プロとして身につけておかないといけないこと【元プロゲーマー・無名有名の「プロゲーマーを目指す君たちへ」第2回】
この記事を読んでいるのは、プロゲーマーになりたいとか、何かのきっかけでこの記事を見かけて興味を持った方だと思います。
今回はそういった方に対するメッセージとして、元プロゲーマーの無名有名(むみょうゆうな)が、
僕は高校生の時に、『Apex Legends』の競技シーンで行われているスクリム(プロチームやアマチュアの上位チームが参加する練習試合のこと。グループごとに俗にG1、G2、G3などと呼ばれる)でG3〜G2下位くらいに属していたプロチームに入りました。そこで挫折を経験して、ライバルたちに話を聞くことで、G2上位〜G1まで昇格できました。それができたのは、僕の中に考え方の変化があったからだと思います。
そこからG1でも仲間ができ、チームを移籍したり、アナリストやコーチとして呼ばれるようになって今に至ります。今回の話は、そんな僕の実体験に基づくものです。
前回の記事で、「ランク戦で強いだけじゃダメ」「プロになるための方法にはいろいろある」ということをお伝えしました。
「努力」というのはなかなか目に見えるものではありません。でも、目に見えないものをどうやって可視化するかが、プロになるためにはとても重要です。
例えば、最近の『Apex Legends』はマスター帯が異常に多いと言われています。そこに“行くための努力”をするのはあくまで一般のプレイヤーがやること。プロがしないといけないのは、高ランク帯を維持することは前提として、チームでのプレーを意識しつつ、自分が試合の中でできることを最大限に発揮するための努力です。
そんなプロとして身につけておかないといけないことを、いくつか具体的に挙げてみます。
ほとんどのeスポーツはチームスポーツなので、やっぱりチームとして、人間として、当たり前のことはもちろん大事になります。身近なところで言えば、人間性とかコミュニケーション能力とかを持って、チームプレイをやっていけるというのが、プロに向けての努力としても必要なことだと思います。なので、「チームワーク」が取れることは、プロになるための必須条件だと考えています。
そういう話をすると、「中にはプロでもトキシックな(他人に害を及ぼすという意味。ゲームでは「暴言を吐く人」などの意味で使われる)選手もいる。そういう人はどうなんだ?」と言いたくなるのもわかります。
僕の経験上、そういう人たちは「自分が一番だ」という自己肯定感の高さがすごくある代わりに、成功すれば全部自分のおかげ、失敗すれば自分のせいというモチベーションを持っています。
確かに、めちゃくちゃ強い人がいるから勝っていけているチームがあることは事実です。ただ、そういう人だけを集めてもなにも生まれません。
みんながみんな同じ性格ではない方がうまくいくというのは競技の基本です。
キャリーは強気でも、IGL(インゲームリーダー)がチーム全体を見ているから、うまくバランスが取れます。プロを目指す人にとっては、チームの中で自分がどんな役割かを知ることも大事です。そういう部分を理解できていないと、そもそも「eスポーツ競技」としては成立しないものだと僕は思っています。
二つ目は、「自分を変える努力」です。
プロシーンでは自分のやりたいポジションやキャラクターが必ずしもできる環境ばかりではありません。それを念頭に置いた上で、自分が何ができるのかということを、チームの意向や選手間の意向で変えていかないといけないこともあるんです。また、アマチュアからプロになると、時間感覚、生活水準、そして必ずしも自分が望んだことができないかもしれない、ということを受け入れなければなりません。
ここは、プロになった時に自分がすごく躊躇したところでした。
