日本のeスポーツ発展の鍵は、世界に行けるチームの存在【株式会社ASH WINDER CEO グラハム・ソ氏インタビュー】
- 2017年当時まだ日本になかった、eスポーツ専用施設を開設
- eスポーツ×アパレルは日本特有のeスポーツ文化
- 海外のeスポーツ会社のブランチとして、満を持して東京進出
- 名乗るだけでプロチームになれる日本のシステムの問題
- 5年以内に日本版「LoL Park」を作りたい
ASH WINDER(アッシュ ウィンダー)という会社をご存じだろうか。
2017年に大阪・心斎橋でeスポーツ施設を立ち上げ、関西では日本でeスポーツが人気となった2018年以前から大会などが開かれてきたおなじみの施設だ(現在は改装中)。
そんなASH WINDERが今年になって、『レインボーシックス シージ』や『ストリートファイターリーグ』のキャスターとして活躍するふり〜だ氏、『VALORANT』の解説者を務めるyukisiro氏が所属する「ASH WINDER CULTURE」の設立を発表したり、高田馬場に新たな施設「ASH WINDER Esports ARENA 高田馬場店」をオープンさせるなど、にわかによく名前を耳にするようになってきた。
ただ、正直なところ、ウェブサイトなどを見てもどんな会社かがよくわからない。施設を運営していて、キャスターを抱えたりもしているが、チームを持っているわけでもない。コロナが明けたとはいえこのご時世に施設運営だけで本当に儲かっているのかも不明瞭だ。
そんな疑問をぶつけてみたところ、代表取締役のグラハム ソ氏がインタビューに応じてくれた。テーマも大変失礼ながら「ASH WINDERってどんな会社?」だ。
しかし話をうかがってみると、実は彼らが世界的なeスポーツイベントの経験を携えて日本に進出してきたということや、日本人ではないからこそ見える日本のeスポーツの魅力と課題などを赤裸々に語ってくれた。
おそらくeスポーツ関係者にとっても勇気づけられる言葉がたくさんあるだろう。世界を知るグラハム氏からみた日本のeスポーツの評価に、耳を傾けていただければ幸いだ。
──今回お話をうかがいたいと思ったのは、まずは「ASH WINDER」ってどんな会社? という素朴な疑問からでした。まずは、代表であるグラハムさんのお話から聞かせてください。
グラハム:ありがとうございます(笑)。年齢は29歳です。日本には日本語を勉強するために留学して、1年間語学学校に通って、そのあと大学に入りました。
生まれは中国の江蘇省というところで、元々小学校からずっとイギリスに住んでいました。ただ、ぶっちゃけ食事が無理というところもあって(笑)、アメリカも当時はあまり安全じゃなかった。それで、文化が近いし距離的にも近い日本が一番いいんじゃないかと日本に留学しました。
──当時からすでに、eスポーツで生きていこう、と思っていらしたんですか?
グラハム:いえ、当時は全く思いませんでした。でも、中国は2012年からeスポーツのブームが始まっていて、日本に来る時にはもう、ゲームのイベントも知ってはいました。
──eスポーツを仕事にしようと思ったきっかけは?
グラハム:日本の大学で同じ寮だったソンさん(代表取締役社長のソン ジュンジエ氏。元Invictus Gaming)と出会い、その紹介でイベント会社に入りました。それから、僕たちも日本でいつかeスポーツをやりたいと思うようになって一緒に会社を作り、eスポーツを本気で、それも日本でやることになりました。
──そこからeスポーツ施設のASH WINDER Esports ARENA 心斎橋店を立ち上げた経緯は?
グラハム:2015年頃に「なにか日本でeスポーツをやろう」と2人で話していたんです。当時は中国が結構eスポーツが強くて、我々も中国に戻ったときにいろいろ見ていましたから。ただ、日本にはまだ全くなかった。なので、「これはいいチャンスだ、中国で流行っているeスポーツを日本に持って来たい」と考えました。
2017年に会社を立ち上げて、実際に何をやるかを考えて、たくさんの企業とも話しました。今考えたら、当時は我々も焦っていましたし若かったので、言っているのは今の日本でも到達できないような領域の話ばかりでした。だから、クライアントの皆さんも理解できなかったし、単純に私たちの社会的信用力も弱かった。
これじゃいけない、ひとつ大きなものを作りましょうということで、 大阪でアリーナを立ち上げました。当時は日本にこういうeスポーツ施設がなかったですし、ないものを作るのって楽しいじゃないですか。
──当時の話としてよく韓国や中国では「PCバン」が流行っていたと聞きますが、自宅ではなくPCバンで遊んでいたのはなぜだったんでしょう? オンラインゲームなら自宅でも遊べますよね。
グラハム: 中国では2000年頃からPCバンが急速に増えていき、2012年頃にはもう爆発していました。「2012年は中国のeスポーツ元年」とも言われています。
PCバンに人が集まったのは、単純にオンラインで黙々とやるのは面白くない、ということです。今回コロナも挟んでいますが、私たちもオフラインでやる方が楽しい、面白いということが伝えたくて。
ちょうど先日行われた「ふもっふキャスター杯」(ふもっふのおみせ CASTER CUP)というイベントでは、片方のチームメンバーが意気投合して、高田馬場に集まってオフラインで参加されていて、もう片方はオンライン参加だったのですが、我々から見ても会場にいるメンバーは全員めっちゃ楽しそうで、お互い話をしながら「イエイ!」とかチェイスしていて。でも、オンラインのチームはもう消沈していました。結局実際に会わないとこういうチーム戦はやりづらいんですよね。
もちろん、普段遊ぶだけならネット上でいいんですけど、eスポーツは今どんどん社交的になってきていて、だからこそアリーナが存在する意味もあるんです。
コンサートとかも家でもオンラインで見られるじゃないですか。では、なぜチケットを買って現場に行くのか。理由は同じですね。
──その「楽しさ」っていう根源的な部分を実現したいところから施設を立ち上げた、と。
グラハム:そうです。あとは単純に日本にこういう施設がほとんどなかったんです。
ネットカフェとかもリサーチしたんですけど、あそこは横並びの人とではなく、ネットの中の人とMMORPGなどをプレイする人が多くいました。PCも古く、eスポーツのために作った施設ではないですから。以前のネカフェには汚いというイメージもありましたね。
あと、今のeスポーツはアパレルなどがおしゃれ。我々も次世代とかサイバー系の雰囲気を作るために施設をデザインしていますが、eスポーツは若者や女性のファンが多い印象もありますね。
──日本のeスポーツがそうやってアパレルとかファッションと関係していったのを感じたタイミングはありますか?
