デジタルカードゲームは”競技”になりえるのか?

2019.12.13 OGA
格闘ゲームMOBA、FPS、スポーツゲームパズルゲーム

上記のゲームジャンルは従来の遊び方に加えてeスポーツタイトルとしての側面を定着させつつある。
一方、「ゲームが競技として成り立つ」という認識が広まるにつれて、eスポーツとしての是非が議論され続けるゲームジャンルが存在する。

それが、デジタルカードゲーム(DCG)だ。

・課金要素
・運要素

これらの要素はデジタルカードゲームの魅力である一方、競技的な視点でみた際に疑問符がつく箇所でもある。今回はこれらの2大要素について整理していく。

課金要素

ゲームを競技として成立させる上で、公平性は必須条件である。一般的なデジタルカードゲームでは、ユーザーは最初から全てのカードを所持してはいない。時間をかけて集めるか、課金をすることになる。結果、課金ユーザーが有利になる見え方になっており、直感的に競技としては認めにくい。だが、競技者の視点としては競うのはあくまで”技術”なので、「全てのカードを所持している」ことが大前提となっている。よって、“課金ユーザーが有利になるゲーム”ではなく、“ある程度の投資を行ったユーザーがスタート地点に立つゲーム”といえる。

ユーザーが競技的にゲームをプレイする際、ある程度の投資を行うのはデジタルカードゲームに限った話ではない。

また、デジタルカードゲームは、初期の段階ではDL無料、スマートフォンや一般PCでのプレイが可能である点が特徴であり、プレイ時に別途ソフトウェア、ハードウェア、デバイス類を買いそろえる必要はない。つまり、他ゲームにおけるゲーミングマウス、アーケードコントローラー等への投資が、カード自体への投資に転嫁したモデルだといえる。


運要素

デジタルカードゲームは運の要素が表面化しやすい。試合の終盤において勝負を決定づける、最後の分岐が運任せになることが多いためだ。過剰に可視化されてしまう運要素も、競技として解釈する際の違和感となる。

ここで重要なのが、デジタルカードゲームにおける運要素は競技プレイヤーカジュアルプレイヤーでは性質が異なることだ。競技プレイヤーにとっては、運は勝敗を決める上での1つの要素でしかなく、ある程度は運の要素を考慮した上で対戦は進む。

一方、カジュアルプレイヤーにとっては、初心者が上級者に勝ちうるランダム性として機能し、時には対戦の多様性を生み、マンネリ化による飽きを防ぐエンターテイメント要素として振る舞う。

では、競技プレイヤーは運の要素を考慮したうえで、具体的にどのような努力を講じているのか。競技プレイヤーの努力は主に2種類がある。
・”最小限の運要素で勝負を進める”
・”確率を最大化し運比べを有利にする”

前者は、すでに公開されている情報のみで最善手を導き出す努力を行うこと。後者は、未確定情報を考慮した勝利確率の向上を行うこと。例えば、次の自分のターンにAかBかCのカードのうちからランダムに1枚が与えられるとして、現状のAかBのどちらかのカードを与えられて勝てる状況を、AとBとCどのカードを与えられても勝てる状況に更新する努力を行う。

プロ野球選手がインタビューで「何も考えずにバットを振ったらホームランになった」と答えることがある。これは当然、リップサービスの側面もあり、トレーニングによる条件反射が生んだ実力による成果であることは言うまでもないが、日々のトレーニングによってヒットの確率を向上させたといえる。

この”確率を1%でも上げるために尽力する”という過程について
・通算打率が2割の選手がホームランを撃つこと
・引く確率が2割のカードを引き当てること

両者にどのような差があり、どのような見え方の違いがあるのか。近年は解説・実況陣の努力により、デジタルカードゲームの運要素に関する見え方も改善がされてきたが、最終的には観戦者の感覚に委ねるしかないだろう。


さいごに

純粋にゲームを楽しみ競い合うプレイヤーとって「”競技”であるか否か」「eスポーツであるか否か」という議論自体が不要であり、全てのゲームをeスポーツの枠に当てはめる必要はない。

今後も、デジタルカードゲームはその構造のシンプルさによって、eスポーツと非eスポーツの議論では常にやり玉に上げられるだろう。プロスポーツに隠れ潜む2大要素が、顕在化した性質はeスポーツのみにならず、プロスポーツ全体の本質を再考するキッカケになるのかもしれない。
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