【現地レポート】なぜ日本の『VALORANT』は“盛り上がって見える”のか——全盛期の1/10の箱と、熱狂の裏に見えてきた課題
- 記憶に残る熱戦の数々でQT DIG∞が初の日本一に
- あらためて感じるオフラインの熱量
- 最大収容人数は3275人。肌身で感じる規模縮小
- Masters Tokyo付近がピークか——尻すぼみする競技シーンへの熱量
- 日本勢が活躍できない、リーグ制の厳しさ
- 2027年からはリーグ制廃止——VALORANT競技シーンの限界は
- それでも”アツい”、日本のVALORANTシーン
- なぜ日本の会場は“特別”なのか——ファンと運営がつくる熱狂
- Yoshiii選手インタビュー
- まとめ
『VALORANT』の日本一を決める国内リーグ「VALORANT Challengers Japan 2026 Season Finals」の準決勝・決勝戦が、7月25日(土)~26日(日)にかけて開催された。
会場にはREJECT(RC)、IGZIST(IGZ)、QT DIG∞(QTD)、FENNEL(FL)の国内の強豪チームが集結。白熱した試合を見せ、大いに盛り上げた。

来たる26日の決勝戦には、勝ち上がったRCとQTDが日本一の座を懸けて対決した。RCとQTDの両者とも譲らず、5マップ目までもつれこむ展開となったが、先にリードを決めたのはQTDだった。9-3で前半を折り返し、攻守が入れ替わる。

だが、RCも負けてはいない。Dep(でっぷ)の操るネオンを軸に素早い攻撃を展開し、次々とラウンドを連取。6点差はあっという間に縮み、11-11の同点にまで持ち込んだ。

しかし、ここでさらに踏ん張りを見せたのはQTDだった。Pkm(ぴーけーえむ)のスーパープレーにより、エコラウンドを獲得。一転してRCを窮地に追い込み、そのままの勢いで見事優勝を果たすこととなった。


実はこの決勝戦、長年VALORANTシーンを支えてきた2チームのカードが組まれていた。両チームとも日本一になったことはなく、どちらが勝利しても歴史的な瞬間となる一戦であった。
そんなこともあり、QT DIG∞が初優勝を果たした際は、会場全体が大きな歓声に包まれた。

大会当日、立川を襲ったゲリラ豪雨。たちまち数分で凄まじい雨の轟音と雷鳴がとどろき、かと思えばすぐに雨雲は立ち去り、太陽が燦々と照りつける。むしろむせ返ってしまうような蒸し暑さに、観客たちは日傘やハンディーファンなどの思い思いの熱中症対策を行っていた。


だがそんな暑さをもろともせず、会場の熱気は最高潮であった。やや会場の雰囲気はRC寄りであったが、QTDのファンも負けじと声援を送る。そして、スーパープレーが見られた時は、チーム関係なく観客たちからどよめくような歓声が上がった。これぞオフラインという雰囲気だ。
特に優勝を決めた瞬間、Misayaの純粋な喜ぶ表情には、たとえRCファンであっても感動を覚えたに違いない。

ただ今回の「Season Finals」は、過去の大会と比較して、かなり規模が小さくなったという印象が拭えなかった。
会場は、東京都立川市にある「アリーナ立川立飛」だ。2017年に開場したばかりの体育館で、公式ホームページを確認するとその定員は「3275人」となっている。実際には機材や関係者席等の関係で、この数字そのままが観客席数というわけではないのだが、おおむね3000人程度であることは間違いないだろう。
この数字を多いと見るか、少ないと見るかは自由だ。ただ、今までさまざまな国内のオフラインイベントを訪れたことのある筆者としては、やはりまず最初に「こぢんまりとした会場だな」という印象が浮かんでしまった。

過去、国内大会が実施された会場である「京王アリーナTOKYO」、「有明GYM-EX」、「ポートメッセなごや」などに比べると、かなり規模が小さくなったことは間違いない。

ただし、これには「首都圏のホール不足」という別の問題も絡んでいる。高度経済成長期に整備されたホールの老朽化が相次ぎ、それにトドメを刺すように建築費の高騰。これはeスポーツ業界に限った話ではなく、ライブエンタメ全体の問題であるのだ。この会場の大きさだけをもって、シーンの衰退を語ることはできないということは、念のため付け加えておこう。
さて、国内のVALORANTシーン——ひいてはeスポーツに対する熱量が最も高くなったのは、間違いなく2022年から2023年頃であろう。2022年4月に開催された「Masters Reykjavík」、大会前は圧倒的最下位と予想されていた🇯🇵ZETA DIVISIONが、名だたる世界の強豪チームをなぎ倒し、世界3位というeスポーツ史に残る偉業を成し遂げた。

