【インタビュー】アール「CAPCOM CUP 11で注目しているのは板橋ザンギエフ」——実況解説陣が語る『ストリートファイター6』の競技シーンとは
『ストリートファイター6』の公式大会「CAPCOM Pro Tour 2024 ワールドウォリアー 日本大会」の地域決勝大会が2025年1月19日(日)に、esports Style UENOにて開催された。
強豪選手がひしめく中、安定したプレーで優勝を手にしたのはふ〜ど選手。インタビューの様子は下記記事を見てほしい。
参考記事:
【インタビュー】ふ〜ど「エドがもっと調整されていたら多分自分はここに立てていなかった」——両国国技館で開催される世界大会「CAPCOM CUP 11」最後の切符を手に入れたのはふ〜ど選手!
今回は、本大会のパブリックビューイング会場「esports Style UENO」で実況解説を担当したアール氏、ハメコ。氏、ふり~だ氏の3名の合同インタビューをお届け。本大会の見どころや「CAPCOM CUP 11」の期待などざっくばらんにおうかがいした。
──1年にもおよぶ「ワールドウォリアー」の実況・解説おつかれさまでした。今回の大会を振り返っての感想をお聞かせください。
アール:そもそも「ワールドウォリアー」はオープン大会ということで、誰にでもチャンスがありました。「ストリートファイターリーグ」(SFL)のような選ばれた人だけしか戦えないのではなくて強ければ勝てる大会——。参加人数がどんどん増えて、大きく減ることがなかった。『ストリートファイター6』がいろいろな人にやってもらえているという説得力になりました。
実際はリーガーがかなり活躍していた印象はありますけど、優勝したふ〜ど選手も時間をかけて仕上げたわけで、「ワールドウォリアー」の期間がなかったら、多分別の人が優勝していたでしょうし、大会の回数が3回だったらまた別の人が勝ったかもしれない——。全5回やって最後に決勝戦で決めるという形式の妙が出た印象は強いです。
あと、会場に来てくれた人に最後にアンケートを呼びかけた時、ほとんどの人が(会場のモニターに表示されたQRコードを読んで)回答してくれていたことが印象的でしたね。毎回実況しながらどんどん良くなっていくのを感じられたので、来年にも絶対につながるいい催しだったと感じました。
ハメコ。:結果から見ると長期間やったからこその結果が出たとは思いますね。「SFL」のリーガーがやり込みを強めて結果を出したような見え方にはなるんだけど、こういうオープントーナメントのポイント制大会というのは、(回数を重ねると)絶対に出場者が減るんです。芽がない状態になれば結局決勝大会にはいけない人の方が多くなるので。
それが起こらなかったことは、単純に『ストリートファイター6』と国内競技シーンがいかに盛り上がっているかということ。今回は最後まで盛り上がっていて、それがすごく印象的でした。国内シーンの盛り上がりが数字に現れてるなって感じましたね。
ふり〜だ:僕は今年が実況として「ワールドウォリアー」には初参加だったんですけど、2年目にしてもこの熱量を維持しているということはすごく感じましたね。
合わせて、『ストリートファイター6』自体のゲームバランスがかなり洗練されていると思いました。強いキャラと弱いキャラの差がどう埋まったのかがすごく分かりやすく表れたのが、「ワールドウォリアー」の結果だと考えています。
「SFL」も競技シーンとしてすごく盛り上がれるコンテンツなんですけど、そのコミュニティーと競技シーンの間にあるイベントが「ワールドウォリアー」だと思います。
今年はパブリックビューイングもありましたし「ワールドウォリアー」だからこそできる取り組みが、海外でもチャレンジできると思うので、「ワールドウォリアー」独自の方向性が来年度の「Capcom Pro Tour」の一環として取り組まれるとうれしいと思います。今年参加できてうれしかったです。
──今日の試合で特に印象に残ったものを教えてください。
ふり〜だ:ももち vs GO1 (ごーいち)戦です。やっぱり4セット目のギリギリの状況ですよね。
