「LJL 2024 Spring Split プレーオフ」SHGとV3の歴史的勝利のポイントは? 「PCSプレーオフ」ライバルチーム分析
2024年3月3日(日)に「LJL 2024 Spring Split Playoffs Finals」が行われ、Fukuoka SoftBank HAWKS gaming(SHG)が前年度王者DetonatioN FocusMe(DFM)を3-0のスコアで圧倒し、「LJL」参入5年目にしてついに優勝の栄冠を手にした。
また、前日の3月2日(土)には3位決定戦が行われ、V3 Esports(V3)がSengoku Gaming(SG)を下して勝利、この結果により、春の世界大会「Mid-Season Invitational(MSI)」の出場権をかけた「PCS」との合同プレーオフに、SHG、DFM、V3の3チームが日本代表として駒を進めることとなった。
今回はこの「LJL 2024 Spring Split」での3位決定戦、決勝戦の試合内容を振り返り、勝敗を分けたポイント、さらに「PCS」合同プレーオフへ向けた各チームの展望について書いてみようと思う。
まずは、3位決定戦のSG vs V3の試合を振り返ってみよう。
結果で言えば3-1でV3が勝利し、トップのTaNa選手のグウェンやジェイスといったキャリーピックが刺さった印象が強かったが、それに至るまでのSGの用意した作戦とそれに対するV3の対応力が光ったシリーズだった。
「LJL」レギュラーシーズン終了後の振り返り記事でもふれたように、SGはシーズン中から、サポートのGaeng選手にエンゲージ系チャンピオンを、ジャングルのEllim選手にキャリー系チャンピオンを使わせる形が得意だった。
チームファイトの判断能力が高いGaeng選手の能力を最大限活かしつつ、個人技の高いEllim選手がゲームコントロールからダメージディールまでの役割を果たすというチーム状況にマッチした作戦だが、これには1つ弱点がある。
それは、Gaeng選手にエンゲージの負担がかかりすぎるので狙われやすくなること、また狙われた場合に安全なタンク系サポートをピックすると、今度はボットレーンの優先権を失ってしまうことだ。
このレーンの優先権とGaeng選手の安全性のトレードオフを無視できるのが、今回用意してきたカリスタとレナータ・グラスクのコンボピックだ。
パッシブの相性のよさからレーンの強さを確保でき、中盤以降Gaeng選手が狙われた場合にADCのYuhi選手がアルティメットスキル「宿命の呼び声」で助けることができるこの組み合わせは、SGの課題点を一挙に解決することができた。
ゲームプランも明確で、Game1では見事なレベル2ボットダイブを成功させて、Yuhi選手のスノーボールを成功させた。
2人ともドランアイテム(ドランブレード、ドランリング)でスタートしたSGに対して、V3のサポートのhetel選手は「ワールドアトラス」でスタートしたことで、レーンの弱さを突かれてしまった。V3としては得意の集団戦で返したいところだが、これもGaeng選手のレナータに阻まれる。
21:30過ぎの上のシーンではADCのYuhi選手を捕まえることに成功したV3だったが、レナータのWによるピールとRによる分断で倒し切ることができずに、集団戦で敗れてしまう。
Game1の結果を踏まえて、V3としては集団戦でGaeng選手を自由に仕事させない、という対策を取る必要が出てきた。
それを完璧にこなして見せたのが、勝利が決まったGame4だ。
ゲーム中盤、ワードを挿しにリバーに出てきたGaeng選手に対しV3が仕掛け、Yuhi選手の「宿命の呼び声」を消費させると、その約2分後に再度ミッドレーン付近でGaeng選手をフォーカス。
レベル2の「宿命の呼び声」はクールタイムが120秒。あとわずか10秒ほどでアップする、そんなギリギリのタイミングをついたhetel選手のノーチラスによる完璧なエンゲージが決まり、V3がこの集団戦に勝利。そのままゲームの有利を手にしてネクサスを破壊、「PCS」プレーオフ出場権を獲得した。
