【大会レポート+インタビュー】プレー歴1年の天才デュエリストが初代王者に——『遊戯王 マスターデュエル』高校生日本一決定戦
またひとつ、eスポーツの「甲子園」が誕生した。
全国の高校生を対象としたeスポーツ大会「遊戯王 マスターデュエル 高校生日本一決定戦」の第1回が開催。その決勝トーナメントが2026年2月1日(日)、esports TOKYO BAY studio(東京・有明「コナミクリエイティブブロント東京ベイ」)で実施されたので、カードゲーム大好きな筆者は現地で取材をした。
記念すべき初代王者が誕生する瞬間をレポートする。
なお、少しでも多くの方々に「高校生たちのすごさ」を知ってほしいので、遊戯王を知らないひとでも楽しめるように、極力、カード名や専門用語を使わずにレポートする。
余談ではあるが、『遊戯王』を知っている人の中には「《青眼の白龍》が生贄召喚され、その攻撃が《聖なるバリア -ミラーフォース-》で跳ね返される」といった、往年の名シーンを思い浮かべる人も多いだろう。
しかし現在の『遊戯王OCG』や『遊戯王 マスターデュエル』は、選択肢と戦術が大きく広がり、モンスターや魔法が四方八方から飛び交う、はるかにスピーディーでド派手なゲームへと進化している。
進化を遂げた『遊戯王』のバトルが、実際の大会会場でどれほどの熱量を生んでいたのか——その様子を、ここからレポートしていこう。
結果から伝えると、「@イグニ☆’S」が2連勝で優勝を果たした。しかし、その内容は決して一方的なものではない。ひとつひとつのプレーに張り詰めた緊張感があり、達人同士の間合いを測り合うような、「ひとつのミスが命取り」となる激戦が繰り広げられた。

ここからは、『遊戯王 マスターデュエル』を始めて約1年で優勝をつかんだ「@イグニ☆’S」のイチョット選手・チーズ選手と、「うちゅマグキ2人衆」のsebek選手(セベック選手)・nia選手(ニア選手)による決勝戦をお届けする。
いずれのデュエルも決着は一瞬だ。細かなプレーの積み重ねが勝敗を分けるため、ぜひ一瞬も見逃さずに読み進めてほしい。
ここで、チーズ選手が策士だったのは、性質が正反対のふたつのデッキを用意していた点だ。先攻で真価を発揮する【ティアラメンツ】に対し、後攻で最強クラスとされる【天盃龍】。この2択を突きつけることで、相手に難しい判断を迫っていた。
本大会では、選手が事前にふたつのデッキを用意し、対戦ごとにどちらかひとつを選んで使用するルールが採用されている。その仕組みを最大限に生かした構成を選んでいたといえるだろう。

ちなみに、『遊戯王 マスターデュエル』や『遊戯王OCG』では、先攻のプレーヤーはそのターンに攻撃ができない。そのため先攻側は、相手の行動を防ぐ“守りの盤面”を優先して作ることになる。
とはいえ、後攻のプレーヤーが何もできずに見ているだけ、というわけではない。近年の『遊戯王』では、カードを場に出さなくても、手札から直接相手の動きを止められる効果が存在する。これにより、先攻側が理想的な盤面を完成させる前に、展開を抑え込むことが可能だ。
実際にこの試合でも、後攻のnia選手はそうした妨害手段を使い、チーズ選手の展開を“最低限”にとどめることに成功している。

今度は後攻のnia選手が、攻撃のための盤面を作っていく。使用するのは、チームメートと一緒に作り上げた【オノマトライゼオル】だ。
この時点で、nia選手の手札は6枚。
仮に6枚すべてを使うと、その組み合わせだけで720通りにのぼる。さらに、カードを使った結果として生まれる新たな選択肢も含めれば、判断の分岐は一気に広がっていく。
限られた時間の中で、その無数の可能性から最適解を探し当てなければならない。知識と経験、そして瞬間的な判断力が問われる局面だ。

