今eスポーツ将棋がアツイ!『リアルタイムバトル将棋』でプロe棋士を目指す【星野良生プロ棋士 インタビュー】

2021.10.3 井ノ川結希(いのかわゆう)
2018年eスポーツ元年を皮切りに、国内でもさまざまなゲームタイトルがeスポーツの競技シーンで見られるようになった。そんな中、将棋とeスポーツを融合させたリアルタイムバトル将棋という新ジャンルのタイトルがJeSU公認のeスポーツタイトルに認定されているのをご存じだろうか。

将棋といえば、1手を指すのに数時間を費やすこともある長期戦をイメージするかと思うが、『リアルタイムバトル将棋』はまったくの逆。ターン制ではなく、好きなときに好きなタイミングで駒を進めることができるという将棋の常識を覆したルールでも注目を浴びている。

今回は、そんな『リアルタイムバトル将棋』を開発したシルバースタージャパンに所属しているプロ棋士、星野良生(ほしのよしたか)氏にインタビュー。なぜプロe棋士を目指しているのかをおうかがいしてみた。

将棋を収入のアテにはしたくはなかった
妻の退職が後押しとなった就職活動


——プロ棋士がeスポーツに参入というニュースは我々にとっても衝撃でした。まずは星野さんのひととなりをおうかがいしたいと思っています。実際に将棋をふれたきっかけから、プロ棋士になるまでの経緯を教えてください。

星野棋士(以下、星野):将棋をはじめてさわったのは5歳の時で、オセロ盤の裏にあった将棋でした。

出典:Amazon

——ああっ。あのマグネットになっているやつですね。ちなみに、最初に将棋を指した相手は誰だったんですか?

星野:母ですね。まあでも、ルールがわかるというレベルなので、「将棋を指す」という程、本格的ではないですよ(笑)。

程なくして日本将棋連盟支部の方に通うようになりました。日本将棋連盟支部はいわゆる「習い事」のような感じで、月謝を払ってさまざまな人と対局するという場所でした。

——友だちとはやらなかった?

星野:将棋をやる友だちはいなかったので、普段は支部のおじいちゃんが対戦相手でしたね。

——その流れでプロを目指すことになるんですね。将棋のプロ、いわゆるプロ棋士になるにはどういう資格がいるのでしょうか?

星野:例外もありますが、基本的には奨励会という棋士養成機関に入会することが大前提となります。奨励会で経験を積み、昇級を重ねて三段まで昇格すると、今度は三段リーグと呼ばれる試験を受けられるようになります。

この三段リーグを勝ち抜くことで四段になり、はじめてプロ棋士と呼ばれるようになります。


——なるほど。三段以下はプロではないんですね。三段と四段って、お相撲でいう幕下と十両のような関係性なんですね。

※相撲では幕下の次の地位である十両からプロ(関取)と呼ばれるようになり、付け人がついたり、給料が支払われるようになる

星野:そうですね。相撲と違うところは十両から幕下へと降格があり、入れ替わりが激しいのに対し、将棋は四段から三段への降格はなく、段を落とす=引退ということになります。

——ひえええ。負けが込むと引退しか道がないというのは、まるで横綱のような存在ですね。ちなみに、星野さんは何歳で四段になられたんですか?

星野:私は25歳ですね。これもまた例外もありますが、四段になるには26歳までという年齢制限があり、25歳はギリギリのラインでした。スピード的には遅い方ですね。

——ギリギリというと結構プレッシャーもあったかと思います。そこまでプロを目指し続けられたモチベーションはなんだったのでしょうか?

星野:どちらかというと続けることにモチベーションは必要ありませんでした。逆に続けられなくなることの精神的苦痛の方が大きいと思います。

ただ私はいわゆる「おちこぼれ」に属するタイプの人間で、高校も行かなかったこともあって、「プロ棋士になれなかったら人生終わるな」的な感覚はあったみたいで、周囲の説得もあって続けていたというのもあります(笑)。


——あはは。そんなそんな(笑)。ではプロ棋士を目指す上で、何を目標にしていたのでしょうか?

星野:これは過去形になってしまいますが、プロ棋士の中でもトップ棋士になることが目標でした。職業や収入という面を考えていたら、私はプロ棋士を目指してはいなかったですね。

——なるほど。単純に名だたる棋士と戦いたかった?

