【LJL 2022 Spring Split Finals考察】激闘のDFM vs SG、運命を分けた“ドラフトの分水嶺”

2022.4.13 あかさん
LJL 2022 Spring Split」のFinalsが2022年4月10日(日)に開催され、Bo5(3本先取)の最終戦までもつれ込む大激闘の末、DetonatioN FocusMe(以下、DFM)がSengoku Gaming(以下、SG)を下して優勝。優勝賞金1000万円とともに、5月に韓国・釜山で開催される世界大会「Mid-Season Invitational(MSI)」への出場権を獲得した。

今回は、フルセットまでもつれ込んだBo5のドラフトを中心に、SGがDFMに対して用意してきた対策、両チームの作戦や思惑について考察していこうと思う。

また、優勝決定直後にDFMのEvi選手、Yutapon選手への喜びの声もうかがった。ぜひ最後までご覧いただきたい。

Game1 Steal選手のヘカリムという宿題



決勝戦のドラフトを見ていく前提として、この2チームはプレーオフRound2でも一度対戦しており、DFMが3-0で勝利している。この時はDFMのSteal選手が3試合連続でヘカリムをピックしており、SGとしてはまずSteal選手のへカリムにどう立ち向かうのかが注目された。

DFMは当然、前回圧勝したSteal選手のへカリムをファーストピック。それに対し、SGはザヤとリー・シンをファーストローテーションでピックしている。

この2体は非常にディスエンゲージ能力が高く、ヘカリムやナーが突っこんでくることをコンセプトとしているDFMの構成にカウンターとして機能している。

さらにJett選手にキャリー力の高いルブランを渡し、ルブランに対抗できるリサンドラとヴェックスをバンすることで彼をサポートしている。これによりYaharong選手はアーリという不利なマッチアップに自分から飛び込んでいかざるを得なくなり、ゲーム内でもJett選手のスノーボールを許してしまった。

ゲーム展開自体は、DFMが中盤リードを奪ったものの、SGがJett選手のワンピックを中心にうまく粘り、終盤はOnce選手のリー・シンのスーパープレイもあってSGが勝利。

SGとしては前回大敗を喫したSteal選手のヘカリムを破るという、優勝への第一関門を突破した。


Game2 DFMの新構成



SGのへカリム対策を見て、DFMはガラっと戦術を変えてきた。

まずは最初のバンのうちゼリ以外の2体を変更。Game1で活躍したリー・シンとルブランを消す選択をした。

余談だが、Yutapon選手は試合後のインタビューでゼリについて「長所と短所がはっきりしていて評価が難しいチャンピオン。不確定要素が多いので、うち(DFM)としてはバンすることにしている」と答えていて、実際プレーオフに入ってから全ゲームでゼリをバンしている。

DFMはへカリム入りのダイブ構成からノクターン、ツイステッド・フェイト、カミールというグローバルスキル+スプリット構成に変更。ノクターンは、春シーズン後半にシン・ジャオがナーフを受けた後あたりから、評価を上げてきたチャンピオンだ。

ドラフトを変えてきたDFMに対し、SGはジャーヴァンIVをピック。DFMがどんな戦術を取ってくるかわからないので、保留と取り上げを兼ねたピックだろう。2ndバンフェイズでもSGがナーとエイトロックスという安定したトップレーナーをバンして、カミールやツイステッド・フェイト、ライズ、ガングプランクといったノクターンと相性のいいチャンピオンに手を付けなかったところを見ると、「見」に回ったドラフトだったと言えそうだ。

試合はツイステッド・フェイト、ノクターンのサイドレーンへの圧力を生かしたDFMがゲームをコントロール。Evi選手のカミールを止める手段にも乏しいSGは対抗できず、DFMが勝利。ゲームカウントは1-1のタイとなった。


Game3 PB率0.2%のチャンピオン



DFMの新構成に対してSGが用意した解答は、トップレーンへの対策だった。

Paz選手にレネクトンを確保し、ナー、カミールとサイドレーンでレネクトンに圧力をかけられるチャンピオンを排除。ノクターンとツイステッド・フェイトに対しては機動力、少数戦で優れるヴィエゴ、アーリをピックし、JG-Midの2v2で戦おうというドラフトだ。