しばしの静寂ののち、お互いのカードの激しい応酬がはじまるが、結果、チーズ選手の強力な妨害カード《増殖するG》が通る形となった。これにより、攻めているはずのnia選手は、厳しい選択を迫られる。
なぜなら、nia選手がモンスターを出すたびに、チーズ選手の手札が増えてしまうことになるので、攻めるなら、確実にこのターンで決着をつけなければならないからだ。nia選手は、相手の手札が増えることは仕方がないとして、自分のモンスターを展開して総攻撃した。
nia選手の表情は苦しい。これは「追い詰めた」ではなく「仕留めきれなかった」からだ。

追い詰められた状況ではあったが、チーズ選手は迷いを見せない。《増殖するG》によって増えた手札をフルに活用し、わずか1ターンでnia選手のライフポイント8000を削り切ったのだ。

ここでイチョット選手が勝つとチームの優勝が確定する。先攻のイチョット選手が使用したのは、【ドラゴンテイル】デッキだ。一般的な【ドラゴンテイル】は後攻を得意とするデッキだが、イチョット選手は先攻にも強くなる調整を施していた。
イチョット選手は「攻め」の盤面ではなく、「守り」の盤面を作り上げる。

後攻のsebek選手は、チームメートのnia選手と同じデッキ【オノマトライゼオル】を選択。「最終戦は一緒に作ったデッキで戦おう」ということなのだろうか。(熱すぎるだろ)
sebek選手はここで長考に入る。試合が始まって、まだ2ターン目だが「ここが重要な局面だ」と分かっているのだろう。

このような場面で、彼らが考えているのは「無数のパターンからどれを選ぶのか」「どこまでのリスクを許容できるか」、および「致命的な抜け漏れがないか」などのダブルチェックだ。「まるで仕事のようだ」と思うかもしれないが、それぐらいひとつのミスも許されない。

妨害を受けながらも、展開したモンスターたちで、sebek選手は総攻撃を仕掛ける。だが、この攻撃でイチョット選手のライフポイントを0にするには至らなかった。

ここからのイチョット選手の判断は速かった。まるで爆発物を処理をするように、sebek選手に妨害手段をひとつずつ「使わせて」いく。イチョット選手の脳内には、「このカードを使えば、相手はこのカードで妨害してくる」という、道筋が浮かんでいるのだろう。

敗者復活戦から這い上がってきた「チーム名:@イグニ☆'S」が見事2連勝で勝利を収めた。

——優勝おめでとうございます! 今回使用したデッキを選んだ理由を教えてください。
チーズ:普段から【天盃龍】という後攻デッキを使っているので、対策されないように、もうひとつは先攻に強い【ティアラメンツ】を使いました。
イチョット:絵柄が好きで【マリス】使い始めて、長く使っているので、今回も慣れたデッキとして使いました。ふたつ目に【ドラゴンテイル】を選んだのは、【マリス】が不利になる【ライオゼル】の対策をするためです。
——今日の戦いで、1番印象的なシーンを教えてください。
チーズ:決勝でのライフポイント350からの逆転です。
イチョット:4回戦目のvs【閃刀姫】で後攻からまくったところですね。
——今回の優勝の要因はどこにあったと考えていますか?
チーズ:途中で一度負けてしまったのですが、そこで落ち込まずに、切り替えられたのが大きいと思います。(※今回のトーナメントはダブルエリミネーションなので、1回負けても敗者復活できる)
イチョット:午前中は相方の調子があまり良くなかったので「自分が引っ張ってやるんだ」っていう強い気持ちが湧いてきて、勝てたのかなと思います。
——お互いの「ここがすごい」と思うところを教えてください。プレーヤーとしての部分と、人柄の部分、それぞれでお願いします。
チーズ:とにかく笑顔が素晴らしい。『遊戯王 マスターデュエル』に対する熱量がすごいと思います。口を開けば『遊戯王 マスターデュエル』の話ばかりで、ほぼ毎日やってて練習量が桁違いです。
イチョット:結構ボケる系なので、一緒にいて面白いです。後攻で強いデッキをよく使っているのですが、後攻のまくり方がうまいなと思います。