グラハム:間違いなくそれを始めたのがZETA DIVISIONですね。やっぱりZETAがリードして女性のファンが増えてきた印象です。キレイな女性がいれば、周りの男性も徐々にキレイになっていくんです。なので、それがすごく大事。
昔ながらのゲーマーのやや汚いイメージを、おしゃれな方向に展開したことで、女性のファンも付いたし、見ている若者もそれを真似しています。なので、日本のeスポーツはすごくいい方向に進化していると思います。
強さだけじゃ足りない。いまeスポーツ選手に必要なのは格好よさ【JUPITER(現 ZETA DIVISION) オーナー 西原大輔氏インタビュー】
https://esports-world.jp/interview/5018
──では、グラハムさんがご覧になってきた中国とかイギリスのeスポーツの歴史と比べると、日本はどうですか?
グラハム:eスポーツ自体はまだまだだと思いますけど、eスポーツ×アパレルといった方向では、もう世界をリードしているんじゃないかと思うんです。女性のファンの数も明らかに多いです。
今年開催された『VALORANT』の「Masters Tokyo」で、中国からテンセントとかBilibiliの友達が来た時に、「え、もうこんなに日本はeスポーツファンが多いの?」と、あの会場にパンパンで集まっていたことに驚いていました。彼らのイメージは結局コロナ前で止まっているんですよね、来れなかったですから。
──たしかにそうですね。
グラハム:たしかに、コロナ前に僕たちが大阪で運営していたアリーナは、100人集まってもうれしいくらいでした。それがコロナが終わって、Masters Tokyoのように1万人でもパーっと集れるようになりました。
ある意味でコロナのおかげでもあるんじゃないかなというくらい、eスポーツは進化しています。というか、日本のデジタルが進化したんですね。
──ところで、心斎橋にeスポーツ施設を作ったのは自分たちが欲しいeスポーツ施設がなかったから、とのことでしたが、東京進出についても同じような理由ですか?
グラハム:いえ、出発点は東京でも事業を展開したい、ということでした。
我々は海外の企業、特にバナナカルチャーなどの韓国LCKを運営している会社とか、世界規模のつながりを元々持っていて、日本のブランチみたいなイメージなんです。
──たしかにウェブサイトの「実績」のページに「LCK」などが書かれていましたが、どういう意味かわかりませんでした。
グラハム:実はASH WINDERは施設運営だけじゃなく、日本向けのイベント運営や制作なども行っているeスポーツ総合エンターテイメント会社なんです。
eスポーツコンテンツ制作、eスポーツ施設運営、eスポーツタレントMCN事業を3本の柱として展開しています。
今年も少し前に『ハリー・ポッター:魔法の覚醒』というゲームのアジアのイベントを、マレーシアと韓国と日本で一緒に開催したのですが、その日本部分の制作も弊社が担当しました。
──つまり、施設の運営とは全く別の業務があるわけですね。
グラハム:はい、東京で事業を展開したいというのも、施設事業を展開したいというだけではなくて、eスポーツ全般の事業を東京で展開していきたいんです。その礎というかベースとなる場所が、このASH WINDER Esports ARENA 高田馬場店というイメージになります。
──なるほど……。
グラハム:元々こういう実績はずっと前から、韓国や中国とのつながりで行っていたのですが、コロナがあって、大阪ではそこまで密な連携が取れなかったんです。やっとコロナが落ち着いて、これからガンガン動いていきたいというのも我々の願望であり、日本にはこれから可能性があるので、本気で動き出しましょう、というところです。自分たちの施設があれば大会もできますからね。
──そういったイベントが盛り上がっているというのはよくわかるのですが、韓国や中国から見ればまだ日本のeスポーツイベントは全然弱いですよね。日本は今後の可能性があると判断されているということでしょうか?
