プロになる前に知っておかないといけないこと 【元プロゲーマー・無名有名の「プロゲーマーを目指す君たちへ」第1回】

2023.6.7 無名有名
突然ですが、eスポーツタイトルを日頃から楽しんでいるeSports World読者の皆さんは普段、家でゲームをしていると思います。その際にプレイヤーの腕前を測る「ランクプレイ」をされる方も多いと思いますが、ランクを上げることだけで満足していませんか?

もし、わずかでも将来「eスポーツのプロゲーマーになれたらいいなぁ」と思っている人が、日々テクニックを磨くためにランクを上げようと努力しているとして、それだけではプロにはなれない可能性が極めて高いことをご存じでしょうか?

eスポーツのプロの世界は、外から見るとよくわからないことがたくさんあります。プロになるための道は? 給料はどれくらい? ゲームをする以外にどんな仕事があるの? プロを辞めてからのセカンドキャリアは? などなど……。

そこで今回から数回にわたって、そんなeスポーツのプロの世界、プロゲーマーの世界に興味を持っている読者の方々の疑問を少しでも解消するべく、元プロゲーマーで現在もチーム運営やアナリストとして活動している私から、お話しさせていただきます。

ちなみに、本連載で私が使う「プロゲーマー」という言葉は、主にeスポーツチームに所属してプロとしてゲームで戦う選手を表しています。私の経験もあり、主に多人数で戦うFPS等のeスポーツチームについてご紹介しますので、あらかじめご承知ください。

※ ※ ※

あらためて、eSports Worldの読者のみなさま、初めまして。無名有名(むみょうゆうな)と申します。

私のプレイヤー遍歴としては、『Apex Legends』のプロゲーマーとして約2年間活動していました。現在は『Apex Legends』のプロリーグチームであるLFT WAW(元EVA:e)のアナリストをしつつ、チームの運営としてRayRoad Gamingでお世話になっています。さらに、某eスポーツ系専門学校の講師として、未来のプロゲーマーを育てることにも力を入れています。


第1回となる今回は、皆さんが憧れる「プロゲーマーになるための道筋」を、少し一般的に知られているのとは違うかたちで、説明させていただきたいと思います。

さて、冒頭の「ランク」の質問に戻りますが、「ランク」について皆さんに知ってほしいことが3点あります。

  1. 現状プロになるための最低ラインとは?
  2. チーム側は選手の「ランク」の何を見ているのか?
  3. プロになるための道筋とは?

それぞれ詳しく紹介していきます。

現状プロになるための最低ラインとは?


eスポーツチームの運営はランクのことをどう見ているかぶっちゃけると、選考のふるいにかける指標として見ているチームが多いと思います。

VALORANT』が1番わかりやすいので上げさせていただきますが、そもそも「VCT」や「VCJ」への出場は「イモータル」以上でないとエントリーできません。なおかつ、チームの平均ランクで抽選されることにもなっているので、その最低限の指標としてチームは見ていたりします。

なので、ゲームのランクが最高ランクであったり、その一つ前であればなれる可能性は非常に高いと思います。

VALORANTのランク。最高位は「レディアント」


そこで、高ランク帯でプロを目指している皆さんはこう思うはずです。

『プロになれるくらいのランクはあるはずなのに、トライアウトや応募などで選ばれないのはなぜなのか?』

『なぜ自分以外のメンバーが選ばれているのか』

そこには、自分は持っていなくてプロになった人は持っている「何か」があるはずです。


チーム側は選手の「ランク」の何を見ているのか?


冒頭で「いくらランクが高くてもそれだけではプロにはなれない」と私が言った理由は、まさにこの「ランク以外に必要なもの」があるからです。それは何か。

チームの運営側の立場に立つようになって感じたのですが、チーム側は練習の際に継続してプレイできる人を見たいのです。時間がある時にランクをダラダラ回して上位ランクにいます、というのではダメで、実際に試合が行われた時に集中して戦い続けられるかが重要になってきます。

また、勝敗も大事ですが、永遠に勝ち続けられる人はいません。負けた後にしっかり自身の反省をし、次に活かせるかどうか、というところも重要です。

その上でさらに、その選手がどのようにチームの味方に影響を与えられるか、という点も重要です。見ず知らずの人と戦うソロランクでも、友人と組んでいるクランでもそうですが、これは単にランクを普段回しているだけでは身につかないことが多く、プロになるために1番と言ってもいいくらい大事なことです。

こういった部分はランクの数字だけでは見えないため、チーム側から質問されたり、試合中の言動や試合の合間の行動などが見られています。配信をしている人であれば、その配信中の普段の行動のすべてが、プロゲーマーになるための道につながっているのです。


プロになるための道筋とは?


FPSなどのタイトルに関しては、プロゲーマーになる道は意外と公にされています。チーム側が大会に向けて募集をかけることもあれば、何かの大会で活躍した結果スカウトされることもあるでしょう。かくいう私もそのような経験を経てプロになりました。

Fnaticの『Apex Legends』部門のメンバー募集ツイート


そんな私自身の『Apex Legends』での体験談をもとに言うと、プロになるための道筋について、主に私は2つあると思っています。


まず1つ目は、チームが募集しているトライアウトです。

FENNELのトライアウト募集ツイート


「トライアウト」というのは、ランクや実力の既定以上の方なら誰もが参加資格のある、いわば実技試験となります。実際のプロスポーツの世界でも、日本プロ野球機構(NPB)やJリーグの選手会などが開催していますね。

正攻法ならこのトライアウトを受けて通るというのが、eスポーツのプロになるために皆さんも知っている一番有名な方法だと思います。いわば実力で勝ち取る、という感じです。

ふたつ目に関しては、今まで私が経験したことであり、eスポーツ特有のルートなのですが、実際のプロ選手とTwitterなどのSNSでつながり一緒に遊ぶことです。

皆さんは、SNSをただの娯楽の道具だと思っていませんか?

実はアマチュアチームの方やプロになりたい方にとっては、SNSはリクルートのためのツールだったりもします。その中でも一番効果があるのが、彼らとつながって遊ぶことなんです。

昨今のプロシーンは、他チームからの引き抜きや、まだプロになっていない選手をいろいろなところで見つけてきて生え抜きを取ることがとても多く、実は前述したメンバー募集のような方法もある一方で、公表せずに身内間で解決してしまうことが非常に多くなっています。

私も『Among Us』に誘われてプロの方々と遊んだことがきっかけで、プロチームに入ることができ、現状のアナリストというお仕事をいただくことができました。もちろん、『Apex Legends』のプロです。不思議ですよね。

また、有名なチームも元をたどると「ランクフレンド」などで形成されていたことが多く、ソロランクを一生回していても巡り会えないような縁が転がっているのもSNSです。

『Among Us』でどうやってプロになったかについては、別の機会に詳しく話したいと思いますので、楽しみにしていてください。


最後に


今回はまず、私が多くのプロゲーマーを輩出していく立場としても、いちプレイヤーとしても、プロゲーマーを目指す人たちに主に知ってほしいことをお話しさせていただきました。

eスポーツに憧れて、将来プロとして活動したいと考えている若い世代の方にとって、少しでもこの業界が糧になって、プロとしてしっかり生活し、活躍できるようになることを願っています。

次回は、「プロになる上で身につけておかないといけないこと」を書いていこうと思います。

無名有名でした!

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