——決勝でチームメートに相談していた場面もありましたが、お互いから受けたアドバイスで印象に残ってる言葉はありますか。
チーズ:ライフポイント350 の場面で、自分は「これ負けるんじゃないか」と思ってたんですけど、その時に相方は「いやいける」と言葉をかけてくれたんです。それがすごく安心になりました。
イチョット:相手の行動に対して、妨害を打たなくていいところを教えてくれたり、本当に助かりました。ひとりでやっていたら、負けてたかもしんないところを、勝たせてくれました。
——好きな『遊戯王OCG』や『遊戯王 マスターデュエル』の配信者さんや尊敬している選手はいますか?
イチョット:magu6o / まぐろさんの配信を毎日見ています。プレーもうまいのですが、とにかく配信が面白くてよく見ています。
チーズ:自分はいなくて……。【天盃龍】が好きなのですが、このデッキを積極的に使用する配信者さんが少なく、参考にできる方を見つけられていません。
——ありがとうございました! 将来、チーズ選手は【天盃龍】のトッププレーヤーとして期待ですね。最強プレーヤーたすく選手への「挑戦権」も獲得されたので、こちらの戦いも楽しみにしています。先ほどの質問で「たすく選手」の名前を挙げなかったので、たすく選手もメラメラ燃えてるんじゃないかなと(笑)。今回は本当に優勝おめでとうございます!
筆者が幼少期~大学生の頃に、熱中していた『遊戯王OCG』がデジタル版の『遊戯王 マスターデュエル』として、高校生たちの晴れ舞台になっていることに感動している。
正直「自分が高校生の頃に、こんな大会があれば……」といううらやましさがある。
だが、優勝した彼らのインタビューでの「お互いへの感謝の言葉」からは、ひとりで戦う、カードゲームにおいても、チームメートが心の支えになってことが得られ、筆者としても学びが大きく、今ではうらやましさよりも、彼らを応援したいという気持ちが勝っている。
私事だが、昨年、子どもが産まれたので、第16回目の大会で「我が子が出場しているのかもしれない」と思うと、とても感慨深い。
©スタジオ・ダイス/集英社・テレビ東京・KONAMI ©Konami Digital Entertainment
■配信アーカイブ
編集:いのかわゆう
全国の高校生を対象としたeスポーツ大会「遊戯王 マスターデュエル 高校生日本一決定戦」の第1回が開催。その決勝トーナメントが2026年2月1日(日)、esports TOKYO BAY studio(東京・有明「コナミクリエイティブブロント東京ベイ」)で実施されたので、カードゲーム大好きな筆者は現地で取材をした。
記念すべき初代王者が誕生する瞬間をレポートする。
遊戯王 マスターデュエルとは
トレーディングカードゲーム「遊戯王OCG」準拠のデジタルカードゲーム。40〜60枚のデッキで対戦を行い、各プレーヤーは8000ライフポイントから開始、相手のライフを0にするか、特殊勝利条件で勝利を目指す。モンスター・魔法・罠、さまざまなカードを駆使して戦う。
トレーディングカードゲーム「遊戯王OCG」準拠のデジタルカードゲーム。40〜60枚のデッキで対戦を行い、各プレーヤーは8000ライフポイントから開始、相手のライフを0にするか、特殊勝利条件で勝利を目指す。モンスター・魔法・罠、さまざまなカードを駆使して戦う。
遊戯王 マスターデュエル 高校生日本一決定戦とは
今年で第1回目となる『遊戯王 マスターデュエル』を用いた高校生限定の2人1組のチーム制のeスポーツ大会。日本在住の高校生・定時制高校生・高等専門学校生・通信制高等学校生が対象。予選を通過した8チームが集い、日本一を目指して戦う。
今年で第1回目となる『遊戯王 マスターデュエル』を用いた高校生限定の2人1組のチーム制のeスポーツ大会。日本在住の高校生・定時制高校生・高等専門学校生・通信制高等学校生が対象。予選を通過した8チームが集い、日本一を目指して戦う。
なお、少しでも多くの方々に「高校生たちのすごさ」を知ってほしいので、遊戯王を知らないひとでも楽しめるように、極力、カード名や専門用語を使わずにレポートする。
余談ではあるが、『遊戯王』を知っている人の中には「《青眼の白龍》が生贄召喚され、その攻撃が《聖なるバリア -ミラーフォース-》で跳ね返される」といった、往年の名シーンを思い浮かべる人も多いだろう。
しかし現在の『遊戯王OCG』や『遊戯王 マスターデュエル』は、選択肢と戦術が大きく広がり、モンスターや魔法が四方八方から飛び交う、はるかにスピーディーでド派手なゲームへと進化している。
進化を遂げた『遊戯王』のバトルが、実際の大会会場でどれほどの熱量を生んでいたのか——その様子を、ここからレポートしていこう。
決勝進出者たちが使用したデッキを紹介
決勝レポートを読み進めるうえで、選手たちがどのようなデッキを使っていたのかを知っておくと、試合中の選択や駆け引きがより分かりやすくなる。
ここでは、決勝進出者が使用したデッキについて、それぞれの特徴や戦い方を細かいルール説明を省きつつ簡単に紹介していこう。
専門的な部分は気にせず、「どんな発想のデッキなのか」という視点で読み進めてもらえれば十分だ。
デッキタイプ:【ティアラメンツ】