グラハム:いえ、そこは僕たちがそう伝えています(笑)。定例会議などで最近日本もいい感じになっているよ、ということは話しますね。
言ってみれば、僕らは日本に置いてある「ワード」(『LoL』のアイテムのひとつで、見えない場所を見えるようにするもの)みたいな存在ですから。僕らを通して日本の状況がよく見えるので、こんな感じだよ、ということは伝えています。
──なるほど、海を越えた先で視界を確保していると(笑)。
グラハム:ただ、イベント的に言うと残念なのが、結局Masters Tokyoって、日本の会社はあまり使われていなかったですよね。そこは我々としていろいろなメンバーを集めて、将来的に日本のイベントをもっと魅力あるものに仕上げたいと思っています。
日本のeスポーツの制作のレベルも、世界と比べるとまだまだ伸び代があると思っています。海外のパブリッシャーとも話したのですが、なぜこんなにお金をかけて海外のチームを連れてこないといけないのか。要は、日本の国内だけでももっとできることがあるけれど、現状では日本だけでは足りないという判断なんですよね。
ただ、日本で大きな大会が開催できるようになったことはすごく大きいので、これから徐々にeスポーツのイベント系は発展していけるんじゃないかなと思います。そこで、我々もイベント制作会社として、人材を派遣したりということをこれからやっていくところです。
──そういった理由からタレントマネジメント業務が始まったんですね。正直なぜ施設運営の会社が? と最初は驚きました。でも、なぜキャスターさんを集めているのでしょうか?
グラハム:我々がブランディング的に優秀なタレントを確保したいということもあります。
タレントマネジメントや新人発掘に関しては、ASH WINDER CULTURE airという別会社を立ち上げました。この「air」は育成の部分です。これからアリーナを使ってイベントなどをやりながら、若いタレントを育成したりもしていきたいんです。
──そのair部門としてはどんな人材が欲しいのでしょうか? 最近だとYouTuberとかストリーマーがどのチームにも所属していて才能を発揮していますが。
グラハム:いえ、僕らが考えるストリーマーと、キャスターなどのタレントは立ち位置がちょっと違います。
たとえば「Riot Games ONE」でストリーマーが1万人の前に立ってイベントを回せるかというと、やはり難しい。出演者としてはよくても、MCとしては話せません。そこは、タレントはタレント、ストリーマーはストリーマーだと思います。
eスポーツ業界って、大きく4つに分けられると思っているんです。①イベントの制作、②施設の運営、③eスポーツチーム関連、④eスポーツタレント関連。
その中で、タレントがチームに所属するというのは、基本的に難しいわけです。特定のチームに属している人をキャスターなどに起用するのはNGだったりしますからね。
なので、うちとしては施設の運営、イベントの制作、タレントマネジメントという3本を軸に、eスポーツの業界に幅広く展開していくのをコンセプトにしています。
──チームを持つおつもりはないんですか? と聞こうと思ったんですが、先に答えを言われてしまいました(笑)。
グラハム:正直なところ、チームを持つ必要はまだないと思っています。意志としてもあまりないです。
僕たちの認識としては、チーム活動自体が広告宣伝費みたいなものだと思うんです。チーム運営ではほぼ儲かってはいない。業界に対して投資するというビジネスなんですよ。しかも、成績が取れないと基本意味がない。
ただ、日本には海外とはまったく違うすごいチームの活用法があるんです。
──それはなんですか?
グラハム:アパレルです。チームのウェアやコラボグッズなどで儲けている。これは日本の特徴だと思います。僕たちが今まで考えたこともなかった方向でした。
──たしかに多くのチームでブランドとコラボしたウェアなどを販売していますが、海外でもチームウェアやグッズなどはありますよね。そんなに違うんですか?
グラハム:ここまで力を入れている地域はないんですよ。中国のチームは世界でかなり成績を挙げることで、スポンサーを集めています。そういった今までのビジネスモデルでは、日本はまだそこまで強くないんですが、アパレルがめちゃくちゃ売れていますね。それが日本の文化でもあると思います。
逆に、僕たちはこの3つのコンセプトでチームをサポートできるんですよ。先日も「Worlds 2023」の際に、DetonatioN FocusMeさんのファンミーティングを実施しました。必要に応じて、3本の柱(イベント制作、施設運営、タレントマネジメント)で、チームやコミュニティをさまざまな面からサポートできる体制を整えています。
──チーム運営のお話も出ましたが、eスポーツの取り組みが「投資」のフェーズから「回収」のフェーズに入れるのはどこか、というのも個人的に気になっています。成績を挙げたチームでも解散したりと、資金が尽きて続かないことでeスポーツに対する負のイメージもあります。そういった日本のeスポーツ業界の現状についてはどう思われますか?
グラハム:そこは、ちょっと見方が違って、僕はまったくそうは思わないです。
というのも、先頭を走っている強豪チームは撤退していません。僕は外国人なので率直に言わせていただくと、元々無理なものは無理なんです。続かないチームが出てしまうのを見て「eスポーツ業界はダメ」と言うのは間違っていると思います。しかも、結構そういう見方をされる方が日本では多い。
実力がないチームが淘汰されていくのは、どんな世界でも当たり前の話です。日本の大きな問題は、認定システムがないことです。
──認定システムですか?