星野:名だたる棋士というよりは、単純にトップの環境で対戦したかったという気持ちの方が強かったですね。当時も「憧れの棋士と対局したい」という点はあまり気にしてはいませんでした。

——あくまで、トップの環境というところにこだわりがあったんですね。逆に収入面のことを考えたらプロ棋士を目指していないというのは、なぜでしょうか。

星野:プロ棋士の収入源はさまざまで、試合に出ることはもちろん、メディアの出演や執筆活動などもあります。ただ私は将棋の対局というものを頼りにしたくないという気持ちがあります。

この感覚ってあまり理解されない部分なんですが、収入のために将棋を頑張りたくはないんです。

例えばプロ棋士全員が自分だったと仮定します。全員が同じように努力しても、勝敗がある時点で5割しか勝てないんです。結局将棋も、ほかの勝負事と変わらず、ゼロサムゲームなんです。そういうパイの取り合いとなる収入源をアテにはしたくないんですよね。

あくまで将棋は自分のためにがんばりたいですね。

——おおっ、なんかカッコイイですね!そんな中、星野さんのTwitterで就職活動をされているというのが話題になったかと思います。私も、最初拝見したとき斬新なことするなあと思っていました(笑)。



星野:Twitterで就職活動するというとおこがましいんですけどね(笑)。

きっかけは、実はカードゲームにありました。私は昔から『マジック:ザ・ギャザリング』というカードゲームが趣味だったのですが、最近のカードゲーム事情に思うところがありまして、自分がルールを作る側になりたいという気持ちも強く働いていました。

——その流れで、シルバースタージャパンさんに就職することになったんですね。具体的にどのような業務をなさっているんですか?

星野:開発やイベント出演、将棋に関するコラム関係を主に活動しています。本当は『リアルタイムバトル将棋』のイベントを各地で行う予定だったのですが、ちょうどコロナの感染拡大がはじまっちゃって……。

リアルタイムバトル将棋がJeSU公認タイトルに!
プロ棋士の次はプロe棋士を目指す!


——シルバースタージャパンさんといえば最近Steam版もリリースされた『リアルタイムバトル将棋』ですが、実際にプレイされてみていかがでした?


星野:なんていうか、「意外と勝てないな……」っていう印象でした。

将棋とは違うというのはわかってはいたんですけど——「どうやったら、あんなに早く駒を動かせるんだろう」という部分で悩まされました。

——単純に操作が難しかった?

星野:そうですね。自分では考えられないスピードで相手が駒を動かしていたのでビックリしました。

——確かに、自由に動かせる=フィジカルが重要という部分もありますもんね。実際プレイし続けてみて、将棋の知識とか立ち回りというのは『リアルタイムバトル将棋』にも作用すると思いましたか?

星野:自分ではあまり感じないのですが、将棋の知識がない人から見ると、関係あるみたいですね。盤面の把握能力とか、駒の利きが瞬間で見えている部分に驚かれます。

——なるほど。私もSteam版でプレイしてみたのですが、盤面が広すぎて自分が動かしている部分を把握するのが精一杯でした。初心者の人にアドバイスをぜひ教えてください!

星野:全部の駒を使うというのが大事な気がします。『リアルタイムバトル将棋』は、一度動かした駒は再び動かすためのクールタイムが設定されていますが、多くの駒を素早く動かすことも可能です。すべての駒を活用するという意識を持ちながらプレイすると上達すると思います。

もちろん素早く駒を動かせるためのトレーニングも必要ですけどね(笑)。

あとは『リアルタイムバトル将棋』にはリプレイ保存機能があるので、試合を見返すことも重要です。「ここをああすればもっといい戦いになったな」という部分が見えてくると思います。

 ▲短時間で複数の駒を移動させることができるが、一度移動した駒はクールタイムが発生し、再び動かせるようになるまでに必要な時間が設定されている

——なるほど!やはりターン制である将棋とは大きく異なりますね。

星野:そうですね。将棋との大きな違いは、プロの動きを簡単に再現できないという部分です。将棋は、棋譜やプロの試合を見れば、プロ棋士と寸分違わず同じ動きができます。

しかし、『リアルタイムバトル将棋』はフィジカルの部分が強いので、同じ動きをしようとしてもテクニックが追いつかず、再現できない——。ある意味スポーツに近い感覚があると思っています。

——そういった部分がeスポーツですね。その流れでプロe棋士を目指すとのことですが、そもそもプロe棋士についてどのようなものなのかをお聞かせください。

星野:プロe棋士というのは、シルバースタージャパンの内部で作った新しいジャンルのeスポーツプレイヤーを示す名称です。

——なるほど。具体的にどうやったらプロe棋士になれるのでしょうか?