『遊戯王』は基本的に、相手のモンスターを倒してカードを墓地へ送りながら戦うゲームだ。ティアラメンツは、その“墓地”を“第二の手札”のように扱い、そこから次々と行動を広げていくデッキである。
自分から能動的にカードを墓地へ送り、その効果を連鎖させて一気に展開していくのが特徴で、先攻を取った際の制圧力は非常に高い。決勝戦では、この強力な展開力と妨害性能がどのように発揮されたのかが見どころとなった。
デッキタイプ:【ドラゴンテイル】

ドラゴンテイルは、先攻・後攻どちらでも戦える柔軟さが特徴のデッキだ。複数のモンスターを組み合わせて新たなモンスターを生み出す「融合召喚」を軸にしながら、手札を消費しすぎずに展開を続けられる点が強みとなっている。
一般的には、融合召喚を重ねるほど手札は減っていくが、このデッキではその常識が当てはまらない。状況次第では、展開を進めながら手札を増やすことも可能だ。決勝戦では、本来は後攻向きとされるこのデッキで、先攻時の弱点を補う工夫が随所に見られた。
決勝レポートを読み進めるうえで、選手たちがどのようなデッキを使っていたのかを知っておくと、試合中の選択や駆け引きがより分かりやすくなる。
ここでは、決勝進出者が使用したデッキについて、それぞれの特徴や戦い方を細かいルール説明を省きつつ簡単に紹介していこう。
専門的な部分は気にせず、「どんな発想のデッキなのか」という視点で読み進めてもらえれば十分だ。
デッキタイプ:【ティアラメンツ】

『遊戯王』は基本的に、相手のモンスターを倒してカードを墓地へ送りながら戦うゲームだ。ティアラメンツは、その“墓地”を“第二の手札”のように扱い、そこから次々と行動を広げていくデッキである。
自分から能動的にカードを墓地へ送り、その効果を連鎖させて一気に展開していくのが特徴で、先攻を取った際の制圧力は非常に高い。決勝戦では、この強力な展開力と妨害性能がどのように発揮されたのかが見どころとなった。
デッキタイプ:【ドラゴンテイル】