そして翌2023年には、日本初の国際大会「Masters Tokyo」が開催。10日間にわたり実施された本大会では、のべ3万7000人以上を動員した。湧き上がる歓声と熱気。この頃は国内の大手新聞社や地上波テレビ局などもこぞって取材に訪れ、ファン以外からの注目も爆発的に広がった。長きにわたり「eスポーツ後進国」と呼ばれてきた日本において、ここが大きな転換点となったことは間違いない。

だが、競技シーンを追いつづけている筆者からすると、やはりこの2023年付近がピークであったことは否めない。あの頃の熱量を目の当たりにしていると、どうしても尻すぼみしているような感覚があるのだ。
やはり語っておかなければならないのは、日本勢が思うように活躍できていない現状にある。その背景にあるのは、やはりリーグ制の開始であるだろう。
2023年、鳴り物入りで発表されたリーグ制への変更。Americas・EMEA・Pacificの3リーグが設けられ、各地域を代表する10チームが「パートナーチーム」として選出された。日本勢からはZETA DIVISIONとDetonatioN FocusMeが選ばれ、Pacificリーグという世界の第一線で戦うこととなった。


大会のフォーマットとしては洗練されてはいるものの、このあたりから日本勢の凋落(ちょうらく)が進みつつあった。それは前述した「Masters Tokyo」において、日本勢が不在だったことからはじまる。続くLCQ(敗者復活戦)では、無敗のまま「Champions」出場を決めたZETAだったが、これ以降、日本勢は世界大会へと出場を逃し続けている。


そしてDFMに至っては、2023年シーズンは0勝11敗という大敗を喫し、人々はこれを「The Curse(呪い)」とまで呼んだ。初白星はなんと2024年4月のT1戦。その後もいくつか勝利は重ねることができているものの、依然として他の強豪チームの壁は厚い。
なお2022年以前は、日本はかなり優遇されていた。国際大会への出場枠が固定でひとつ割り振られており、国内の大会で勝ち進むことができれば、必ず世界を相手に戦うことができたのだ。強豪ひしめく韓国も同じ1枠であったことを考えると、これは圧倒的なアドバンテージであったといえる。

しかし前述の通り、2023年からはリーグ制が導入。日本に与えられていた固定枠はなくなり、シーズン期間中に好成績をおさめなければ、国際大会への出場権は与えられない。ある意味公平なシステムといえるわけだが、「Masters Reykjavík」のような劇的な展開は起こりづらくなった。
これが“凋落”と言えるのか——やや疑問が残るかもしれない。ただ、2022年頃にZETAの活躍を見て『VALORANT』を始めたという人も多いだろう。そんな人々にとって、日本勢が勝ちづらくなった現状は、見ていて面白くなくなったのではないだろうか。
2027年は、『VALORANT』の競技シーンにとって、大きな変革期となる。すでにご存じの方も多いかもしれないが、その理由は「VALORANT Champions Tour(VCT)」のリーグ制廃止にある。
既存のパートナーチームの枠組みはある程度は維持されるものの、「Masters」や「Champions」といった世界大会へ出場するには、「VCT Cups」といったトーナメントを勝ち進む必要がある。このトーナメントから脱落すれば、そのまま敗退だ。あらゆるチームに門戸が開かれると同時に、世界中のあらゆるチームがライバルとなるというわけだ。

しかし、このリーグ制廃止については、日本勢にとってプラスとなる可能性が高いと思われる。2022年以前とは違い、「VCT Cups」という予選トーナメントを勝ち上がる必要はあるが、総合成績が重視されるリーグ制とは異なり、ひとつひとつの勝敗が重要となってくる。もちろん実力も重要だが、一発逆転のドラマチックな勝利も起こりやすくなった。
あの「Masters Reykjavík」での奇跡も、運と実力の両方をつかみ取った結果であることは間違いない。以前ほど易しい環境とはいかないが、日本勢が勝利をつかむチャンスは広がったと考えられるだろう。

