【JoxJo選手 独占インタビュー】僕がFENNELを選んだ理由——チームを勝利へと導くJoxJo選手の頭脳に迫る

VALORANT』の国内リーグ「Challengers JAPAN」のSplit2(シーズン2)もいよいよクライマックスへと迫っている。6月3日(土)〜4日(日)には、エディオンアリーナ大阪にてオフラインでプレーオフが開催される。

プレーオフに出場が決まったSCARZ(SZ)、Jadeite(JDT)、FENNEL(FL)の3チーム。中でも、FLはSplit1(シーズン1)で優勝を果たし、Split2でもプレーオフで激戦を戦い抜いてきたチームということもあり注目を浴びている。

▲3月18日(土)〜19日(日)にインテックス大阪で開催された「VALORANT CHALLENGERS JAPAN 2023 Split 1-Playoff Finals」で優勝を勝ち取ったFL

そんなFLの頭脳ともいえるJoxJo(じょじょ)選手に、JUIN(じゅいん)マネージャーの通訳を交えて独占インタビュー。彼の頭脳に迫るとともに、NORTHEPTION(Nth)時代の振り返り、オフライン大会への意気込みを語っていただいた。

FENNELの強みは? 弱点は?


——今年の国内リーグで、FENNELはSplit1では優勝、Split2でもプレーオフ進出(オフライン大会確定)と好成績を収めています。今チームの完成度はどれくらいですか?

JoxJo選手(JoxJo):70%くらいまでには仕上がっていると思います。ただ僕以外のメンバーは年齢的にも若い選手が多いので、安定したパフォーマンスが出せない部分がちょっと心配ですね。

今もメンバー全員でがんばって練習しているので、残りの30%を仕上げつつオフライン大会に挑めたらいいなぁ。

——JoxJo選手にとってFLの強みはどこにあると感じていますか?

JoxJo:FLの強みは有利な状況でも、不利な状況でも相手のプレイを把握して、落ち着いたプレイができるという点だと思っています。

——以前のインタビューでCLZ選手がFLはBo5に強いというお話をされていました。JoxJo選手もBo5に強いチームだと感じていますか?

参考:
【VALORANT】Bo5は僕たちにとってプラスでしかない——FENNEL CLZ選手 mltdwnコーチインタビュー

JoxJo:今までBo5になってから負けたこともないですし、選手全員が「勝ちたい」というメンタルが強いので、Bo5ではそういった強さが一番出せるんじゃないかなと思います。

——FLに加入する前、「俺がFENNELに入れば必ず勝てる」というメッセージを送っていたというのが話題になっていました。そして今現在、その通りに勝ち続けることができているのは、さすがだと思っています。


JoxJo:ありがとうございます!

日本の強豪チームであるZETA DIVISIONが、国外のPacificリーグで活躍するなど、今年から『VALORANT』の公式大会も大きく変化しています。あのメッセージを送った時、国内リーグでCrazy Raccoon(CR)のような完成度の高いチームと渡り合える選手がそろっていたのはFLしかいないと思っていたし、さらに自分のIGL(ゲーム内リーダー)が加われば、よりFLを勝利に導けると自信を持っていました。

そういった自信が結果に実ったのはうれしいですね。

——有言実行し続けているのはさすがです! 今ちょうど話題になったCRですが、JoxJo選手はCRキラーとしても有名なIGLだと思っています。Nth所属時代からJoxJo選手はCRに勝ち続けていますよね。なぜ国内屈指のCRに勝ち続けることができるのでしょうか。JoxJo選手がCRに勝ち続けることができる秘訣を教えてください。

※JoxJo選手が公式の大会でCRと対戦したのは、Nth時代の2022年「Champions Tour Japan Stage 1: Challengers Playoffs」の第1戦。ここでは1:2で敗北してしまったが、ここから先はNthとして4連勝負けなし。そしてFLに移籍後は2023年「Challengers League Japan: Split 1」で初めてCRと対戦し第1戦目で敗北。その後は3連勝負けなしと、どちらのチームでも勝ち越しを継続している

JoxJo:CRは国内屈指の強豪チームでもあるので、僕はCRの試合の動画をすべて見ています。「CRがこういう動きをしたら、僕たちはこうやって対応しよう」っていうのをイメージしながら分析をしているので、実際の試合でもIGLとしてコールすることで作戦が刺さる場面が多いんじゃないかな。

あとは運も味方してくれたんじゃないかな。

——NthとFLでIGLのやり方は変わりましたか?

JoxJo:そもそもゲームスタイルも違いますし、大きく変わりましたね。Nth時代はBailコーチのスタイルや知識に合わせたIGLをしていました。一方で、FLではJohntaコーチやEulerコーチ、meltdwnコーチと、コーチが3人いるので、コーチそれぞれのスタイルが組み合わさるのは大きな変化だと思います。

あと僕自身、去年に比べて日本語も上達してきたので、IGLのやり方も自信が付いてきて、詳しいことまで話ができるIGLに進化と感じています。

——なるほど。平日はどのようなスケジュールで練習しているんですか?

