ENTER FORCE.36の理念はプレイヤーファースト「僕は彼ら“と”強くなりたい」【ENTER FORCE.36 オーナー池田浩士氏インタビュー】

2021.2.15 井ノ川結希(いのかわゆう)
ポップカルチャーを愛し、「人生そのものこそエンターテインメントである」という理念を持った、「ENTER FORCE.36(エンターフォースサーティシックス)」オーナー兼、エンターフォース株式会社 代表取締役社長の池田浩士氏。

九州を拠点に活動するENTER FORCE.36は、さまざまなタイトルの活躍選手を抱え、PUBG部門は2大会連続で日本代表選手として公式国際大会に出場するなど、世界に挑戦し続けている。

結成からたった1年でeスポーツ界に名を馳せる成長を見せる、そんな彗星の如く現れたENTER FORCE.36は、いったいどのようなチームなのか。また、世界に挑戦するために必要なものはどのようなものなのかをうかがってみた。

池田 浩士(いけだ ひろし)
音楽、TV番組、イベント、店舗プロデュースを手がける、総合プロデューサー。幼少の時の音楽経験を生かし、10代から音楽活動を開始。その後、イベントプロデュース、エンターテインメントスクールの講師・運営を務め、2013年に起業。スタジオ運営、楽曲制作、アーティストプロデュースを経験する。

2019年には「eスポーツ業界へ参入」。eスポーツ専門のeスポーツプレイヤーがプレイに没頭できる圧倒的な空間を作り上げ、eスポーツ施設としては日本初となる他県展開、全国展開を手がける。eスポーツチームENTER FORCE.36のオーナー、教育分野への貢献、eスポーツ施設に関する講演、イベント大会のプロデュースなど幅広くeスポーツを通してエンターテインメント活動を行っている。


「子どもたちを大人の食い物にしたいくない」
という“怒り”が起業の原動力


――まずはじめに、どのような経緯でeスポーツチーム「ENTER FORCE.36」が結成されたのか、その経緯をお聞かせください。

池田氏(以下、池田):僕は小さい頃からピアノを習っていて、その流れでバンド経験を得ながら音楽活動をしていました。そこそこLIVEで人気が出てくると、必ず出てくる壁がいわゆる「メジャーデビュー」なんです。

ですが、僕が当時出会ったインディーズレーベルやメジャーレーベル、プロダクション、流通代理店は僕たちの音楽には興味はなく、単純に僕たちの集客力にしか興味を示しませんでした。音源を聞く前に「何人集められるか?」という議論が交わされ始めるんです。それってアーティストとしては悲しいものなんですよね。

そこで21歳の頃に自分でイベント会社を設立しました。イベント会社と言っても、自分たちがLIVEをするためだけに作った小さな会社でしたが、大人の事情に左右される世界からは解放されましたね。

——まずは、音楽事業からスタートだったんですね。

池田:はい。また、僕自身マンガやアニメ、ゲームといったいわゆるポップカルチャーが大好きなので、ポップカルチャーを含めたエンターテインメントの事業を行ってきました。

▲エンターフォース株式会社が出版しているフリーマガジン「オタクマガジン」。創刊後、さまざまな反響を受け、フリーなのに値段が付くという人気ぶり。九州全体へリーチするポプカル・サブカル媒体へと進化を遂げた

バンド活動を経験していたこともあり、10代の若い子が大人の食い物にされているというのを目の当たりにしてきました。そこで、大人たちに左右されずに夢を追いかけられるものはないだろうかというのも起業した要因になっています。

どちらかというと“怒り”の感情から動き出したという感じですね。

——その流れでeスポーツに参入した?

池田:起業当時はeスポーツ事業を立ち上げる意識はなく、音楽をはじめとするエンターテインメント事業を中心として活動していました。

eスポーツという言葉は昔から知っていたのですが、eスポーツ事業を立ち上げようと思ったのは2018年、いわゆるeスポーツ元年ですね。

eスポーツ事業を立ち上げたときに「プレイヤーを取り巻く環境が整備されていない状況で、eスポーツを成長させることは難しい」と感じ、まずはeスタジアムをオープンしました。お店を開くことによって多くのプレイヤーの感動を目にすることができるので、その感動を蓄積していき、今後の事業に生かしたいと考えていました。

▲池田氏がプロデュースするeスポーツ総合施設「eスタジアム」。明るいイメージのお店を「ポップカルチャーが詰め込まれているおもちゃ箱」と池田氏は表現している。PCブースだけでなく、フリースペースを活用したさまざまなカルチャーを体験できる仕様になっており、eスポーツ業界では非常に珍しいお店である

——まずはプレイヤーが気持ちよくプレイできる環境作りからはじまったんですね。そこからチームを設立したのでしょうか?

