eyesが振り返る「LJL 2023 Spring Split」前半戦総括: 「LJL」新時代到来の兆しが見えた!?

2023.3.8 宮下英之
1月28日(土)より開幕した『リーグ・オブ・レジェンド』(LoL)の日本プロリーグ「LJL 2023 Spring Split」。Bo3で全チーム総当たり2回ずつのダブルラウンドロビンとなり、2月26日(日)のデイ15でその前半戦を終了。すべてのチームが1回ずつ対戦し終わった(チームによっては2回対戦したところもある)。

戦績を見ると、Sengoku Gamingが無傷の8連勝で首位、Fukuoka SoftBank HAWKS gamingが6勝1敗の2位、DetonatioN FocusMeが5勝2敗の3位、FENNEL(元Rascal Jester)が4勝4敗のイーブンとなっている。

各チームおよび選手の仕上がり具合や、試合フォーマットによる影響などがほぼ見えたこのタイミングで、再び「LJL」キャスターのeyes氏に「LJL 2023  Spring Split」前半戦の総括と、後半戦で注目すべきポイントをうかがった。

インタビューは、3月3日(金)からの後半戦以前に行った。


「LJL」初期からその歴史とともに実況を務めてきたeyes氏


SG、SHGの躍進で、新時代への変化を感じた前半戦


以前の記事の中で予想したとおり、今年の「LJL」は「変化の年」になりそうな気がします。

やっぱりSGが負けなしの首位で、SHGが2位と活躍しており、DFM一強ではなくなったということが一番大きいですね。



SGが強くなったのか、DFMが弱くなったのかで言えば、SGが強くなったのだと思います。ADCのLoken選手の加入に加え、世界的に有名なReaperedコーチがSGのCGO(最高事業成長責任者)として加入していますし、SHGにもDWG KIAを率いたAresコーチが加入した影響は大きそうですね。

SGはトップに新加入のeguto選手ではなく、前半戦はPaz選手メインで戦っていました。どこかでeguto選手に移行したいと発表してはいますが、今は勝たなきゃいけない、過程よりもまず結果を求められる時期でしたから。



なぜSGやSHGが勝てるようになったのかで言うと、僕はゲーム中盤のドラゴンが湧いていない時間の使い方が変わったことが大きいように思いました。ドラゴンがいない時間、ドラゴンを取った後に次のドラゴンが湧くまでの間に何をするか。

SHGにしろSGにしろ、今まではドラゴンファイトで勝たないとゲームを終わらせられない、というような試合が多かったように思います。去年のSGはそこでアクションを起こせずに、またドラゴンファイトで勝って──ということの繰り返しだったと思うんです。それが今年は、Loken選手の影響もあるんでしょうが、アクションできるようになってきています。

これまでの「LJL」の中では、DFMしかそういうことができなかったんです。それはトップにEvi選手がいたから。ドラゴンを取った後の動きで主導権を握るには、勝っているレーンが2つ以上あると楽なんです。そこが新人のtol2選手になって、集団戦での影響力が落ちたことも大きいと思います。

Evi選手はどんな時でもひとりで勝ってくれていましたから、DFMとしてはミッドかボットが勝てるようにすれば3レーンを押さえられた。そのEvi選手がいなくなったことで、うまくやれれば他のチームもDFMに迫ることができるんですよね。

とはいえ、DFMは毎年スロースターターでもありますし、彼らが見据えているのは「MSI」であり「Worlds」ですから、例年と同じく後半戦から追いついてくるでしょう。


注目選手


選手やチームで注目している選手について触れると、まずSHGのMarble選手はやはりいいですね。「ネクストYutapon」なんて本人は呼ばれたくはないかもしれませんが、韓国人選手と組んでも遜色ない強さを見せてくれました。Kinatu選手も少し不安視されていましたが、予想以上に伸びていると思います。

気になる日本人選手は、V3 EsportsのWashidai選手とFENNELのhachamecha選手です。Washidai選手は2年目の選手でよくある話なんですが、得意なピックをした時にとても強い。ここからEvi選手のように得意ピックに寄りながら戦っていくのか、フラットにいろいろなチャンピオンを使えるようにして戦っていくのかの岐路にいると思います。一番伸び代がある選手だと思うので、心を折らずに頑張ってほしいですね。

FENNELのhachamecha選手は、ほとんど韓国人選手のジャングラーの中でよく戦っていると思います。視界管理に関してはかなり優れていて、ワードのクリアリング率とかは8チーム中ナンバーワンですし、Recap選手がレーン戦がかなり苦しい中でなんとか仕事をしようとしているのは評価したいポイントですね。

BCはRayFarky選手に目が行きがちかもしれませんが、僕が注目しているのはDice選手ですね。チームとしては下位グループにいますが、ミッドレーナーとしての個人スタッツで言うと集団戦や1分間あたりのダメージ量などはトップクラスのスコアなんですよね。そこにRayFarky選手が加わって暴れていたという感じです。

CGAは逆で、ミッドのEugeo選手はレーンの強さとかスタッツ的には下位の方なんですが、チームとしては勝利できているのも面白いですね。

DFMで目立ったのはやはりYutapon選手でしたね。サポートもやっていましたし。Aria選手もようやく調子が戻ってき始めましたね。tol2選手も結構レーン戦が強いですし、後半戦での飛躍に期待しています。

前半戦のパッチ13.3までは、ボットレーンでなんとか有利を築きたいので、なんとか有利マッチアップにするためにピックの優先度が高いですよね。ミッドも当然撮りたい。なので、トップはある程度なんでも器用貧乏にできて、負けないチャンピオンを取るという感じになっていました。それを、Evi選手のナーみたいに、渡しておけばイーブン以上に活躍できるチャンピオンを取らせてあげられたらと思いますね。