ドラゴンテイルは、先攻・後攻どちらでも戦える柔軟さが特徴のデッキだ。複数のモンスターを組み合わせて新たなモンスターを生み出す「融合召喚」を軸にしながら、手札を消費しすぎずに展開を続けられる点が強みとなっている。
一般的には、融合召喚を重ねるほど手札は減っていくが、このデッキではその常識が当てはまらない。状況次第では、展開を進めながら手札を増やすことも可能だ。決勝戦では、本来は後攻向きとされるこのデッキで、先攻時の弱点を補う工夫が随所に見られた。
決勝レポート
結果から伝えると、「@イグニ☆’S」が2連勝で優勝を果たした。しかし、その内容は決して一方的なものではない。ひとつひとつのプレーに張り詰めた緊張感があり、達人同士の間合いを測り合うような、「ひとつのミスが命取り」となる激戦が繰り広げられた。

▲左からチーズ選手、イチョット選手
ここからは、『遊戯王 マスターデュエル』を始めて約1年で優勝をつかんだ「@イグニ☆’S」のイチョット選手・チーズ選手と、「うちゅマグキ2人衆」のsebek選手(セベック選手)・nia選手(ニア選手)による決勝戦をお届けする。
いずれのデュエルも決着は一瞬だ。細かなプレーの積み重ねが勝敗を分けるため、ぜひ一瞬も見逃さずに読み進めてほしい。
1試合目:チーズ選手(@イグニ☆'S)vs nia選手(うちゅマグキ2人衆)
ここで、チーズ選手が策士だったのは、性質が正反対のふたつのデッキを用意していた点だ。先攻で真価を発揮する【ティアラメンツ】に対し、後攻で最強クラスとされる【天盃龍】。この2択を突きつけることで、相手に難しい判断を迫っていた。
本大会では、選手が事前にふたつのデッキを用意し、対戦ごとにどちらかひとつを選んで使用するルールが採用されている。その仕組みを最大限に生かした構成を選んでいたといえるだろう。

▲1試合目はチーズ選手が先攻。【ティアラメンツ】で主導権を握りにいく
ちなみに、『遊戯王 マスターデュエル』や『遊戯王OCG』では、先攻のプレーヤーはそのターンに攻撃ができない。そのため先攻側は、相手の行動を防ぐ“守りの盤面”を優先して作ることになる。
とはいえ、後攻のプレーヤーが何もできずに見ているだけ、というわけではない。近年の『遊戯王』では、カードを場に出さなくても、手札から直接相手の動きを止められる効果が存在する。これにより、先攻側が理想的な盤面を完成させる前に、展開を抑え込むことが可能だ。
実際にこの試合でも、後攻のnia選手はそうした妨害手段を使い、チーズ選手の展開を“最低限”にとどめることに成功している。

▲チーズ選手の先攻展開に対し、nia選手は手札から《灰流うらら》を使用。相手が山札からカードを増やそうとした動きを止め、展開の勢いを序盤で抑え込んだ
今度は後攻のnia選手が、攻撃のための盤面を作っていく。使用するのは、チームメートと一緒に作り上げた【オノマトライゼオル】だ。
この時点で、nia選手の手札は6枚。
仮に6枚すべてを使うと、その組み合わせだけで720通りにのぼる。さらに、カードを使った結果として生まれる新たな選択肢も含めれば、判断の分岐は一気に広がっていく。
限られた時間の中で、その無数の可能性から最適解を探し当てなければならない。知識と経験、そして瞬間的な判断力が問われる局面だ。

▲チーズ選手が構える、相手の行動に応じて自分の手札が増える強力な妨害《増殖するG》を止めるため、nia選手は《抹殺の指名者》を使用。しかしチーズ選手は《壱世壊に澄み渡る残響》でこれを無効化し、主導権を譲らなかった。
しばしの静寂ののち、お互いのカードの激しい応酬がはじまるが、結果、チーズ選手の強力な妨害カード《増殖するG》が通る形となった。これにより、攻めているはずのnia選手は、厳しい選択を迫られる。
なぜなら、nia選手がモンスターを出すたびに、チーズ選手の手札が増えてしまうことになるので、攻めるなら、確実にこのターンで決着をつけなければならないからだ。nia選手は、相手の手札が増えることは仕方がないとして、自分のモンスターを展開して総攻撃した。
nia選手の表情は苦しい。これは「追い詰めた」ではなく「仕留めきれなかった」からだ。