V3は、自分たちの強みをうまく活かしつつ、SGの仕掛けに対応した快勝といっていい内容だったが、正直危ないシーンやミスも多く、まだまだ発展途上のチームだという印象はぬぐえない。
ただ、Bo5(3ゲーム先取)で相手のピックに対応できたことは大きな自信になったと思うので、今後「PCS」とのプレーオフでもその経験を生かして戦ってきてほしい。
V3の対戦相手となるBeyond Gamingは、2021年、2022年と2年連続で「Worlds」にも出場した「PCS」の新興チーム。オーナーはかつてTaipei Assassinsなどで活躍したDinTer選手だ。
「Worlds」出場プレイヤーでいうと、ジャングルのHusha選手とミッドの1116選手が在籍していて、この2人の強力なジャングル-ミッドラインが印象的なチームだ。
一方のV3は、ジャングルのHRK選手が日本人ジャングラーとしては久しぶりの国際戦出場ということで、対面のプレイヤーは強力なものの、今シーズンを通して成長を感じられたプレイヤーの1人。「PCS」プレーオフでさらなる飛躍を期待したい。
なお、残念ながらここでシーズン終了となってしまったSGだが、最終戦ではEllim選手がマオカイを使うなど、この2週間で自分たちにできる範囲での課題克服を目指してきたのは見ていても伝わった。
ミッドのKakkun選手は、Summer Splitからはチーム事情でスターターの席を譲ることになっているが、また「LJL」のスターターで戦う姿を見たい、と思わせる活躍ぶりだった。彼の今後にも期待したい。
決勝戦では、リーグ戦1位通過のDFMをSHGがまさかのスイープで、「LJL」初優勝を成し遂げた。ただ、リーグ戦からSHGが行ってきた「積極的にゲームに関与する」という姿勢が決勝の舞台で結実した結果、とも言える内容だった。
DFMは伝統的に1つの構成をプレイし続けて精度を上げる、というスタイルが得意で、今シーズンも「スモルダーを使ったスケール構成」を軸として持ち込んだ様子だった。
Game1のドラフトから見ていこう。
Yutapon選手のスモルダーを1stピックで確保し、2ndピックでAria選手がシーズン中最多ピックだったアジールを取っている。
この時点でかなり序盤が弱い構成になったDFMに対し、SHGは2ndバンフェイズでポッピー、セジュアニという中盤にゲームを安定させられるタンクジャングラーを消したことで、DFMはジャングラーの選択肢が絞られてしまった(1stバンで消されたマオカイも含めて3つバンされている)。
結局DFMが選んだノクターンはSteal選手の得意ピックで、チャンピオンパワーを見ても申し分ないが、組み合わせたのがジャックス、アジール、スモルダーではレベル6以降のガンク性能を活かしづらい。自分たちからゲームを動かすというよりはゲーム全体をスローダウンさせて、スモルダー、アジールが育つのを待つチーム構成となった。
一方で、SHGはDFMよりはパワースパイクが早いものの、ゲームを決め切るためのバロンナッシャーを取るスピードがやや遅く、どうやってゲームを加速させるかが課題となる。
しかし、そういったやや難しいゲームプランでもきっちり遂行できるのが、今季のSHGだ。
ゲームスピードを加速すべくドラゴンをほぼ最速で4スタック獲得し、さらに相手が誰も倒れていない状況でバロンタッチをする。
獲得には時間がかかったものの、カ・サンテ、ノーチラスというフロント2枚にうまく殿(しんがり)を務めさせるとバロンを獲得。これが焦ったDFMのミスを呼び、結果4-2でキルトレードにも勝利した。
Game2でもスモルダーを採用したDFMだったが、SHGのテンポに飲まれ敗北。あとがなくなったGame3ではついにスモルダーを諦め、ヴァルス、アッシュという序盤からリードを取りに行く作戦に切り替えた。