例えば生活時間。僕はプロになるまでは夜型生活で、夜通し起きていて朝方に寝るみたいな生活をしていました。みんなと遊んでゆっくりしていたらいつの間にか朝、みたいな状態だったんですよね。
ですが、プロになってからは9時に練習が始まり、休憩を挟んで日中はプレイして、21時から24時までスクリムや練習をして、24時から1時間反省会をする、という生活になりました。それ以外は好きな時間にいろいろやってもいいんですが、翌日の9時にはまた練習が始まるので、それまでに体調も管理しなければなりません。
そういう生活になってからは、朝まで起きていることはなくなり、朝から晩までeスポーツに取り憑かれたような生活になりました。今の現役のプレイヤーの方々もみんな似たようなものだと思います。
プロになれたばかりの時は、アマチュアとしてゲームをやっていた自分からしたら、たとえ報酬が少なくても「やっとプロになれた!」という気持ちの方が強かったんです。
今思えば「やりがい搾取」と言われても仕方ないかもしれませんが、選手にとっては本当にうれしいんですよね。プロとしてイベントに呼ばれるようにもなりましたし、「自分ってプロなんだ!」と思える瞬間がすごく多くなりました。
ただ、そんな生活を1年間続けたところで、苦痛に変わりました。5カ月目くらいが一番しんどい時期で、辞めたいと何度思ったかわかりません。
なによりつらかったのは、練習しても練習しても結果が伴わなかったことでした。努力しても報われないし、努力の可視化もできない。
もしなかなか勝てないチームに所属していた場合、自分がこうなりたいという意志を持つことが大切です。多分それも、プロとしての努力のひとつだと思うんです。
頑張っても頑張っても成績が出ないプレイヤーもいると思います。でも、そこで辞めちゃったり味方のせいにするのは違うと僕は思っています。チームメンバーに「次は頑張ろうよ」みたいな言葉をかけつつ、「でも俺も悪いところももちろんあるから」みたいな頭の転換もしていきました。
チームとして成績が伸びない時期に、「毎日練習してます、頑張ってます、だからお金払ってください」というのは選手のエゴでしかありません。チーム側からしたら、「結果を出してくれたらもっとお金が出せるのに……」ということだって絶対あるわけです。
この選手側とチーム側の思いにどう折り合いをつけていくかは、ほとんどのeスポーツチームが抱えているであろう、本当に難しい問題です。
努力しても意味がないということは絶対にありません。しかし、“努力が必要な意味”を問う必要があると、僕は考えています。
だからこそ、今回紹介したプロとして身につけておかないといけないことが、プロを長く続けていく上で大切になると思います。
一方で、努力ではどうにもできないことも世の中にはあります。そこで次回は、持って生まれたものと努力で身につくものについて、もう少し深掘りしてみたいと思います。
無名有名でした!
今回はそういった方に対するメッセージとして、元プロゲーマーの無名有名(むみょうゆうな)が、
- プロゲーマーになるために行った努力
- プロゲーマーになってから行った努力
僕は高校生の時に、『Apex Legends』の競技シーンで行われているスクリム(プロチームやアマチュアの上位チームが参加する練習試合のこと。グループごとに俗にG1、G2、G3などと呼ばれる)でG3〜G2下位くらいに属していたプロチームに入りました。そこで挫折を経験して、ライバルたちに話を聞くことで、G2上位〜G1まで昇格できました。それができたのは、僕の中に考え方の変化があったからだと思います。
そこからG1でも仲間ができ、チームを移籍したり、アナリストやコーチとして呼ばれるようになって今に至ります。今回の話は、そんな僕の実体験に基づくものです。
プロになるための「努力」とプロになってからの「努力」はどう違う?