『ストリートファイター6』の試合というのは、ドライブゲージやその時々の状況を考えると、選択肢がある程度読める展開になることが多いんですが、ドライブゲージがほぼない状態で、バーンアウト寸前のような場面で、どちらが先に動くのか、どちらがバーンアウトするのか、正直言って僕らにも読めない展開だったんですよ。
そういった意味で、この試合は特に「予測不能さ」とでもいうべきものが際立っていました。読み合いというよりは、展開そのもののハラハラ感、ドキドキ感がすごくて、今日一番ボルテージが上がった試合は間違いなくあの試合だと思います。
アール:僕は、おらりん選手がふ〜ど選手とももち選手と戦った2本ですね。どっちも0:3で負けてしまったんですが、その内容が全然違って、対比がすごく面白かったと思うし、勝つための方法はひとつじゃないということがすごく分かりやすかった。ゲームをやっている人にもやっていなくて見ているだけの人にも、全然違う倒し方をしていることが分かる。それはつまりゲームの奥深さにつながるところです。
おらりんというリーガーではないプレーヤーがいて、ひぐち選手を倒して「おい、こいつすごいぞ!」となった後に、ベテランふたりがきれいに分からせたという構図にも思うところがあって——。結構世代交代とか、若い子が強いと言われていますが、ぐうの音も言わせない詰ませ方を、まったく違う形でふたりがやったというのは心に残りました。
ハメコ。:となるともう消去法でしょ(笑)。
やっぱりグランドファイナルですね。ふ〜ど選手とももち選手の取って取られての攻防はすごい精神状態だったと思うし、ベテラン同士の対決だから、ひとつひとつの駆け引きだったり、気をつけようと思っているところが可視化される戦いでしたね。
中でも、ももち選手のドライブのやり取りが印象に残りましたね。削りをSA3に切り替える判断などは、相当経験を積んでいないとSA2にして温存したい気持ちもあり、オタク的にはポイントではあります。
ラッシュを使って攻めたり、ももち選手が対応できないところを詰めていくふ〜ど選手の試合巧者ぶりとか、両者のうまさがあって結果的に長期戦になったので、それを見られたのは楽しかったし、そこがうまく解説できていたらいいなと思います。
──今日は特にミラーマッチが多かったと思うのですが、皆さんが実況・解説で気をつけていることがあったら教えてください。
アール:ミラーマッチはお互い同じことができるから、何かをされた時に俺もこれやらなきゃと思いがちなんです。同じ間合いで同じ技が使えることを、見ている人って忘れがちになるというか——。自分もプレーヤーとしてミラーマッチをやっている心境で実況できているかというとそうでもないんです。
自分がやっている時にこういうところが嫌だ、反省しながらやっている部分を、なるべく実況に入れたいと思いながらしゃべっています。
ハメコ。:ミラーマッチはプレーの特徴とか狙いがむしろはっきり出るんですよね。だから、そこを強調しています。
ふり〜だ:僕はエド vs エドは時間かかるからあまりしゃべらないようにしています(笑)。フリッカーを打ち合っている時って言うことないんですよね。
アール:試合が動くまではね。
ハメコ。:引っ張れた方はうまい。
ふり〜だ:僕が言うわけではなくて、やっぱりハメコ。さんに定義付けてもらうことは大事にしています。例えばもけ選手はこういうタイプ、GO1選手はこういうタイプとか、どちらが上とかではなくて、この特性を生かしてどうやって戦うかというところを明確にした上で試合に挑んでもらっています。
ハメコ。:もともと自分の中でそういう分類をしているので、自然に出てくるんです。自分が解説する時に、このキャラでこの選手だとこれが得意、ということはリスト化されていて、だいたい試合の前後でも語っています。
アール:自分も解説が定義したことになるべく乗っかっていますね。
ハメコ。:そうそう。視聴者も実況・解説の足並みがそろっていた方が見やすいと思うんです。
アール:その上で、もし解釈違いみたいな不可思議なことが起きた時は「あれってこうでしたか?」という球を解説に投げます。実況できるのは仮定までなので、あとは選手の個人配信とかで答えを出してくれるから、そこに誘導するかたちになればいいですね。
——今回の結果を受けて、「CAPCOM CUP 11」で注目している選手はいますか?