かなり悲観的な文章となってしまったが、とはいえまだまだ『VALORANT』の競技シーンには、さらなるポテンシャルがあると筆者は考える。「凋落」や「衰退」といったネガティブなワードを使ったものの、未だ『VALORANT』の人気は第一線級だ。国内・国外で若干傾向は異なるものの、共通して他のFPSタイトルを牽引するような、根強い人気を誇っている。これはTwitchの配信タイトルの統計を見ても明らかだ。
特に日本シーンは、本国からも重要視されている。一部地域では、Tier2(地域リーグ)の衰退が著しく、2021年世界王者の🇦🇹Acendも『VALORANT』の競技シーンからの撤退を発表している。
そんな状況下でも、日本のTier2リーグは他地域よりも盛況であることは間違いない。ストリーマー活動の延長線上としてプロ選手に人気が集まっており、“推し活”の一環として大会を訪れる人も多い。自作の応援ボードも、やはり日本独特の文化といえるだろう。
実際、会場で話を聞いてみると、特に女性ファンを中心に「ゲームはプレーしないが、推しの選手が出ている大会は見る」という人がそれなりに見られた。ゲームプレー→大会だけでなく、大会→ゲームプレーという流入が発生しているのだ。
今まで、さまざまな選手に対して取材をしてきたが、特に海外の選手が多く口にしたのは「日本のファンは素晴らしい」ということだ。もちろん、チームごとに人気の大小はある。しかし、どちらを応援しているか関係なく、スーパープレーを決めた際には拍手と歓声が会場を揺らし、優勝が決まった際には温かい声援で勝利を祝福する。
我々からすると当たり前に感じることだが、他の地域ではそうもいかない。2023年のVCT LOCK//IN(🇧🇷ブラジル、サンパウロ)では、ホームチームである🇧🇷LOUDが敗北した途端、会場がガラガラになったことが批判されていた。

日本でもそのようなことが決してゼロとまでは言わない。だが、チームや選手に対するリスペクトは、肌感としてどの大会でも高いと感じる。このような振る舞いは、実際にプレーする選手たちのモチベーションを高めるだけでなく、巡り巡って日本の競技シーン全体に対していい効果をもたらす。当然、大会関係者も会場の盛り上がり具合をしっかりと注視しているわけで、この盛り上がりが今後の運営の方向性を決定づける可能性もあるのだ。実際、とある関係者も「日本の競技シーンは世界の中でもかなり重要視されている」とハッキリと語っていた。
そして、この特別な空気は、ファンの民度だけで生まれているわけではない。正直、試合をじっくりと見たいのなら、自宅でゆっくりとYouTubeの配信を開いたほうが幾分も見やすい。だが、オフライン大会の魅力は「ライブ感」だ。選手たちのコール、観客の掛け声、現地ならではのコンテンツ――そういった、その場所でしか体験できないモノがあることが、こういったライブエンタメの魅力であり、運営サイドもその熱量を最大化しようと、あらゆる施策を凝らしている。



ファンの成熟した振る舞いと、運営の絶え間ない工夫。その両輪が噛み合って生まれる会場の熱狂は、規模の大小をこえて、日本の競技シーンが持つ何よりの“資産”だ。来シーズン、この熱気の中で日本勢がふたたび世界へ駆け上がれれば、シーンの人気が再燃する日もそう遠くはないだろう。
日本の競技シーンを愛するのは、ファンだけではない。RCのYoshiii(よしー)選手は、2023年にSCARZで日本一の競技シーンに参戦。現在も助っ人として日本の競技シーンで戦い続けている海外プレーヤーのひとりだ。敗戦直後、その受け止めと日本への想いをうかがった。

——今回は残念な結果となってしまいました。うまくいったところ、もしくはうまく噛み合わなかったところなどはありますか?
Yoshiii:本当にチームとしては、一切悪いところはなかったです。QTDに運が回った結果なんじゃないかと思っています。

——今回QTDは、作戦を途中で変えてくるなど、相手を翻弄するような動きを見せていました。これに対してRCは適応できていたと思いますか?
Yoshiii:5マップすべてで適応できていたと思います。ただ強いていうなら、最終マップのディフェンダー側でラウンドを取れなかったことが、少し苦しい結果に繋がったのではないかと感じます。
——特に最終マップではPkm選手の鋭いエイムが光っていたかと思いますが、いかがでしたか?
Yoshiii:とても調子が良かったですね。
——Yoshiii選手は今回、さまざまなエージェントを使用するフレックス的な役回りだったかと思います。試合を通して、ご自身の「うまくできたポイント」をひとつ挙げるなら何でしょうか。
Yoshiii:ひとつ挙げるとするならば、チェンバーですね。今までの過去4年間、チェンバーをうまくプレーできていなかったんですが、今日のヘイヴンではオペレーターが非常に刺さったりして、自分としてもすごくうれしかったです。

——来シーズンに向けて、なにか考えていることはありますか?
Yoshiii:今はいったん休息をとって、好きなことをしたり、散歩に行ったり、ジムに行ったりしようと思います。そして、次のシーズンが近づいてきたら、今年以上に準備をして大会に臨みたいと思います。

——かつてのSCARZ時代を含めて、かなり長い期間日本のリーグで戦い続けているかと思いますが、Yoshiii選手が思う日本リーグの魅力は何だと思いますか?
Yoshiii:ファンの多さと熱量の強さがとても魅力だと感じてて、それが影響して今後もずっと日本に残りつづけたいと思っています。
——まだ日本のシーンでプレーしたいと思いますか?
Yoshiii:はい、もちろんです!
——ありがとうございました!