グラハム:中国では、eスポーツの協会に登録したチームと選手がいます。日本はそこが整っていない。どこが本当に優れたeスポーツチームなのか、どこがそうじゃないのかがはっきりしてないんです。だから、自称プロ選手が勝手にチームを組んで、勝手に撤退して、eスポーツ業界のイメージが悪くなってしまっている。
──たしかに、日本はeスポーツビジネスよりも先に、アマチュアから成績がいい選手が現れて、eスポーツの業界が出来上がった側面もありました。JeSUライセンスなども整備されましたが、すべてのeスポーツを統括しているわけではないですね。
グラハム:トップで戦っているチームにとっても、そういう日本のeスポーツチームの現状はつらいと感じているのではないでしょうか。勝手に淘汰されていくチームや選手が「eスポーツはもうダメだから撤退します」と発言するのはやめてほしいですね。この業界で頑張っている企業さん、頑張っているチームに泥を塗っているのと同じことですから。
なぜなら、日本のトップクラスのチームにそういうチームはほぼありません。何年も前から頑張っているチームが今でも健在しているし、さらに成長もしています。
大会運営側もそれには気づいていて『VALORANT』の「VCT」のようなシステムを作っています。リーグ戦をしっかり作って、昇格システムで入れ替われる上位の枠も定めている。プロを自称しているチームなどが上がってくることを防げます。
【VALORANT】新VCTの幕開け!2023年の大会概要・ルール変更点のまとめ
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──日本に対してそういう考えを持っている方がeスポーツイベントや施設運営をされているというのは、eスポーツに関わる人間としてはすごく心強く思います。
グラハム:日本のeスポーツはまだまだ未来がありますよ。
メタバースの話題も一時期盛り上がりましたが、我々はメタバースの始まりと終わりはゲームだと思っています。ゲーマーの比率はどんどん上がっているし、海外ではゲームがアートともとらえられています。音楽とか映画とかと同じレベルですね。eスポーツも絶対、これからずっと発展していくものなんです。次世代のスポーツとして。
ただ、どういうかたちで存在していくのかは変わっていくかもしれません。いまはケータイやゲーミングパソコン、家庭用ゲーム機、さらにVRとゲームにふれるモノが変わっていますが、本質のゲームという部分は変わっていない。しかも日本には世界にはないアパレルという文化があります。これは強いです。
ASH WINDERも、頑張ってこの業界をサポートしていきます。もちろんパブリッシャーさんとも話していますし、11月19日(日)には「Worlds 2023」のファイナルのパブリックビューイングも行いました。『LoL』の世界大会のファイナルがここで楽しめるわけですからワクワクしますよね。
今後は、eスポーツの公式リーグなどもここでやってほしいですし、日本には随時オフライン大会ができる会場がまだまだ必要なんです。
──今後のASH WINDERとしての夢はなんですか?
グラハム:日本の中でビジネスを展開していますが、我々もブランディング的にも、大型のイベントだったり価値があるイベントにどんどん関わりたいですし、トップブランドとも提携していきたいとは思っています。
その上で、5年以内には「ASH WINDER PARK」を作りたいんです。これはあくまで現時点では軽く考えてほしいのですが、みなさんにも言っていることです。
──韓国の「LoL Park」みたいなものですか? それは夢がありますね!
グラハム:ただ、この高田馬場店だけでも2年探したので、 結局は場所なんですよね。我々がやるとしたら絶対に失敗はしたくない。だから、完璧な場所を探しているんです。
グループ会社のバナナがLCKを運営しているので、構造とかさまざまなデータの蓄積もありますから、そのノウハウを日本にも持ってこれるわけです。
高田馬場店もイベントのたびに設備を動かしていますが、幕張メッセや横浜アリーナのような常設施設ではない場所ですと、イベントのたびにすべてを撤去しなければならないですからね。
──もうひとつ、日本のeスポーツが海外のように発展していくために、いま日本のeスポーツ業界に必要なことはなんでしょう?
グラハム:難しいですが……世界に行くチームが少ないということですね。
海外のeスポーツもあちこちにチームやタイトルがあるんですけど、日本はやっぱり知名度的にもまだ少ない。ZETA DIVISIONが世界3位を獲った2022年は、私は日本の「eスポーツ元年」だったと思います。
──2018年とも言われていましたが、本当の意味では2022年だと。
グラハム:そうですね、それが本当の日本のeスポーツの始まりかもしれません。
海外では基本的にバランスをとっていろいろなチームがあるんです。ただ、日本は1位だけがダントツに差があって、2位以下は対等な勝負ができない。そうなると、多分ZETAもいつかは弱くなっていってしまうんですよね。
じゃあどうしたらいいのかといえば、各チームが昔はできなかったことをやること。セカンドチームをどんどん育てていく。正直それしかないんですよ。時間もかかります。LCKにしても同じでした。
──結局若手が成長していくから将来のチームも成長していくわけですよね。海外ではだいぶ前から2部リーグやアカデミーなどもあり、日本よりも1周先回りしているわけですもんね。
グラハム:以前活躍していたベテラン選手がいて、その下の選手が上がってきて、スター選手が出てくる、というのは日本はまだ1巡目ですから。時間はかかると思うのですが、待つしかない。でも、いろいろなチームが少しずつやり始めているのはすごくいいことじゃないかなと思います。
冒頭で抱いていたASH WINDERへの疑問は、ある意味ではわからなくても当然だったのかもしれない。表向きには施設運営会社に見えるが、その実、世界一のeスポーツ大国である韓国や中国とのパイプを持ち、裏方として活躍しており、それは表向きにはなかなか見えるものではなかった。
しかし、コロナも落ち着き、ASH WINDER Esports ARENA 高田馬場店を足がかりに、日本のeスポーツに足りないピースが少しずつそろってきた。同じようなeスポーツ業界の発展を願う会社とともに、日本ならではのアパレルの取り組みや、まだまだこれからというeスポーツの発展に向けて、前向きな声が聞けたことが非常に印象的だった。