対するDFMはザヤをバンし、タム・ケンチをファーストピックすることで、Honey選手にリスキーなピックを強要している。さらにサイラス、ルブランを2ndバンフェイズで消して露払いをすると、満を持してツイステッド・フェイトを続投。

そして最後のピースとして、Evi選手のアーゴットをピック。カミールとは性質が大きく異なりサイドレーンというよりは集団戦で活躍するチャンピオンだ。

今シーズン、メジャーリージョンでは1回しかピックのなかったオフメタチャンピオンのアーゴットだが、レーン戦で優位を築くとそのままローテーションでSGを上回り、集団戦ではノクターンに代わってフロントラインを務めてゲームをキャリーした。

DFMはノクターン構成に変えて、2連勝で釜山へのチケットに王手をかけた。当然Game4でもノクターンを投入してくることが予想されるため、SGがインターバルの間に対策を見つけられるかに注目が集まった。


Game4 ライバルの技を借りて



いよいよ後のなくなったSGはトップレーンを犠牲に、3rdピックでJett選手のルブランを確保。

さらにGame2でキーパーツになっていたカミールとツイステッド・フェイトを両方バンし、フレックスピックのグレイブスをジャングルに回すドラフトを出してきた。

ルブラン、グレイブス、ノーチラスの組み合わせは今シーズンの「LJL」Day15でBurning Coreが採用した実績のある構成。JGのグレイブスが「アンブラルグレイブ」にラッシュすることで相手の視界を制圧し、ルブランやノーチラスでのピックアップを狙っていくコンセプトだ。

視界が制圧できることは、ルブランのキャッチ能力だけでなく、ノクターンのプレイ制限にもつながる。

ノクターンはへカリム同様、アルティメットスキルで敵の懐に飛び込んでいくチャンピオンだが、マップカバー能力が高い代わりにへカリムと比べると耐久力で劣る。そのため、相手のジャングル深くやレーンにワードを置くことで、敵の陣形をあらかじめ確認し、それからアルティメットの「パラノイア」を使う必要があるのだ。

その視界確保を遮断できる脅威グレイブスJGという選択は、まさにノクターンへの解答として完璧といえるだろう。追い詰められたSGは、ライバルチームであるBurning Coreの技を盗んで王者DFMに対抗するという、熱い展開になった。

対するDFMは、ツイステッド・フェイトの代わりにライズをピック。これは「LCK Finals」でT1が採用した組み合わせで、「ポータルワープ」によるマップカバー能力、「ルーンプリズン」によるピックアップ能力がツイステッド・フェイトに類似している上、終盤フロントラインとして心もとないノクターンの代わりにサブタンク的に立ち回ることもできるシナジーピックだ。

しかし、Game1の時のようにJett選手のルブランに対抗できるリサンドラやヴェックスがバンされていなかったので、このどちらかをピックしてJett選手を抑え込むという作戦もあったように思えるドラフトだった。

ゲーム展開はルブラン、グレイブスのボットロームが刺さり、SGがスノーボールに成功。狙い通り「アンブラルグレイブ」をゲーム時間10分までに完成させ、VSPM(1分あたりの視界スコア)3.62と圧倒的な視界制圧能力を見せて完勝した。

下馬評では圧倒的不利と言われていたSGだが、へカリム、ノクターンの壁を乗り越えて、ついにBo5最終戦までたどり着いた。


Game5 積み上げてきたものの差



最終戦、DFMがたどり着いた答えは、タム・ケンチとルブランのバンだった。

こうなるとSGはアフェリオスかジンクスかの選択になるが、タム・ケンチがいないドラフトではアフェリオスが優先されがちで、セオリー通りHoney選手のアフェリオスをピックする。

それに対し、DFMはノクターンとジンクスをピックしたことで、Once選手は4戦目でうまくいったグレイブスをカウンターとしてピックすることになった。この誘導によりDFMは、リー・シンのバン枠を節約することに成功している。