昨年は、年末恒例の「Riot Games ONE」がオンライン開催となり、今回の「Challengers Japan」は会場の規模が大幅に縮小した。
筆者は2021年からこのゲームをはじめ、そこからは国内外の競技シーンもそれなりにウォッチしてきたと自負している。だからこそ2022年付近の現在との熱量のギャップを大きく感じてしまうわけで、そこに一抹の寂しさを見出してしまうのは、不自然なことではないはずだ。VCTリーグ制廃止という大きな変革を待ち受ける中、この2026年はそのための準備期間であると信じたいところだ。
このリーグ制廃止が、日本にとって吉と出るか凶と出るか、まだ誰にも分からない。ただ、ひとつ言えることは、日本にはこういったeスポーツを盛り上げるための土壌が十分にあるということだ。そのためにも今回優勝したQTD含め、日本勢にはぜひとも頑張っていただきたい。我々は、そんな彼らに対して惜しげもなく歓声を浴びせるとともに、コミュニティ全体が活気づくよう、自らもその一員として楽しんでいきたいところだ。
■関連リンク
Yoshiii:
https://x.com/YoshiiVLR
撮影:まいる/いのかわゆう
編集:いのかわゆう
会場にはREJECT(RC)、IGZIST(IGZ)、QT DIG∞(QTD)、FENNEL(FL)の国内の強豪チームが集結。白熱した試合を見せ、大いに盛り上げた。

▲1日目の準決勝の試合を終え、勝ち進んだのはRCとQTDだ。決勝戦のみBO5(3点先取)のルールで実施され、非常に長丁場となることも予想された
記憶に残る熱戦の数々でQT DIG∞が初の日本一に
来たる26日の決勝戦には、勝ち上がったRCとQTDが日本一の座を懸けて対決した。RCとQTDの両者とも譲らず、5マップ目までもつれこむ展開となったが、先にリードを決めたのはQTDだった。9-3で前半を折り返し、攻守が入れ替わる。

▲誰もが絶望的だと思った1vs3のシチュエーション。しかし、Margaret(まーがれっと)の冷静なエイムが瞬く間に全員を殲滅。12ラウンド目を獲得し、折り返し9-3で依然としてQTDがリード(https://www.youtube.com/live/6UtIJQHhAOU?si=hc5x0y0QOCGZ0TFf&t=27954)
だが、RCも負けてはいない。Dep(でっぷ)の操るネオンを軸に素早い攻撃を展開し、次々とラウンドを連取。6点差はあっという間に縮み、11-11の同点にまで持ち込んだ。

▲開幕直後にファーストキルを取られてしまったRCだが、サイト内を残りの4人で潰しきることでBサイトを掌握。スパイク設置後も見事な立ち回りを見せ、ラウンドを獲得。両チームは11-11の同点に並んだ(https://www.youtube.com/live/6UtIJQHhAOU?si=YotzJlFJj5c7XiJB&t=29174)
しかし、ここでさらに踏ん張りを見せたのはQTDだった。Pkm(ぴーけーえむ)のスーパープレーにより、エコラウンドを獲得。一転してRCを窮地に追い込み、そのままの勢いで見事優勝を果たすこととなった。

▲武器不利ながらも人数有利をもぎ取ったQTD。特にPkmはHPが5という状況で、サイト内で時間稼ぎをする選択をとり、しかもそのまま残ったふたりを倒してしまった(https://www.youtube.com/live/6UtIJQHhAOU?si=06Htl7RYF6-3SylJ&t=29350)

▲ラストキルを決めたのは、またしてもPkm。エコラウンドのRCを蹂躙するかのように、13点目を見事勝ち取った(https://www.youtube.com/live/6UtIJQHhAOU?si=y13pkyjgVFLWFeyY&t=29534)
実はこの決勝戦、長年VALORANTシーンを支えてきた2チームのカードが組まれていた。両チームとも日本一になったことはなく、どちらが勝利しても歴史的な瞬間となる一戦であった。
そんなこともあり、QT DIG∞が初優勝を果たした際は、会場全体が大きな歓声に包まれた。