対するSHGはスモルダーを確保しつつ、トップレーンのピックを保留することで「Evi選手にスモルダーを使わせるんじゃないか?」という「匂い」を漂わせるドラフトを展開した。
このシーズン全般に言えることだが、Evi選手がゲーム内外で常に存在感を放っていたことも大きい。1戦目のドラフトでもカ・サンテピックを匂わせることでRayfarky選手にジャックスをピックさせるように誘導していたし、Game3でもDFMのツイステッド・フェイト、ジン、ルシアンの3バンは彼の影響力が生み出したようなものだ。
さて、ゲーム内容の方に移ると、レベル1でキル交換が起こる荒れた展開になったが、DFMのボットレーン優先権を狙うピックに対するSHGのカウンタープレイが見事だった。
まずは、Forest選手が「ヘクスフラッシュ」を使ってドラゴンピットからトライブッシュへ抜ける、いわゆる“Peanutルート”でボットガンクを刺すと、今度はミッドがレベル6のタイミングでアクションを起こす。
まず、DasheR選手がアルティメットスキル「絶望の渦」でAria選手にハラスを行って体力差を大きくつけ、そこからボットサイドのリバーでForest選手がSteal選手に仕掛ける。
直前に大きく体力を減らされたAria選手は、これに介入することができずにキャッチが成功。このあと欲張りすぎて結果は1-1のトレードに終わるが、SHGはDFMが狙っていたボットレーンゲームを挫くことに成功し、マークスマンサポートの強みを活かしきれないDFMに対して、集団戦で上回るパフォーマンスを発揮して勝利。3-0で「LJL」優勝を決めた。
ゲームへの理解度、ピックの準備、アクションの早さと、どれをとってもSHGが完全にDFMを凌駕したプレーオフで、完勝だったと言っていい。
勝ったSHGは「PCS」プレーオフの第2ラウンドからスタートすることができる。決勝で見せた巧みなドラフト戦術やゲーム内での判断の早さ、大胆さは、トップ、ミッドが自信をもってプレイできていることに裏打ちされている。そのため、「PCS」の上位チームの強力なソロレーナー相手に、Evi、DasheR両選手がどれだけのパフォーマンスを発揮できるかが、「MSI」出場へ向けてのカギになるだろう。
一方、負けてしまったDFMは、V3同様「PCS」プレーオフの第1ラウンドからのスタートとなる。
対戦相手はJ team。2024年はHanabi選手やWako選手といった強力なロースターを集めて優勝候補と目されていたが、開幕早々に彼らが離脱。急遽スターターを組みなおすなど、順調とは言えないシーズンを送ったチームだ。
ただ、トップのLikai選手、ミッドのMinji選手は、2022年にBeyond Gamingから「Worlds」出場経験のある実績十分なプレイヤー。特にLikai選手はフィオラなどテクニカルで攻撃的なチャンピオンを得意としている。
「LJL」決勝ではEvi選手にいいようにコントロールされてしまったRayfarky選手が、持ち味の攻撃的なピックを取り戻すことができるのかが、勝ち上がるための重要なポイントとなってきそうだ。
「LJL」は今年から「PCS」との合同開催になったため、今回行われた決勝、3位決定戦は春シーズンの1つの終わりではあるにせよ、「MSI」を目指すための通過点の1つに過ぎないとも言える。
各チーム、この「LJL」プレーオフで得たもの、そして課題点を解決して「PCS」プレーオフでの活躍、「MSI」出場権獲得に期待したい。
「PCS 2024 プレーオフ」での、3月11日(月)のV3 vs Beyond Gaming、そして3月12日(火)のDFM vs J Teamという日本チームの戦いを応援しよう。