アール:僕は板橋ザンギエフ選手ですね。プライベートでも距離が近いから忘れがちなんですけど、今年43歳という年齢で世界大会の舞台に立ってどこまでやれるかが、プロゲーマーの限界を引き上げることだと思うんです。
外から見て格闘ゲーム業界のプロの最前線にこういう人がいるという見え方がされますし、もし優勝でもした日には、「格闘ゲームってこんなに息が長いんだ!」という事実が世界中に大きな影響を与えると思うんです。
ある意味で格闘ゲームって(分かりやすさの面で)優位性があると感じているので、その部分を引き上げてくれたら、業界の可能性も広がるでしょう。欲を言うなら、板橋ザンギエフ選手にはおっさんになってもここまでできるという姿を見せてもらいたいと思います。
ハメコ。:えー、なんだろうな(笑)。注目選手というか、やっぱり日本で行われる「CAPCOM CUP」だけに、日本のプレーヤーに勝ってほしいという気持ちはあります。
(日本勢は)優勝からはちょっと遠ざかっているというとおかしいですが、日本のレベルはすごく高いと思うし、全員が優勝できるポテンシャルを持っていると思う。単純に優勝を見たいという気持ちもありつつ、あまり注目選手とかはいない。自分はやっぱり、格闘ゲームがただ好きなだけなので、いいプレーが見られれば国籍とかは全然どうでもいいです(笑)。
とにかく、日本で世界最強を決める大会が開催されることに興奮していますし、願わくばその決勝戦がみんなが幸せになるようないい試合だといいなと思っているんですけど、全体で見たらやっぱりLesher選手が優勝するんじゃないかと思います(笑)。でも、みんなを応援しています。
ふり〜だ:僕は誰かひとりと言われたら翔選手です。あまりキャラ替えが行われていない中でJPに戻してからも結果が出始めています。
もしかしたら厳しいキャラクターに対しては豪鬼とかベガが出てくる可能性もありますが、彼くらいの若いプレーヤーのシンボルのような存在の人が、キャラ変えに対する敷居の低さや、キャラの強さだけが最適解じゃないということ、「自分に合ったキャラクターを選ぶことも大事なんだよ」といったことを示すお手本になってくれると思うので、これからの活躍に期待しています。
——ありがとうございました!
———
『ストリートファイター6』の大会の見どころは、単純に推しの選手の活躍を応援するだけでなく、自分が使っているキャラをプロ選手がどう扱うのかというのを見るのも楽しいポイントのひとつ。
実況解説それぞれがプレーヤーだということもあり、それぞれが印象に残った試合というのが異なるのも面白いポイントだ。なお、筆者が印象に残った試合は、ひぐち vs GO1戦。SAゲージが2本溜められてしまうと、途端に「ソニックブーム」が撃ちづらくなるひぐち選手に、いちはやくSAゲージを2本溜めてプレッシャーをかけたいGO1選手の攻防が非常にアツかった。
お互いSAゲージが溜まっていない1ラウンド目と、そうでないラウンドでの立ち回りが大きく変わるこのカードもぜひ見返してほしい。なんともむずがゆいひぐち選手の辛さが伝わってくるのではないだろうか。
なお、今回出場権を隠した「CAPCOM CUP 11」は3月5日(水)〜9日(日)に両国国技館で開催される。現在、観戦チケットも販売中なので、ぜひ世界最強が決まる瞬間を生で観戦してほしい。
CAPCOM CUP 11公式:
https://sf.esports.capcom.com/capcomcup/cc11/jp/
CAPCOM CUP 11出場者:
https://sf.esports.capcom.com/cpt/jp/players/
配信アーカイブ
撮影:いのかわゆう
編集:いのかわゆう
CAPCOM Pro Tour 2024 ワールドウォリアー 日本大会とは
『ストリートファイター6』にて、世界中のプレーヤーが年間チャンピオンを目指し、各地域で激戦を繰り広げる大会「CAPCOM Pro Tour 2024」。その大会群のひとつつである「ワールドウォリアー」は、世界各地域のトーナメントオーガナイザーによって数カ月にわたり複数回開催される。
「CAPCOM Pro Tour 2024 ワールドウォリアー 日本大会」は、順位に応じてポイントが獲得できる5回の通常大会と、ポイント順位上位選手8名による決勝大会の全6回で構成され、上位入賞選手は優勝賞金100万ドルの世界決勝大会「CAPCOM CUP 11(カプコンカップ イレブン)」の出場権を獲得できる。
『ストリートファイター6』にて、世界中のプレーヤーが年間チャンピオンを目指し、各地域で激戦を繰り広げる大会「CAPCOM Pro Tour 2024」。その大会群のひとつつである「ワールドウォリアー」は、世界各地域のトーナメントオーガナイザーによって数カ月にわたり複数回開催される。
「CAPCOM Pro Tour 2024 ワールドウォリアー 日本大会」は、順位に応じてポイントが獲得できる5回の通常大会と、ポイント順位上位選手8名による決勝大会の全6回で構成され、上位入賞選手は優勝賞金100万ドルの世界決勝大会「CAPCOM CUP 11(カプコンカップ イレブン)」の出場権を獲得できる。
強豪選手がひしめく中、安定したプレーで優勝を手にしたのはふ〜ど選手。インタビューの様子は下記記事を見てほしい。
参考記事:
【インタビュー】ふ〜ど「エドがもっと調整されていたら多分自分はここに立てていなかった」——両国国技館で開催される世界大会「CAPCOM CUP 11」最後の切符を手に入れたのはふ〜ど選手!