そしてDFMは、2ndバンフェイズでレネクトンという安全ピックを排除すると、4thピックでセトを選択。サポートとトップのフレックスでPaz選手のタンクピックをけん制する役割も兼ねる、非常にいやらしい1手だ。

DFMがPaz選手のピックに対して、実質1バンで大きく制限をかけているのに対し、SGはトリンダメア、カミール、ナーとバンしてなお、Game3でキャリーしたアーゴットが残ってしまった。ここは、今シーズン絶好調だったEvi選手の威光が示された一幕だったといえる。

ルブランとサイラスを消されたJett選手はビクターを選択。飛び込んできたノクターンを「グラビティフィールド」で孤立させることができ、ウェーブクリアも速いためローテーションでついていきやすいチャンピオンで、悪い選択ではなかったと思うが、チャンピオンの特性上、Game2/4ほどのインパクトは残せなかった。

試合は、グレイブスの視界カット能力でノクターンのプレイエリアを制限したかったSGに対し、Yaharong選手のツイステッド・フェイトのアルティメットスキル「デスティニー」が刺さった展開となった。

DFMはワードを置いて恒常的に視界を確保することはできなかったが、戦いたいその瞬間だけはツイステッド・フェイトの視界確保能力で安全確認をすることができたのだ。

そして、ボットレーンでの競り合いでリードをつくったDFMが順調にスノーボールし、最後はHoney選手をYaharong選手が捕まえてゲームセット。

DFMが「LJL 2022 Spring Split」を制し、MSIへの出場権を獲得した。

バン&ピックに見るDFM勝利の決め手


Finals全体を振り返ってみると、DFMがドラフトで有利に動けた背景には、SGが1stバンの3体(トリンダメア、カルマ、ケイトリン)を5戦連続で変えられなかったという背景もあるだろう。

トリンダメアはレギュラーシーズン中、Evi選手がピックして暴れまわり、SNS上でも「なんで自分のトリンダメアがオープンになるんだ」と発言するほどのパフォーマンスだった。

Harp選手のカルマも今シーズンの勝率100%で、プレーオフ第2ラウンドのDFM vs SG戦でも採用された経緯があり、ケイトリン同様絶対に渡せないピックとなっていた。

SGはFinalsへ向けてチームを改善させ、素晴らしい準備をしてきたし、当日への準備という面だけでいえば、もしかしたらDFMを上回っていたかもしれない。

ただ、シーズン中やプレーオフで見せたもの、上位を走っていたからこそDFMが隠せたもの、そういった積み上げてきたものの差でDFMがわずかに上回った、そんなBo5だった。



「ファンの言葉が励みになっている」
Yutapon選手&Evi選手試合後インタビュー


決勝の激闘直後のYutapon選手、Evi両選手にインタビューを行うことができたので合わせてご紹介したい。

2022年シーズンからのタイトなスケジュールや、Yaharong選手、Harp選手2人の新メンバーについて、そして「MSI」へ向けての意気込み、ファンへの思いなどをうかがった。

——今シーズンからトリプルラウンドロビン(全チーム3回ずつ総当たり)となり、すごくスケジュールがタイトで、Evi選手は体調を崩されたこともありました。DFMはAria、Gaeng両選手が抜けて新チームとなったこともあって、一度でも崩れてしまうとそのままガタガタっといってしまう可能性もあったと思います。スケジュール面で苦しかったことや工夫したことはありますか。

Yutapon選手(以下、Yutapon):正直、序盤から結構うまくいって10連勝までは順調に進めることができたので、逆に詰め詰めのスケジュールが有利だったというか、他のチームもそんなに修正する時間もないですし。僕らはいつもどおりやっていれば勝てるという感じだったので、悪くはなかったですね。

Evi選手(以下、Evi):スケジュールは結構しんどかったですね。「LJL」が週3日開催ということもあって、単純に練習試合が入れづらかったんです。

「LJL」がある日って、昼だけ練習試合を入れることになるんですけど、「練習試合は昼と夜の1日2セットしたい」という相手チーム側の都合があったりするので相手が見つけづらかったりもして、練習面で難しいこともありました。

でも、「毎日LJLだ」という感じで、楽しかったですね。

——新チームがうまくいった要因にはYaharong、Harp両選手が欠かせないと思います。2人の印象はいかがでしたか?