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また、前日の3月2日(土)には3位決定戦が行われ、V3 Esports(V3)がSengoku Gaming(SG)を下して勝利、この結果により、春の世界大会「Mid-Season Invitational(MSI)」の出場権をかけた「PCS」との合同プレーオフに、SHG、DFM、V3の3チームが日本代表として駒を進めることとなった。
今回はこの「LJL 2024 Spring Split」での3位決定戦、決勝戦の試合内容を振り返り、勝敗を分けたポイント、さらに「PCS」合同プレーオフへ向けた各チームの展望について書いてみようと思う。
3位決定戦 V3 vs SG 〜SGの用意した作戦とV3の対応力
まずは、3位決定戦のSG vs V3の試合を振り返ってみよう。
結果で言えば3-1でV3が勝利し、トップのTaNa選手のグウェンやジェイスといったキャリーピックが刺さった印象が強かったが、それに至るまでのSGの用意した作戦とそれに対するV3の対応力が光ったシリーズだった。
「LJL」レギュラーシーズン終了後の振り返り記事でもふれたように、SGはシーズン中から、サポートのGaeng選手にエンゲージ系チャンピオンを、ジャングルのEllim選手にキャリー系チャンピオンを使わせる形が得意だった。
チームファイトの判断能力が高いGaeng選手の能力を最大限活かしつつ、個人技の高いEllim選手がゲームコントロールからダメージディールまでの役割を果たすというチーム状況にマッチした作戦だが、これには1つ弱点がある。
それは、Gaeng選手にエンゲージの負担がかかりすぎるので狙われやすくなること、また狙われた場合に安全なタンク系サポートをピックすると、今度はボットレーンの優先権を失ってしまうことだ。
このレーンの優先権とGaeng選手の安全性のトレードオフを無視できるのが、今回用意してきたカリスタとレナータ・グラスクのコンボピックだ。
パッシブの相性のよさからレーンの強さを確保でき、中盤以降Gaeng選手が狙われた場合にADCのYuhi選手がアルティメットスキル「宿命の呼び声」で助けることができるこの組み合わせは、SGの課題点を一挙に解決することができた。
ゲームプランも明確で、Game1では見事なレベル2ボットダイブを成功させて、Yuhi選手のスノーボールを成功させた。
2人ともドランアイテム(ドランブレード、ドランリング)でスタートしたSGに対して、V3のサポートのhetel選手は「ワールドアトラス」でスタートしたことで、レーンの弱さを突かれてしまった。V3としては得意の集団戦で返したいところだが、これもGaeng選手のレナータに阻まれる。
21:30過ぎの上のシーンではADCのYuhi選手を捕まえることに成功したV3だったが、レナータのWによるピールとRによる分断で倒し切ることができずに、集団戦で敗れてしまう。
Game1の結果を踏まえて、V3としては集団戦でGaeng選手を自由に仕事させない、という対策を取る必要が出てきた。
それを完璧にこなして見せたのが、勝利が決まったGame4だ。
ゲーム中盤、ワードを挿しにリバーに出てきたGaeng選手に対しV3が仕掛け、Yuhi選手の「宿命の呼び声」を消費させると、その約2分後に再度ミッドレーン付近でGaeng選手をフォーカス。
レベル2の「宿命の呼び声」はクールタイムが120秒。あとわずか10秒ほどでアップする、そんなギリギリのタイミングをついたhetel選手のノーチラスによる完璧なエンゲージが決まり、V3がこの集団戦に勝利。そのままゲームの有利を手にしてネクサスを破壊、「PCS」プレーオフ出場権を獲得した。
V3は、自分たちの強みをうまく活かしつつ、SGの仕掛けに対応した快勝といっていい内容だったが、正直危ないシーンやミスも多く、まだまだ発展途上のチームだという印象はぬぐえない。
ただ、Bo5(3ゲーム先取)で相手のピックに対応できたことは大きな自信になったと思うので、今後「PCS」とのプレーオフでもその経験を生かして戦ってきてほしい。
V3の初戦の相手、Beyond Gamingの評価は?
