【連載】Good 8 Squad カワノ備忘録

レバーレスコントローラーを使い始めたきっかけの話【連載・Good 8 Squad カワノ備忘録 第4回】

2023.5.12 カワノ
はいどうもこんにちは、カワノです。

いつものコラムに入る前に、3月31日〜4月2日まで幕張メッセで開催された「EVO JAPAN 2023」の話を軽くしたいと思います。

「EVO JAPAN 2023」で感じた自分の変化


自分にとって日本での大規模オフライン大会というのはあまり経験がなく、「EVO JAPAN 2023」では目に映るものがかなり新鮮に見えました。

もちろん、これまでも日本での大規模オフライン大会に参加したことはありますが、それはコロナ以前の話で、もう4年前くらいのこと。必然的に当時の僕は、誰かに声をかけられる、ということもなかったわけです。有名でも何でもありませんでしたので。

ですが、今回「EVO JAPAN 2023」に行くにあたって、かなりいろいろな方たちに声をかけていただきました。普段からSNS等で応援してもらっているのもめちゃくちゃありがたいのですが、実際にオフの場でそのような形で写真やサインなどを求めて声をかけてもらうことは、非常に自分にとって力になりました。


「EVO JAPAN 2023」の結果自体は、残念ながら全然よくなかったのですが、参加してよかったなと思いました。これからもよろしくお願いします。



 「この練習だけで『CAPCOM CUP』に出場できるのか……?」


さて、前回は、東京に来て初の海外大会でさっそくTOP8に入ったことで、「このまま練習していけば間違いなくトッププロになれる、大会優勝もできるようになる」と確固たる自信を持った、というところまで話しました。

そんなこんなで帰国して、また同じように練習に励みました。とにかく『ストリートファイターV』だけをやって、誰よりも早く対戦会に行き、誰よりも遅く帰っていました。

まぁ、あのオフ対戦会は関係者がいないと開くことができなかったので、実質りゅうせいさんが一番早く来ていたんですが(笑)。

初の海外大会でTOP8に入れたことで自信もついて、以前までは0-5とかで惨敗してしまっていた人に対しても、2-5とか3-5とかちょっとは食らいつけるようになったりしました。なんならたまに勝てるようになりました。とにかく順調に感じていましたね。





ただ、ここで自分の中にある疑惑が生まれたんです。





この成長速度で“今年"、カプコンカップに出られるのか?」と。





『ストV』がうまくなっているという実感はあったんですが、これじゃ足りないなって思ったんですよね。順調に感じてはいるものの、もっとすごい速度で成長したいと感じ始めたんです。今思えば欲張りさんですね。

じゃあどうすればいいのかと考えた結果、格ゲーの上手さって主に2つに分かれているなって思ったんです。それは、“ゲームの理解度”と“キャラ操作の上手さ”。この2つを兼ね備えているプレイヤーが、俗にいう「格ゲーがうまい人」だなと気づきました。

どれだけゲームの理解度があろうが、キャラ操作が下手だったら思考に体が追いつかないんですよね。

例えば、「ここは絶対に弾を撃ってきそうだから、超必殺技で弾抜けを狙いたい」と考えることができたとしても、超必殺技のコマンドを作るのが遅くて結局弾抜けできないだとか。

例えば、相手の技が届くギリギリの間合いまで前に歩いて技をガードする、通称「歩きガード」が超うまかったとて、それだけしていても次の展開につながらずに勝てないだとか。

「ゲームの理解度」と「キャラ操作の上手さ」、どちらかが欠けていたら格ゲーがうまいとはならないんですよね。とにかくこの2つの要素に格ゲーは収束するなと思いました。

かたや当時の僕はどうだったのかというと、東京で対戦会に通い詰めるようになって、明確にゲームの理解度自体は高まってきている自信がありましたが、キャラ操作の上手さという面を考えた時、それはそれは本当にひどいものだったんです。

当時の僕はレバー方式のコントローラー(いわゆる「アケコン」)を使っていたのですが、ゲーセン世代ではないのでレバーに馴染みが全くなく、他のプロプレイヤーたちと比べて明らかにレバー操作の経験値が足りていませんでした。

本当にレバー操作が下手だったんです。真空波動拳コマンドを出そうとしたら昇竜拳が出てしまうとか、そもそもコマンドを作るのが他の人と比べて遅いとか、歩きガードが下手だとか、とにかく下手でした。

うまい人って、レバーを手首で動かすじゃないですか。ただ僕の場合は、腕ごと使ってレバーを動かしていたので、とにかく無駄な動きが満載でした。あまりにも大げさな動きをするため、よく藤村さんやガチくんに笑われていました。

操作の上手さを鍛えるために頼った人物


「ゲームの理解度自体はこのまま対戦会に通えば高めることができる。ただ、レバー操作の上手さは対戦会に通うだけじゃなくて、しっかり自分で学んで練習しないといけないな」と思ったんです。対戦することで、もちろん少しずつはレバー操作がうまくなるとは思うんですが、対戦である必要がないんですよね。