星野:一応、本将棋に習ったシステムになっていて、公認のポイント大会に参加してポイントを獲得し、累計ポイントに応じて段位が認定されます。ポイントでの段位は本将棋と同じく三段までとし、三段リーグに勝ち上がった上位のプレイヤーに四段を認定して、プロe棋士の任命を受けるという形をとっています。


現在は4名のプロe棋士がいて、その4名が頂点をめざす「電棋戦」というのが2021年8月28日(土)に行われる予定だったのですが、緊急事態宣言が発令されたこともあり延期に。2021年10月3日(日)に開催することになりました。

▲本将棋でいうタイトル戦となる電棋戦。賞金総額100万円という大会なだけに延期が悔やまれる

——プロe棋士になると、こういった賞金付きの大会に出られるというのも大きなメリットなんですね。

星野:そうですね。しかも、今回行われる電棋戦はプロe棋士4名のみで行われるため、賞金総取りということではなく、すべての順位にそれぞれ賞金が付与されるというのも、ほかのeスポーツプロとは大きく異なるのではないでしょうか。

——星野さん的に手応えはどうですか?

星野:正直なところ「延期が向かい風になっているかな」という感じです(笑)。

——あはは。めちゃめちゃ正直ですね(笑)

星野:『リアルタイムバトル将棋』は本将棋よりも実力が出やすく、実力通りの順位に落ち着きます。逆に、指し手の正確さといった部分を上達させれば、その分順位もしっかりとついてくるので、この延期の時間を有効活用して練習に励みたいと思っています。

——今、注目している選手やライバルはいますか?

星野:レオ選手はいつも勝っているので注目はしています。私にはできない相手を攻め倒すプレイスタイルですしね。

▲2021年2月28日(日)に開催された「AICHI IMPACT!2021」において、『リアルタイムバトル将棋』で優勝を勝ち取ったレオ選手

飛車ちゅう選手のぷよぷよの配信もよく見ているんですが、「こんな人らと戦わなければいけないんだなあ」と思うと辛いですよね(笑)。

▲「AICHI IMPACT!2021」でレオ選手に敗れるまでは、無敗の強さを誇っていた飛車ちゅう選手。「ぷよぷよ」のプロでもある

——確かに、あの人たちは異次元ですものね。ただ、そういう相手をプロ棋士がまくるというのも視聴者からしたら期待するポイントでもあるので、ぜひがんばってください。最後に、今後の展望をお聞かせください。

星野:当面の目標は「プロe棋士選抜大会」で勝ち残り、プロe棋士になることですね。あとは、コロナが落ち着き、プロ棋士として将棋が指せる環境が戻ってきてくれることを祈っています。

——ありがとうございました!

———

「突き詰めると格ゲーは将棋のようだ」とか、VALORANTは詰め将棋をみているようだ」とか、eスポーツタイトルを観戦していると、時折「将棋」を例えにする感想がでてくるほど、eスポーツと将棋の親和性は高い。

そんな将棋のプロである星野さんがeスポーツの世界に飛び込んできたことで、新しいeスポーツの世界が広がっていく未来を感じた。

老若男女が楽しめる将棋を軸にした『リアルタイムバトル将棋』で、ますますeスポーツが盛り上がってくれることを祈るとともに、星野さんが初のプロ棋士&プロe棋士のダブルプロになってくれることを見守っていきたい。


星野良生 Twitter:
https://twitter.com/SSJ_HOSHINO?s=09

リアルタイムバトル将棋®オンライン:
Nintendo switch版:
https://www.silverstar.co.jp/02products/rtbs_online/

Steam版:
https://www.silverstar.co.jp/02products/rtbs_steam/

シルバースタージャパン公式:
https://www.silverstar.co.jp/

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