JoxJo:基本的には大会スケジュールに合わせてはいるんですが、普段は14時からチーム活動がはじまります。ただ僕はIGLを担当しているので、30分前にはコーチ軍と一緒に今日練習する内容を話し合います。

チームの活動では、まず今日やること、今日練習したい作戦の内容、または選手間のフィードバックや、ディスカッションなどを2〜3時間かけて行います。

そのあとにスクリムを4〜5回プレイして、再びフィードバックを受けてディスカッションをします。

——結構話し合いの時間もしっかり取られているんですね。

JoxJo:そうですね。チーム練習が終わったあとは、Johntaコーチの希望もあって、個人レッスンをする時間を設けています。デスマッチや射撃場といった手をほぐす練習も20〜30分くらいあります。

——おおっ、めちゃめちゃハード! あと今回お話を聞きたいと思っていた理由のひとつとして、最近JoxJo選手の元気がないのが心配だったというのもあります。いつも笑顔だったJoxJo選手でしたが、いつからか配信のインタビューでも笑顔が少なくなっていたのが印象的でした。


JoxJo:個人的なストレスもありましたし、IGLに関してもそうだし——うーん。

僕自身勝ちたい気持ちもあって、Nthに所属していた時からお休みの時もずっと『VALORANT』のことだけを考えていました。その結果メンタル的にも体調的にも疲れを感じてしまってあのツイートをしました。

個人的な問題もありましたし、チーム内の問題もあったりと、あの頃は元気がなくなってしまいました。特にプレーオフのローワーで戦ったCrest Gaming Zst戦では僕自身パニックになっていたこともあって、ちゃんとしたプレイができていなかったんじゃないかな……。

▲試合は3:2で勝利を収めたものの、配信のインタビューでも自身のパフォーマンスが悪いというのを話していたJoxJo選手。心なしかほかの選手よりも元気がないようにも見える(https://www.youtube.com/watch?v=RAk0xQn2DAs&t=23089s

——確かにずっと競技シーンを突っ走ってきていますもんね。今は大丈夫なのでしょうか。

JoxJo:今はそういうストレスや、問題もすべて解決できているので大丈夫です!

パニックになっていた時に「JoxJoはがんばっているよ」ってメンバーが慰めてくれたり、試合が終わったあともhiroronn選手やCLZ選手が個人的に連絡してくれたり、チームのスタッフやマネージャーさんも僕が元気出せるように話を聞いてくれたり——。チームみんなが支えてくれたことに感動して、「(辛いこともあったけど)がんばらなきゃ」って思いました。


NORTHEPTIONからFENNELに移籍した理由


——ここからはちょっと時代をさかのぼったお話を聞かせてください。JoxJo選手が所属していたNthでは、同じ韓国人のMeteor選手やBailコーチが、インターナショナルリーグ出場が決まっていた🇰🇷Gen.Gに移籍しましたね。JoxJo選手やJUINマネージャーが日本のチームに移籍した理由はなんだったのでしょうか。

JoxJo:去年の公式大会が終わったあと『VALORANT』の競技シーンも大きな変化がありました。もちろん、インターナショナルリーグに出場している韓国チームに移籍する選択肢はありました。インターナショナルリーグに出場しているチームに所属した方がいいのかなとも悩んでいました。

一方で、Nth時代から日本の選手との関係も良かったということもあって、個人的にはNthに残り続けたかった思いが強くありました。ただチームの意向など、さまざまな理由があってNthに残ることができなくなってしまい、そうこうしているうちにインターナショナルリーグ出場チームの選手募集は埋まってしまいました。

時間もなくなってしまい、限られたチームで自分にとって一番いいチームはどこだと考えた時、やっぱり日本のチームだなと思いました。特にすばらしい実力を持った選手がいて、勝てるチームだと確信していたFLは、僕にとって最高の選択だと感じています。

——ちなみにJUINさんがFLを選んだ理由は?

JUINマネージャー:私もNthに限らず、最初から日本のチームに入りたいという気持ちがありました。韓国人だけど日本語も話せるので、マネージャーとして私のスキルを生かしていきたいですしね。

今年は運よくJoxJoさんと同じチームに入ることができました。できれば来年もずっとFLで働き続けられたらいいなあと思っています。

——やっぱり元Nth時代のメンバーが同じチームに移籍するのは心強いですよね。JoxJo選手にとってNthとはどのようなチームでしたか?

JoxJo:はじめて日本国内1位という成績を経験できたチームなので、本当に感謝の気持ちでいっぱいです。今はFLに移籍しましたが、Nthはいつも応援しているチームでもあります。

——Pacificリーグで🇯🇵ZETA DIVISIONと🇰🇷Gen.Gの試合が行われた時も、元Nthのメンバーが韓国に集まり、元チームメートのMeteor選手(現Gen.G所属)を応援するツイートも投稿されていましたもんね。



JoxJo:そうですね。試合の前にBlackWizとDerialyが「韓国行くよ」って話していて、僕もリフレッシュも兼ねて韓国に帰国していたので、みんなに会いたくて合流しました。肉も一緒に食べたし、いい時間をすごせました(笑)。

——リフレッシュできて良かったですね! つぎはいよいよオフラインでの試合が待っています。オフライン大会に向けて気をつけていることはありますか?