今回は、本大会のパブリックビューイング会場「esports Style UENO」で実況解説を担当したアール氏、ハメコ。氏、ふり~だ氏の3名の合同インタビューをお届け。本大会の見どころや「CAPCOM CUP 11」の期待などざっくばらんにおうかがいした。
実況解説3人が選ぶお気に入りの1戦+注目選手は!?
──1年にもおよぶ「ワールドウォリアー」の実況・解説おつかれさまでした。今回の大会を振り返っての感想をお聞かせください。
アール:そもそも「ワールドウォリアー」はオープン大会ということで、誰にでもチャンスがありました。「ストリートファイターリーグ」(SFL)のような選ばれた人だけしか戦えないのではなくて強ければ勝てる大会——。参加人数がどんどん増えて、大きく減ることがなかった。『ストリートファイター6』がいろいろな人にやってもらえているという説得力になりました。
実際はリーガーがかなり活躍していた印象はありますけど、優勝したふ〜ど選手も時間をかけて仕上げたわけで、「ワールドウォリアー」の期間がなかったら、多分別の人が優勝していたでしょうし、大会の回数が3回だったらまた別の人が勝ったかもしれない——。全5回やって最後に決勝戦で決めるという形式の妙が出た印象は強いです。
あと、会場に来てくれた人に最後にアンケートを呼びかけた時、ほとんどの人が(会場のモニターに表示されたQRコードを読んで)回答してくれていたことが印象的でしたね。毎回実況しながらどんどん良くなっていくのを感じられたので、来年にも絶対につながるいい催しだったと感じました。
ハメコ。:結果から見ると長期間やったからこその結果が出たとは思いますね。「SFL」のリーガーがやり込みを強めて結果を出したような見え方にはなるんだけど、こういうオープントーナメントのポイント制大会というのは、(回数を重ねると)絶対に出場者が減るんです。芽がない状態になれば結局決勝大会にはいけない人の方が多くなるので。
それが起こらなかったことは、単純に『ストリートファイター6』と国内競技シーンがいかに盛り上がっているかということ。今回は最後まで盛り上がっていて、それがすごく印象的でした。国内シーンの盛り上がりが数字に現れてるなって感じましたね。
ふり〜だ:僕は今年が実況として「ワールドウォリアー」には初参加だったんですけど、2年目にしてもこの熱量を維持しているということはすごく感じましたね。
合わせて、『ストリートファイター6』自体のゲームバランスがかなり洗練されていると思いました。強いキャラと弱いキャラの差がどう埋まったのかがすごく分かりやすく表れたのが、「ワールドウォリアー」の結果だと考えています。
「SFL」も競技シーンとしてすごく盛り上がれるコンテンツなんですけど、そのコミュニティーと競技シーンの間にあるイベントが「ワールドウォリアー」だと思います。
今年はパブリックビューイングもありましたし「ワールドウォリアー」だからこそできる取り組みが、海外でもチャレンジできると思うので、「ワールドウォリアー」独自の方向性が来年度の「Capcom Pro Tour」の一環として取り組まれるとうれしいと思います。今年参加できてうれしかったです。
──今日の試合で特に印象に残ったものを教えてください。
ふり〜だ:ももち vs GO1 (ごーいち)戦です。やっぱり4セット目のギリギリの状況ですよね。
『ストリートファイター6』の試合というのは、ドライブゲージやその時々の状況を考えると、選択肢がある程度読める展開になることが多いんですが、ドライブゲージがほぼない状態で、バーンアウト寸前のような場面で、どちらが先に動くのか、どちらがバーンアウトするのか、正直言って僕らにも読めない展開だったんですよ。
そういった意味で、この試合は特に「予測不能さ」とでもいうべきものが際立っていました。読み合いというよりは、展開そのもののハラハラ感、ドキドキ感がすごくて、今日一番ボルテージが上がった試合は間違いなくあの試合だと思います。