池田:チームを立ち上げたのも、“怒り”からくるものがあって、選手の扱いが劣悪な、いわゆる「eスポーツの闇」の部分を見てしまったんです。もちろん、eスポーツ業界全体が「悪」ではないのは確かですが、一部の人間が私利私欲のためにプレイヤーを利用している世界が垣間見えました。

自分たちはもともとアーティストマネジメントもしているので、マネジメントには自信があります。そこで、エンターテイメントのスパイスを振りかけた上で、プレイヤーファーストなeスポーツチームを作っていければ面白いのではないかと思ってチームを立ち上げました。

それが今のENTER FORCE.36になります。

▲ENTERTAINMENTの略称であるENTERと、力を示すFORCEの造語としてENTER FORCE。一滴の血を流さずに世界を平和にすることができる軍事力にも匹敵する「エンターテインメントフォース」を、すべてのプレイヤーの「勇気の象徴」とするべく、名称・ロゴを作成。天才科学者ニコラ・テスラが愛した、高次元との調和を表す数字の「369」の中から36を掲げ、足して9になる「不完全からの完全」を意味するチームナンバーを掲げている

日本代表として世界と戦うPUBG部門を設立


——まずはチームではなく環境作りからの参入だったのですね。まず最初に設立した部門はどのタイトルでしたか?

池田:最初にプロリーグ参入を果たしたのはPUBG部門ですね。もともとTeam RAYZEさんに所属していたメンバーが移籍という形で活動をスタートしました。

▲出典:PUBG JAPAN
 

——ENTER FORCE.36のPUBG部門といえば、2大会連続で日本代表選手として公式国際大会に出場されるなど、実力としては折り紙付きですよね。

池田:ありがとうございます。2021年2月から開催される「PUBG Global Invitational.S」(PGI.S)にも日本代表として出場させていただくことになりました。

——おめでとうございます! そのほかの部門はどのようなものがありますか?

池田:そのほかにはレインボーシックス シージ部門や、ウイニングイレブン部門、スマッシュブラザーズSP部門があります。レインボーシックス シージ部門は、昨年の「RAINBOW SIX JAPAN CHAMPIONSHIP 2020」でベスト8でした。

▲「RAINBOW SIX JAPAN CHAMPIONSHIP 2020」の決勝トーナメントに出場した際の選手たち

ウイニングイレブン部門では、昨年行われた「JAPAN eSPORTS GRAND PRIX」でベスト4になりました。決勝に残ったチームが、ヴェルディeスポーツとか、川崎フロンターレとか、いわゆるクラブチームばかりだったのですが、唯一うちだけサッカーチームでないのに決勝に残ったという、なかなか面白い画でした(笑)。

あとは、Apex Legends部門や、VALORANT部門、リーグ・オブ・レジェンド部門など現在トライアウトを含めエントリーを募集しています。

——『Apex Legends』は池田さん自身もプレイされていますよね。

池田:そうですね。個人的にとても好きなタイトルなので、チームとしても活躍できたらうれしいですね。

——『リーグ・オブ・レジェンド』(以下、『LoL』)の選手も募集しているというのは、チームの公式サイトでも拝見したのですが、国内プロリーグ「League of Legends Japan League」(以下、「LJL」)の参加条件ってめちゃめちゃ厳しいじゃないですか?