▲nia選手の攻撃でチーズ選手のライフポイントは残り350になったが、《増殖するG》によってチーズ選手の手札は9枚まで増えおり、反撃が十分にできる状況に
追い詰められた状況ではあったが、チーズ選手は迷いを見せない。《増殖するG》によって増えた手札をフルに活用し、わずか1ターンでnia選手のライフポイント8000を削り切ったのだ。

▲チーズ選手の《増殖するG》が生んだ手札差を前に、思わず頭を抱えるnia選手。追い詰められた状況から、わずか1ターンでライフ8000を削り切る展開は、さすがとしか言いようがない
2試合目:イチョット選手(@イグニ☆'S)vs sebek選手(うちゅマグキ2人衆)
ここでイチョット選手が勝つとチームの優勝が確定する。先攻のイチョット選手が使用したのは、【ドラゴンテイル】デッキだ。一般的な【ドラゴンテイル】は後攻を得意とするデッキだが、イチョット選手は先攻にも強くなる調整を施していた。
イチョット選手は「攻め」の盤面ではなく、「守り」の盤面を作り上げる。

▲相手のカードを無効化できる《DDD怒涛大王エグゼクティブ・シーザー》を出して、先攻の守りを固めるイチョット選手
後攻のsebek選手は、チームメートのnia選手と同じデッキ【オノマトライゼオル】を選択。「最終戦は一緒に作ったデッキで戦おう」ということなのだろうか。(熱すぎるだろ)
sebek選手はここで長考に入る。試合が始まって、まだ2ターン目だが「ここが重要な局面だ」と分かっているのだろう。

▲チームメートのnia選手と相談をしながら「最適解」を探していく
このような場面で、彼らが考えているのは「無数のパターンからどれを選ぶのか」「どこまでのリスクを許容できるか」、および「致命的な抜け漏れがないか」などのダブルチェックだ。「まるで仕事のようだ」と思うかもしれないが、それぐらいひとつのミスも許されない。

▲盛り返しを狙うsebek選手は、イチョット選手から合計3回の妨害を受けながらも、止まらずにモンスターを展開していく
妨害を受けながらも、展開したモンスターたちで、sebek選手は総攻撃を仕掛ける。だが、この攻撃でイチョット選手のライフポイントを0にするには至らなかった。

▲手札0枚というすべてを出し切った状態で、ターンを渡してしまうsebek選手
ここからのイチョット選手の判断は速かった。まるで爆発物を処理をするように、sebek選手に妨害手段をひとつずつ「使わせて」いく。イチョット選手の脳内には、「このカードを使えば、相手はこのカードで妨害してくる」という、道筋が浮かんでいるのだろう。

▲イチョット選手はsebek選手のモンスターをすべて破壊することに成功する。前のターンで手札を使い切っていたsebek選手に、反撃の術はなかった
敗者復活戦から這い上がってきた「チーム名:@イグニ☆'S」が見事2連勝で勝利を収めた。
優勝者インタビュー