あらためて感じるオフラインの熱量
大会当日、立川を襲ったゲリラ豪雨。たちまち数分で凄まじい雨の轟音と雷鳴がとどろき、かと思えばすぐに雨雲は立ち去り、太陽が燦々と照りつける。むしろむせ返ってしまうような蒸し暑さに、観客たちは日傘やハンディーファンなどの思い思いの熱中症対策を行っていた。

▲見渡しても空席はほとんどなく、応援ボードやチームグッズを掲げる観客たちで埋め尽くされていた

▲会場に用意されたキッチンカーでは、キンキンに冷えたドリンクが飛ぶように売れていた
だがそんな暑さをもろともせず、会場の熱気は最高潮であった。やや会場の雰囲気はRC寄りであったが、QTDのファンも負けじと声援を送る。そして、スーパープレーが見られた時は、チーム関係なく観客たちからどよめくような歓声が上がった。これぞオフラインという雰囲気だ。
特に優勝を決めた瞬間、Misayaの純粋な喜ぶ表情には、たとえRCファンであっても感動を覚えたに違いない。

最大収容人数は3275人。肌身で感じる規模縮小
ただ今回の「Season Finals」は、過去の大会と比較して、かなり規模が小さくなったという印象が拭えなかった。
会場は、東京都立川市にある「アリーナ立川立飛」だ。2017年に開場したばかりの体育館で、公式ホームページを確認するとその定員は「3275人」となっている。実際には機材や関係者席等の関係で、この数字そのままが観客席数というわけではないのだが、おおむね3000人程度であることは間違いないだろう。
この数字を多いと見るか、少ないと見るかは自由だ。ただ、今までさまざまな国内のオフラインイベントを訪れたことのある筆者としては、やはりまず最初に「こぢんまりとした会場だな」という印象が浮かんでしまった。

▲実際、最後方の座席からでも最前方のモニターがわりとしっかりと見えるくらいの規模感だ
過去、国内大会が実施された会場である「京王アリーナTOKYO」、「有明GYM-EX」、「ポートメッセなごや」などに比べると、かなり規模が小さくなったことは間違いない。

▲1日で1万人以上を動員した2022年の大会(さいたまスーパーアリーナ)と比べれば、当時よりも熱量が落ちていることは明らかだろう
ただし、これには「首都圏のホール不足」という別の問題も絡んでいる。高度経済成長期に整備されたホールの老朽化が相次ぎ、それにトドメを刺すように建築費の高騰。これはeスポーツ業界に限った話ではなく、ライブエンタメ全体の問題であるのだ。この会場の大きさだけをもって、シーンの衰退を語ることはできないということは、念のため付け加えておこう。
Masters Tokyo付近がピークか——尻すぼみする競技シーンへの熱量
さて、国内のVALORANTシーン——ひいてはeスポーツに対する熱量が最も高くなったのは、間違いなく2022年から2023年頃であろう。2022年4月に開催された「Masters Reykjavík」、大会前は圧倒的最下位と予想されていた🇯🇵ZETA DIVISIONが、名だたる世界の強豪チームをなぎ倒し、世界3位というeスポーツ史に残る偉業を成し遂げた。

▲時差の関係上、深夜に配信されていた「Masters Reykjavík」だが、連日数十万人の視聴者数を記録。多くの日本人ファンがZETA DIVISIONの活躍を見守っていた(出典:https://www.flickr.com/photos/valorantesports/)
そして翌2023年には、日本初の国際大会「Masters Tokyo」が開催。10日間にわたり実施された本大会では、のべ3万7000人以上を動員した。湧き上がる歓声と熱気。この頃は国内の大手新聞社や地上波テレビ局などもこぞって取材に訪れ、ファン以外からの注目も爆発的に広がった。長きにわたり「eスポーツ後進国」と呼ばれてきた日本において、ここが大きな転換点となったことは間違いない。

▲2023年6月に開催された「Masters Tokyo」——さまざまな熱いドラマを生み、数万の観客がスーパープレーに熱狂した
だが、競技シーンを追いつづけている筆者からすると、やはりこの2023年付近がピークであったことは否めない。あの頃の熱量を目の当たりにしていると、どうしても尻すぼみしているような感覚があるのだ。
日本勢が活躍できない、リーグ制の厳しさ
やはり語っておかなければならないのは、日本勢が思うように活躍できていない現状にある。その背景にあるのは、やはりリーグ制の開始であるだろう。
2023年、鳴り物入りで発表されたリーグ制への変更。Americas・EMEA・Pacificの3リーグが設けられ、各地域を代表する10チームが「パートナーチーム」として選出された。日本勢からはZETA DIVISIONとDetonatioN FocusMeが選ばれ、Pacificリーグという世界の第一線で戦うこととなった。