アール:僕は、おらりん選手がふ〜ど選手とももち選手と戦った2本ですね。どっちも0:3で負けてしまったんですが、その内容が全然違って、対比がすごく面白かったと思うし、勝つための方法はひとつじゃないということがすごく分かりやすかった。ゲームをやっている人にもやっていなくて見ているだけの人にも、全然違う倒し方をしていることが分かる。それはつまりゲームの奥深さにつながるところです。
おらりんというリーガーではないプレーヤーがいて、ひぐち選手を倒して「おい、こいつすごいぞ!」となった後に、ベテランふたりがきれいに分からせたという構図にも思うところがあって——。結構世代交代とか、若い子が強いと言われていますが、ぐうの音も言わせない詰ませ方を、まったく違う形でふたりがやったというのは心に残りました。
ハメコ。:となるともう消去法でしょ(笑)。
やっぱりグランドファイナルですね。ふ〜ど選手とももち選手の取って取られての攻防はすごい精神状態だったと思うし、ベテラン同士の対決だから、ひとつひとつの駆け引きだったり、気をつけようと思っているところが可視化される戦いでしたね。
中でも、ももち選手のドライブのやり取りが印象に残りましたね。削りをSA3に切り替える判断などは、相当経験を積んでいないとSA2にして温存したい気持ちもあり、オタク的にはポイントではあります。
ラッシュを使って攻めたり、ももち選手が対応できないところを詰めていくふ〜ど選手の試合巧者ぶりとか、両者のうまさがあって結果的に長期戦になったので、それを見られたのは楽しかったし、そこがうまく解説できていたらいいなと思います。
──今日は特にミラーマッチが多かったと思うのですが、皆さんが実況・解説で気をつけていることがあったら教えてください。
アール:ミラーマッチはお互い同じことができるから、何かをされた時に俺もこれやらなきゃと思いがちなんです。同じ間合いで同じ技が使えることを、見ている人って忘れがちになるというか——。自分もプレーヤーとしてミラーマッチをやっている心境で実況できているかというとそうでもないんです。
自分がやっている時にこういうところが嫌だ、反省しながらやっている部分を、なるべく実況に入れたいと思いながらしゃべっています。
ハメコ。:ミラーマッチはプレーの特徴とか狙いがむしろはっきり出るんですよね。だから、そこを強調しています。
ふり〜だ:僕はエド vs エドは時間かかるからあまりしゃべらないようにしています(笑)。フリッカーを打ち合っている時って言うことないんですよね。
アール:試合が動くまではね。
ハメコ。:引っ張れた方はうまい。
ふり〜だ:僕が言うわけではなくて、やっぱりハメコ。さんに定義付けてもらうことは大事にしています。例えばもけ選手はこういうタイプ、GO1選手はこういうタイプとか、どちらが上とかではなくて、この特性を生かしてどうやって戦うかというところを明確にした上で試合に挑んでもらっています。
ハメコ。:もともと自分の中でそういう分類をしているので、自然に出てくるんです。自分が解説する時に、このキャラでこの選手だとこれが得意、ということはリスト化されていて、だいたい試合の前後でも語っています。
アール:自分も解説が定義したことになるべく乗っかっていますね。
ハメコ。:そうそう。視聴者も実況・解説の足並みがそろっていた方が見やすいと思うんです。
アール:その上で、もし解釈違いみたいな不可思議なことが起きた時は「あれってこうでしたか?」という球を解説に投げます。実況できるのは仮定までなので、あとは選手の個人配信とかで答えを出してくれるから、そこに誘導するかたちになればいいですね。
——今回の結果を受けて、「CAPCOM CUP 11」で注目している選手はいますか?