V3の対戦相手となるBeyond Gamingは、2021年、2022年と2年連続で「Worlds」にも出場した「PCS」の新興チーム。オーナーはかつてTaipei Assassinsなどで活躍したDinTer選手だ。
「Worlds」出場プレイヤーでいうと、ジャングルのHusha選手とミッドの1116選手が在籍していて、この2人の強力なジャングル-ミッドラインが印象的なチームだ。
一方のV3は、ジャングルのHRK選手が日本人ジャングラーとしては久しぶりの国際戦出場ということで、対面のプレイヤーは強力なものの、今シーズンを通して成長を感じられたプレイヤーの1人。「PCS」プレーオフでさらなる飛躍を期待したい。
Summer Splitでチーム体制が変わるSG、復活なるか
なお、残念ながらここでシーズン終了となってしまったSGだが、最終戦ではEllim選手がマオカイを使うなど、この2週間で自分たちにできる範囲での課題克服を目指してきたのは見ていても伝わった。
ミッドのKakkun選手は、Summer Splitからはチーム事情でスターターの席を譲ることになっているが、また「LJL」のスターターで戦う姿を見たい、と思わせる活躍ぶりだった。彼の今後にも期待したい。
決勝戦 DFM vs SHG 〜SHGの積極性がゲームを動かす
決勝戦では、リーグ戦1位通過のDFMをSHGがまさかのスイープで、「LJL」初優勝を成し遂げた。ただ、リーグ戦からSHGが行ってきた「積極的にゲームに関与する」という姿勢が決勝の舞台で結実した結果、とも言える内容だった。
DFMは伝統的に1つの構成をプレイし続けて精度を上げる、というスタイルが得意で、今シーズンも「スモルダーを使ったスケール構成」を軸として持ち込んだ様子だった。
Game1のドラフトから見ていこう。
Yutapon選手のスモルダーを1stピックで確保し、2ndピックでAria選手がシーズン中最多ピックだったアジールを取っている。
この時点でかなり序盤が弱い構成になったDFMに対し、SHGは2ndバンフェイズでポッピー、セジュアニという中盤にゲームを安定させられるタンクジャングラーを消したことで、DFMはジャングラーの選択肢が絞られてしまった(1stバンで消されたマオカイも含めて3つバンされている)。
結局DFMが選んだノクターンはSteal選手の得意ピックで、チャンピオンパワーを見ても申し分ないが、組み合わせたのがジャックス、アジール、スモルダーではレベル6以降のガンク性能を活かしづらい。自分たちからゲームを動かすというよりはゲーム全体をスローダウンさせて、スモルダー、アジールが育つのを待つチーム構成となった。
一方で、SHGはDFMよりはパワースパイクが早いものの、ゲームを決め切るためのバロンナッシャーを取るスピードがやや遅く、どうやってゲームを加速させるかが課題となる。
しかし、そういったやや難しいゲームプランでもきっちり遂行できるのが、今季のSHGだ。
ゲームスピードを加速すべくドラゴンをほぼ最速で4スタック獲得し、さらに相手が誰も倒れていない状況でバロンタッチをする。
獲得には時間がかかったものの、カ・サンテ、ノーチラスというフロント2枚にうまく殿(しんがり)を務めさせるとバロンを獲得。これが焦ったDFMのミスを呼び、結果4-2でキルトレードにも勝利した。
Game2でもスモルダーを採用したDFMだったが、SHGのテンポに飲まれ敗北。あとがなくなったGame3ではついにスモルダーを諦め、ヴァルス、アッシュという序盤からリードを取りに行く作戦に切り替えた。
対するSHGはスモルダーを確保しつつ、トップレーンのピックを保留することで「Evi選手にスモルダーを使わせるんじゃないか?」という「匂い」を漂わせるドラフトを展開した。