▲「VCT 2023」の開幕時に発表された参加チーム。そうそうたる顔ぶれの中、日本からは初期パートナーチームとして、ZETA DIVISIONとDetonatioN FocusMeが選出された

▲「VCT 2023」のリーグ構成。シーズン毎により形式は異なるものの、各地域の上位リーグ(Tier1)で好成績を収めたチームのみが、「Masters」や「Champions」などの世界大会へと出場できる仕組み
大会のフォーマットとしては洗練されてはいるものの、このあたりから日本勢の凋落(ちょうらく)が進みつつあった。それは前述した「Masters Tokyo」において、日本勢が不在だったことからはじまる。続くLCQ(敗者復活戦)では、無敗のまま「Champions」出場を決めたZETAだったが、これ以降、日本勢は世界大会へと出場を逃し続けている。

▲2023年の「Masters Tokyo」出場を逃したZETAは、その後の敗者復活戦となる「Last Chance Qualifier」で優勝を果たし、Champions出場を果たした

▲ただ「Champions」ではグループステージ敗退の結果に。日本代表として健闘は尽くしたものの、世界の壁はまだまだ厚かった(出典:https://www.flickr.com/photos/valorantesports/)
そしてDFMに至っては、2023年シーズンは0勝11敗という大敗を喫し、人々はこれを「The Curse(呪い)」とまで呼んだ。初白星はなんと2024年4月のT1戦。その後もいくつか勝利は重ねることができているものの、依然として他の強豪チームの壁は厚い。
▲DFMの初勝利時には特集まで作られた。なお現在では、この「呪い」はなくなっており、2026年のリーグ戦でもそれなりに勝利を収めている
なお2022年以前は、日本はかなり優遇されていた。国際大会への出場枠が固定でひとつ割り振られており、国内の大会で勝ち進むことができれば、必ず世界を相手に戦うことができたのだ。強豪ひしめく韓国も同じ1枠であったことを考えると、これは圧倒的なアドバンテージであったといえる。

▲2022年の「Masters Reykjavík」での出場チーム一覧。この2022年シーズンまで「JP」——つまり、日本チーム枠が固定で設けられており、国内リーグで優勝することでそのまま国際大会へ出場することができた
しかし前述の通り、2023年からはリーグ制が導入。日本に与えられていた固定枠はなくなり、シーズン期間中に好成績をおさめなければ、国際大会への出場権は与えられない。ある意味公平なシステムといえるわけだが、「Masters Reykjavík」のような劇的な展開は起こりづらくなった。
これが“凋落”と言えるのか——やや疑問が残るかもしれない。ただ、2022年頃にZETAの活躍を見て『VALORANT』を始めたという人も多いだろう。そんな人々にとって、日本勢が勝ちづらくなった現状は、見ていて面白くなくなったのではないだろうか。
2027年からはリーグ制廃止——VALORANT競技シーンの限界は
2027年は、『VALORANT』の競技シーンにとって、大きな変革期となる。すでにご存じの方も多いかもしれないが、その理由は「VALORANT Champions Tour(VCT)」のリーグ制廃止にある。
既存のパートナーチームの枠組みはある程度は維持されるものの、「Masters」や「Champions」といった世界大会へ出場するには、「VCT Cups」といったトーナメントを勝ち進む必要がある。このトーナメントから脱落すれば、そのまま敗退だ。あらゆるチームに門戸が開かれると同時に、世界中のあらゆるチームがライバルとなるというわけだ。

▲2027年から始まる新たなVCT。「VCT Cups」と呼ばれるトーナメントが新設され、そこで勝利すれば国際大会へ進出することができるようだ
しかし、このリーグ制廃止については、日本勢にとってプラスとなる可能性が高いと思われる。2022年以前とは違い、「VCT Cups」という予選トーナメントを勝ち上がる必要はあるが、総合成績が重視されるリーグ制とは異なり、ひとつひとつの勝敗が重要となってくる。もちろん実力も重要だが、一発逆転のドラマチックな勝利も起こりやすくなった。
あの「Masters Reykjavík」での奇跡も、運と実力の両方をつかみ取った結果であることは間違いない。以前ほど易しい環境とはいかないが、日本勢が勝利をつかむチャンスは広がったと考えられるだろう。

