチャレンジしようと思いました。『ストV』の大会は年齢制限が13歳以上に設定されていることが多く、年齢的に出場可能だったからという理由も大きかったです。

それから、親と相談して『ストV』でランクを上げる期限を設けてチャレンジしたんです。期限内に目標ランクまで上げきれなければ、格闘ゲームの才能がないと判断して、きっぱりプロを諦めようと決めて頑張りました。

●Nyanpi選手のランク戦績
  • ウルトラブロンズ→ゴールド 1カ月以内(残り8日でクリア)
  • ゴールド→プラチナ 3カ月以内(残り1カ月10日でクリア)
  • プラチナ→ダイヤ 4カ月半(残り20日でクリア)
  • ダイヤ→マスター 10カ月(残り2カ月でクリア)

結果的に、すべて期限内に到達することができたので、本格的にプロを目指すことに決めました。ちなみに、ウルトラダイヤモンドからグランドマスターに上がるまでは、『ストV』以外のゲームを禁止にして集中して取り組みました。ここまでストイックにやる人は珍しいのか、まわりからは驚かれました(笑)。

グランドマスターに昇格したのは2020年9月

──ストイックに取り組みすぎて、ゲームを楽しめなくなったりはしませんでしたか?

Nyanpi:今までは気分転換に他のゲームをさわったりしていたので、禁止にしたことを少しだけ後悔したりもしました。でも、私自身もともと1つのゲームに集中する傾向があるので、それほどキツくはなかったですね。


カジュアルマッチ1万試合で磨かれたテクニック


──ランクを上げていく中で、壁にぶつかる時もあったと思うのですが、それを乗り越えるためにどんなことをしましたか?

Nyanpi:プラチナ帯に上がるまでは、基本的に攻めた方が勝つことが多かったので、最低限の防御を身に着けつつ、攻めることを意識していました。

──その頃、グラップやフレーム管理などはそれほど意識していなかったんですか?

Nyanpi:そうですね。確定反撃とかもまったく覚えていなかったです。とにかく攻めて、相手に攻めさせない戦い方を意識していた記憶があります。

──プラチナ帯よりもさらに上のランクに上がった時のきっかけは?

Nyanpi:私、ランクが上がるごとに1カ月くらいカジュアルにこもって練習して、ランクは一気に上げるようにしていたんです。グラマスに到達した時も、ランクマが2000試合くらい、カジュアルが1万試合くらいで、カジュアルの試合数が多めでした。

──メインキャラクターに今、かりんを使われていますよね。シーズン5で調整が入りましたが、いかがですか?

Nyanpi:かりんはしゃがみ大Kが弱体化されてしまったので、すでに厳しいキャラがさらにキツくなった印象です。ただ、かりんは火力があり、Vシフトのおかげで難しいキャラに対して逃げたい時に逃げやすくなったので、プラス面もあればマイナス面もありますね。

──今後もメインキャラクターに、かりんを使い続けますか?

Nyanpi:まだ確定ではないのですが、今メインキャラを変えようと考えていて。今後はキャミィを使おうと思ってます。

キャラクター候補のキャミィでどぐら選手との対戦も


ウメハラを知らずにeスポーツの世界へ


──Nyanpiさんは2月に“プロゲーマー”宣言をしたわけですが、“プロゲーマー”という職業をどう考えているのか教えてください。

Nyanpi:安定して大会上位の結果を残せて、普段は家でずっとゲームのことを研究している、というイメージです。一般的に思われているプロゲーマーのイメージと、たぶん同じかなと思うんですけど……。

ただ、プロゲーマーとしての目的や目標は、人によってもそれぞれ違いますよね。そのシーンで憧れられる存在になりたいとか、とにかく大会での結果を残したいとか。なので、何か1つ決まったものがあるわけではないのかなと思います。

──その中でも、Nyanpiさん自身が目指すのは、どんなプロゲーマーですか?

Nyanpi:今活躍しているプロの人たちに勝って、大会で優勝できるようなプレイヤーになりたいです。ただ、それだけじゃなくて、女性プレイヤーが増えてほしいという思いがあって。私が活躍することで、格闘ゲームにふれたりプロゲーマーを目指したりする女性が、もっと増えたらいいなと思っています。

──憧れのチームや選手はいますか?

Nyanpi:憧れの存在は、特にいないです。私、本格的に『ストV』でプロを目指すまで、ウメハラさんのことも知らなかったんです。『PUBG』をやっていた頃にときどさんの存在を何かで聞いて知っていたくらい。なので、憧れとかは特になく始めました。

ランクマでウメハラ選手と遭遇したことも


普段はごく普通の学校生活を送る女子高生(だった)


──「プロゲーマー・Nyanpi」についてうかがってきましたが、「高校生・Nyanpi」についても聞かせてください。自分はどんな性格だと思いますか?

Nyanpi:性格はクールというか、あまり感情を表に出さないタイプです。『PUBG』を配信していた頃、ドン勝しても喜んではしゃいだりすることがないので、「本当に女子高生?」とリスナーさんに疑われたこともあります(笑)。でも、ちゃんと心の中では喜んでいるんですよ。

──家族以外で、身のまわりに格闘ゲームをやってる人とかはいますか?

Nyanpi:いないですね。リアルの友達と格闘ゲームの話をすることはまったくないです。ゲームの話自体しないので、私がこの活動をしていることも知らないんじゃないかな。

──通っていたのは普通の高校なんですか?