ただ、DFMとしてはあまり冒険できない順位ですし、彼らは優勝しなければならないと言われている立場なので、難しいところではあるでしょうね。とりあえず今は個人技よりは集団戦での立ち位置を求められているので、個人技が出せるようになったら活躍できるでしょうし、世界で勝つためにはそこを変えなければいけないでしょうね。

スタッツだけで言うと、他チームと遜色ない戦いはできていますし、上位4チームはプレーオフにはいけると思うんです。どれだけリーグで勝てても、プレーオフで勝てなければ意味がないですから、この前半戦は細かい情報を調整している段階だと思います。


Bo3により選手の試行回数が増えた


今年からBo1からBo3になりましたが、一番大きな変化として、Bo1は自分たちがこれをしたいということだけを考えていればよくて、相手の得意なことをある程度封じて、自分たちの得意な戦術をやればよかった。1試合しかないのでミスをしたら負けるからチャレンジすることもできません。

でも、Bo3は相手がやってきたことを踏まえて、2戦目で対策ができます。例えば、この場所にワードを置きがちとか、レベル1ガンクに来そうとか、このタイミングでドラゴンを触るとかを、負けたチーム側ももう一度チャレンジできる。

そのおかげだと思いますが、シーズン初期の頃は2-0で終わっていたのが、徐々に2-1になる試合が増えています。そういうふうに選手、チームの試行回数が増えたことはいいことだなと思います。試合数が増えることで経験値も増えますし、同じメンバー相手に再度試せるという点は大きいと思いますね。

野球にたとえると、Bo1は1ストライクで勝ちだったわけですが、Bo3はそれでは勝ちじゃないので、バッター側も読みや対策ができる。ピッチャー側もボール1回でフォアボールではないからチャレンジできるわけです。


パッチ13.4によるサポート&ジャングルのメタ変化


バンピックのチャンピオンのメタで言うと、後半戦からパッチ13.4に切り替わり、大きく変わることが予想されます。

パッチノート13.4の概要。サポートアイテムの「レリックシールド」などの体力回復割合が上がり、「スペルシーフエッジ」のマナ回復量が下がった


特に変わるのがサポートとジャングルです。まず、サポート用のタンク向けアイテム「レリックシールド」と「鋼のショルダーガード」が強化されて、メイジ・エンチャンター向けアイテム「スペルシーフエッジ」、ADCサポート向けアイテム「霊者の鎌」が弱体化されます。これにより、ADCサポートなどは緩やかに減っていくと思われます。

また、相手を倒した時の経験値が減少します。これによって、序盤でガンクして相手から経験値をもらってスノーボールするという流れが変わってくる可能性は高いです。

前半戦までのサポートのメタは、ADCサポートとエンチャンターサポートのナミやルルが主体でしたが、エンゲージができるチャンピオンではないので、ミッドやトップにCCを持ったチャンピオンが必要でした。しかし、タンクやフックのようにエンゲージできるサポートが使えるようになると、ミッドでコーキやゾーイのようなポーク系チャンピオンも使えますし、ジャングルにリー・シンやヴィエゴが出せたりと、チーム全体の構成も変わってきます。チャンピオンのバリエーションが増えるところも楽しみにしてほしいですね。


後半戦の注目ポイント


後半戦で楽しみなのは、上位チームの若手選手の活躍ですね。Marble選手はEnty選手に、tol2選手やKinatu選手はPaz選手に負けていられないでしょう。

もうひとつ注目しているのは、SGのEnty選手。エンゲージサポートが得意な選手ですし、Loken選手とJett選手という“壊してくれる”ふたりがいる中で、どんなふうに試合を動かしてくれるのが楽しみです。

今年は「MAKE HISTORY / MAKE LEGENDS」というスローガンを掲げていますが、レジェンドプレイヤーって試合の中で生まれるものだと思うんですよね。実績からいくと今の「LJL」ではYutapon選手が筆頭と思うんですが、彼をどう超えるかが次のレジェンドになれるかどうかでもあり、そのためには世界で実績を残さないと、ファンは認めてくれません。

Enty選手は世界戦の経験がまだないですし、Marble選手とKinatu選手は手が届くところまでは来ている。彼らが「MSI」でどれくらいまでいけるのかを予測しながら応援するのも楽しいと思います。

試合以外のところでは、今季はキャスターにNemoh(ネモ)さんとwataneko(ワタネコ)さんが加わりましたし、「LJL」としても新しいコンテンツも増えました。


公式ウォッチパーティーとして、らいじんさん、たかやスペシャルさん、SHAKAさんも加わってくれて盛り上げていただいています。


それとぜひ見ていただきたいのが、「LJL 2023」の選手直筆サイン企画。もともと私が地方出身ということもあって、なかなか会場に行けずにサインとかもらえなかったんですが、応募すればワンチャンもらえる可能性があるのってうれしいと思うんですよね。


もうひとつは、各チームのTwitterとかでの企画です。SHGやSGが試合中の選手の会話など、非常に面白いんです。ただ、これまでDFM以外のチームはあまり力を入れてこなかったので、試聴数がまだまだ少ないのがもったいない! 多くのファンの方にご覧いただけたらと思います。



公式配信はもちろん、ウォッチパーティー、選手やチームのSNSなども合わせて楽しんでいただけるように、私も頑張りますので、選手・チーム・キャスター陣にも応援よろしくお願いします!





eyes氏のTwitter:https://twitter.com/eyes1015
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