▲この劇的な勝利は、当時の選手たちの努力の積み重ね、その場その場での瞬発力、そして一時の運とそれをモノにするだけの胆力が生み出した結果である(出典:https://www.flickr.com/photos/valorantesports/)
それでも”アツい”、日本のVALORANTシーン
かなり悲観的な文章となってしまったが、とはいえまだまだ『VALORANT』の競技シーンには、さらなるポテンシャルがあると筆者は考える。「凋落」や「衰退」といったネガティブなワードを使ったものの、未だ『VALORANT』の人気は第一線級だ。国内・国外で若干傾向は異なるものの、共通して他のFPSタイトルを牽引するような、根強い人気を誇っている。これはTwitchの配信タイトルの統計を見ても明らかだ。
特に日本シーンは、本国からも重要視されている。一部地域では、Tier2(地域リーグ)の衰退が著しく、2021年世界王者の🇦🇹Acendも『VALORANT』の競技シーンからの撤退を発表している。
そんな状況下でも、日本のTier2リーグは他地域よりも盛況であることは間違いない。ストリーマー活動の延長線上としてプロ選手に人気が集まっており、“推し活”の一環として大会を訪れる人も多い。自作の応援ボードも、やはり日本独特の文化といえるだろう。
実際、会場で話を聞いてみると、特に女性ファンを中心に「ゲームはプレーしないが、推しの選手が出ている大会は見る」という人がそれなりに見られた。ゲームプレー→大会だけでなく、大会→ゲームプレーという流入が発生しているのだ。
なぜ日本の会場は“特別”なのか——ファンと運営がつくる熱狂
今まで、さまざまな選手に対して取材をしてきたが、特に海外の選手が多く口にしたのは「日本のファンは素晴らしい」ということだ。もちろん、チームごとに人気の大小はある。しかし、どちらを応援しているか関係なく、スーパープレーを決めた際には拍手と歓声が会場を揺らし、優勝が決まった際には温かい声援で勝利を祝福する。
我々からすると当たり前に感じることだが、他の地域ではそうもいかない。2023年のVCT LOCK//IN(🇧🇷ブラジル、サンパウロ)では、ホームチームである🇧🇷LOUDが敗北した途端、会場がガラガラになったことが批判されていた。
As someone who played formerly on a team representing Brazil, I’ve been on the receiving end of immense love and support from Brazil
— tarik (@tarik) March 5, 2023
In respect and to clarify yesterdays message, an empty arena for a trophy lift is simply heartbreaking to see. Let’s do better for next time.
▲北米のストリーマーtarik氏は「トロフィーを掲げているとき、空っぽのアリーナを見るのは、ただただ心が痛む」とX上で訴えた

▲余談だが、筆者の友人は、2025年のChampions(🇫🇷フランス、パリ)を現地で観戦していた。その時、目の前の座席に座っていた観客が、自身の応援していたチームが敗北した途端、応援用のスティックバルーンを破壊して帰ったのだという
日本でもそのようなことが決してゼロとまでは言わない。だが、チームや選手に対するリスペクトは、肌感としてどの大会でも高いと感じる。このような振る舞いは、実際にプレーする選手たちのモチベーションを高めるだけでなく、巡り巡って日本の競技シーン全体に対していい効果をもたらす。当然、大会関係者も会場の盛り上がり具合をしっかりと注視しているわけで、この盛り上がりが今後の運営の方向性を決定づける可能性もあるのだ。実際、とある関係者も「日本の競技シーンは世界の中でもかなり重要視されている」とハッキリと語っていた。
そして、この特別な空気は、ファンの民度だけで生まれているわけではない。正直、試合をじっくりと見たいのなら、自宅でゆっくりとYouTubeの配信を開いたほうが幾分も見やすい。だが、オフライン大会の魅力は「ライブ感」だ。選手たちのコール、観客の掛け声、現地ならではのコンテンツ――そういった、その場所でしか体験できないモノがあることが、こういったライブエンタメの魅力であり、運営サイドもその熱量を最大化しようと、あらゆる施策を凝らしている。

▲チームブースでのグッズ物販や選手との交流はもはや定番! 人気チームのブースには長蛇の列ができ、完売するグッズも多数

▲昨年の「Challengers Japan」から引き続き、会場のいたるところに戦略フレンズ(ゲーム内にも度々登場する動物をモチーフにしたキャラクター)が隠れている。現地を訪れた方は、彼らを探してみるとより楽しめるかも?