Nyanpi:はい。本当にごく普通の学校生活を送っていました。勉強は苦手ですけど……(笑)。

──ゲーム以外に好きなものやハマってるものがあれば教えてください。

Nyanpi:海外の音楽が好きで、アーティストで言うとTheFatRatやAlan Walkerが好きです。でも、ゲーム以外にこれといった趣味はないです(笑)。


起業とゲーミングチーム設立を決断した理由


──そんなNyanpiさんは自分の会社で、社会人プロゲーマーとして独立されたわけですが、高校生の時点で会社を立ち上げるのってすごいことだと思うんです。会社設立に至った経緯について教えてください。

Nyanpi:グラマスに到達してから、プロ化するために自分の資料を用意して、個人でのスポンサー探しを始めたんです。貢献できそうな業種の企業をいくつか考えて、こちらから積極的に声を掛けていったのですが、なかなか上手くいかず、すぐには見つかりませんでした。

ただ、その中で1社、本気でスポンサードを検討してくださった企業があったんです。メールでやり取りする中でもたくさんアドバイスをいただいて。最終的には実を結ばなかったのですが、とても勉強になりました。その企業さんにはすごく感謝していて、微力ながら近い将来に恩返しをしたいと思っています。

そのスポンサー探しの活動をしていくうちに、コロナ不況の影響もあり、企業のスポンサードの条件がとても厳しくなっていることがわかりました。そして、個人と企業のやり取りは難しいこともわかってきたんです。なので、この頃から法人化を検討するようになりました。

格猫合同会社のホームページ

それから、もともと『PUBG』や『ストV』などゲームを、快適にプレイできるオリジナルパソコンの販売を考えていて。最初は、BTOショップでの委託販売も考えていたのですが、自分で販売するのもありかなと。そうすると、仕入れにあたってこちらが法人である必要があるので、起業することを決めました。

──すごく堅実な理由だったんですね。ゲーミングチーム「MOF」設立の経緯についても教えてください。

Nyanpi:法人化を進めつつ、私の資料をTwitterやブログで公開してプロ化したいという思いを発信すると、ありがたいことに、いくつかのプロゲーミングチームからお声かけいただけました。

ですが、起業してゲーミングパソコンの販売をするとなると、自分の会社の活動がチームのスポンサー企業と競合してしまう可能性があり、プロゲーミングチームに所属することを諦めたんです。こういった理由で、自分でゲーミングチームを設立しようと考え始めました。

──会社設立を発表した後、まわりからの反応はどうでしたか?

Nyanpi:YouTubeの配信で起業とチーム設立について発表したのですが、まさか起業するとは誰も思っていなかったみたいで、みんなとても驚いていました。応援の声もたくさんいただいて、本当にありがたく思っています。

──「MOF」としては、今後どういった活動を予定していますか?

Nyanpi:給料や管理などのこともあり、まだ不慣れなので当面の間、選手は私1人だけでいきます。ただ、ストリーマーは採用するかもしれません。それから、みんなが楽しめるような面白い大会を定期的に開催していきます。

今は代表が男性だったり、女性がいないゲーミングチームが多いので、プロを目指して本気で取り組んでいる女性プレイヤーが、安心してゲームに集中できる環境をサポートするチームにしたいと思っています。

──高校卒業後に上京されるそうですが、具体的な活動の予定は決まっているのでしょうか?

Nyanpi:もともとは東京に行くことで、いろいろとオフラインの大会やイベントに参加できると思っていたんです。でも、思った以上にコロナの影響が長引いてしまったので、特に今と変わらず家で練習ですね。


最終目標は、世界大会での優勝!


──最後に、Nyanpiさんの今後の目標や意気込みをお願いします。

Nyanpi:安定して大会上位の成績を残せるような、トップのプロプレイヤーになりたいと思っています。最終的な目標は、「EVO Japan」や「カプコンカップ」などの世界大会で優勝することです。

私の活躍を見て、将来プロゲーマーを目指す女の子が増えたらいいなと思っていて。女性プレイヤーが増えたらeスポーツシーンが華やかになって、もっと盛り上がると思います。

それから、『ストV』以外のゲームでも良いプレイを見せたいです。例えば、ふ~どさんみたいに。ふ~どさんは、『ストV』で安定して大会上位の成績を残していて、かつ他ジャンルのゲームも積極的に配信しているんです。

そうやって、他ジャンルのゲームが好きな人にも、私をきっかけに格闘ゲームに興味を持ってもらえたらいいなと思っています。いずれは、ゲームが好きな層以外の人にも、興味を持ってもらえるような活動もしていきたいです。

ー ー ー

格ゲーを始めてわずか2年の、ウメハラを知らない女子高生がプロゲーマーになる時代。つくづくeスポーツの発展スピードは早く、年齢層の高い“オジ”たちが奮闘している格ゲー界においても、少しずつ若手の活躍が見られ始めている。

インタビュー中の受け答えも、こちらの言葉を聞いて考えた上で、しっかりとした口調で話してくれた。プレイの実力については言わずもがな。誰が見てもそのランクに恥じない強さであることはわかるだろう。

もちろん、まだ設立しただけで、収益を上げる、生活していくというのはこれからの話だ。「学生」という優しいベールがなくなる4月からは、男女の区別もなく、弱肉強食で生き残った者が勝者というeスポーツの過酷な世界で生きていくことになる。

ただ、そのほんわかマイペースそうな優しくも鋭い眼光の中には、未来への怖さや不安よりも「強さ」が感じられた。

Nyanpiという女子プロゲーマーがこれからどんな進化を遂げるのか。日本初の女子高生プロゲーマーが、日本初の女子チャンピオンになれる日が、今から楽しみで仕方がない。


Nyanpi @18歳女子社長プロゲーマー
https://twitter.com/nyanpi55
にゃんぴ YouTubeチャンネル
https://www.youtube.com/watch?v=MyXcWc3RM1g
にゃんぴ Mildom
https://www.mildom.com/10280219
格猫合同会社「MOF」
https://www.kakuneko55.com/

取材サポート:綾本ゆかり

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