これは自主練でも伸ばせる部分だと思ったので、じゃあ自主練も並行してさっさとレバー操作をうまくなろう、そうすれば“ゲームの理解度”と“キャラ操作の上手さ”の両方が伸びていって、格ゲーが倍の速さでうまくなれると思ったんです。

じゃあ、どうやってレバー操作がうまくなろうとしたのかというと、ここも人に教えてもらうことにしました。

マゴさんを頼ったんです。


当時はよくマゴさんの家に誘われて二人で対戦していたので、その時に「どうすればレバー操作がうまくなれますか?」と相談しました。

帰ってきた答えは「正直、持ち方・動かし方はなんでもいい。自分に合った方法でいい。えいたとかは動かし方は汚いけどコマンド入力自体はめちゃくちゃきれい。結局大事なのは、コマンドをきれいに入力することを意識すること」と言われました。

アケコン上達のためのメニュー


なるほどと思い、もう一つお願いをしました。

「ありがとうございます。そしたらどういう練習してみればいいですかね? 僕の練習メニュー作ってくれませんか?」と頼んだんです。

マゴさんは僕のコーチでもなければ親でもないんで、面倒かけて申し訳ないと思いつつも頼み込みました。

そしたらマゴさん、快諾してくれまして、僕用にレバー操作がうまくなるための練習メニューを作ってくれたんです。それが以下の内容。

  • 波動コマンド(↓↘︎→) 300回
  • 昇竜拳コマンド(→↓↘︎) 300回
  • しゃがみ技からキャンセル昇竜拳コマンド(→↓↘︎) 300回
  • しゃがみ技からキャンセル真空波動拳コマンド(↓↘︎→↓↘︎→) 300回

これを“ながら”でやるのではなく、しっかり1回1回止めて、キーディスプレイを見てコマンドが本当に完璧に入力されていたのであれば1回にカウントする、いらない入力がひとつでも混じっているならノーカウントという設定でした。

「こういうのはとにかく“ながら”でやっちゃダメ。しっかり1回1回、ちゃんと止めて意識すること」と言われたのを覚えています。また、「このメニューを毎日やってみて、安定してできるようになったら次のステップに行くからまた教えて」とも言われました。

ありがとうございます、とお礼を言って、さっそく家に帰ってからやるわけですよ。するとどうだったのかというと……





マジでできませんでした。






波動拳コマンド300回自体は割と早めに終わらせることができたんですが、昇竜拳コマンドがとにかくできなくて、結局初日はこのメニューを終わらせるために一日を費やしました。技自体は出るんですけど、コマンドが完璧に入力されているかというとされていないんですよね。絶対に関係のない入力がされていたんです。


レバーレスコントローラーとの出会い


いったんその日は終わり、「確かにこのままこの練習を続けていけばうまくなるんだろうけど、対戦も並行してやっていかないといけないしな……」という思いから、次の日にちょっと視点を変えてみることにしました。





これ、レバーにこだわる必要ってないんじゃないのか?」と思い始めたんです。





当時はまだレバーレスの方が絶対に強いという風潮はなく、「なんか珍しいコントローラーだよね、使いこなせれば強いのかな?」くらいの認知度だったのですが、たまたまガフロさんにもらっていたレバーレスコントローラーがあったため、それで上記の練習メニューを試してみました。

すると、昨日は1日費やした練習メニューを、1時間もかからずに終えることができたんです。

この時、「なんだこれ?」と自分の中で革命が起きました。レバーの才能はなかったんですけど、レバーレスの才能はあったみたいです。

あの時マゴさんに相談して練習メニューを作ってもらっていなければ、絶対にそのままレバーで折り合いをつけていたと思うんです。マゴさんに相談することによって、いかに自分がレバー操作が下手なのかということを認識させてもらえたので、レバーレスに移行することができました。

また、この頃レバーレスのプレイヤーは本当にいなかったので、そういった面でも注目され、1年ほど後にHitBoxさんからスポンサードされることになったので、かなり自分の人生の分岐点だったのかなと思います。

レバーレスで初参戦した大会「The MIXUP」


この日からレバーレスに完全に移行して、さらに対戦会での勝率は良くなっていきました。海外大会も回っていきますが、もちろん大会もレバーレスで参加することを決意しました。

そして迎えた次の海外大会「The MIXUP」。フランスのプレミア大会です。

前回も説明したように、プレミア大会はポイントの比重が大きいため、ランキング大会に比べて強豪プレイヤーが多く参加します。要はベルギーの大会よりレベルが高いわけです。

気になる結果はというと……速攻で負けました。なんとかルーザーズでプールは抜けたものの、マゴさんとMOVさんに負けて終わりました……。

というわけで、いよいよ大会でレバーレスコントローラーを実戦投入し始めるわけですが、前回TOP8入りできたランキング大会とは違ってここからはプレミア大会の連続。前回よりも猛者ぞろいの大会に参加していくことになり、果たしてどうなったのか……続きを楽しみにお待ちください。

(続く)


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