ASH WINDER Esports ARENA 高田馬場店
https://www.aw-a.net/
ASH WINDER
https://ash-winder.com/
2017年に大阪・心斎橋でeスポーツ施設を立ち上げ、関西では日本でeスポーツが人気となった2018年以前から大会などが開かれてきたおなじみの施設だ(現在は改装中)。
そんなASH WINDERが今年になって、『レインボーシックス シージ』や『ストリートファイターリーグ』のキャスターとして活躍するふり〜だ氏、『VALORANT』の解説者を務めるyukisiro氏が所属する「ASH WINDER CULTURE」の設立を発表したり、高田馬場に新たな施設「ASH WINDER Esports ARENA 高田馬場店」をオープンさせるなど、にわかによく名前を耳にするようになってきた。
ただ、正直なところ、ウェブサイトなどを見てもどんな会社かがよくわからない。施設を運営していて、キャスターを抱えたりもしているが、チームを持っているわけでもない。コロナが明けたとはいえこのご時世に施設運営だけで本当に儲かっているのかも不明瞭だ。
そんな疑問をぶつけてみたところ、代表取締役のグラハム ソ氏がインタビューに応じてくれた。テーマも大変失礼ながら「ASH WINDERってどんな会社?」だ。
しかし話をうかがってみると、実は彼らが世界的なeスポーツイベントの経験を携えて日本に進出してきたということや、日本人ではないからこそ見える日本のeスポーツの魅力と課題などを赤裸々に語ってくれた。
おそらくeスポーツ関係者にとっても勇気づけられる言葉がたくさんあるだろう。世界を知るグラハム氏からみた日本のeスポーツの評価に、耳を傾けていただければ幸いだ。
2017年当時まだ日本になかった、eスポーツ専用施設を開設
──今回お話をうかがいたいと思ったのは、まずは「ASH WINDER」ってどんな会社? という素朴な疑問からでした。まずは、代表であるグラハムさんのお話から聞かせてください。
グラハム:ありがとうございます(笑)。年齢は29歳です。日本には日本語を勉強するために留学して、1年間語学学校に通って、そのあと大学に入りました。
生まれは中国の江蘇省というところで、元々小学校からずっとイギリスに住んでいました。ただ、ぶっちゃけ食事が無理というところもあって(笑)、アメリカも当時はあまり安全じゃなかった。それで、文化が近いし距離的にも近い日本が一番いいんじゃないかと日本に留学しました。
──当時からすでに、eスポーツで生きていこう、と思っていらしたんですか?
グラハム:いえ、当時は全く思いませんでした。でも、中国は2012年からeスポーツのブームが始まっていて、日本に来る時にはもう、ゲームのイベントも知ってはいました。
──eスポーツを仕事にしようと思ったきっかけは?
グラハム:日本の大学で同じ寮だったソンさん(代表取締役社長のソン ジュンジエ氏。元Invictus Gaming)と出会い、その紹介でイベント会社に入りました。それから、僕たちも日本でいつかeスポーツをやりたいと思うようになって一緒に会社を作り、eスポーツを本気で、それも日本でやることになりました。
──そこからeスポーツ施設のASH WINDER Esports ARENA 心斎橋店を立ち上げた経緯は?
グラハム:2015年頃に「なにか日本でeスポーツをやろう」と2人で話していたんです。当時は中国が結構eスポーツが強くて、我々も中国に戻ったときにいろいろ見ていましたから。ただ、日本にはまだ全くなかった。なので、「これはいいチャンスだ、中国で流行っているeスポーツを日本に持って来たい」と考えました。
2017年に会社を立ち上げて、実際に何をやるかを考えて、たくさんの企業とも話しました。今考えたら、当時は我々も焦っていましたし若かったので、言っているのは今の日本でも到達できないような領域の話ばかりでした。だから、クライアントの皆さんも理解できなかったし、単純に私たちの社会的信用力も弱かった。
これじゃいけない、ひとつ大きなものを作りましょうということで、 大阪でアリーナを立ち上げました。当時は日本にこういうeスポーツ施設がなかったですし、ないものを作るのって楽しいじゃないですか。
──当時の話としてよく韓国や中国では「PCバン」が流行っていたと聞きますが、自宅ではなくPCバンで遊んでいたのはなぜだったんでしょう? オンラインゲームなら自宅でも遊べますよね。
グラハム: 中国では2000年頃からPCバンが急速に増えていき、2012年頃にはもう爆発していました。「2012年は中国のeスポーツ元年」とも言われています。
PCバンに人が集まったのは、単純にオンラインで黙々とやるのは面白くない、ということです。今回コロナも挟んでいますが、私たちもオフラインでやる方が楽しい、面白いということが伝えたくて。
ちょうど先日行われた「ふもっふキャスター杯」(ふもっふのおみせ CASTER CUP)というイベントでは、片方のチームメンバーが意気投合して、高田馬場に集まってオフラインで参加されていて、もう片方はオンライン参加だったのですが、我々から見ても会場にいるメンバーは全員めっちゃ楽しそうで、お互い話をしながら「イエイ!」とかチェイスしていて。でも、オンラインのチームはもう消沈していました。結局実際に会わないとこういうチーム戦はやりづらいんですよね。
もちろん、普段遊ぶだけならネット上でいいんですけど、eスポーツは今どんどん社交的になってきていて、だからこそアリーナが存在する意味もあるんです。
コンサートとかも家でもオンラインで見られるじゃないですか。では、なぜチケットを買って現場に行くのか。理由は同じですね。
──その「楽しさ」っていう根源的な部分を実現したいところから施設を立ち上げた、と。
グラハム:そうです。あとは単純に日本にこういう施設がほとんどなかったんです。
ネットカフェとかもリサーチしたんですけど、あそこは横並びの人とではなく、ネットの中の人とMMORPGなどをプレイする人が多くいました。PCも古く、eスポーツのために作った施設ではないですから。以前のネカフェには汚いというイメージもありましたね。
あと、今のeスポーツはアパレルなどがおしゃれ。我々も次世代とかサイバー系の雰囲気を作るために施設をデザインしていますが、eスポーツは若者や女性のファンが多い印象もありますね。
eスポーツ×アパレルは日本特有のeスポーツ文化
──日本のeスポーツがそうやってアパレルとかファッションと関係していったのを感じたタイミングはありますか?