▲記念撮影をするコスプレーヤーたち。ここ最近は、少しでも会場を盛り上げてほしいとのことで更衣室が設けられるなど、コスプレをしやすい環境を用意しているとのこと
ファンの成熟した振る舞いと、運営の絶え間ない工夫。その両輪が噛み合って生まれる会場の熱狂は、規模の大小をこえて、日本の競技シーンが持つ何よりの“資産”だ。来シーズン、この熱気の中で日本勢がふたたび世界へ駆け上がれれば、シーンの人気が再燃する日もそう遠くはないだろう。
Yoshiii選手インタビュー
日本の競技シーンを愛するのは、ファンだけではない。RCのYoshiii(よしー)選手は、2023年にSCARZで日本一の競技シーンに参戦。現在も助っ人として日本の競技シーンで戦い続けている海外プレーヤーのひとりだ。敗戦直後、その受け止めと日本への想いをうかがった。

——今回は残念な結果となってしまいました。うまくいったところ、もしくはうまく噛み合わなかったところなどはありますか?
Yoshiii:本当にチームとしては、一切悪いところはなかったです。QTDに運が回った結果なんじゃないかと思っています。

——今回QTDは、作戦を途中で変えてくるなど、相手を翻弄するような動きを見せていました。これに対してRCは適応できていたと思いますか?
Yoshiii:5マップすべてで適応できていたと思います。ただ強いていうなら、最終マップのディフェンダー側でラウンドを取れなかったことが、少し苦しい結果に繋がったのではないかと感じます。
——特に最終マップではPkm選手の鋭いエイムが光っていたかと思いますが、いかがでしたか?
Yoshiii:とても調子が良かったですね。
——Yoshiii選手は今回、さまざまなエージェントを使用するフレックス的な役回りだったかと思います。試合を通して、ご自身の「うまくできたポイント」をひとつ挙げるなら何でしょうか。
Yoshiii:ひとつ挙げるとするならば、チェンバーですね。今までの過去4年間、チェンバーをうまくプレーできていなかったんですが、今日のヘイヴンではオペレーターが非常に刺さったりして、自分としてもすごくうれしかったです。

▲マッチポイントを獲得したRC Yoshiiiの勢いは止まらない。オペレーターとヘッドハンターで一撃必殺のキルを連発し、最終ラウンドは4キルと絶好調だった(https://www.youtube.com/live/6UtIJQHhAOU?si=e-Nk5QMCxxxeiW8R&t=21332)
——来シーズンに向けて、なにか考えていることはありますか?
Yoshiii:今はいったん休息をとって、好きなことをしたり、散歩に行ったり、ジムに行ったりしようと思います。そして、次のシーズンが近づいてきたら、今年以上に準備をして大会に臨みたいと思います。

——かつてのSCARZ時代を含めて、かなり長い期間日本のリーグで戦い続けているかと思いますが、Yoshiii選手が思う日本リーグの魅力は何だと思いますか?
Yoshiii:ファンの多さと熱量の強さがとても魅力だと感じてて、それが影響して今後もずっと日本に残りつづけたいと思っています。
——まだ日本のシーンでプレーしたいと思いますか?
Yoshiii:はい、もちろんです!
——ありがとうございました!

▲決勝戦で敗れてしまった直後のインタビューということもあり、終始険しい表情だったYoshiii選手だったが、この最後の質問にだけは通訳も通さず、自らの言葉とともに笑顔で答えてくれた。今回は悔しい結果とはなってしまったが、今後も日本での活躍を祈るばかりだ
まとめ
昨年は、年末恒例の「Riot Games ONE」がオンライン開催となり、今回の「Challengers Japan」は会場の規模が大幅に縮小した。
筆者は2021年からこのゲームをはじめ、そこからは国内外の競技シーンもそれなりにウォッチしてきたと自負している。だからこそ2022年付近の現在との熱量のギャップを大きく感じてしまうわけで、そこに一抹の寂しさを見出してしまうのは、不自然なことではないはずだ。VCTリーグ制廃止という大きな変革を待ち受ける中、この2026年はそのための準備期間であると信じたいところだ。
このリーグ制廃止が、日本にとって吉と出るか凶と出るか、まだ誰にも分からない。ただ、ひとつ言えることは、日本にはこういったeスポーツを盛り上げるための土壌が十分にあるということだ。そのためにも今回優勝したQTD含め、日本勢にはぜひとも頑張っていただきたい。我々は、そんな彼らに対して惜しげもなく歓声を浴びせるとともに、コミュニティ全体が活気づくよう、自らもその一員として楽しんでいきたいところだ。
■関連リンク
Yoshiii:
https://x.com/YoshiiVLR
撮影:まいる/いのかわゆう
編集:いのかわゆう
【まいるプロフィール】
関西を拠点にする男性コスプレーヤー。イベントや大会によくコスプレ姿で出没する。2021年頃から『VALORANT』にハマり、競技シーンを追い続ける。現在の推しチームは「CREST GAMING」。
X:@mlunias(Photo by Subaru.F.)
関西を拠点にする男性コスプレーヤー。イベントや大会によくコスプレ姿で出没する。2021年頃から『VALORANT』にハマり、競技シーンを追い続ける。現在の推しチームは「CREST GAMING」。X:@mlunias(Photo by Subaru.F.)
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