Evi:YaharongとHarpはいい子たちですね。2人とも人懐っこくてフレンドリーな性格ですし。年齢もまだ20歳とか21歳とかで、Stealのことを「お兄さん」って呼ぶんですよ(笑)。Stealもそんな歳かって思ったり。

明るくて馴染みやすいので、チームの連携面でも2人の性格はいい影響を与えてくれたと思います。

Yutapon:ボットレーンに関しては、サポートが変わると毎回苦労するなぁって部分もあるんですが、Harp選手が元々LCKでプレイした経験もあるということで、全部の行動がとにかくうまいんですよね。

逆に最初から僕が教えてもらうこともありましたし、なんでそれをするんだろう? って思うような行動がほとんどなくて、最初からやりやすかったですね。


——「MSI」に向けて1カ月くらい準備期間がありますが、どんな準備をしていく予定ですか?

Yutapon:国際戦は「LJL」とはまた違った環境ですし、国際戦特有のメタとかキャラ選択がされることもあるので、そういった点を見逃さず、遅れを取らないように頑張りたいです。

Evi:準備に関しては、去年の「Worlds」で学んだことを生かしていきたいと思います。具体的には、あらゆるピックの可能性を試したいと思っています。

去年の「Worlds」は本当にグループステージに行った瞬間にメタがガラッと変わって、「僕たちの知ってる『LoL』じゃないよ」って感じになっちゃってたので。

もちろん、ソロランクとスクリムのレベルだと全然違うんですけど、それでもさわっておくだけでも感じられるものがなにかしらあると思うので、あらゆる可能性を考えて、チャンピオンプールを広げておきたいと思います。

——まだ代表が決まっていないリージョンも多いですが、対戦してみたいチームやプレイヤーはいますか?

Yutapon:どのチームが来るかはっきりわかっていないのでなんとも言えないんですけど、韓国はT1が代表ですよね。

前回「Worlds」で当たった時にあまりにもコテンパンにされたので、今度はうまく戦い一矢報いることができたらうれしいなと思いますね。

Evi:対戦したいチームというよりは、対戦したくないチームの方が多いですね。特にいつもスクリムしている人たちとはやりたくないです。お互い手の内がわかっているので。

せっかくの国際戦の舞台ですし、遠い地域のEU(欧州)やNA(北米)とあたりたいですね。


——今季、もうひとつの大きな変化として、ファンとふれ合う機会が完全になくなってしまって、「LJL」は完全オンラインでの開催になりました。その中でのファンの存在について聞かせてください。

Yutapon:実際に対面して応援してもらうことができなくなって、オフラインほどはっきりとは伝わりづらいところもあると思うんですけど、やっぱりSNSとかで応援してもらっているのは伝わりますし、ファンアートとかもよく見させていただいていて、そういうかたちで応援していただけていることは伝わっています。

オフラインじゃなくても皆さんの思いを感じることはできるので、うれしいですね。

Evi:正直、オフラインでやらなくなったのは悲しいです。やっぱり実際に会って応援してもらえるのってすごい熱量ですし。こういうご時世だから仕方ないと思いながら、プレイしてはいます。

でも、オフラインがなくなったからといって、ファンの皆さんのありがたみが薄れるということは一切ないですし、Yutaponが言ったようにSNSやチームのTwitterに応援コメントをくれる方がたくさんいて、皆さんの言葉が励みになっています。

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DFMはこのあと、5月10日〜29日にかけて韓国・釜山で開催される「Mid-Season Invitational 2022」(MSI 2022)に挑む。今回は日本からも近い韓国開催ということや、過去に「LJL」でともに戦った選手が各国から集まってくることも期待される。

世界大会になった途端にこれまでのセオリーがガラッと通用しなくなる怖さは、昨年の「Worlds」で体感済み。「LJL」を代表するチームとして、日本の『LoL』ファンが一丸となって応援すれば、きっとこれまでにない実力を発揮して活躍してくれるはずだ。


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