「LJL」一般公募参加条件について

「LJL」に参加するためには、一般公募の参加条件を満たしている必要があり、その条件というのが年々厳しくなっていることが話題になっている。特に資本金や年間売り上げの基準が高まったことにより、新しいチームが参加するのが厳しい状況となっている。

■2019年一般公募条件(一部抜粋)
・資本金が1,000万円以上であること
・年間売上が合同会社ライアットゲームズからの支払いを除き、5,000万円以上になると合理的に見込まれること

■2020年一般公募条件(一部抜粋)
・資本金が5千万円以上であること
・年間売上が合同会社ライアットゲームズからの支払いを除き、25億円以上になると合理的に見込まれること

池田:そうですね。参加条件が厳しいというのもあって、「LJL」に参加されている既存のチームは、ほとんど固定になっちゃっていると思うんですよ。でも、だからと言って参入を諦める理由にはならないかと。

——確かに! 実はあのチームメンバー募集を見た時、ちょっとうれしくなったんですよ!

池田:固定チームとしてリーグを構成することに魅力も当然ありますが、どんなタイトルであれ挑戦者という姿勢は強いものであると感じています。参加条件を満たしても参入できる保証はどこにもありませんが、まずは参加条件をみたし、挑戦者としてリーグを通して世界戦への道を歩みたいと思っています。

——おおっ、アツいですね!

池田:もちろんRiot Gamesさんのご意向も理解はしています。「選手を一番に考えた時に、選手を守れない企業は一切参加させない」というのは、選手を守るという点でもすばらしいとは思っています。

資本金や売り上げと言った金銭面は「前提条件」であり、数値化できないところにこそその「チームの本質」が存在するのではないかと思いますし、もっと言うとプレイヤーファーストがそこにあればENTER FORCE.36としては責任を果たしていると強く思います。

世界で活躍するためのチーム作りとは


——今紹介していただいたように、ENTER FORCE.36には、さまざまな部門がありますが、どのようにしてタイトルを選抜しているのですか?

池田:大きな軸として「世界で活躍できるか」というところに注目しています。PUBG部門を設立したことで、日本は世界と戦わなければならないということを学びました。

——というと?

池田:ENTER FORCE.36はまだまだ成長段階であり、未熟なチームであることは理解しています。それ故に挑戦者であることは忘れた日はありません。

仮に我々が日本を制したとしても、それは世界を制することには繋がらないんです。ただ世界への挑戦権という切符をもらっただけで、世界の壁はそれほど高く険しいものだと感じました。

日本で通用したものが一切通用しない局面も多く、選手自身が最も痛感していると思いますが、ある意味住んでいる世界が違うと思っています。大会や賞金の金額ひとつをとってもそうですが、何よりは選手に対しての待遇や、eスポーツが市場ではなく産業化されており根本的に「価値観」が異なっているんです。

eスポーツもフィジカルスポーツ同様、選手として活躍できる期間は短いものだと思っています。そういった状況を鑑みると、セカンドキャリアにつながるための蓄えは持たせてあげたい。そう考えると日本だけで戦っていてはダメなんです。


——PUBGでいうと、2018年2月よりスタートした「PUBG JAPAN SERIES」(以下、「PJS」)が幕を下ろし、新たな活躍の場として「PUBG WEEKLY SERIES:EAST ASIA」(以下、「PWS」)が開催されることが決まりました。それにより、よりシビアな試合が展開されることが予想されていますが、その点についてどう思われますか?

池田:PJSという素晴らしいリーグが幕を下ろすことには、僕個人としてもファンとして見ていたので、非常に残念です。PJSがあったからこそ、日本の『PUBG』はここまで成長できたと思いますし、eスポーツを観戦する喜びを教えてくれたリーグに出会ったことは僕が語るまでもありません。

ENTER FORCE.36としては、PJSへの感謝とそこで培った経験を生かして、国際大会に挑める機会をいただいたということは非常にポジティブに考えています。

先ほど申し上げた通り、そもそも、日本と海外では価値観が違いますので、国際大会ではまだまだ挑戦者である姿勢を忘れてはならないと思いますし、おそらくPUBG Corp.は国際水準で戦えるチームを求めてPWSを開催する判断に至ったのではないかと思います。

——なるほど。やっぱり海外のチームは強いですか?

池田:はい。フィジカル面でも戦術面でも抜きん出ているのが、中国とか韓国のチームですね。また、選手いわく「海外のチームは考え方そのものが違う」と言っていますね。

——考え方?