JoxJo:オフラインを何度経験しても、やはり緊張する現場ではあるので、IGLとして震えることなく落ち着いてコールできるように気をつけたいと思っています。今も、落ち着いてゆっくり話せるようにコールの練習はしています。

——どのようなコールの練習をしているんですか?

JoxJo:スクリムする時から声のトーンを一定にするように練習しています。また選手に伝えたいことを正確に伝え、選手たちがそれらを実践できるようなコールの仕方を練習しています。

——第1試合目はSZ戦ですね。警戒している選手はいますか?

JoxJo:Jemkin選手とTORANECO選手ですね。

Jemkin選手はアビリティーを読む動きがさえていて、自分が撃ち合いたいタイミングでワンピックを狙うのを得意としています。そういった立ち回りがとても鋭いのでやっかいだなぁと感じています。

TORANECO選手はクラッチ能力の高さを警戒しています。TORANECO選手がひとりだけで残っていたとしても、巻き返される可能性は十分にあるので、人数差があったとしても集中して戦えるようにしたいです。

——最後にファンに向けてひとことお願いします!

JoxJo:僕が辛かった時、ファンの皆さんから応援のメッセージをたくさんいただきました。またチアパーティに足を運んでくれたファンの皆さんの応援も大きな力になっています。いつも応援ありがとうございます!

「FLはオフラインに強い」という姿を皆さんにお見せして、今回も必ず優勝するので、引き続き応援よろしくお願いします!

——私もチアパーティに行ったことがあるのですが、ものすごい熱気でした。やっぱり、ああいう応援っていうのは力になりますか?

JoxJo:本当にうれしいです。例えばFLが勝利した時は、選手たちよりも大きな声援で喜んでくれています。ああいった姿を見ると「ファンのためにも、もっとがんばらなきゃ」って思いますよね。

——ありがとうございました! また配信のインタビューで笑顔を見せてくださいね。

JoxJo:
はい!

———

ほかの選手よりも早くゲーミングブースに入り、コーチとの話し合いのあと練習に挑むというJoxJo選手。目の肥えた読者であれば、IGLがいかに重要なポジションなのかは明白だとは思うが、やはり配信では前線で戦うエースがフォーカスされやすい。

今回国内リーグにおいてプレーオフに進出したチームのうち、JDTのArt選手、そしてFLのJoxJo選手と、ふたりのIGLにインタビューを実施したが、ふたりに共通している点はとにかく研究熱心だということだ。プライベートの時間を割いてまで別のチームの試合を見続けたり、作戦を練ったりするというのは、まさに縁の下の力持ち的な存在で、彼らのような優秀なIGLになるには、それ相応の経験と努力が必要だということも改めて感じることができた。

また母国を離れ、言葉も文化も異なる日本での選手活動というのは、選手にとって大きな選択であると共に、抱えるストレスや問題も多いのではないだろうか。それは現在韓国で開催されているPacificリーグで世界と戦っているZETA DIVISIONやDetonatioN FocusMeのメンバーも感じていると思う。

そういった環境にも関わらず、JoxJo選手がチームの頭脳として戦い続けられるのは、本人のモチベーションはもちろん、チームメンバーやスタッフの優しさのたまものではないだろうか。

JoxJo選手と話して感じたのは、とにかくプロ意識が高いということ。日本語のインタビューであるにも関わらず、なるべく自分の言葉で話そうと努力してくれて、時にはJUINマネージャーの通訳を借りずに質問に答えてくれたり、日本語で話せる部分までは日本語で話して、そのあとは韓国語で説明したりと、自分の気持ちを自分の言葉で伝えようとしてくれていたのは筆者にとってもうれしかった。

今『VALORANT』の競技シーン、引いては国内リーグを取り巻く問題はさまざまだが、彼のような一流選手が輝ける場がもっともっと増えてくれることを切に願う。

なおFLは6月3日(土)にエディオンアリーナ大阪にて開催される「VALORANT Challengers Japan 2023 Split 2 - Playoff Finals」でSZと対戦。勝利すればJDTと優勝決定戦へと駒を進めることとなる。

【番外編】Pacificリーグについて

——Pacificリーグは見ていますか?

JoxJo:全部見ていますよ。

——おおっ。さすがです。国内リーグとの大きな違いはありますか?

JoxJo:Pacificリーグに参加しているチームは、その国を代表しているチームなので本当に上手な選手がそろっていると思います。ただFLもPacificリーグも含め、インターナショナルリーグに参加しているチームとスクリムする機会があるのですが、勝てる試合もあるんですよ。


負け越しているイメージはないので、もっとがんばればインターナショナルリーグのチームに勝ち続ける実力があるんじゃないかなと思っています。

——頼もしいです!


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【井ノ川結希(いのかわゆう)プロフィール】
ゲーム好きが高じて19歳でゲーム系の出版社に就職。その後、フリーランスでライター、編集、ディレクターなど多岐にわたり活動している。最近はまっているゲームは『VALORANT』。

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