アール:僕は板橋ザンギエフ選手ですね。プライベートでも距離が近いから忘れがちなんですけど、今年43歳という年齢で世界大会の舞台に立ってどこまでやれるかが、プロゲーマーの限界を引き上げることだと思うんです。
外から見て格闘ゲーム業界のプロの最前線にこういう人がいるという見え方がされますし、もし優勝でもした日には、「格闘ゲームってこんなに息が長いんだ!」という事実が世界中に大きな影響を与えると思うんです。
ある意味で格闘ゲームって(分かりやすさの面で)優位性があると感じているので、その部分を引き上げてくれたら、業界の可能性も広がるでしょう。欲を言うなら、板橋ザンギエフ選手にはおっさんになってもここまでできるという姿を見せてもらいたいと思います。
ハメコ。:えー、なんだろうな(笑)。注目選手というか、やっぱり日本で行われる「CAPCOM CUP」だけに、日本のプレーヤーに勝ってほしいという気持ちはあります。
(日本勢は)優勝からはちょっと遠ざかっているというとおかしいですが、日本のレベルはすごく高いと思うし、全員が優勝できるポテンシャルを持っていると思う。単純に優勝を見たいという気持ちもありつつ、あまり注目選手とかはいない。自分はやっぱり、格闘ゲームがただ好きなだけなので、いいプレーが見られれば国籍とかは全然どうでもいいです(笑)。
とにかく、日本で世界最強を決める大会が開催されることに興奮していますし、願わくばその決勝戦がみんなが幸せになるようないい試合だといいなと思っているんですけど、全体で見たらやっぱりLesher選手が優勝するんじゃないかと思います(笑)。でも、みんなを応援しています。
ふり〜だ:僕は誰かひとりと言われたら翔選手です。あまりキャラ替えが行われていない中でJPに戻してからも結果が出始めています。
もしかしたら厳しいキャラクターに対しては豪鬼とかベガが出てくる可能性もありますが、彼くらいの若いプレーヤーのシンボルのような存在の人が、キャラ変えに対する敷居の低さや、キャラの強さだけが最適解じゃないということ、「自分に合ったキャラクターを選ぶことも大事なんだよ」といったことを示すお手本になってくれると思うので、これからの活躍に期待しています。
——ありがとうございました!
———
『ストリートファイター6』の大会の見どころは、単純に推しの選手の活躍を応援するだけでなく、自分が使っているキャラをプロ選手がどう扱うのかというのを見るのも楽しいポイントのひとつ。
実況解説それぞれがプレーヤーだということもあり、それぞれが印象に残った試合というのが異なるのも面白いポイントだ。なお、筆者が印象に残った試合は、ひぐち vs GO1戦。SAゲージが2本溜められてしまうと、途端に「ソニックブーム」が撃ちづらくなるひぐち選手に、いちはやくSAゲージを2本溜めてプレッシャーをかけたいGO1選手の攻防が非常にアツかった。
お互いSAゲージが溜まっていない1ラウンド目と、そうでないラウンドでの立ち回りが大きく変わるこのカードもぜひ見返してほしい。なんともむずがゆいひぐち選手の辛さが伝わってくるのではないだろうか。
なお、今回出場権を隠した「CAPCOM CUP 11」は3月5日(水)〜9日(日)に両国国技館で開催される。現在、観戦チケットも販売中なので、ぜひ世界最強が決まる瞬間を生で観戦してほしい。
CAPCOM CUP 11公式:
https://sf.esports.capcom.com/capcomcup/cc11/jp/
CAPCOM CUP 11出場者:
https://sf.esports.capcom.com/cpt/jp/players/
配信アーカイブ
撮影:いのかわゆう
編集:いのかわゆう
【井ノ川結希(いのかわゆう)プロフィール】
ゲーム好きが高じて19歳でゲーム系の出版社に就職。その後、フリーランスでライター、編集、ディレクターなど多岐にわたり活動している。最近はまっているゲームは『VALORANT』。
X:@sdora_tweet
ゲーム好きが高じて19歳でゲーム系の出版社に就職。その後、フリーランスでライター、編集、ディレクターなど多岐にわたり活動している。最近はまっているゲームは『VALORANT』。
X:@sdora_tweet
eSports World の
Discord をフォローしよう
Discord をフォローしよう
SALE
大会
チーム
他にも...?
他にも