池田:状況を判断するスピードとか、敵がどこにいるのかというような情報の取り方とかですね。海外では、そういったゲーム内のデータを取るために、コーチやアナリストがいるのは当たり前なのですが、日本ではまだまだ意識が低いところですね。

ENTER FORCE.36では、そういった基準を海外ベースにするために、海外のコーチやアナリストとの契約を進めています。やはり世界で戦う以上、水準を上げていかなければなりませんしね。

ただ強いだけでなく、
セカンドキャリアを見据えた選手育成が大切


——ENTER FORCE.36には、いわゆる大会で活躍する選手のほかに、ストリーマー部門がありますね。ただ強いだけではプロゲーマーとして活躍し続けるのは難しいということなのでしょうか?

池田:僕が思う選手にとっての不安材料はセカンドキャリアだと思っています。選手として第一線で活躍できる期間はとても短いので、引退したあともまだまだ人生は続きます。

また、FPSのような動体視力を求められるようなタイトルになると、10代のころから活躍している選手も少なくありません。人生において最も大切とも言える時間をeスポーツに注いでいるわけです。

プロ選手のプレイ時間を合計したら、弁護士試験に合格するまでに必要な時間を超えるとも言われてます。それほど時間を使って手にしたプロというキャリアは人生全体を考えると長くないと思います。

そういった中で、20代後半で選手を引退したとして、再就職先がどれだけあるのかというところに選手は不安を感じています。

そこで、ENTER FORCE.36では、自分の発信力を高めるためにもストリーマー部門を設立しています。活動しながらも配信をし続けることで、セカンドキャリアにつなげられる環境を少しでも残してほしいですしね。

またeスポーツ施設も運営していたり、そのほかのeスポーツ事業も幅広く行っておりますので、引退した選手のセカンドキャリアを保証していける体制を作っています。

——確かに、今プロ選手がアマチュアのプレイヤーにコーチングしている配信が流行ってますもんね。

池田:そうですね。いわゆるフィジカルスポーツでも同じことが言えて、選手のセカンドキャリアはスポーツ業界全体の課題の課題でもあると思っています。

——なるほど。ちなみにENTER FORCE.36では、どのような選手を求めていますか?

池田:もちろん「強さ」も大切ですが、それよりも「この人と強くなりたい」ということに重点をおいています。

これは僕がバンド活動していたころから思っていることなのですが、「このメンバーで音楽をしたい」っていう仲間意識からくるものだと思っています。

僕にとって選手たちは仲間である前に、僕が彼らのファンなんですよ。なので、選手たちは勝ちにこだわってほしいし、僕はそんな選手たちがより活躍できる環境を作ってきたいです。

やっぱり強くなるにも「with」がないと、ENTER FORCE.36は成立しないんです。
僕は「勝ちたい」のではなく、「彼らと勝ちたい」のです。

——いいですねー!

池田:僕はオーナーって言われてますけど、選手たちは弟みたいな存在で、僕にとってはかわいい後輩でもあるんです。選手同士も仲が良くて、この前なんか北海道旅行してましたからね。

その時も、「じゃあ、行っておいで」ってチケットとか宿を手配していたんですけど、そうしたら「オーナー来ないんですか?」って(笑)。


結局僕も誘ってもらいました。(笑)。

やっぱり僕も選手も経営とかゲームだけやっているだけじゃダメで、こういったリフレッシュも選手にとってはものすごく大切なことだと思っています。むしろこのためにいつも頑張っているみたいなこともありますからね。何事も一緒にわかちあえなければ本当のチームと呼べませんからね。

——なんか暖かいチームですね! 最後にENTER FORCE.36として2021年の意気込みをお聞かせください。

池田:「勝ちにこだわる」という部分は、競技シーンに関わる以上鉄則ではあるのですが、その中でも皆様にエンターテイメントをお届けしたいと思っています。

そのためにも、僕たち自身が最高に楽しめる1年にしたいです。

——ありがとうございました!

———

福岡を拠点に世界を相手に戦うENTER FORCE.36。

選手たちはENTER FORCE.36をつかさどる要素であり、ダイヤモンドであると池田氏。常にプレイヤーファーストで物事を考えられるのは、彼が選手たちの兄であり、いちファンであるからこそなのかもしれない。

これからも日本代表として世界に挑戦し、「人生をもっとエンターテインメントに」導いてほしい。

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