このシーズン全般に言えることだが、Evi選手がゲーム内外で常に存在感を放っていたことも大きい。1戦目のドラフトでもカ・サンテピックを匂わせることでRayfarky選手にジャックスをピックさせるように誘導していたし、Game3でもDFMのツイステッド・フェイト、ジン、ルシアンの3バンは彼の影響力が生み出したようなものだ。
さて、ゲーム内容の方に移ると、レベル1でキル交換が起こる荒れた展開になったが、DFMのボットレーン優先権を狙うピックに対するSHGのカウンタープレイが見事だった。
まずは、Forest選手が「ヘクスフラッシュ」を使ってドラゴンピットからトライブッシュへ抜ける、いわゆる“Peanutルート”でボットガンクを刺すと、今度はミッドがレベル6のタイミングでアクションを起こす。
まず、DasheR選手がアルティメットスキル「絶望の渦」でAria選手にハラスを行って体力差を大きくつけ、そこからボットサイドのリバーでForest選手がSteal選手に仕掛ける。
直前に大きく体力を減らされたAria選手は、これに介入することができずにキャッチが成功。このあと欲張りすぎて結果は1-1のトレードに終わるが、SHGはDFMが狙っていたボットレーンゲームを挫くことに成功し、マークスマンサポートの強みを活かしきれないDFMに対して、集団戦で上回るパフォーマンスを発揮して勝利。3-0で「LJL」優勝を決めた。
ゲームへの理解度、ピックの準備、アクションの早さと、どれをとってもSHGが完全にDFMを凌駕したプレーオフで、完勝だったと言っていい。
DFMの初戦の相手、J Teamの評価は?
勝ったSHGは「PCS」プレーオフの第2ラウンドからスタートすることができる。決勝で見せた巧みなドラフト戦術やゲーム内での判断の早さ、大胆さは、トップ、ミッドが自信をもってプレイできていることに裏打ちされている。そのため、「PCS」の上位チームの強力なソロレーナー相手に、Evi、DasheR両選手がどれだけのパフォーマンスを発揮できるかが、「MSI」出場へ向けてのカギになるだろう。
一方、負けてしまったDFMは、V3同様「PCS」プレーオフの第1ラウンドからのスタートとなる。
対戦相手はJ team。2024年はHanabi選手やWako選手といった強力なロースターを集めて優勝候補と目されていたが、開幕早々に彼らが離脱。急遽スターターを組みなおすなど、順調とは言えないシーズンを送ったチームだ。
ただ、トップのLikai選手、ミッドのMinji選手は、2022年にBeyond Gamingから「Worlds」出場経験のある実績十分なプレイヤー。特にLikai選手はフィオラなどテクニカルで攻撃的なチャンピオンを得意としている。
「LJL」決勝ではEvi選手にいいようにコントロールされてしまったRayfarky選手が、持ち味の攻撃的なピックを取り戻すことができるのかが、勝ち上がるための重要なポイントとなってきそうだ。
終わりに
「LJL」は今年から「PCS」との合同開催になったため、今回行われた決勝、3位決定戦は春シーズンの1つの終わりではあるにせよ、「MSI」を目指すための通過点の1つに過ぎないとも言える。
各チーム、この「LJL」プレーオフで得たもの、そして課題点を解決して「PCS」プレーオフでの活躍、「MSI」出場権獲得に期待したい。
「PCS 2024 プレーオフ」での、3月11日(月)のV3 vs Beyond Gaming、そして3月12日(火)のDFM vs J Teamという日本チームの戦いを応援しよう。
PCS 2024 プレーオフ 日本チーム日程
3月11日(月)18:00〜 V3 Esports vs Beyond Gaming
3月12日(火)18:00〜 DetonatioN FocusMe vs J Team
3月11日(月)18:00〜 V3 Esports vs Beyond Gaming
3月12日(火)18:00〜 DetonatioN FocusMe vs J Team
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