前回の記事で、「ランク戦で強いだけじゃダメ」「プロになるための方法にはいろいろある」ということをお伝えしました。
「努力」というのはなかなか目に見えるものではありません。でも、目に見えないものをどうやって可視化するかが、プロになるためにはとても重要です。
例えば、最近の『Apex Legends』はマスター帯が異常に多いと言われています。そこに“行くための努力”をするのはあくまで一般のプレイヤーがやること。プロがしないといけないのは、高ランク帯を維持することは前提として、チームでのプレーを意識しつつ、自分が試合の中でできることを最大限に発揮するための努力です。
そんなプロとして身につけておかないといけないことを、いくつか具体的に挙げてみます。
(1)チームワーク
ほとんどのeスポーツはチームスポーツなので、やっぱりチームとして、人間として、当たり前のことはもちろん大事になります。身近なところで言えば、人間性とかコミュニケーション能力とかを持って、チームプレイをやっていけるというのが、プロに向けての努力としても必要なことだと思います。なので、「チームワーク」が取れることは、プロになるための必須条件だと考えています。
そういう話をすると、「中にはプロでもトキシックな(他人に害を及ぼすという意味。ゲームでは「暴言を吐く人」などの意味で使われる)選手もいる。そういう人はどうなんだ?」と言いたくなるのもわかります。
僕の経験上、そういう人たちは「自分が一番だ」という自己肯定感の高さがすごくある代わりに、成功すれば全部自分のおかげ、失敗すれば自分のせいというモチベーションを持っています。
確かに、めちゃくちゃ強い人がいるから勝っていけているチームがあることは事実です。ただ、そういう人だけを集めてもなにも生まれません。
みんながみんな同じ性格ではない方がうまくいくというのは競技の基本です。
キャリーは強気でも、IGL(インゲームリーダー)がチーム全体を見ているから、うまくバランスが取れます。プロを目指す人にとっては、チームの中で自分がどんな役割かを知ることも大事です。そういう部分を理解できていないと、そもそも「eスポーツ競技」としては成立しないものだと僕は思っています。
(2)自分を変える努力
二つ目は、「自分を変える努力」です。
プロシーンでは自分のやりたいポジションやキャラクターが必ずしもできる環境ばかりではありません。それを念頭に置いた上で、自分が何ができるのかということを、チームの意向や選手間の意向で変えていかないといけないこともあるんです。また、アマチュアからプロになると、時間感覚、生活水準、そして必ずしも自分が望んだことができないかもしれない、ということを受け入れなければなりません。
ここは、プロになった時に自分がすごく躊躇したところでした。
例えば生活時間。僕はプロになるまでは夜型生活で、夜通し起きていて朝方に寝るみたいな生活をしていました。みんなと遊んでゆっくりしていたらいつの間にか朝、みたいな状態だったんですよね。
ですが、プロになってからは9時に練習が始まり、休憩を挟んで日中はプレイして、21時から24時までスクリムや練習をして、24時から1時間反省会をする、という生活になりました。それ以外は好きな時間にいろいろやってもいいんですが、翌日の9時にはまた練習が始まるので、それまでに体調も管理しなければなりません。
そういう生活になってからは、朝まで起きていることはなくなり、朝から晩までeスポーツに取り憑かれたような生活になりました。今の現役のプレイヤーの方々もみんな似たようなものだと思います。
(3)自分の意志を持つこと
プロになれたばかりの時は、アマチュアとしてゲームをやっていた自分からしたら、たとえ報酬が少なくても「やっとプロになれた!」という気持ちの方が強かったんです。
今思えば「やりがい搾取」と言われても仕方ないかもしれませんが、選手にとっては本当にうれしいんですよね。プロとしてイベントに呼ばれるようにもなりましたし、「自分ってプロなんだ!」と思える瞬間がすごく多くなりました。
ただ、そんな生活を1年間続けたところで、苦痛に変わりました。5カ月目くらいが一番しんどい時期で、辞めたいと何度思ったかわかりません。
なによりつらかったのは、練習しても練習しても結果が伴わなかったことでした。努力しても報われないし、努力の可視化もできない。
もしなかなか勝てないチームに所属していた場合、自分がこうなりたいという意志を持つことが大切です。多分それも、プロとしての努力のひとつだと思うんです。
頑張っても頑張っても成績が出ないプレイヤーもいると思います。でも、そこで辞めちゃったり味方のせいにするのは違うと僕は思っています。チームメンバーに「次は頑張ろうよ」みたいな言葉をかけつつ、「でも俺も悪いところももちろんあるから」みたいな頭の転換もしていきました。
最後に
チームとして成績が伸びない時期に、「毎日練習してます、頑張ってます、だからお金払ってください」というのは選手のエゴでしかありません。チーム側からしたら、「結果を出してくれたらもっとお金が出せるのに……」ということだって絶対あるわけです。
この選手側とチーム側の思いにどう折り合いをつけていくかは、ほとんどのeスポーツチームが抱えているであろう、本当に難しい問題です。
努力しても意味がないということは絶対にありません。しかし、“努力が必要な意味”を問う必要があると、僕は考えています。
だからこそ、今回紹介したプロとして身につけておかないといけないことが、プロを長く続けていく上で大切になると思います。
一方で、努力ではどうにもできないことも世の中にはあります。そこで次回は、持って生まれたものと努力で身につくものについて、もう少し深掘りしてみたいと思います。
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