グラハム:間違いなくそれを始めたのがZETA DIVISIONですね。やっぱりZETAがリードして女性のファンが増えてきた印象です。キレイな女性がいれば、周りの男性も徐々にキレイになっていくんです。なので、それがすごく大事。
昔ながらのゲーマーのやや汚いイメージを、おしゃれな方向に展開したことで、女性のファンも付いたし、見ている若者もそれを真似しています。なので、日本のeスポーツはすごくいい方向に進化していると思います。
強さだけじゃ足りない。いまeスポーツ選手に必要なのは格好よさ【JUPITER(現 ZETA DIVISION) オーナー 西原大輔氏インタビュー】
https://esports-world.jp/interview/5018
──では、グラハムさんがご覧になってきた中国とかイギリスのeスポーツの歴史と比べると、日本はどうですか?
グラハム:eスポーツ自体はまだまだだと思いますけど、eスポーツ×アパレルといった方向では、もう世界をリードしているんじゃないかと思うんです。女性のファンの数も明らかに多いです。
今年開催された『VALORANT』の「Masters Tokyo」で、中国からテンセントとかBilibiliの友達が来た時に、「え、もうこんなに日本はeスポーツファンが多いの?」と、あの会場にパンパンで集まっていたことに驚いていました。彼らのイメージは結局コロナ前で止まっているんですよね、来れなかったですから。
──たしかにそうですね。
グラハム:たしかに、コロナ前に僕たちが大阪で運営していたアリーナは、100人集まってもうれしいくらいでした。それがコロナが終わって、Masters Tokyoのように1万人でもパーっと集れるようになりました。
ある意味でコロナのおかげでもあるんじゃないかなというくらい、eスポーツは進化しています。というか、日本のデジタルが進化したんですね。
海外のeスポーツ会社のブランチとして、満を持して東京進出
──ところで、心斎橋にeスポーツ施設を作ったのは自分たちが欲しいeスポーツ施設がなかったから、とのことでしたが、東京進出についても同じような理由ですか?
グラハム:いえ、出発点は東京でも事業を展開したい、ということでした。
我々は海外の企業、特にバナナカルチャーなどの韓国LCKを運営している会社とか、世界規模のつながりを元々持っていて、日本のブランチみたいなイメージなんです。
──たしかにウェブサイトの「実績」のページに「LCK」などが書かれていましたが、どういう意味かわかりませんでした。
グラハム:実はASH WINDERは施設運営だけじゃなく、日本向けのイベント運営や制作なども行っているeスポーツ総合エンターテイメント会社なんです。
eスポーツコンテンツ制作、eスポーツ施設運営、eスポーツタレントMCN事業を3本の柱として展開しています。
今年も少し前に『ハリー・ポッター:魔法の覚醒』というゲームのアジアのイベントを、マレーシアと韓国と日本で一緒に開催したのですが、その日本部分の制作も弊社が担当しました。
──つまり、施設の運営とは全く別の業務があるわけですね。
グラハム:はい、東京で事業を展開したいというのも、施設事業を展開したいというだけではなくて、eスポーツ全般の事業を東京で展開していきたいんです。その礎というかベースとなる場所が、このASH WINDER Esports ARENA 高田馬場店というイメージになります。
──なるほど……。
グラハム:元々こういう実績はずっと前から、韓国や中国とのつながりで行っていたのですが、コロナがあって、大阪ではそこまで密な連携が取れなかったんです。やっとコロナが落ち着いて、これからガンガン動いていきたいというのも我々の願望であり、日本にはこれから可能性があるので、本気で動き出しましょう、というところです。自分たちの施設があれば大会もできますからね。
──そういったイベントが盛り上がっているというのはよくわかるのですが、韓国や中国から見ればまだ日本のeスポーツイベントは全然弱いですよね。日本は今後の可能性があると判断されているということでしょうか?