——優勝おめでとうございます! 今回使用したデッキを選んだ理由を教えてください。
チーズ:普段から【天盃龍】という後攻デッキを使っているので、対策されないように、もうひとつは先攻に強い【ティアラメンツ】を使いました。
イチョット:絵柄が好きで【マリス】使い始めて、長く使っているので、今回も慣れたデッキとして使いました。ふたつ目に【ドラゴンテイル】を選んだのは、【マリス】が不利になる【ライオゼル】の対策をするためです。
——今日の戦いで、1番印象的なシーンを教えてください。
チーズ:決勝でのライフポイント350からの逆転です。
イチョット:4回戦目のvs【閃刀姫】で後攻からまくったところですね。
——今回の優勝の要因はどこにあったと考えていますか?
チーズ:途中で一度負けてしまったのですが、そこで落ち込まずに、切り替えられたのが大きいと思います。(※今回のトーナメントはダブルエリミネーションなので、1回負けても敗者復活できる)
イチョット:午前中は相方の調子があまり良くなかったので「自分が引っ張ってやるんだ」っていう強い気持ちが湧いてきて、勝てたのかなと思います。
——お互いの「ここがすごい」と思うところを教えてください。プレーヤーとしての部分と、人柄の部分、それぞれでお願いします。
チーズ:とにかく笑顔が素晴らしい。『遊戯王 マスターデュエル』に対する熱量がすごいと思います。口を開けば『遊戯王 マスターデュエル』の話ばかりで、ほぼ毎日やってて練習量が桁違いです。
イチョット:結構ボケる系なので、一緒にいて面白いです。後攻で強いデッキをよく使っているのですが、後攻のまくり方がうまいなと思います。

——決勝でチームメートに相談していた場面もありましたが、お互いから受けたアドバイスで印象に残ってる言葉はありますか。
チーズ:ライフポイント350 の場面で、自分は「これ負けるんじゃないか」と思ってたんですけど、その時に相方は「いやいける」と言葉をかけてくれたんです。それがすごく安心になりました。
イチョット:相手の行動に対して、妨害を打たなくていいところを教えてくれたり、本当に助かりました。ひとりでやっていたら、負けてたかもしんないところを、勝たせてくれました。
——好きな『遊戯王OCG』や『遊戯王 マスターデュエル』の配信者さんや尊敬している選手はいますか?
イチョット:magu6o / まぐろさんの配信を毎日見ています。プレーもうまいのですが、とにかく配信が面白くてよく見ています。
チーズ:自分はいなくて……。【天盃龍】が好きなのですが、このデッキを積極的に使用する配信者さんが少なく、参考にできる方を見つけられていません。
——ありがとうございました! 将来、チーズ選手は【天盃龍】のトッププレーヤーとして期待ですね。最強プレーヤーたすく選手への「挑戦権」も獲得されたので、こちらの戦いも楽しみにしています。先ほどの質問で「たすく選手」の名前を挙げなかったので、たすく選手もメラメラ燃えてるんじゃないかなと(笑)。今回は本当に優勝おめでとうございます!
取材後記
筆者が幼少期~大学生の頃に、熱中していた『遊戯王OCG』がデジタル版の『遊戯王 マスターデュエル』として、高校生たちの晴れ舞台になっていることに感動している。
正直「自分が高校生の頃に、こんな大会があれば……」といううらやましさがある。
だが、優勝した彼らのインタビューでの「お互いへの感謝の言葉」からは、ひとりで戦う、カードゲームにおいても、チームメートが心の支えになってことが得られ、筆者としても学びが大きく、今ではうらやましさよりも、彼らを応援したいという気持ちが勝っている。
私事だが、昨年、子どもが産まれたので、第16回目の大会で「我が子が出場しているのかもしれない」と思うと、とても感慨深い。
©スタジオ・ダイス/集英社・テレビ東京・KONAMI ©Konami Digital Entertainment
■配信アーカイブ
編集:いのかわゆう
【小川翔太プロフィール】

SEとキャリアコンサルタントを経て、eスポーツジャーナリストに。競技プレーヤーとして「MTG(マジック:ザ・ギャザリング)」の世界大会(プロツアーホノルル2016)出場経験あり。プレーヤー視点、メディア視点、両方の側面から情報発信します。
X:https://x.com/oga_5648

SEとキャリアコンサルタントを経て、eスポーツジャーナリストに。競技プレーヤーとして「MTG(マジック:ザ・ギャザリング)」の世界大会(プロツアーホノルル2016)出場経験あり。プレーヤー視点、メディア視点、両方の側面から情報発信します。
X:https://x.com/oga_5648
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