グラハム:いえ、そこは僕たちがそう伝えています(笑)。定例会議などで最近日本もいい感じになっているよ、ということは話しますね。
言ってみれば、僕らは日本に置いてある「ワード」(『LoL』のアイテムのひとつで、見えない場所を見えるようにするもの)みたいな存在ですから。僕らを通して日本の状況がよく見えるので、こんな感じだよ、ということは伝えています。
──なるほど、海を越えた先で視界を確保していると(笑)。
グラハム:ただ、イベント的に言うと残念なのが、結局Masters Tokyoって、日本の会社はあまり使われていなかったですよね。そこは我々としていろいろなメンバーを集めて、将来的に日本のイベントをもっと魅力あるものに仕上げたいと思っています。
日本のeスポーツの制作のレベルも、世界と比べるとまだまだ伸び代があると思っています。海外のパブリッシャーとも話したのですが、なぜこんなにお金をかけて海外のチームを連れてこないといけないのか。要は、日本の国内だけでももっとできることがあるけれど、現状では日本だけでは足りないという判断なんですよね。
ただ、日本で大きな大会が開催できるようになったことはすごく大きいので、これから徐々にeスポーツのイベント系は発展していけるんじゃないかなと思います。そこで、我々もイベント制作会社として、人材を派遣したりということをこれからやっていくところです。
──そういった理由からタレントマネジメント業務が始まったんですね。正直なぜ施設運営の会社が? と最初は驚きました。でも、なぜキャスターさんを集めているのでしょうか?
グラハム:我々がブランディング的に優秀なタレントを確保したいということもあります。
タレントマネジメントや新人発掘に関しては、ASH WINDER CULTURE airという別会社を立ち上げました。この「air」は育成の部分です。これからアリーナを使ってイベントなどをやりながら、若いタレントを育成したりもしていきたいんです。
──そのair部門としてはどんな人材が欲しいのでしょうか? 最近だとYouTuberとかストリーマーがどのチームにも所属していて才能を発揮していますが。
グラハム:いえ、僕らが考えるストリーマーと、キャスターなどのタレントは立ち位置がちょっと違います。
たとえば「Riot Games ONE」でストリーマーが1万人の前に立ってイベントを回せるかというと、やはり難しい。出演者としてはよくても、MCとしては話せません。そこは、タレントはタレント、ストリーマーはストリーマーだと思います。
eスポーツ業界って、大きく4つに分けられると思っているんです。①イベントの制作、②施設の運営、③eスポーツチーム関連、④eスポーツタレント関連。
その中で、タレントがチームに所属するというのは、基本的に難しいわけです。特定のチームに属している人をキャスターなどに起用するのはNGだったりしますからね。
なので、うちとしては施設の運営、イベントの制作、タレントマネジメントという3本を軸に、eスポーツの業界に幅広く展開していくのをコンセプトにしています。
──チームを持つおつもりはないんですか? と聞こうと思ったんですが、先に答えを言われてしまいました(笑)。
グラハム:正直なところ、チームを持つ必要はまだないと思っています。意志としてもあまりないです。
僕たちの認識としては、チーム活動自体が広告宣伝費みたいなものだと思うんです。チーム運営ではほぼ儲かってはいない。業界に対して投資するというビジネスなんですよ。しかも、成績が取れないと基本意味がない。
ただ、日本には海外とはまったく違うすごいチームの活用法があるんです。
──それはなんですか?
グラハム:アパレルです。チームのウェアやコラボグッズなどで儲けている。これは日本の特徴だと思います。僕たちが今まで考えたこともなかった方向でした。
──たしかに多くのチームでブランドとコラボしたウェアなどを販売していますが、海外でもチームウェアやグッズなどはありますよね。そんなに違うんですか?
グラハム:ここまで力を入れている地域はないんですよ。中国のチームは世界でかなり成績を挙げることで、スポンサーを集めています。そういった今までのビジネスモデルでは、日本はまだそこまで強くないんですが、アパレルがめちゃくちゃ売れていますね。それが日本の文化でもあると思います。
逆に、僕たちはこの3つのコンセプトでチームをサポートできるんですよ。先日も「Worlds 2023」の際に、DetonatioN FocusMeさんのファンミーティングを実施しました。必要に応じて、3本の柱(イベント制作、施設運営、タレントマネジメント)で、チームやコミュニティをさまざまな面からサポートできる体制を整えています。
名乗るだけでプロチームになれる日本のシステムの問題
──チーム運営のお話も出ましたが、eスポーツの取り組みが「投資」のフェーズから「回収」のフェーズに入れるのはどこか、というのも個人的に気になっています。成績を挙げたチームでも解散したりと、資金が尽きて続かないことでeスポーツに対する負のイメージもあります。そういった日本のeスポーツ業界の現状についてはどう思われますか?
グラハム:そこは、ちょっと見方が違って、僕はまったくそうは思わないです。
というのも、先頭を走っている強豪チームは撤退していません。僕は外国人なので率直に言わせていただくと、元々無理なものは無理なんです。続かないチームが出てしまうのを見て「eスポーツ業界はダメ」と言うのは間違っていると思います。しかも、結構そういう見方をされる方が日本では多い。
実力がないチームが淘汰されていくのは、どんな世界でも当たり前の話です。日本の大きな問題は、認定システムがないことです。
──認定システムですか?
グラハム:中国では、eスポーツの協会に登録したチームと選手がいます。日本はそこが整っていない。どこが本当に優れたeスポーツチームなのか、どこがそうじゃないのかがはっきりしてないんです。だから、自称プロ選手が勝手にチームを組んで、勝手に撤退して、eスポーツ業界のイメージが悪くなってしまっている。
──たしかに、日本はeスポーツビジネスよりも先に、アマチュアから成績がいい選手が現れて、eスポーツの業界が出来上がった側面もありました。JeSUライセンスなども整備されましたが、すべてのeスポーツを統括しているわけではないですね。
グラハム:トップで戦っているチームにとっても、そういう日本のeスポーツチームの現状はつらいと感じているのではないでしょうか。勝手に淘汰されていくチームや選手が「eスポーツはもうダメだから撤退します」と発言するのはやめてほしいですね。この業界で頑張っている企業さん、頑張っているチームに泥を塗っているのと同じことですから。
なぜなら、日本のトップクラスのチームにそういうチームはほぼありません。何年も前から頑張っているチームが今でも健在しているし、さらに成長もしています。
大会運営側もそれには気づいていて『VALORANT』の「VCT」のようなシステムを作っています。リーグ戦をしっかり作って、昇格システムで入れ替われる上位の枠も定めている。プロを自称しているチームなどが上がってくることを防げます。
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──日本に対してそういう考えを持っている方がeスポーツイベントや施設運営をされているというのは、eスポーツに関わる人間としてはすごく心強く思います。
グラハム:日本のeスポーツはまだまだ未来がありますよ。
メタバースの話題も一時期盛り上がりましたが、我々はメタバースの始まりと終わりはゲームだと思っています。ゲーマーの比率はどんどん上がっているし、海外ではゲームがアートともとらえられています。音楽とか映画とかと同じレベルですね。eスポーツも絶対、これからずっと発展していくものなんです。次世代のスポーツとして。
ただ、どういうかたちで存在していくのかは変わっていくかもしれません。いまはケータイやゲーミングパソコン、家庭用ゲーム機、さらにVRとゲームにふれるモノが変わっていますが、本質のゲームという部分は変わっていない。しかも日本には世界にはないアパレルという文化があります。これは強いです。
ASH WINDERも、頑張ってこの業界をサポートしていきます。もちろんパブリッシャーさんとも話していますし、11月19日(日)には「Worlds 2023」のファイナルのパブリックビューイングも行いました。『LoL』の世界大会のファイナルがここで楽しめるわけですからワクワクしますよね。
今後は、eスポーツの公式リーグなどもここでやってほしいですし、日本には随時オフライン大会ができる会場がまだまだ必要なんです。
5年以内に日本版「LoL Park」を作りたい
──今後のASH WINDERとしての夢はなんですか?
グラハム:日本の中でビジネスを展開していますが、我々もブランディング的にも、大型のイベントだったり価値があるイベントにどんどん関わりたいですし、トップブランドとも提携していきたいとは思っています。
その上で、5年以内には「ASH WINDER PARK」を作りたいんです。これはあくまで現時点では軽く考えてほしいのですが、みなさんにも言っていることです。
──韓国の「LoL Park」みたいなものですか? それは夢がありますね!
グラハム:ただ、この高田馬場店だけでも2年探したので、 結局は場所なんですよね。我々がやるとしたら絶対に失敗はしたくない。だから、完璧な場所を探しているんです。
グループ会社のバナナがLCKを運営しているので、構造とかさまざまなデータの蓄積もありますから、そのノウハウを日本にも持ってこれるわけです。
高田馬場店もイベントのたびに設備を動かしていますが、幕張メッセや横浜アリーナのような常設施設ではない場所ですと、イベントのたびにすべてを撤去しなければならないですからね。
──もうひとつ、日本のeスポーツが海外のように発展していくために、いま日本のeスポーツ業界に必要なことはなんでしょう?
グラハム:難しいですが……世界に行くチームが少ないということですね。
海外のeスポーツもあちこちにチームやタイトルがあるんですけど、日本はやっぱり知名度的にもまだ少ない。ZETA DIVISIONが世界3位を獲った2022年は、私は日本の「eスポーツ元年」だったと思います。
──2018年とも言われていましたが、本当の意味では2022年だと。
グラハム:そうですね、それが本当の日本のeスポーツの始まりかもしれません。
海外では基本的にバランスをとっていろいろなチームがあるんです。ただ、日本は1位だけがダントツに差があって、2位以下は対等な勝負ができない。そうなると、多分ZETAもいつかは弱くなっていってしまうんですよね。
じゃあどうしたらいいのかといえば、各チームが昔はできなかったことをやること。セカンドチームをどんどん育てていく。正直それしかないんですよ。時間もかかります。LCKにしても同じでした。
──結局若手が成長していくから将来のチームも成長していくわけですよね。海外ではだいぶ前から2部リーグやアカデミーなどもあり、日本よりも1周先回りしているわけですもんね。
グラハム:以前活躍していたベテラン選手がいて、その下の選手が上がってきて、スター選手が出てくる、というのは日本はまだ1巡目ですから。時間はかかると思うのですが、待つしかない。でも、いろいろなチームが少しずつやり始めているのはすごくいいことじゃないかなと思います。
※ ※ ※
冒頭で抱いていたASH WINDERへの疑問は、ある意味ではわからなくても当然だったのかもしれない。表向きには施設運営会社に見えるが、その実、世界一のeスポーツ大国である韓国や中国とのパイプを持ち、裏方として活躍しており、それは表向きにはなかなか見えるものではなかった。
しかし、コロナも落ち着き、ASH WINDER Esports ARENA 高田馬場店を足がかりに、日本のeスポーツに足りないピースが少しずつそろってきた。同じようなeスポーツ業界の発展を願う会社とともに、日本ならではのアパレルの取り組みや、まだまだこれからというeスポーツの発展に向けて、前向きな声が聞けたことが非常に印象的だった。
ASH WINDER Esports ARENA 高田馬場店
https://www.aw-a.net/
ASH WINDER
https://ash-winder.com/
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